イランとアメリカは秘密協議を行っていた

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2024-05-23-203100.jpg


1.ライシ大統領葬儀


5月22日、イランのライシ大統領らが死亡した墜落事故を受け、首都テヘランで大規模な葬儀が行われました。

葬儀には、シリアやイラクの首相など周辺国を中心に多くの国から要人が参列し、事故のあと、大統領の職務を代行しているモフベル第1副大統領らに出迎えられると哀悼の意を伝えていました。

葬儀には周辺国や友好国などから多くの要人が参列し、中国からは張国清副首相が、ロシアからはプーチン大統領の側近、ボロジン下院議長が参列。イランとしては、大統領と外相が事故で亡くなるという不測の事態に見舞われた中でも各国との外交関係に支障がないことをアピールした形です。

更に、参列者の中には、パレスチナのイスラム組織ハマスのハニーヤ最高幹部をはじめ、レバノンのシーア派組織ヒズボラや、イエメンの反政府勢力フーシ派など、イランが支援する武装組織の幹部らも含まれ、改めて結束を確認したものとみられています。

また、暫定大統領となったモフベル第1副大統領はロシア、トルコの首脳らと相次ぎ電話会談をしています。

5月20日、モフベル暫定大統領と電話会談を行ったロシアのプーチン大統領は「友好関係の発展に計り知れない貢献をし、信頼できるパートナーだったライシ師に感謝している」と述べ、両国関係のさらなる強化で一致したとロシア大統領府が発表しています。

モフベル暫定大統領は、5月20日から21日にかけ、トルコのエルドアン大統領やマレーシアのアンワル首相とも電話会談し、両氏からお悔やみの言葉を受けたと現地メディアが伝えています。


2.イランとアメリカが秘密協議を行っていた


5月22日のエントリー「ヘリ墜落で死亡したイラン大統領」で筆者は、事故に関連して、イランとアメリカとの間で外交メッセージのやり取りが交わされていたのではないかと述べましたけれども、

5月17日、アメリカのネットメディア「アクシオス」が、イランとアメリカが秘密協議を行っていたというスクープ記事を掲載しています。

件の記事の概要は次の通りです。
バイデン政権高官2人が今週、オマーンでイラン高官と地域攻撃をエスカレートさせない方法について間接的な会談を行った、と会談を知る2人の情報筋がAxiosに語った。

なぜそれが重要なのか: バイデン大統領の中東担当最高顧問であるブレット・マクガーク氏と、米国のイラン担当特使代理であるアブラム・パレイ氏が参加したこの協議は、オマーンで同様の交渉が行われた1月以来、米国とイランの間で初めて行われたものである。

・今回の協議は、イランが4月13日にイスラエルに対して前例のないミサイル攻撃を行ったちょうど1カ月後に行われた。

・この攻撃によって中東は地域戦争の危機に瀕した。

その背景には、イランが、イスラエルがレバノンとシリアでの軍事作戦を指揮するイラン軍クッズフォースのトップ、モハマド・レザ・ザヘディ准将を暗殺したことへの報復として、イスラエルに向けて350発の弾道ミサイルと無人機を発射したことがある。

・イラン国内からイスラエルへの直接攻撃が開始されたのはこれが初めてであった。

・ザヘディは、ダマスカスのイラン大使館近くの建物を標的としたイスラエルの空爆で死亡した。

イランの攻撃は、イスラエル、米国、英国、フランス、ヨルダン、サウジアラビアによる前例のない共同防空・ミサイル防衛活動によって撃退された。

・この攻撃の数日後、イスラエルはイラン空軍基地のS-300防空システムを標的攻撃で反撃した。

全体像:10月7日以降のバイデン政権の主要目標のひとつは、ガザ紛争が地域紛争に発展するのを防ぐことである。

・米国は、イランがこの地域の代理勢力に大きな影響力を持っていると考えている。

・これらにはレバノンのヒズボラ、米軍に対する攻撃を行ったシリアとイラクの親イランの民兵組織、紅海で船舶を攻撃しているイエメンのフーシ派などが含まれている。

舞台裏:情報筋によれば、マクガークとペイリーは火曜日にオマーンに到着し、オマーンの調停者と会談したという。

・誰がイランを代表して会談に臨んだかは不明である。

・情報筋によれば、会談の焦点は、イランとその代理人によるこの地域での行動の結果を明確にすることと、イランの核開発計画に関する米国の懸念について話し合うことだったという。

