

1.有罪評決に打ちのめされたトランプ
5月30日、アメリカのトランプ前大統領は、2016年の大統領選前、不倫話を有権者から隠すために支払った口止め料13万ドル(約2千万円)の会計処理を巡り、業務記録改竄罪に問われた裁判で、ニューヨーク州の裁判所の陪審員は、大統領経験者としては初めてとなる有罪の評決を下しました。
ニューヨーク市民12人で構成された陪審は5月29日から有罪か無罪かを話し合う非公開の評議を続け、2日目の30日に評決を行いました。全員の意見が一致し、不倫相手への口止め料支払いに絡んで業務記録を改竄した州法違反34件の罪状すべてを有罪としました。ただ、陪審は評決の理由を明らかにしていません。
裁判所で評決に立ち会い、検察側の前から2列目の傍聴席に座ったベテラン法廷画家のクリスティーン・コーネル氏は、アメリカ・ニュースサイト「ビジネス・インサイダー」の取材に対し、評決の瞬間の様子を次のようにのべています。
・目の前には、事件の捜査を指揮したアルビン・ブラッグ地区検事がいた。評決のときには意気消沈したように見えたというトランプ前大統領ですけれども、翌31日のニューヨーク市内での演説で、13万ドルの支払いは「秘密保持契約」で「完全に合法」と主張し、控訴するとした上で、有罪評決を「子供じみた悪ふざけだ」と切って捨てました。
・トランプ氏は5件目の罪状で「有罪」を言い渡されると、頭を振り始めた。
・そして、34件の罪状全てで有罪評決を受けると、意気消沈しているように見えた。
・退廷する際、「彼は私のそばを通り過ぎた……彼は絶望的な様子だった」。
ただ、裁判で、自ら無実を訴える機会を保障されていたものの、証言しなかったことについては「少しでも間違いを述べれば、偽証罪に問われる恐れがあった」と語っています。
共和党内ではトランプ前大統領に同調する意見が相次ぎ、共和党の議会上院トップ、マコーネル院内総務はSNSに「このような起訴はそもそもなされるべきではなかった。控訴審で有罪が覆ることを期待している」と投稿。連邦議会の指導部でも、上下両院それぞれのトップ3がいずれも「民主党が政敵に対して司法制度を武器にした」などとトランプ前大統領の主張に同調しています。
確かに、量刑を決める審理は7月11日に開かれる予定で、この日は共和党が大統領選挙候補者指名を行う全国党大会開幕の4日前であることを考えると、司法制度を武器にしているという批判も、共和党の立場からみれば分からないでもありません。
2.トランプはなぜ無罪を勝ち取れなかったのか
今回、トランプ前大統領はなぜ無罪を勝ち取れなかったのか。
これについて、BBCは、複数の弁護士や元検察官への取材をもとに次のように解説しています。
・この裁判で弁護側が抱えていた最大の問題は、依頼人だ。ドナルド・トランプが依頼人だったトランプ前大統領側の弁護方針の不徹底とリベラル寄りの司法管轄区でリベラルに有利な陪審員を選んだことが敗因だというのですね。この記事を見る限り、トランプ前大統領はどこまで本気で勝ちにいっていたのか少し疑問を感じます。
・トランプ前大統領を有罪とするには、(1) 彼が業務記録を改ざんし、(2) その目的は別の犯罪を隠すもしくは犯すことだった――と、陪審団を確信させる必要があった。
・マンハッタン地検が描いた事件の構図は、「大統領になる前のトランプ氏の承認を得て、当時の顧問弁護士マイケル・コーエン氏がポルノ映画スターのストーミー・ダニエルズ氏に13万ドルを支払った。二人にあったとされる性的関係についての口止め料だった。二人の関係をダニエルズ氏が口外して、2016年大統領選挙の選挙活動を邪魔したりすることのないようにするための支払いだった。トランプ氏は後に13万ドルをコーエン氏に弁済した際、口止め料だったことを隠すため、業務記録の改竄という詐欺の仕組みを承認した」というものだ。
