丸呑みした政治資金規制法修正案と内閣支持率

今日はこの話題です。
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1.踏み込んだ修正案


6月3日、政治資金規正法の改正をめぐり、自民党は公明党と日本維新の会の主張を踏まえた修正案を国会に提出しました。

自民党がまとめた政治資金規正法の改正案は、議員本人への罰則を強化する、いわゆる「連座制」の導入が柱の一つとなっています。

法案では、「連座制」として「議員に収支報告書の『確認書』の作成を義務づけ、会計責任者が不記載や虚偽記載で処罰された場合、議員が『確認書』を作成していなかったり、内容を確かめずに作成したりしていれば、50万円以下の罰金を科し公民権を停止するとしています。

また、「収支報告書に不記載などがあった場合、相当する額を国に寄付できるようにする」とし、政治資金の透明性を向上させる方策として、
「外部監査を強化し、議員の政治団体の支出だけでなく収入も監査の対象に含めること」、「議員に収支報告書のオンライン提出を義務づけること」が盛り込まれています。

そして、パーティー券の購入者を公開する基準額については、当初は現在の「20万円を超える」から「10万円を超える」にするとしていたのを、公明党の主張を飲んで、法律の施行から1年後に「5万円を超える」に引き下げると修正。パーティー券の現金での販売を禁止し、代金は口座振り込みにするとしています。

更に、党から議員に支給される『政策活動費』については、50万円を超える支給を受けた議員が使いみちを項目ごとの金額で党に報告し、党が収支報告書に記載するとしていたのに加え、今回の修正で、支出した年月を開示することも盛り込み、透明性を確保するため、独立性のある第三者機関を設置することも追加しています。

一方、日本維新の会の、1年間ごとの支出の上限金額を定めたうえで領収書などを含む支出の状況を10年後に公開する案も取り入れ、「国会議員の政治団体の会計処理をめぐっては、議員側から年間で1000万円以上の資金を後援会など別の政治団体に移した場合、支出の公開基準を国会議員の団体と同様に厳格にする」としています。

更に、国民民主党の主張を踏まえ、「議員に規正法違反などがあった場合に政党交付金の一部の交付を停止する制度を創設する」ことも加えました。

また、「外国人などによるパーティー券購入に関する規制」「個人献金を促進するための税制優遇措置」「議員自身が代表を務める政党支部に寄付した場合は、税制優遇措置の対象から外れることについて検討し、必要な措置を講じること」も盛り込んでいます。

法案は一部の規定を除いて再来年1月1日から施行し、修正で法律の施行から3年を目途に見直す規定も追加しています。

日本維新の会はこの案について、「自民党の修正案では『政策活動費』の領収書の公開が50万円を超える支給を受けた場合に限られるとしてすべての領収書を公開の対象にすること」「『政策活動費』を旅費や交通費として使った場合に領収書が公開されるよう明確にすること」「10年後の公開に向けて領収書を保管するための規定を新たに加えること」の3点の修正を求めているのですけれども、自民党の茂木幹事長は記者会見で「合意内容の具体的な法案化について、現場で協議が進んでいると理解している」と述べるにとどめていました。

けれども、4日午前になって、衆院政治改革特別委員会の理事会は、この日に予定していた岸田総理入りの質疑と採決を見送っています。




2.公明維新案を丸呑みした岸田総理


政治資金規正法改正について、自民党は、公明党との共同提出に向けての調整が決裂したため、5月に単独で法案を提出。与党間の合意がないまま野党を交えた審議に入る異例の事態となっていました。

それが、ここにきて法案が纏まったのはなぜか。その経緯について、TBSが記事にしていますけれども、その概要を時系列で整理すると次の通りです。
5月28日:
・政治資金規正法の改正に向けて、(1)自民党(2)立憲民主党・国民民主党・有志の会(3)日本維新の会、それぞれが提出した法案をめぐる、与野党による修正協議が始まった。
・公明党はパーティー券の購入者の公開基準を今の「20万円超」から「5万円超」に引き下げることなど4項目を要求した。
・当時、自民党は「10万円超」への引き下げを主張しており、自公の間でも隔たりは残ったままで、両党による実務者の協議も暗礁に乗り上げていた。