・イランの高官数人はここ数週間、イランが核兵器製造に向かう可能性をほのめかしていた。

彼らの発言:国務省のベダント・パテル副報道官は月曜日、バイデン政権は必要な場合にはイランと連絡を取る方法があると述べた。

・「バイデン政権は、イランが現在、実験可能な核兵器を製造するのに必要な重要な活動を行っていないと評価し続けている」とパテル氏は述べた

・さらにパテル氏は、イランの最高指導者が「イランが2003年末に中断または停止したと判断した兵器化プログラムを再開する」決定を下したとは米国は考えていないと付け加えた。

・ホワイトハウスと国務省は、オマーンでの会談についてのコメントを拒否した。
なんと、イランとアメリカがネタニヤフ排除で、極秘会談をしていたというのですね。

3.水面下交渉は停滞する


これについて、ロンドンに拠点を置き、中東で起こる事件をカバーしているオンライン・ニュース「ミドル・イースト・アイ(MEE)」は、5月21日、「ガザ戦争に関するイランと米国の秘密協議、ライシ氏の死で損なわれる」とする記事を掲載しています。

その概要は次の通りです。
・オマーンでの議論に近い関係者がMEEに語ったところによると、代表団はイスラエル戦争の終結とイスラエル政府の変革に対する共通の願望について話し合ったという。

・オマーンでのイランと米国の秘密協議は順調に進んでいたが、イランのエブラヒム・ライシ大統領と外相の急死により危機に瀕している。

・会談に近いイラン関係筋3人によると、ジョー・バイデン米大統領の中東上級顧問ブレット・マクガーク氏は今月初め、西側諸国との交渉におけるイランの要人アリ・バゲリ・カニ氏と間接交渉を行った。

・会談はマスカットで行われたが、ここは10年前、2015年のJCPOA(包括的共同行動計画)核合意につながるテヘランとワシントンの秘密会談が開催された場所だった。

・これらは1月以来、米国とイランの間での最初の協議となった。

・金曜日にアクシオスが最初に報じた会談に近い情報筋の1人は、ミドル・イースト・アイに対し、バゲリ・カニ氏とマクガーク氏の間の協議は順調に進んでおり、何らかの合意に近づいていると語った。

・バゲリ・カニ氏は当時外務副大臣だったが、日曜日にライシ外相を殺害したヘリコプター墜落事故でホセイン・アミール・アブドッラーヒアン氏が死亡したことを受けて、現在は外務大臣代行を務めている。

・会談は3つの主題に焦点を当てた。イスラエルの政権交代を求める共通の願望。イスラエルのガザ戦争を終わらせる。そして、紛争が地域の他の地域に拡大するのを防ぐ。

・イラン支配層に近いアナリストは、この会談が一方の米国と他方のイランとその同盟国との間で停戦を確立する手段としても機能したようだとMEEに示唆した。

「大統領と外務大臣が亡くなり、選挙も間近に迫っているため、交渉は遅れる可能性が高い」- イランのアナリスト

・10月7日のハマス主導によるイスラエルへの攻撃とそれに続くガザ戦争以来、イエメンのフーシ派(正式名称はアンサル・アッラー)などのイラン同盟国やイラクの準軍事組織は、同地域における米国の拠点への攻撃を仕掛けてきた。

・ダマスカスのイラン総領事館での共和国防衛隊司令官殺害に対抗してイランがイスラエルに大規模攻撃を行った4月にも、イランの無人機とミサイルが米軍によって撃墜された。

・同アナリストは、イランの核開発計画や石油制裁の緩和についても議論があった可能性があるとみている。

・イランが制裁緩和と引き換えに核開発計画を縮小する合意だった核合意は、トランプ政権が2018年に米国を一方的に離脱させたことで崩壊した。

・しかし昨年、米国とイラン政府は、米国が没収した石油収入60億ドルを引き渡すことを含む捕虜交換協定に達した。

・8月のその合意に至るまでの協議では、イランの核開発計画の抑制も提案されており、より広範なJCPOAではなく、より焦点を絞った協定を結ぶ余地があることを示唆している。

