安倍氏へのヤジが合法で俺らが違法なわけがない

今日はこの話題です。
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1.家宅捜索された「つばさの党」


5月13日、先月4月28日投開票の衆院東京15区補欠選挙で、他陣営の街頭演説を妨害したとして、警視庁捜査2課は、政治団体「つばさの党」の東京都千代田区の事務所と党代表の黒川敦彦氏の埼玉県朝霞市の自宅と、「つばさの党」から立候補して落選した根本良輔氏の東京都練馬区の自宅です。この家宅捜査で、警察は街宣車、拡声器、プラカード、パソコンなどを押収したようです。

根本氏陣営は補選の期間中、他陣営の街頭演説の会場で、演説が聞こえなくなるほどの大音量で批判や主張を繰り返したほか、「カーチェイス街宣」と称して他陣営の街宣車を追いかけるなど、妨害ととれる行為を繰り返していました。警視庁は告示の2日後の4月18日、他陣営の選挙運動を妨害したとして、黒川氏らに公選法違反の警告を出しています。

家宅捜索後、黒川党首は記者団の取材に「圧力による違法な捜査。言論で対立しているだけだ。もし処罰されることがあっても続ける」と話していますけれども、黒川党首を始めとする「つばさの党」幹部は、まったく反省の色が見えません。

黒川党首と幹事長の根本良輔氏、組織運動本部長の杉田勇人氏の3人は、この日の家宅捜索が行われた直後のYouTube配信で「今日、このまま小池百合子の家行こうと思うんだよね」、「警視総監は?」、「警視総監はパクられた後に支持者にやってもらった方が。そっちは大トリなんで」などと会話する動画をネットに上げ、夕方には、東京都練馬区にある小池百合子東京都知事の自宅に十数人の支持者を連れて「逆ギレ街頭演説」を行っています。

黒川党首は、集まった取材陣に対し、「みなさん、メディアの方って表現の自由のもとで活動している方々だと思いますが、つばさの党の支持者もいて、つばさの党の言論を聞きたいという方は小池百合子の街宣の現場にもいたわけですよ……小池百合子、カイロ大学出ていないよね、って多くの人が思ってますよね。マスメディアの人たちも思ってますよね……小池百合子の経歴詐称疑惑はほとんどワイドショーやってないでじゃないですか。だから、つばさの党にもっとやってくれと、小池百合子が嘘ついていると言ってくれとくるんです……どうせ(取材で撮った内容を)使わないでしょ、使わないよねー! だから、みなさんの視聴率も下がっているんだろうが。下がっているよね、若いヤツ、テレビ見ないからな! お前らがこんなことやって…」と、自分達の行動は表現の自由であり、国民の代弁をしているのだ、と主張しています。


2.警察も手を焼いている


では、彼らの行動を制止できるのかできないのか。

これについて、警視庁関係者は「警察も手に焼いている…現行の公職選挙法は、具体的にどの行為が選挙妨害にあたるなどと明示していないため、立件は難しいというのが当初の警視庁の考えだった。ただ、国や検察、都の意向も無視できなくなり今回の家宅捜索に踏み切った」と明かしているそうです。

ただ、つばさの党は事情聴取に応じると話していることから、「一般論で考えると、身柄を取るのは難しい……彼らが罪を認めれば略式起訴して罰金刑となるでしょうが、それは考えにくい。そうなると在宅起訴して裁判となりますが、結論が出るまで時間がかかってしまう」とコメントしています。

黒川党首は、処罰されることがあっても続けると宣言していますけれども、政界・警察関係者は、7月に行われる都知事選を気にしているとのことです。というのも都知事選に黒川氏と根本氏は立候補すると明言していて、先日の衆院補選15区と同じ選挙妨害が行われる可能性が非常に高いからです。

かれらの選挙妨害について、市民運動や表現の自由に詳しい内藤光博・専修大教授は「公道での街頭演説で、政治的意見を表明することは表現の自由の一環として当然認められること」とした上で「選挙の自由の前提である有権者の知る権利が侵害され、候補者の意見表明の自由も損なわれた側面がある……候補者も1人の公人で、一般市民のヤジとは責任の度合いが違う」と指摘しています。

ただ、その一方、警視庁が今回の家宅捜索の容疑とした選挙の自由妨害は要件が明確でなく、「言論抑制につながりかねず、適用には慎重さが必要」と安易な適用は他の団体や市民に対する萎縮効果につながりかねないとも述べています。

過去には、2019年夏の参院選で演説中の安倍晋三元総理にヤジを飛ばした男女2人が警察に排除される問題が起きたのですけれども、一般市民による肉声でのヤジは表現の自由の範囲内として認容された判例があります。

その意味では、仮に内藤教授が指摘するように、一般市民のヤジと公人のヤジとでは責任の度合いが違うというのであれば、「つばさの党」の面々が一般市民として、同じように拡声器でのヤジや妨害行為であればOKなのか、という議論が出てくることになります。

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3.私の気持ちがわかるか?


5月14日放送のテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」に出演した元フジテレビアナウンサーで弁護士の菊間千乃氏が、今回のつばさの党に対する家宅捜査について、次のようにコメントしました。
・今、この段階で家宅捜索するのは何だろうと、つばさの党がおっしゃる気持ちは、分からなくもないと思ったが、意図的に妨害しようとして相手の党のルートをチェックして、だれがどこで妨害しようとか、もし書類として残っていたら公職選挙法違反になる。そういう意味で家宅捜索したのか部分もあるのかなとは思う

・横で自分が演説し、相手の演説にかぶせて聞こえなくなるというのは、表現の自由ということになるのかなとも思う……(候補者への)質問は、本来、国民がやることだ

・候補者は自分たちの主張を国民に届け、国民はそれを聞く権利がある。今回のことで結果的に、(多くの候補者が)自分たちの政策などを国民に話す機会を奪ったことは、事実としてある。そこを『表現の自由』といえるのかなというのは、微妙だなと思う
このように菊間氏は、意図的な妨害でなければ「表現の自由」の範疇だが、他の国民の「聞く権利」を奪っている点には留意が必要だと述べています。

この発言に、先月の衆院東京15区補選に日本保守党から立候補した飯山陽氏が激怒しました。

飯山氏は同じく14日、X(旧ツイッター)で、「『確かにつばさの党のおっしゃる気持ちも分からなくはないなと思った』と加害者に寄り添う菊間千乃とかいう弁護士さんよ、拡声器を使い警察署前で『飯山あかり48歳!欲求不満か!オレとチューしたいのか!』と暴言を吐かれYouTubeで生配信された私の気持ちがわかるか?」と強く反論しました。

飯山氏は同補選で落選後、「疾病療養」のため日本保守党の同区支部長を退任すると発表。理由について、選挙期間中の“妨害”と説明し、最初に被害にあった4月19日を境に「不眠、耳鳴りなどの症状に悩まされるようになりました」と報告した上で、医師から「加療が必要」と判断されたと説明しています。

筆者は、医師から「加療が必要」とまで診断される程の暴言は、「暴力行為」としてもよいのではないかとさえ思います。


4.安倍氏へのヤジが合法で俺らが違法なわけがない


結局は、「表現の自由」と「選挙妨害」の線引きが曖昧であることが、今回の問題の一因ではないかと思います。つばさの党はそこを突いた。

実際、5月13日、つばさの党幹事長の根本良輔氏は、家宅捜索されたことについて、X(旧ツイッター)で「候補者以外の安倍へのヤジが合法な時点で、候補者である俺らが違法なわけがない 北海道のヤジも、俺らがやったヤジも全く同じ なぜならヤジの定義が曖昧だから 音量がデカかろうがなんだろうが定義が曖昧な以上、ヤジであると一括りにされる だから警察は、小池に圧力かけられて警告を出したりガサ入れするぐらいしかできない 逮捕できるなら今日してたはずだから」とツイートしています。

そして「家宅捜索されたけど無事です 逮捕状は出てないので逮捕はされてない メインの携帯とパソコン押収されただけ 携帯パソコンに何も情報がないので逮捕につながる証拠は何も出ない そもそもYouTubeのライブに全部残っており、そこに証拠はあるわけなのでそれで逮捕できないなら家宅捜索しても無意味」ともツイートしています。

この根本氏の主張について、ネットでは、《これに関しては彼らの主張は一理あるんだよな。つばさの党への是非に関係なく、法の下の平等・表現の自由という観点から安倍さんの時とどう違って、どのように制限するのかっていうのは筋を通す必要がある》《ほら、札幌地裁の判決が根拠なのでしょ。あれが間違いの始まり。》《このYouTuberくずれの言い分の根拠になっているのが腐った司法判断とそれを支持するマスゴミと左翼 左巻き達のブーメランは毎度のことだが今回はそのブーメランが選挙妨害という形で無関係な人達まで巻き込んでいる 安倍さんは言った『こんな人達に負けるわけにはいかないんです』 その声をアベガー達は無視し結果、自分達だけでなく選挙制度そのものを含めてこのYouTuberくずれに仕返しされている》と、一部理解を示し、件の北海道判決が問題であり、マスコミ・左翼がブーメランを受けたのだという指摘もされています。