5月29日:
・自民党が提示した修正案には、公明党の主張する「法律が施行してから3年後に見直す規定」が盛り込まれており、公明党はその賛否への対応を迫られていた。
・“公明党が自民党案に賛成する方針”との情報が伝わり始めると、野党は「同じ穴のムジナ」だと、批判の矛先を自民党だけではなく公明党にも向け始めたことから、公明党内では危機感が広がった。
・公明党の北側副代表が、パイプのある自民党の森山総務会長に接触し、自民党の腹を探り、公明党の要求をのんでもらおうとした。
・この日の夜、岸田総理は麻生副総裁・茂木幹事長と3者で会合を開いた。自民党関係者によると、この時点で、岸田総理は公明党の協力を確実なものとするため、公明党の要求を受け入れる方針に傾いていた。
・この意向を持った岸田総理に、「10万円じゃないと議員活動が続けられない」など党内の声と向き合ってきた麻生氏や茂木氏は「このタイミングで公明党に譲る必要は全くない」と“待った”をかけた。
・3者が協議した結果、公明党の要求を受け入れることは一旦見送ることになった。

5月30日:
・公明党の山口代表は「自民党の案に賛同することはできない」として、自民党に対し譲歩を促した。
・岸田総理は、麻生氏・茂木氏の説得を振り切って、公明党の要求を受け入れるかどうかの決断を迫られた。
・夕刻、岸田総理は側近の木原幹事長代理を呼び、秘密裏に会談した。その場には林官房長官も同席した。他党との水面下の交渉を担っていた木原氏は、自民党内には「10万円でなければだめだ」という声が根強くあることを伝える一方で、公明や維新の状況を伝えた。
・岸田総理はこの場で「5万円でやるしかない」と決断を下した。自公連立の枠組みを崩さずに、この国会で法案を成立させることを優先させた。

5月31日:
・午前、総理官邸に公明党の山口代表が訪れ、岸田総理と会談した。2人の握手が交わされた後、予定の20分より長い会談となった。
・与党党首会談後、公明党の山口那津男代表は「自民党が5万円と目標を明確におっしゃいましたので、野党も含めて与野党の幅広い合意にいたった」と発言。
・この直後に岸田総理は、日本維新の会の馬場代表とも会談。維新の求める条件ものむことで、自公維が賛成する方針となり、いまの国会で自民党の修正案が成立する見通しとなった。
要するに、公明と維新の案をほぼ丸呑みすることで纏めたということです。

もっとも公明は公明で、一旦、自公連立を優先し、自民に甘い案を容認する方向に傾いていたのですけれども、公明が自民案に賛成する方向だと報道されると、野党は「自民と同じ穴のむじな」と批判し、党の会合では上層部に説明を求める声が相次ぎました。中堅議員は支持母体・創価学会幹部から「そのまま折れるのか」と問い詰められ、態度を硬化。自公の幹事長レベルでは折り合えず、結局最後は岸田総理の決断でまとまることとなった訳です。


3.敗北感漂う自民


岸田総理は合意後、官邸で記者団に対し「今国会で政治資金規正法改正を実現するのが国民への約束だ。自民党として、思い切った、踏み込んだ案を提示する決断をした」強調しましたけれども、公明と維新の主張を丸呑みしたのが実態です。

党内には「収入減で政治活動が細れば、陳情対応の力も衰え集票力も陰る」との懸念も根強く、岸田総理は「ぎりぎりまで公明と交渉させる」と党幹部の動向を見守ったようです。けれども側近から「自民が迷惑をかけている以上反論できない」との諦めが広がり、腹を括ったとのことです。

この岸田総理の大幅譲歩に怨嗟の声が渦巻き、麻生派議員は「首相はいつも目先だけ。党の足腰はガタガタだ。ついていけない」と吐き捨て、党幹部は「総理は公明と『10万円超』で妥協できると踏んでいた」と敗北感を滲ませました。