・関係者によると、マスカット会談が始まる前に、マクガーク氏はイラン国連特使のサイード・イラバニ氏と会談した。

・関係筋の1人によると、マクガーク氏は会談でバイデン氏が「イランは約束を守れないので、米国選挙が終わるまで核合意や包括的合意に向けてイランと交渉するつもりはない」と述べたと伝えた。

・マクガーク氏は、ドナルド・トランプ氏の落選後、ライシ政権が2022年にJCPOAを復活させることを拒否した際、バイデン氏が共和党から「多すぎる圧力と屈辱」にさらされたと訴えたと述べた。

・バイデン氏は「私の意見では、JCPOAは終わった。JCPOAを超え、地域問題もカバーする包括的な交渉であれば、選挙後に交渉するつもりだ」と語ったという。

・ミドル・イースト・アイは米国務省にコメントを求めた。

・米国とイランの別の会談がすぐに開催されることは期待されていない。

・ライシ氏の死後、イランは50日以内に大統領選挙を実施する必要があり、この不確実な時期に主要な外交政策の決定が下される可能性は低い。一方、11月には米国大統領選挙が予定されている。

・「この状況を考えると、米国との交渉は混乱し、停止することが予想される」と、かつて支配体制で働いていたアナリストはMEEに語った。

・「大統領も外相も亡くなり、間もなく選挙が予定されているため、交渉が選挙後まで延期されたのと同じように、交渉は選挙後まで延期される可能性が高い。2021年の大統領選で交渉が選挙後まで延期されたのと同様だ。」
ライシ大統領らの死亡で、イランとアメリカの水面下交渉は停滞するだろうと述べています。まぁ、交渉窓口がいきなり消えたのですから、当然といえば当然です。


4.ガンツが示した六つの課題


では、アメリカは本当にネタニヤフ排除を水面下で画策していたのかというと、そう思わせる動きをしています。

イスラエル戦時内閣に参加している野党「ナショナル・ユニティ」党首のベニー・ガンツ氏です。

ガンツ氏は、3月3日から3日間の日程で訪米しハリス副大統領やブリンケン国務長官らと協議を行っています。

ところが、この訪米が、ネタニヤフ政権内で波紋を呼びました。

3月3日、イスラエルの地元メディアは、ネタニヤフ首相はガンツ氏の訪米計画について把握しておらず、駐米イスラエル大使に対し、訪問の調整を行わないよう指示したと伝えたと報じています。

昨年12月25日のエントリー「ガザを包囲するイスラエルを包囲するアラブ」で取り上げましたけれども、ガンツ氏はイスラエルの世論調査で、ネタニヤフ首相よりも首相に相応しいとの結果になるほど、人気がある人物です。

アメリカは、ガンツ氏をイスラエル首相に挿げ替えることで、ガザ停戦に持っていきたいと考えている節があります。

5月18日、ガンツ氏は記者会見を行い、ネタニヤフ首相に対し、6つの国家的重要課題の達成につながる行動計画を策定するよう求めました。

その6つの課題とは次の通りです。
1)人質を帰還させる。
2)ハマスを壊滅し、ガザ地区を非武装化する。
3)米国、欧州、アラブ諸国、パレスチナによる民生統治機構を設置する。
4)9月1日までにイスラエル北部の住民を帰還させ、イスラエル南西部に位置するネゲブ砂漠の西側地域を復興させる。
5)「イランとその代理勢力に対抗する自由世界とアラブ世界との同盟関係」を構築する動きの一環として、サウジアラビアとの国交正常化を進める。
6)全てのイスラエル国民に国家奉仕を求める新しい統一モデルを採用する。
ガンツ氏は会見の中で、ハマスとの戦闘が継続する中で、「最近、何かがおかしくなっている。勝利を確実にするために不可欠なリーダーシップの決定がなされなかった。少数派がイスラエルの国家という船の司令塔を乗っ取り、岩に向かってかじを切っている」と、思いっきり、ネタニヤフ首相や極右政党の閣僚を批判しています。