・検察はそうすることでトランプ前大統領は選挙規則に違反した、これは「純粋かつ単純な、選挙詐欺」だったと主張した。
・検察は裁判で、証人を20人近く呼び、多くの重要書類を提出した。その中には、トランプ前大統領の署名が入ったコーエン氏あての小切手もあった。
・トランプ前大統領は、業務記録の改ざんをめぐる34件の罪状について無罪を主張した。しかし、弁護側は陪審員が納得できるようなストーリーを持ち合わせていなかった
・弁護側は、検察の主張に反証する必要はなかった。しかし例えば、前大統領がなぜコーエン氏に払い戻しをしたのか、その背景としてもっともらしい理由を陪審員に提示できていれば、弁護の役に立ったはずだ。
・トランプ前大統領側のトッド・ブランチ弁護士は最終弁論で、改竄された文書について従来と違う説明をした。金銭の支払いは、コーエン氏が2017年に行った実務への報酬であって、弁護士費用として計上したのは不正ではないと主張した。
・弁護側はまた、トランプ前大統領がダニエルズ氏に金銭を支払ったのは家族を守るためだけで、有権者を欺くためではなかったと主張した。しかし、その言い分をさらに発展させて構築しなかった。
・弁護チームは、特定の弁護方針を選ばなかった。合理的に選べたはずの方針はどれも、ドナルド・トランプが選べなくしてしまったからだ。弁護側はあれこれ目くらましをまき散らすことで、陪審員を混乱させようとした。
・検察が綿密な資料を使って業務記録の改竄を明らかにしたものの、重要な第二の犯罪を実行するもしくは隠蔽する意図が実際に、トランプ前大統領にあったと立証する証拠はないに等しかった。
・トランプ前大統領のチームは、検察側のこの弱点を突くことに注力しなかった。ブランチ弁護士が最終弁論で、陪審員らに対し、合理的な疑いを抱く理由を列挙しただけだった。弁護側はそれよりも、事件の中心的な出来事は実際には起こらなかったか、目撃者が嘘をついたという主張に力を入れた。
・しかし陪審員らは、弁護団のその主張は信用できないと、その後の証拠や証言から判断した可能性がある。
・もっと効果的な弁護としては「議論のため、これらすべてがあったと仮定しよう。セックスがあり、口止め料があり、トランプはそれを知っていた。いいだろう。だがそれが罪状ではない。トランプの実際の意図と認識を示す証拠は、何があるのか? そこがこの事件で足りないところだ」とする方法あり得た。
・トランプ前大統領側のスーザン・ネクレス弁護士は、ダニエルズ氏への反対尋問で、氏を身の上話で金と名声を手に入れようとしている嘘つきだと印象づけようとした。
・特定の人物をうそつきに仕立て上げろと、依頼人から大きな圧力があった可能性が高い。まったく意外ではない。それは必ずしも最善の弁護戦略ではない。勝つのに、ストーミー・ダニエルズが嘘つきである必要はなかった。
・弁護側の最大の勝機は、検察の最重要証人だったコーエン氏の信用を失墜させることにあった。
・コーエン氏は確かに、多くの攻撃材料を長年にわたって自ら作り出してきた。議会での偽証など、犯罪行為について有罪を認めた。元上司を公の場で繰り返し攻撃した。法廷で偽証した疑いも浮上した。
・ブランチ弁護士はこれらの点を攻撃。最終弁論ではコーエン氏を「GLOAT(史上最大のうそつき=Greatest Liar of All Tim=Greatest Liar of All Time)」と呼んだ。
・ブランチ弁護士は公判で、コーエン氏が2016年10月24日に口止め料について前大統領に電話したという、コーエン氏の証言に重大な疑念を投げかけた。トランプ前大統領は当時、ボディガードの電話を使っていた。
