

1.総裁選前の解散見送り
6月3日、朝日新聞は複数の政権幹部が明らかにしたとして、岸田総理が、今国会中の衆院解散を見送る方向で最終調整に入ったと報じました。
これについて朝日は、「首相は23日に会期末を迎える今国会中に解散に踏み切って総選挙で勝利し、9月の自民党総裁選で再選するシナリオを描いてきたが、党派閥による裏金事件やその後の対応で内閣支持率は低迷し、解散総選挙を行えば自民が劣勢に立たされる公算が大きいと判断。事実上、解散断念に追い込まれた格好だ。今国会の会期は延長せず、政権の立て直しに専念する」と解説しています。
翌4日、朝日の報道について記者団から問われた岸田総理は、「今は政治改革をはじめ先送りできない課題に専念している。結果を出すこと以外は考えていない」と述べています。
解散について自民幹部は「こんな最悪の時には無理だ。昨年やっておけって話だ」と断じ、閣僚経験者は「政治資金規正法改正案が成立した後、少し落ち着く期間が必要ではないか」との認識を示しています。
公明党の山口那津男代表は記者団に「国民の政治不信は根強い……自民ないし与党の推薦した候補が負け続けている。真摯に受け止めなければいけない」と静岡県知事選や東京都港区長選などでの敗北を指摘しています。
岸田総理は、6月から始まった定額減税と、政治資金規正法の改正の二つで低迷する内閣支持率の改革を目論んでいたようなのですけれども、定額減税は、それ以上に物価上昇の負担が大きく、減税の恩恵がなくなり支持率につながりませんでした。
また、政治資金規正法改正についても、本来は自民党が襟を正す機会だったのですけれども、議論してみると、野党や公明党から突き上げられるような形となり、支持率が上がりませんでした。
結局、「こんな最悪の時」を挽回するに至らなかった訳です。解散見送りも必然の結果だと思われます。
2.パンチドランカー岸田
にも関わらず、岸田総理は妙に元気なのだそうです。
5月26日に行われた3選挙も全敗。最も重視された静岡県知事選で自民推薦候補が敗北。東京都議補選でも自民党は一議席も獲れず惨敗。岸田総理のお膝元である広島県府中町の町長選挙でも、自民党推薦候補が大敗。ところが、日中韓首脳会談のためにソウルを訪問していた総理は、選挙総敗北の情報を聞いても、素知らぬ顔だったそうです。
外務省関係者は「日中韓首脳会談で韓国の尹大統領と久しぶりに会いましたが、4月の総選挙で母体となる保守系政党が大敗を喫したのに元気な大統領の様子を見て、『地方選に負けたからといって何だ。落ち込んでいる場合じゃない。勝負は国政だ』と自分を奮い立たせたようです。外遊中は韓国側の政府関係者と、リラックスした様子で日本のアニメや、 K-POPなどのくだけた話をしていて、選挙で負けたというのによくもこれだけ元気なものだ……と同行者を驚かせていました」と明かしています。
ある旧岸田派の議員は、岸田総理について「あれはもう、パンチドランカーだな。打たれ過ぎて正気を失い、本当はもう限界なのに、ガンガン前に出ていく」と呆れているとのことです。
問題はそれだけではありません。
旧岸田派の中堅議員は「次の総裁選挙で、岸田さんの推薦人が集まらないかもしれない……自民党内の調査で、岸田体制のまま総選挙をやれば、側近中の側近である木原誠二さんでさえ落選する可能性がある、との結果が出てきた。岸田さんに近いほかの議員も軒並み当選が危うい状況で、『岸田再選からの総選挙では自分も落選する』との危機感を抱いた議員らが、岸田さんへの推薦を思いとどまる恐れがあるのです」と激白しています。
総裁選に出馬するには20名の党所属国会議員の推薦が必要なのですけれども、その20名が集まらないかもしれないというのですね。
3.ポスト岸田レース
総裁選で勝とうにも、推薦人が集まらず、岸田総理自身が出馬できなければ意味がありません。
そうしたことから永田町で噂されていたのが、7月解散説でした。
ある自民党の閣僚経験者は、「いま、政治資金規正法の改正法案を公明党や野党とやり合っているが、野党との交渉がまとまらないことを理由に、『もっと議論を深めて幅広く合意を形成しなければならない』と主張して国会会期を延長する。その一方で、総理は公約である『憲法改正』に向けた動きを加速させる。野党は突然出てきた憲法改正論議に反発し、内閣不信任案を提出する。ここで総理が『国民に信を問う!』と解散をするシナリオだ。憲法改正を争点にすれば、ギリギリ自民党は選挙で勝てる……という目算があるんだろう。犬死にするぐらいなら、1パーセントでも勝つ確率のある総選挙に賭ける。まさに大博打を打とうと腹を決めたんだ」と述べたそうです。
けれども、修正法案は6日に衆院で可決。今国会内での成立が確実とされていますし、もう一方の憲法改正についても、与党は、今国会の会期延長をしない方針であるとされていることから、こちらもできない公算が高いと思われます。
つまり、この閣僚がいうところの「会期延長してからの解散総選挙」という岸田総理の戦略は、もう半分以上潰れています。
総裁選前の解散がなければ、岸田総理の続投への道は恐ろしく狭いものになります。
当然、次の総理を狙う人は鎌首を持ち上げ、動き始めます。
ある自民党ベテラン議員は「これまで茂木は政治資金規正法改正で一切汗をかいてこなかった……ところが、岸田が会期延長による7月解散を画策していると知るや、『なんとしても阻止せねば……』と奔走を始め、公明党と会期延長を防ぐための改正法案協議の早期決着を話し合い出した。結果、公明党は自民党に歩み寄りを始めた……茂木が狙っているのは、6月中に改正法案を成立させ、岸田に解散の一手を打たせないこと。そうすれば総裁選に持ち込み、推薦人が足りない岸田を『不出馬』へと追い込める」と茂木氏の暗躍を指摘しています。
また、石破茂氏に近い自民党議員は、「先日、麻生太郎さんが親しい議員らに『河野太郎は次の総裁選には出さない』と漏らしたという情報が駆け巡った。これを聞いてから、石破さんはやたらと機嫌がいいんです。同じく国民人気が高い河野さんが総裁選に出ないなら、自分が選ばれる可能性はグンと高まりますからね……石破さんは側近の赤澤亮正議員を菅義偉元総理の番頭である坂井学議員のところに送り込み、総理になったあとの政策や政権運営について、彼らを通じて菅さんと協議していると聞きます。『金利を正常化する』『少子化対策のために男女間の所得格差を解消する』など具体的な政策を立案中で、まもなく発表する予定です」と明かしています。
要するにポスト岸田レースの号砲が鳴ったということです。
4.自民党の賞味期限は切れた
こうした現状について、ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、6月5日に上げた、自身の動画で、概略で次のように述べています。
〇追い込まれた岸田総理長谷川氏は、岸田総理が会期延長しなかったことから、憲法改正をやる気がないことが明らかになった岸田総理に次はない。ポスト岸田は党内の「義理と人情」、「好きだ、嫌いだ」が大きく影響するが、自民党自体が賞味期限切れだから、次の選挙はボロ負けする、と予言しています。
・解散見送りの判断自体が、岸田総理が追い込まれた証拠
・今国会で解散して、議席を落とすのは覚悟の上で、ギリギリ過半数自公で取れれば、一応政権は維持できましたっていうことを引っ下げて9月の総裁選にと、こういうつもりだっ たんでしょうが。
・衆院の3補選で負けたし、静岡県知事選も負けたし、細かく言えば目黒区長選も負けたし、目黒の都議の補選も負けたということで追い込まれたのは間違いない
〇1番の公約「憲法改正」やる気なし
・岸田総理は憲法改正の 問題で、総裁任期中に必ず改正を実現すると何度も何度も訴えてきた
・任期中ってことは9月末ですから、今の通常国会を1ヶ月でも2ヶ月でも延長してでもこの憲法改正論議を進めると、思っていたら、今国会の会期は延長せず。
・つまり岸田総理は1番大事な公約である憲法改正をやるつもりがないということ
・いわゆる保守派、大御所の方達は、総裁の人気中に必ず 憲法を改正すると言ってるから、我々はそれを後押ししないといけない。だから岸田政権を応援しましょうといっていた。
・だから、憲法改正をやらないことが明らかになったことは、彼ら岸田応援団にとっては大問題。
〇次の展開は
・岸田政権の今回の国会の扱いを見ると、一言で言えば自民党は賞味期限切れ
・解散は国会会期中でないとできないっていうのがこれまでの慣例
・あとは9月の総裁選まで行ってしまう。岸田総理が政権を続けようと思ったら、まずは総裁選に立候補して、続々と名乗りを上げてくるライバル達を倒して、自民党総裁に再選され、その上で特別国会を開いて内閣総理大臣の指名を受けないといけない。
・岸田総理には「総裁選立候補」と「首班指名」の2つのハードルがある
・岸田総理の総裁再選はあるかというと、あるわけない。それどころか立候補すること自体難しいと思う
・岸田総理は、たとえ総裁選で投票にまで漕ぎつけたとしても勝てないだろう。
〇ポスト岸田はどう決まる
・ポスト岸田で名前が挙がっているのは小石河洋子(小泉、石破、河野、上川洋子)。この辺りが人気投票で名前が出てくる常連。もうひとり高市さんもある
・世論調査は国民一般有権者対象の人気投票ですから単なる人気取りに過ぎない。しかし実際の総裁選は国会議員と党員の票で決まる。全部自民党員で決まる。
・自民党員はどういう基準で投票するかというと、政策は基本関係ない。自民党は義理と人情。言い換えると「好きだ、嫌いだ、こん畜生」
・国民そっちのけだが、自民党は「好きだ、嫌いだ、こん畜生」で、8割動いているんじゃないかと思う。
・その基本構造があった上で、どうやってポスト岸田は決まっていくのか、「義理と人情」、「好きだ、嫌いだ、こん畜生」をどれだけ気にかけているか。キングメーカーがどのくらいこのメカニズムを動かしていくかに依る
・上川さんのバックには麻生さんがいるのはみんな知っている。麻生さんは炎上商法を使って上川さんを総裁候補に踊り上げさせた。麻生さんの仕掛け。
・麻生派は自民党で唯一残った派閥。ここで上川洋子に一票入れておけば、俺は麻生さんの引きで、次は政務官なれるかもしれない、副大臣なれるかもしれない、幹事長はいきなり無理でも副幹事長ぐらいにはなれるかもしれないと、引き立ててもらえるかもしれないという思惑が働く
・これほど派閥は影響力がある。その唯一残っている麻生派が上川さんと推している。これは大きい。
・もう1つ今回に限った特殊な事情で言えば、非常に大きな要素は自民党は顔を変えなきゃいけないことがある。岸田さん不人気だから
・パッと自民党のポスターを見た時に、変わったと思わせなきゃいけない。そのためにどうするかというと、女性です。だからもう女性というだけで今回はプレミアムがついている。
・上川さんはその意味で有利なポジションにいる。これは間違いない。
・この上川さんに対抗する女性は、高市さんです。高市さんであれば、ポスターの顔が増税メガネから女性に変わるという意味でインパクトはある。だから勝負にはなる。
・けれどもじゃああ1番大事なDNAであるところの、「義理と人情」、「好きだ、嫌いだ、こん畜生」。妬み、嫉み、嫉妬という議論から見たら、高市に入れなきゃていう風に思うかどうか。
・あるいは、キングメーカーに今まで義理と人情があるから、あの人の親分の顔を立てなきゃなと思うかどうか。
・あるいは、高市さんに一票入れておけば、あの親分が俺を政務官にしてくれるよなと思うかどうか
・ところが私の見るところ、高市さん自身もそういうことにあんまり関心があるようには見えないし、高市さんを応援している方たちにもそういうキングメーカー的な方がついているようには見えない。そこが弱い。
・高市さんは、上川さんに比べると、やや不利なのかなと思う。
・では、唯一派閥を維持してらっしゃる麻生太郎さんに対抗できるザ・キングメーカーは他にいるのか、というと大方一致してる。それは菅義偉さん。間違いない。
・菅さんは元総理、加えて元々無所属で当選していって、政界に地盤を築いていく。そういうノウハウにかけては菅さんが一番ある。無派閥のスター。