その上で、ガンツ氏はネタニヤフ首相に対し、6月8日までに6つの国家的重要課題の達成につながる行動計画を策定し、戦争内閣の承認を得るよう求め、「イスラエルの安全保障でもっとも神聖な部分を、個人的・政治的思惑が侵食し始めた……ネタニヤフ氏が国を奈落の底に導く道を選ぶなら、我々は政権から離脱し、国民に問いかけ、真の勝利をもたらすことができる政府を樹立する……軍事作戦遂行の行き詰まりを、統一という名でごまかすことはできない」と述べ、ネタニヤフ首相が国益よりも個人的利益を優先する場合には、戦争内閣から離脱し、新政権樹立の準備をすると述べました。

新政権樹立の準備をする、とは政権打倒宣言そのものですし、アメリカがネタニヤフ排除を画策しているとしたら、ガンツ氏がその先兵となっていることは十分に考えられます。

ガンツ氏の発言に対し、イスラエル首相府は声明を発表し、「ベニー・ガンツ氏が提示した条件はきれいごとだ。戦争の終結とイスラエルの敗北、人質の大半を見捨て、ハマスを野放しにし、パレスチナ国家を樹立させることを意味しているのは明白だ……英雄的な兵士たちがラファでハマスの大隊を壊滅させるために戦っているのに、ガンツ氏はハマスに最後通牒を突きつけるのではなく、首相に最後通牒を突きつけることを選んだ」と非難しています。

また、極右の閣僚、イタマル・ベングビール国家安全保障相はガンツ氏について、「指導者としては小物だが、詐欺師としては大物だ。戦時内閣に加わった瞬間から内閣解体が主な狙いだった……政府の解散と引き換えに超正統派の徴兵に関する合意を持ちかけながら、今さら責任追及のスローガンを叫ぶような人間は誰であれ偽善者の嘘つきだ」と批判しています。


5.天候悪化は墜落後


これらを見ていくと、イスラエルには、イランのライシ大統領らを抹殺して、アメリカとイランの連携を断ち切ろうとする動機があることになります。

果たして、イスラエルに、事故と見せかけてライシ大統領らを殺害するだけの力があるのか。

5月21日、イラン大統領府のエスマイリ長官は21日、国営テレビの取材に対し、事故当時の状況について語りました。

そのポイントは次の通りです。
・飛行中、天候に異常はなく空気は澄んでいて、霧が立ちこめ天候が悪化したのは墜落後だった
・ヘリコプターは3機で、大統領の機体を間に挟む形で飛行していて、エスマイリ氏らは後ろのヘリコプターに乗っていた
・空気は澄んでいて、天候に異常はなかった。
・30分ほど飛行したところで、飛行ルートの谷間に雲が見られたため、大統領機の操縦士から高度を上げて雲を避けるよう連絡があり、そのおよそ30秒後に大統領機が見えなくなった。
・大統領機を探したものの見つからず、無線も途絶え、エスマイリ氏らのヘリコプターは銅鉱山に着陸した。
・エスマイリ氏らは大統領機に搭乗していた人たちに電話をかけ続け、アブドラヒアン外相などは連絡がつかなかったが、大統領機の操縦士の携帯電話につながった。
・電話に出たのは同乗していたイスラム法学者で「私は具合がよくない、谷に落ちてしまった」と答えた。何が起きたか分からず、木々の間にいると説明したほか、ほかの搭乗者の姿は見えないと話した。
・大統領機が見えなくなって1、2時間の間は天候は良好だったが、次第に曇ってきて雨が降り、霧が辺りを覆って、天候が一変した
・どうしてこのような天候でフライトが行われたのかたくさん聞かれた。私はフライトの基準が分からないが、自分の目で見たかぎり、当時の状況は普通だった
墜落当時の天候は良好だったとのことで、ルート上の雲を避けるよう指示があったあとすぐに大統領機が見えなくなったというのですね。天候も悪くないのに、そんなことがあるのか。エスマイリ長官の語った通りだったとすると、非常に不思議な状況だったように思います。

仮にイスラエルの介入だったとしても、どんな工作や仕掛けをすればこのようなことができるのか。まだまだ謎が隠されているかもしれませんね。



  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント