ドル暴落に備えよ

今日はこの話題です。
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1.ドル暴落に備えよ


5月3日、ロシア国際通貨基金(IMF)のアレクセイ・モジン事務局長は、RIAノーボスチとのインタビューで、現在の金融システムの欠点が明らかになりつつあり、多くの出版物で、BRICSについて言及し始めたと述べました。

モジン事務局長は、BRICS経済圏の加盟国が、中国元、インドルピー、ロシアルーブル、ブラジルレアル、南アフリカランドを含む「加盟5カ国の通貨バスケットを基礎とする」通貨を創設することは可能だと説明し、「そのような案が検討されている。ドルや国際通貨システムが崩壊した場合、BRICSの会計単位を為替商品に裏打ちされた実質通貨にする必要がある」と語りました。

今年初め、BRICS財務相・中央銀行総裁会議が開催された際、BRICS加盟国の代表は、ドルから脱却し、代わりに自国通貨で取引することへの支持を表明したのですけれども、当時、ロシアのイワン・チェベスコフ財務副大臣は「殆どの国が、BRICS諸国には自国通貨での決済が必要だと言っている。我々はすでに10カ国からなるBRICSの大家族だ。ほとんどの国は、新しい決済メカニズムを構築する必要性を支持し、中央銀行デジタル通貨の開発、新しいプラットフォームの構築、さまざまなプラットフォームの試験運用への参加などの経験を共有した。」とコメントしています。

チェベスコフ氏は、2月のBRICSフォーラム参加者の大多数が、各国通貨による独立した決済メカニズムに移行することで、二国間貿易を促進し、経済関係を強化することを支持していると推測しています。

この世界的な脱ドル化の流れは、2022年のウクライナ紛争を切っ掛けに、欧米の金融システムがロシアを切り離した後から生まれました。そして、金融専門家は、ロシアの対外資産の差し押さえと、それを没収しようとする欧米の計画が、この傾向にさらに拍車をかける可能性があるとの懸念を示しています。


2.新通貨創設を狙うBRICS


チェベスコフ財務副大臣は、BRICSの新しい決済メカニズムを構築する必要性に触れていますけれども、その為にBRICSはブロックチェーン技術に着目したとも伝えられています。

ブロックチェーン技術は、ビットコインなど仮想通貨の取引に使われている技術ですけれども、実際、BRICSはデジタル資産を基にした競合通貨を作ろうとしています。

BRICSは今年10月にロシアで年次首脳会議を開く予定ですけれども、会議ではBRICSの新通貨が議論の対象となるとみられ、場合によっては、その場で新通貨が発表されると見る向きもあるようです。

昨年夏に行われたBRICSサミットでは、複数の新たな国家をBRICSに招待することによるBRICSの拡大が話し合われました。

BRICSに対する支持はここ数年で高まっていて、2024年にはさらに多くの国々がBRICSへ招待されると見られ、数と財政の面でより多くの支持を得ることで、米ドルと戦う強力な対抗通貨を開発することができるのではないかとも囁かれています。


3.全米で増加する債務超過の住宅ローン


実際、ここ数年でアメリカを拠点とする通貨に対する疑念が高まっています。これは、インフレの進行がドルの価値を阻害していることに加え、複数回の利上げも一因とされています。

5月9日、不動産データ会社アットムが発表した2024年1-3月(第1四半期)米ホームエクイティー&アンダーウォーター・リポートによると、同四半期には住宅の市場価格を25%以上上回るローン残高を抱えた住宅が全米で2.7%あり、前四半期の2.6%から増加したことが明らかになりました。

武漢ウイルスによるパンデミックの時期は政府の景気刺激策と不動産価格の上昇があったのですけれども、インフレ抑制を目的とした金利上昇が、住宅市場を冷やしつつあるとの声も出始めています。

アメリカ南部の幾つかの州では、深刻な債務超過に陥っている住宅の割合が他の州よりも大きく増加。ケンタッキー州では今年1ー3月に8.3%と前四半期の6.3%から急上昇。ウェストバージニア州は4.4%から5.4%に、オクラホマ州は5.5%から6.1%に、アーカンソー州は5.2%から5.7%に増加しました。

債務超過の住宅の数が大きく増加したのも南部の諸州で、最大のケンタッキー州は前年同期比で2万500軒以上増加。2位、3位のミシシッピ州、オクラホマ州の約2倍の水準となっています。

人口50万人以上の都市圏ではルイジアナ州バトンルージュが13.4%と、第2四半期に深刻な債務超過に陥った住宅ローンの割合が最も高く、2位もルイジアナ州のニューオーリンズで7.3%、3位はミズーリ州ジャクソンで6.5%、4位はアーカンソー州リトルロックで6%。5位は、ニューヨーク州シラキュースで、5.6%の住宅が深刻な債務超過状態にあります。


4.石油支払いの二割は現地通貨決済


もともとBRICSはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国の5カ国でした。それが今年1月1日にアラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、イラン、エチオピア、エジプト、アルゼンチンを含め6カ国が新たに追加され、計11カ国となっています。

これらの国々が産油国ばかりであることからわかるとおり、BRICSは世界の石油部門を支配し、貿易に現地通貨を利用して米ドルを下落させることを目指していると見られています。

特に、サウジアラビアのBRICS加盟は世界の石油・ガス産業の供給力学を変えるとされ、サウジアラビアが石油の現地通貨を受け入れ、支払いの米ドルを引き下げる可能性さえあります。

最新の報告書によると、2023年には世界の石油支払いの約20%が米ドルではなく現地通貨で決済されたとのことですけれども、サウジアラビアのBRICS加盟によって、現地通貨での石油取引の割合は今後数年で増加するだろうと言われています。

既にBRICSは、世界経済の約28%のGDPを占める約28兆5,000億ドル規模、世界の原油生産量の約44%を占める経済圏となっています。

当然ながら、石油取引が現地通貨で行なう割合が増えれば増えるほど、相対的に米ドルの重要性は失われていくことになります。


5.各国のドル離れは許さない


当然ながら、BRICSを始めとする脱ドル化に対し、アメリカも対抗しようとしています。トランプ前大統領です。

3月11日、トランプ前大統領はCNBCとのインタビューで、「私は各国がドルから離れるのが嫌いだ。各国によるドル離れを私は許さない。基準としての役割を失うことは独立戦争に敗れるようなものだからだ。それはわが国にとって打撃となる……バイデン政権の下ではドルという基準を失うことになる。それは、われわれが最大の戦争に負けるようなものだ」と語りました。

4月26日、ブルームバーグは、トランプ前大統領の経済顧問らが、他の国々がドルから別の通貨へシフトするのを積極的に阻止する方法を検討していると伝えています。

記事では、これは、現在、進んでいる主要新興国の間でのドル通貨危機回避に対抗する取り組みだとしていますけれども、更にドル以外の通貨で二国間貿易を行う積極的な方法を見つけようとする同盟国や敵対国に対するペナルティーも検討されており、輸出規制や為替操作の疑いの追及、関税などが対抗策に含まれると、関係者らは匿名を条件に語っています。

今のところ、トランプ前大統領の返り咲きが有力視されています。トランプ前大統領が再選することで、ウクライナやイスラエルでの物理的戦争は終わることがあったとしても、代わりに通貨戦争が起こるのかもしれませんね。


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