・これは弁護側にとって大きな得点だ。コーエン氏が真っ赤な嘘をついたか、記憶違いをしたと決定的に示す可能性があったからだ
・だが、弁護側はいくつかの失敗もした。
・コーエン氏に対するブランチ弁護士の最初の実質的な質問は、挑発的なものだった。TikTokで自分の悪口を言っただろうと、その文言を具体的に示しながら問い詰めた。コーエン氏は落ち着いて、「私が言いそうなことではある」と答えた。
・これを受けてホアン・マーシャン裁判長は、ブランチ弁護士を近くに呼び、「なぜ自分をこの場の主人公にしようとするのか」と諭した。あれは驚くほどひどい瞬間だった……真昼の決闘で、彼は惨敗した。
・弁護側がコーエン氏の主張を崩すため、実質的な証人として呼んだのは、ロバート・コステロ弁護士一人だけだった。
・ただ、コステロ氏の証言内容は、本人の電子メールと矛盾していた。そして、コステロ氏の証人席での態度に激怒したマーシャン判事が、法廷を空にしてから、コステロ氏を叱責するという、異例の混乱も生じた。
・しかし、弁護側にできたことはたくさんあったと、どの弁護士も考えているわけではない。2021年までマンハッタン地検で幹部検事だったキャレン・アグニフィロ氏は「弁護側に何かミスがあったとは思わない……これはこういう形になる事件だった」と、話した
・トランプ前大統領と犯罪を結びつける証拠は強力だったと、他の人たちも言った。これよりはるかに弱い証拠で有罪になる人もいる。
・一方で、検察の法的手腕が勝因だったと、法曹関係者の意見が一致しているわけでもない。今回の裁判では選挙詐欺の側面は政治的効果のために誇張されていたとみている。そして、重罪での起訴に値する根本的な犯罪は、ついに明確にされなかった。
・検察の勝利は突き詰めれば、リベラル寄りの司法管轄区で裁判を起こしたことと、有利な陪審員を選んだことが理由だ。「トランプの過ちは、マンハッタンで犯罪『ぽい』まねをしたことだ。
3.塀の中から選挙運動
では、今後、トランプ前大統領の選挙運動はどうなるのか。
アメリカでは、そもそも刑事事件の被告が選挙に立候補することを禁止する法律はありません。1920年の大統領選で服役中の社会主義者が立候補した例もあり、法的にはトランプ前大統領は今後も選挙運動を続けることが可能です。当選しても、大統領就任を阻む規定もなく、被告のまま大統領にもなれてしまいます。
こうしたことから、トランプ前大統領は有罪評決を逆手にとって「政治的な魔女狩りだ」「不当な裁判で、選挙干渉だ」との訴えを強めるという観測もあるようです。
無論、今回の有罪評決はトランプ前大統領にとって打撃になる可能性はあります。というのも、大統領選では、スイングステートを始めとする接戦州での得票が数万票違うだけで勝敗を大きく左右するからです。
アメリカ・キニピアック大による直近の調査では、無党派層の23%、トランプ氏支持者の6%が有罪ならトランプ氏に投票する可能性が低くなると答えています。
一方、公共ラジオNPRなどの5月下旬の世論調査では、勝敗のカギを握る無党派層の15%が「投票の可能性が増す」と答え、「減る」(11%)より多くなっています。
こうしたことから、裁判を「政治的な迫害」と位置づけるトランプ前大統領の訴えは有権者に一定程度響き、「有罪なのに票が増える」という奇妙な結果になる可能性も指摘されています。
量刑を決める審理は7月11日に行われますけれども、仮に実刑になった場合、トランプ前大統領が控訴したとしても、保釈継続が認められずに勾留される可能性もあります。畢竟、選挙集会や資金集めパーティーは開けなくなり、ソーシャルメディアの発信も規制されます。無論、共和党の候補指名を受ける予定の7月15~18日の党全国大会にも出席できなくなります。
もっとも、法律家の間では、トランプ前大統領は前科がなく実刑になる可能性は低いとの見方が強いようです。
