我慢の限界を迎える世界と暴走を続けるイスラエル

今日はこの話題です。
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1.イスラエル軍がラファ中心部に到達


5月28日、AFP通信は、パレスチナ自治区ガザ南部ラファの中心部にイスラエル軍の戦車が到達したと報じました。

それによると、28日には中心部でイスラエル軍とイスラム組織ハマス戦闘員による衝突があったとの住民の報告があり、当初は郊外にとどまっていたイスラエル軍の侵攻がラファ中心部に及んだことは確実なようです。

ガザの他地域で戦闘が起きている間、およそ100万人の避難民がラファに押し寄せ、ラファの人口が約140万人に膨れ上がっています。イスラエルは民間人の犠牲を抑えながらラファに侵攻するとしていますけれども、アメリカや他の同盟国は犠牲者が大量に出ることを恐れ、イスラエルに攻撃計画を中止するか、大幅に縮小するよう求めています。

国際司法裁判所(ICJ)が24日、ラファでの軍事活動を即停止するよう命じたことや、国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官が、ネタニヤフ首相とガラント国防相、ハマス指導者の逮捕状を請求したことは既に別エントリーで触れましたけれども、イスラエルがどんなに民間人の犠牲を抑えながら侵攻するといったところで、失われた人命は帰ってきませんし、我慢の限界を超えたからこそ、これほど世界中から批判を浴びているわけです。




2.レッドラインは超えていない


ただ、その我慢の限界ラインは国によって違います。

5月8日、アメリカのバイデン大統領は、CNNのインタビューで、イスラエルのネタニヤフ首相に対し、「もし彼らがラファに侵攻するなら、私はラファや都市、その問題に対処するために歴史的に使用されてきた武器を供給しない」と明言したと述べ、当時は、イスラエルがまだラファの「人口密集地に侵入」しておらず、その作戦が「国境のすぐ近く」で行われていたため、その時点で武器の供給を停止していなかったとしていました。

では、28日にイスラエル軍がガザ中心部に到達したと報じられた今はどうなのか。

アメリカのジョン・カービー報道官は、今回の攻撃がバイデン大統領が以前に設定した制限に違反したかどうかと問われると、「政策変更について話すことはない……我々はラファでの大規模な地上作戦を支持しないし、今後も支持しない……大統領は、もしそうなった場合、支援に関して異なる決断をしなくてはならないかもしれないと述べた……現時点では、そのようなことは起きていない。彼らがラファに激突するのを見たことはない……彼らが大規模な部隊、多数の兵士を率いて縦列や隊形を作り、地上の複数の標的に対して何らかの協調行動をとるのを見たことはない」と、イスラエルのラファでの行動がアメリカの政策変更を引き起こす可能性のある「大規模な地上作戦」に相当するとは考えていないとコメントしています。

カービー報道官はまた、5月26日に少なくとも45人のパレスチナ人が死亡したイスラエルの攻撃とそれに伴う火災についても記者団に質問されています。彼らの多くは避難民キャンプに避難していた女性、子ども、高齢者だったのですけれども、カービー報道官は、攻撃後の映像を「悲痛」かつ「恐ろしい」ものだと述べ、「この紛争の結果、ここで罪のない命が失われるべきではない」と述べています。

一方、1月にガザを訪問した民主党のクリス・ヴァン・ホーレン上院議員はワシントン・ポスト紙に対し、「民間人の死者数の増加と人道的惨事の深刻化は、ラファフや緊急人道支援を含む大統領の要請がすべて尊重されるとわかるまで、バイデン政権はネタニヤフ政権への追加的な攻撃的軍事支援を一時停止すべきであることを明確にしている」と述べていますけれども、ならば、レッドラインを超えた超えてないで言い訳していないで、即刻軍事支援を停止すべきだと思います。

奇しくもこれと同じ28日、スペイン、アイルランド、ノルウェーの欧州3ヶ国はパレスチナを国家としてそれぞれ正式に承認しました。

スペインのサンチェス首相はテレビ演説でイスラエルは引き続き友好国だと主張するも、「イスラエルとパレスチナの和平促進が唯一の狙いだ」として、イスラエルが勝利した第3次中東戦争(1967年)前の境界に基づくパレスチナとの国境画定を支持するとも強調しました。