5.表現の自由と選挙妨害の間


では、根本氏がいうように、音量の大小に関わらず、ヤジはヤジに過ぎないのか。

これについて、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は、「特定候補の演説場所で短時間主張する程度なら政治活動とみなす余地はあるが、複数の候補者に実施しており政治活動の範囲を超えている。警視庁は、選挙の公正を害する程度が大きいとみて捜索に踏み切ったのではないか」と、つばさの党が複数の候補者の演説場所でマイクで質問や主張を展開し、相手に抗議されても聞き入れなかった点がポイントだと指摘し、「候補者の行為のどこからが選挙妨害に当たるかの判断は難しく、警察が恣意的に判断すれば問題になる。例えば演説の妨害と判断する際には、音量の数値や、どこからどのくらいの時間実施したかなど、一定の基準を設けたほうがいいのではないか」と線引きすべきと提案しています。

4月19日、東京都の小池百合子知事は定例会見で、衆院東京15区補選で支援している無所属新人の街頭演説が、他陣営から妨げられたとして「これまでに経験したことがない選挙妨害が発生している。選挙のあり方について法律上見直していただきたい」と訴えていますけれども、政府では法改正の検討は始まっているようです。

5月13日、自民党の茂木幹事長は記者会見で今回の家宅捜査についての記者質問を受け、実効性のある対応を検討したいと述べています。件の会見でのやり取りは次の通りです。
TBSです。公選法について伺います。今日、警視庁は、政治団体「つばさの党」が、補欠選挙で他の候補者の街頭演説を妨害した疑いで、党の関係先に家宅捜索を行いました。政治団体に対する公選法の自由妨害の疑いでの家宅捜索は異例で、野党からは、法改正に向けた動きも出ています。今回の家宅捜索について幹事長の受け止めと、梶山代行は、今日の会見で罰則強化も含め、今後党として議論していきたいと仰っていましたけれども、自民党として、今後の法改正に向けた議論の持ち方など、この問題にどのように取り組むか、お考えを伺います。

Answer
まず、結論から申し上げると、是非この議論を進めて必要な法改正をやっていきたい、こんなふうに思っているところであります。民主主義の根幹をなす選挙において、街頭演説、これは候補者であったりとか、応援弁士であったりが有権者に直接訴えかける、こういう貴重な機会であります。先月の、ご指摘の衆議院の補欠選挙で、街頭演説をはじめ選挙運動に対して、これまで見たことがないような妨害行為が行われたということは極めて遺憾だと思っておりまして、捜査当局には、法と証拠に基づいて厳正に対処してもらいたいと思っております。

電話ボックスに登って大声を出したりとか、選挙カーのすぐそばで太鼓を叩いたり、明らかに異常だと、そういうふうに私は考えておりますし、これは選挙妨害以外の何物でもないと、少なくとも映像を見た感じにおいては、そういう印象を持っているところでありまして、今後、公正な選挙運動の機会を確保するために、わが党としても、罰則強化など、実効性ある対応、これをしっかりと検討していきたいと思います。
このように茂木幹事長は法改正に含みを持たせる発言を行いました。

また維新の会は、既に「自由妨害罪」にあたる行為を具体的に明記することなどを盛り込んだ公職選挙法の改正案を取りまとめ、国民民主党と共同提出に向けた協議を進めています。

一方、公明の山口那津男代表は官邸で記者団に「いきなり法改正というよりもまずは現行法を議論する」と現行法の解釈や運用を明確化して選挙妨害に対応すべきだとの考えを示し、共産党の小池晃書記局長は記者会見で「現行の公選法で厳格に対応し、言論の自由と選挙活動の自由を保障していく」と述べm維新案には「時の政権に盾突く言論の規制につながりかねない」と慎重姿勢です。

そして、立民はというと、選挙妨害に遭ったという泉健太代表は、国会内で記者団に、「選挙妨害の具体的な例示や、刑罰の度合いの検討といった改正の議論を党内で進めている……維新の考えと似たような中身だ」と述べたのですけれども、岡田克也幹事長は会見で「今の法律できちんとできるのであれば、あえて変える必要はないかもしれない」と述べるなど意見が割れています。

ともあれ、今回の問題は、件の北海道判決が遠因になっていると思いますけれども、判決との整合性を取るのであれば、何等かの形で明確な「表現の自由」と「選挙妨害」との線引きを明確にすべきではないかと思いますね。



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