また、罰金刑のほか、自宅軟禁や保護観察の処分を受けるケースもあり得るそうで、たとえ刑事施設に勾留されなくても、移動が制限されれば、選挙運動に支障が出ることは避けられません。
量刑判断を担当するマーチャン判事は、「トランプ氏は大統領候補であり、憲法修正1条の権利(言論の自由)は極めて重要だ」と、トランプ前大統領の言動を制約することには慎重の立場をとっています。
実際、トランプ前大統領はこれまで裁判関係者への批判や中傷を禁じた「緘口令」に度々違反したきたのですけれども、マーチャン判事は収監を避けて罰金にとどめてきた経緯があります。
4.これは素晴らしいニュースだ
評決が下された翌31日、トランプ前大統領陣営は3480万ドル(約54億7000万円)の寄付金が集まったと発表しました。
陣営によると、この金額は共和党の献金プラットフォーム「ウィンレッド」で過去最高を記録した日の2倍近くに相当するそうで、「ウィンレッド」は30日、アクセスが集中したため断続的に停止したとしています。
トランプ陣営は声明で、「この金額が歴史的な額であるだけでなく、昨日の寄付者の29.7%はウィンレッドプラットフォームで初めて寄付する人たちだった。トランプ大統領と陣営は、国中の愛国者から殺到する支援にとても感謝している……トランプ大統領は国家を救うために戦っており、11月5日は米国民が真の評決を下す日になる」と述べています。
こうしたことをみると、トランプ前大統領はこうなることを予測して、無理に勝ちにいかなかったのではないかとさえ勘ぐってしまいたくなります。
実際ネットでは、これはすべてのUSと地球にとって素晴らしいニュースだとして次の10の指摘をする書き込みもあります。
1) トランプ大統領の勝利は確定した。
2) ブッシュ、クリントン、オバマ逮捕の前例ができた。
3) 控訴で判決が覆ることは確実。
4) 司法省の徹底的な腐敗が暴露される。
5) 米国最高裁判所は「事件」の緊急審査を実施し、判決を下すことを余儀なくされる。
6) 最高裁判所は「捕らわれた」存在であり、法律を遵守するか、憲法への宣誓に違反したとしてUCMJ反逆罪裁判に個別に直面するかを完全に理解している。
7) 民間の立派な法廷は、どれだけプロパガンダを使っても、UCMJで保護された最高司令官を無視することはできない。
8) CICトランプは手が付けられない。彼はただ沼のネズミたちを最後の安息の地へと導いているだけだ。
9) ブランソン事件の判決は、2021年1月6日に下院議員と上院議員の大半が宣誓を破り、調査もせずに2020年の選挙を違憲的に認定した罪で彼らを抹殺するために使用できる、いわゆる核兵器のままだ。
10) @ realDonaldTrumpはすべてのカードを握っている。彼がすべてを勝ち取るのを見よう!
選挙妨害は #反逆罪 だ。有罪判決を受けた者は全員、個人、家族、企業の資産をすべて米国財務省に没収されなければならない。
Sentencing set 4 days before the RNC Convention to nominate Trump. This is all GREAT NEWS for 🇺🇸 & 🌎.
— Rob Cunningham | KUWL.show (@KuwlShow) May 30, 2024
1) Trump Presidential victory sealed.
2) Precedent now set for Bush, Clinton, Obama arrests.
3) Overturn on Appeal guaranteed.
4) Top-to-Bottom DOJ Corruption exposed.