アイルランドのハリス首相は「平和の奇跡を生き永らえさせるため」この決断をしたと発表。イスラエルのネタニヤフ首相に対し、「世界の声に耳を傾け、我々がガザで目の当たりにしている人道的大惨事を止めるよう、再び求める」と強調しました。またアイルランドのマーティン外相は「パレスチナの国家承認が反イスラエル的だという非難は馬鹿げている」とも指摘しています。

これに対してイスラエルは猛反発。イスラエルのカッツ外相はこの3ヶ国の大使の即時召還を命じ、「イスラエルの主権を踏みにじり、安全を脅かす者たちに対してイスラエルが退くことはない」と反論しています。

スペイン、アイルランド、ノルウェーは自身のレッドラインを超えたと判断したが故の行動とみてよいのではないかと思います。


3.パレスチナ国家承認の用意ある


パレスチナの国家承認とはいっても、今のところ、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本のG7はいずれも正式承認していません。

ただ、28日、フランスのマクロン大統領は国賓として訪問しているドイツでショルツ独首相と会談。共同記者会見では、イスラエル軍が攻撃するファの状況について「恐ろしい」と指摘し、イスラエルに作戦停止を求めた上で、パレスチナの国家承認について、「フランスにタブーはない……国家承認する用意は完全にできている」と表明しました。ただ、その一方で、国家承認は「感情に左右された決定であってはいけない」として、国家承認の時期については明言を避けています。

どこか、やるやる詐欺っぽい発言にも聞こえなくありませんけれども、似たことはイギリスもやっています。

今年1月、イギリスのデイビッド・キャメロン外相はロンドンで開かれたアラブ外交官向けのレセプションで、ガザでの停戦、ハマスに拘束されているイスラエル人人質の解放、そしてパレスチナ国民に二国家解決に向けた「政治的展望」を与えるよう求めています。

キャメロン外相は「パレスチナ国家がどのようなものになるのか、何から成り立つのか、どのように機能するのかを我々は示し始めるべきだという責任を我々は負っている……そうなれば、我々は同盟国とともに、国連を含め、パレスチナ国家承認の問題を検討することになるだろう。これが、このプロセスを不可逆的なものにするのに役立つことの一つになるかもしれない」と語りました。

実は2014年10月、イギリス下院はイギリス政府に対し、イスラエルとともにパレスチナを国家として承認するという決議を行い、賛成274反対12の大差で可決しています。

けれども、当時首相だったキャメロン氏はそうしませんでした。

一体何がキャメロン氏を変えたのか分かりませんけれども、あるいは、ここまで言わせる程に、情勢が急激に変化しているということなのかもしれません。


4.EU外相会合で対イスラエル制裁を協議


イスラエルへの圧力はそれだけでありません。

5月27日にブリュッセルで開催された欧州連合(EU)の外相会合で、イスラエルが国際司法裁判所(ICJ)の命令に従わない場合の制裁措置が協議されました。

これについて、会合後の記者会見でアイルランドのマーティン外相は「ICJや国際刑事裁判所(ICC)のような国際人道、法機関を支持する必要があるという、非常にはっきりとした合意があった」と述べました。

マーティン外相は、イスラエルがこの命令に従い、ラファの検問所を再開して作戦を停止するべきだと強調。結論のひとつは、イスラエルとの間で会合を開いて重大な懸念を伝え、ICJ命令についての回答を求めることだとしています。

また、イスラエルが命令に従わない場合の対応をめぐっては、EUの内部で制裁を主張する意見と、欧州評議会での合意が必要とする意見が分かれていることも認めていますけれども、その対立意見でさえも「欧州評議会での合意が必要」なのですから、制裁そのものが不要だという制裁反対論が出た訳ではないようです。

その意味では、国際司法裁判所(ICJ)や国際刑事裁判所(ICC)の決定は、EU各国に大きな影響力を与えているといってよいかもしれません。

とすると、イスラエルが国際司法裁判所(ICJ)や国際刑事裁判所(ICC)の決定を無視してラファへの攻撃を続けたことは、はっきりと悪手であって、自ら国際的孤立を招き、自分の首を絞めているといえるのかもしれません。

今はまだG7はパレスチナ国家を正式承認していませんけれども、フランスやイギリスの動きをみると、いつ承認されてもおかしくなくなりつつあります。G7までパレスチナ国家を承認することになれば、それを認めず侵攻を続けるイスラエルはもうほとんど世界を敵に回すことになります。

イスラエルは、どこまでやり続けるのでしょうか。



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