ある自民党のベテラン議員は「岸田首相は『改革の体裁』ばかりにこだわった。『外国人のパーティー券購入禁止』に踏み込まなかったのが象徴的だ。政治にお金がかかるのは事実だ。国民は『何にいくらかかり、本当に必要なのか。どう透明化するのか』という点に注目しているのに、岸田首相は党内議論を主導しなかった」と指摘しています。

今回の結果について、政治評論家の有馬晴海氏は「岸田首相は改正失敗なら退陣不可避だったので、公明党と日本維新の会にすり寄った。自民党の修正案は『検討する』の注釈だらけ。子供だましで、裏金化を防げるのかも疑問だ。野党も、連座制強化や徹底した透明化などを焦点化できなった。国民は選挙で、与野党への〝審判〟を示すべきだ」と苦言を呈しています。


4.七割が評価しない


では、現時点で国民は政治資金規正法の改正案についてどのような判断を下しているのか。

6月1~2日、JNNは電話による全国世論調査を行いました。

その中で、政治資金規正法の改正案について聞いたところ、「あまり」と「全く」をあわせて70%の人が「評価しない」と答え、修正案に明記されなかった政党や政治資金団体への「企業・団体献金」については、54%が「禁止すべき」と答え、「認めるべき」は28%となりました。

また、政治家が政治資金を集めるためにパーティーを開くことについて、「納得できない」と答えた人は、「あまり」と「全く」をあわせて73%に上りました。

このように、おおよそ7割が評価しないという結果となっています。

また、岸田内閣を支持できるという人は、先月の調査から4.7ポイント下落し、25.1%。支持できないという人は、3.7ポイント上昇し、71.6%と、こちらも7割が評価していません。

ついでにいえば、政府が物価高対策として今月から始める1人あたり4万円の「定額減税」の評価についても、「評価する」は「大いに」と「ある程度」をあわせて37%、「評価しない」は「あまり」と「全く」をあわせて60%。こちらも評価されていません。

岸田政権は、給与明細に所得税の減税額を明記するよう企業に義務付して国民に恩を着せていますけれども、であるならば、社会保険料の増額分も同じように記載しなければフェアではありません。

例えば、国民健康保険料は2022年度に上限3万円、2023年度は上限2万円の引き上げを行い、今年2024年度も上限を2万円引き上げる方針です。芸税を明細に記載するなら、これらも給与明細に記載しなければ片手落ちだと思います。

先述の世論調査では、次の衆議院選挙後の望ましい政権のあり方について聞いたところ、「自民党を中心とした政権の継続」が39%、「自民党以外の政権に交代」が48%と政権交代が自公政権継続を上回っています。

ただ、今、衆院選が行われた場合、比例代表でどの政党に投票するか聞いたところ、最も多かったのは自民党で24.2%、次に立憲民主党で16.9%、日本維新の会が10.3%でしたと、自民党がトップですし、政党支持率も自民が23.8%と立憲の7.3%、維新の4.3%に大きく水を空けています。

今回の改正案合意について、ジャーナリストの鮫島浩氏は自身の動画で、岸田総理の思惑について次の指摘をしています。
・もはや内閣支持率低迷してなかなか現実問題としては9月の前の解散総選挙は難しそうだ。それならば公明党の協力を得てまず
は法案を通してしまおうとした。
・その後党内でライバルを蹴落として岸田しかいない。こんな状況を作ることで9月の総裁再選を目指すこんな戦略に切り替えたと見られる。
・けれども岸田総理はまだ諦めていない。もしかしたら6月23日、この国会会期末まで解散はできないけれども、国会を大幅延長して7月、8月とここまで国会を延長すれば。そのうちに内閣支持率が上向いて、9月の総裁選挙の前に解散できるかもしれないと考えてるかもしれない
そのうち内閣支持率が上向いて、とは、そう期待させるイベントか何かがあれば別でしょうけれども、今の現状では、何とも、希望的に過ぎる観測に思えます。

果たして、国会会期を延長するのかどうか分かりませんけれども、遅くとも9月までには岸田政権の趨勢が決まることになりそうですね。



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