5)… pic.twitter.com/nOtrlGEa5i
5.韓国化するアメリカ
5月31日、隔週刊誌「ニューヨーク・マガジン/intelligencer」は「検察はトランプを捕まえた - だが彼らは法律を歪めた」という記事を掲載しています。
件の記事の概要は次の通りです。
初めて陪審員の評決を受けたとき、私は気を失いそうになった。私は29歳の新米検事で、数日前に初めての最終弁論を行ったばかりだった。それ以来、裁判チームと私は、陪審員たちが審議している間、証言や法的指示を求めるメモが時折挟まれるだけで、時間をつぶしていた。突然、裁判所書記官から連絡が入った: 評決が出た。記事では、トランプ前大統領を重罪にするために、微罪を積み重ねて特注品の罪を作り上げたというのですね。この通りであればとんでもないことです。
言っておくが、人生で評決が出たときほどアドレナリンが爆発することはない。すべての刑事裁判を締めくくる難解で劇的な儀式を行いながら、私はなんとか(かろうじて)持ちこたえた。裁判官が弁護士と被告人を法廷に戻し、警備員が所定の位置につき、陪審員が厳粛に入廷し、裁判官が尋ねる: 皆さん、評決に達しましたか」(うーん、はい、裁判長、だから私たちは全員ここに戻ってきたのです)。陪審員が席に戻る間、私は検察側の席に立ち、めまいを感じ、腕で体を支えた。
陪審員が評決を読み上げる数分前、私の上司(白髪交じりの裁判長で、そのぶっとんだ最終弁論で知られている)が身を乗り出してきて、私に囁いた: 「彼らが何を言おうと、何も反応するな。彼らが何を言おうと、何も反応するな。その最後の命令がなかったら、私はどうなっていたかわからない。たぶん、どちらにしても反応しないくらいの分別はあっただろうが、よくわからない。陪審員団が所見を読み上げたとき--私は恐ろしくなったが、第1審の「無罪」から始まり、有罪判決が相次いだ--私は微動だにせず、息もせず、瞬きもしなかった。
その日、そして検事としてのキャリアを通じて私が学んだ教訓は、陪審員の評決は神聖なものであるということである。有罪判決が下ったとしても、私たち検事は拳を突き上げて朗らかに祝ったりはしない。私たちに不利な評決が出ても、すねたりはしない。負けたときは、立ち向かって受け止める。感情的な反応は、いずれにせよ、裁判官や陪審員、そして最も重要なことだが、自由を奪われようとしている人を軽んじることになる。検察官は、陪審員が何と言おうと、夕食に行き、家で寝ることができる。被告はそうではないかもしれない。
妥当な尺度で考えれば、昨日ドナルド・トランプ前大統領を34の罪状すべてで有罪としたマンハッタン市民の陪審員は、その職務を全うし、よくやり遂げた。
陪審員選任の際、フアン・メルチャン判事が基本的に陪審員をやりたくないという陪審員候補にドアから出て行くことを許可したところ、集まった陪審員の半数以上がまっすぐ出口に向かった。陪審員たちは6週間にわたる証言に耳を傾け、裁判の間中、誰の目から見ても注意深く、審議中も裁判官に対して的確で洞察に満ちた質問をした。彼らは証拠を見たが、私たちは見ていない。私のように証言の一行一行を追いかけた者も含め、私たちの殆どはそうだ。陪審員たちは、検察側が合理的な疑いを超えて立証責任を果たしたと判断した。陪審員の仕事とその評決は尊敬に値する。
しかし、だからといってマンハッタン地方検事の事件をめぐる構造的な欠陥がすべて蒸発したわけではない。陪審員は仕事をしたのであり、この事件は構想倒れで不当な混乱だったのだ。確かに勝利は偉大な消臭剤だが、有罪評決がすべてを純粋で正しいものにするわけではない。多くの検察官が、そもそも起こすべきでなかった事件で有罪判決を勝ち取ってきた。どんな手を使ってでも「今、勝つ」ことが目的であり、事件の信憑性や後々の影響を心配するのでなければ、「でも勝った」というのは、窮屈で錯綜したリーチに対する弁護にはならない。
以下はすべて否定できない事実である。
35ドルという微々たる金額だが、ニューヨークの判事が政治献金をすることを禁止する規則に明白に違反した。もし判事が 「ドナルド・トランプ再選、永遠にMAGA!」のために2、3ドル寄付していたら、人々は判事を続投させてもよかったのだろうか?とんでもない。
アルビン・ブラッグ地方検事は、圧倒的に民主党が多い郡で、トランプ狩りの手腕を誇示して立候補した。彼は選挙戦で、「私がトランプを100回以上訴えたのは事実だ 」と奇妙な(そして虚偽の)自慢をした。(情報開示:ブラッグもトランプの主任弁護士トッド・ブランチも、ニューヨーク南部地区における私の友人であり元同僚である)