・今、形の上ではみんな無派閥になっちゃった。
・身寄りのない人たちは菅さんのところに寄っているということで、菅さんはどんなに少なくても30人40人、もしかしたら60人70人くらいの数をまとめる力はあるだろう。もっとあるかもしれない。だから麻生太郎さんに対抗するキングメーカーのもう一方の雄と言ったら菅さんだ。
・菅さんが誰を押すか。まず河野太郎さん、それから小泉さん、この2人は同じ神奈川県。菅さんと同じ神奈川県の地盤の国会議員だということもあるし、政策的にも近いということで、寄ってくる
・そういう政治的な近さで言えば、1に河野太郎、2に小泉進次郎。それからさらに、ちょっと一部で、もしかしたら石破をやってもいいんじゃないかみたいなことも出ている。さらに加藤勝信元官房長官はどうか、こういう名前も出てる。
・最大見積ると菅さんの手の平には河野太郎、小泉進次郎、加藤勝信さらに石茂までもがいるかもしれない。
・このうち誰を本気で押すかという話。ここが大きな問題です。ここはまだ見えてこない。
・ポスト岸田はこの辺りから始まってくる。
・上川さんは岸田派だから、岸田さんが俺はもうやめたと言わない限り、総裁選には出られない。派閥は無いってことになっているが裏では全部繋がっている。
・上川さんは岸田さんが総裁選に出ないことが大前提だが、岸田さんが出る出ないはキングメーカーの麻生さんにかかってくる
・麻生さんが岸田さんと話して、もうよくやった十分だ。これ以上やったら自民党政権が壊れちゃうかもしれないと、落ちちゃうかもしれない、やめとけと。その代わりにお前のところから出すからと。お前は俺のようにキングメーカーなればいいじゃないか。お前の子分の上川を2人でやろうと説得して、それでめでたく上川さんという話になるかどうか。
・麻生さんの力は私は相当強いのかなと思う。これはあっち側の人たちの話。そういう駆け引きが色々これから出てくる。
・だけど、誰がポスト岸田になるにせよそれは名だけに終わる、長続きしない。
・なぜかというと衆院の任期は来年の10月前だから。来年の10月までには遅かれ早かれ必ず総選挙はある。次のポスト岸田の人が解散総選挙やるって場合もあるだろうし、それもできなくて結局任期満了で総選挙ってこともあるだろうし。
・2通りあるけど、任期は来年の秋までなんだからそれまでには必ず総選挙はある
・最大のポイントは、いずれある総選挙で果たして自民党と公明党は過半数を維持して連立政権維持できるか。ここ。
・私は自民党はどっちにしろボロ負けすると、ポスターの顔を高市だろうがあるいはミスターXだろうが誰に変えたところで自民党はボロ負けすると思っている。
・なぜかというと、自民党は賞味期限切れだから。
・それは、岸田さんが任期中に必ず憲法改正をするといったにも関わらず何もできてないことが、見事に象徴している。
・国民の皆さんは憲法改正してくださいの方が今や多数派。朝日新聞の調査でさえも、憲法は改正すべきだの方が多数。
・私は今の状態では負けると思う。今の国民の皆さんのこの自民党に対する不信感、怒りね、ふざけんなよこの怒りものすごい。
・ものすごいで選挙ないから、ますます内に篭る。ふざけんなよ俺たちは選挙で選びたいのにどうしてくれんだよと、そういう怒りがもししたら東京都知事選にも出ちゃうかもしれない。
・この怒りがどっかでこれ爆発させてやんなきゃ気が済まんとと思ってる人がいたら、 東京都知事選にも影響しかねないということ
好きだ、嫌いだ、こん畜生で総裁が決まるなんて、まるでムラ社会じゃないかとも思いますけれども、そういうやり方がもはや賞味期限切れなのであれば、新鮮なものを求めるのは道理です。かといって、食べ物のように見えて、食べられない模型だとか毒が入っていたりするというのも論外です。
果たして、日本の政党に、新鮮で食べられるものがあるのか。有権者はしっかりと見極める必要があるのではないかと思いますね。
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