最も重要なのは、トランプに対する検察の告発が、法律と適正手続きの外枠を押し広げていることだ。それは陪審員の責任ではない。それは、この事件を起訴することを選択した検察官と、この事件をそのまま放置した裁判官の責任なのだ。
地検の報道部やその広報担当者は、業務記録改竄の罪は「ありふれたもの」であり、実際、同事務所の「糧」であるとよく公言する。それは、意味のないほど広範な定義づけをした場合にのみ言えることだ。もちろん、検察は改竄を頻繁に告発している。事実上、どんな詐欺事件にも何らかの偽造文書が含まれている。
しかし、意味のある検索パラメータを課せば、真実が浮かび上がってくる: トランプに対する容疑は不明瞭で、ほとんど前例がない。実際、ニューヨーク州でもワイオミング州でも、あるいはどこの州でも、連邦選挙法を直接の、あるいは前提となる州犯罪として告発した州検察官はいない。皆無だ。一度もだ。選挙法という特殊な問題はさておき、マンハッタン検事自体が、業務記録の改竄を唯一の罪状とするような事件を起こすことは殆どない。
改竄罪だけでは、ニューヨーク州法では単なる軽犯罪にすぎない。第一に、軽犯罪など誰も気にしておらず、ボデガでスナップルとチートスを万引きするのと同じ技術的な犯罪分類に入る些細な犯罪で、元大統領を初めて起訴するのは笑止千万である。第二に、軽犯罪の時効(2年)は、2016年と2017年のトランプ大統領の行為についてはとっくに切れている可能性が高い。
そこで検察は、罪状を最低レベルの重罪(A級からE級まである)にまで膨らませ、より長い重罪の時効内に電気ショックで生き返らせるために、業務記録の改竄が 「別の犯罪を犯す意図で 」行われたと主張した。検察によれば、この「別の犯罪」とはニューヨーク州の選挙法違反であり、連邦選挙運動犯罪、租税犯罪、さらに書類の改竄という3つの「違法な手段」が含まれている。不可解なことに、検察は最終弁論直前まで、これらの違法な手段が実際にどのようなものであるかを明示することを拒否し、裁判官もそれを強制することを拒否した。裁判に先立ち、被告人に対する告発を被告人に通知する憲法上の義務は、これくらいにしておこう。(起訴はそのためにあるのだ)。
このような重要な点で、トランプ氏に対する告発は単に異例というだけではない。他の誰でもない、前大統領のために個別に作られたような特注品なのだ。
マンハッタン検事局の職員は、その奇妙な起訴の仕組みなど、さまざまな法的不備から、この事件を「ゾンビ事件」と呼んでいるという。しかし、これは「フランケンシュタイン事件」と呼んだ方がしっくりくる。不釣り合いな部品を寄せ集めて、醜く、不格好だが、一応は機能する仕掛けにしたもので、最終的には作り手に牙をむくかもしれない。
トランプは当然の権利として控訴するだろうし、検察が作り上げた独創的な容疑に異議を唱えるに違いない。ニューヨーク州法は、そのような策略を許す(可能性がある)ほど広範で曖昧なものである。
「法の上に立つ者はいない」。陳腐な言葉になってしまったが、これは重要なポイントであり、この基本原則の重要性について一度立ち止まって考えてみる価値はある。しかし、そのために通常の手続きや原則から逸脱することを疑うことなく容認(あるいはもっと悪いことに、祝福)するのであれば、それは無意味な戯言でもある。私が昔学んだように、陪審員の言葉は確かに神聖である。しかし、それ以前のすべてを修正することはできない。しかし、検察は獲物を捕らえるために、前例のない方法で法律を歪めたのである。
けれども、これは裏を返せば、前述のネットの書き込みにもあるように、同じやり方で「ブッシュ、クリントン、オバマ逮捕」することが可能になることも意味します。
下手をすれば、韓国のように、大統領経験者らによる報復合戦にもなりかねません。自由と民主が建前のアメリカがそうなる姿なんてみたくありませんけれども、ここらで自由とは何かについてもう一度深く考えるべき時が来ているのではないかと思いますね。
トランプ大統領茶番裁判で有罪になった後、会見を開きバイデン政権を断罪。… pic.twitter.com/6tI7HVhbGY
— トッポ (@w2skwn3) May 31, 2024
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