ロシアへの長距離兵器の使用は侵略行為とみなせるか

今日はこの話題です。
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1.ウクライナ軍のクリミヤへのミサイル攻撃


6月23日、ロシアが支配するウクライナ南部クリミア・セバストポリの当局者はウクライナ軍によるミサイル攻撃で、子どもを含む4人が死亡し、144人がけがをするなどして手当てを受けたと、明らかにしました。死者には極東マガダン副市長の9歳の娘が含まれていたそうです。

この攻撃についてロシア国防省は、アメリカがウクライナに供与したクラスター弾頭を搭載した射程の長いミサイルATACMS、5発が使われ、4発は迎撃したものの、1発が空中で爆発して被害をもたらしたとした上で、「市民に対する計画的なミサイル攻撃の責任は、兵器を供与したアメリカと、攻撃に領土を使わせたウクライナにある」と非難し、対抗措置をとる構えを見せています。

セバストポリは露黒海艦隊の本拠地で、SNSでは、海岸で海水浴をしていた市民らが爆発音を聞いて逃げる様子を撮影したとする動画が投稿されています。

プーチン大統領は死傷者に哀悼の意を表明し、露捜査当局は攻撃を「テロ」だとし、刑事訴追手続きを開始したとのことです。

また、連日ロシア軍による攻撃が続くウクライナ東部のハルキウでも、23日に住宅地などに4回の爆撃があり、地元の当局者によると、1人が死亡、12人が怪我をするなどしています。




2.西側諸国の長距離兵器の使用は侵略行為とみなせるか


6月8日のエントリー「ロシア軍のカリブ海演習と狂気のウクライナ」で、アメリカがウクライナに対し、ロシア領内への直接攻撃を許可したことを取り上げましたけれども、これについてプーチン大統領はどう捉えているのか。

これについては、6月20日にベトナムの公式訪問後、ハノイでのロシアメディアとの質問にプーチン大統領が答えています。該当すると思われる部分を抽出すると次の通りです。
アンドレイ・コレスニコフ:コメルサント紙、アンドレイ・コレスニコフです。

西側諸国の長距離兵器の使用は侵略行為とみなせるでしょうか? 全体的に、ベルゴロドやロシア領土全体への砲撃は侵略行為とみなせるでしょうか?

ウラジミール・プーチン:この件についてはさらに調査が必要であるが、近いところまで来ている。現在調査中だ。この件で我々が対処しているのは何だろうか? これらの武器を供給している人々は、我々と戦争をしているわけではないと考えている。私がすでに述べたように、平壌を含め、我々は世界の他の地域に武器を供給する権利を留保している。

朝鮮民主主義人民共和国との協定に関して、この可能性を排除するつもりはない。これらの兵器が最終的にどこに行き着くのかという問題に関しても、同じ立場を取ることができる。たとえば、西側諸国を例にとってみよう。彼らはウクライナに兵器を供給し、「我々はここをコントロールしていないので、ウクライナがそれをどう使うかは我々には関係ない」と言っている。なぜ我々も同じ立場を取り、誰かに何かを供給したが、その後に何が起こるかはコントロールできないと言うことができないのだろうか。彼らに考えさせよう。

したがって、現段階では、我々の主な目的はこれらの攻撃から防御することだ。

【中略】

ドナルド・コーター: ドナルド・コーター、ロシア・トゥデイです。

NATOは現在、核弾頭の戦闘準備状況について公に議論しています。ロシアはこの動きをどう受け止めていますか、そして世界の安定と安全にどのような影響を与えるのでしょうか。

ウラジーミル・プーチン: ロシア連邦は、戦略核戦力を常に戦闘態勢に維持している。そのため、西側諸国の現在の行動について、我々はそれほど懸念していない。しかし、もちろん、我々は状況を注意深く監視しており、脅威が増大した場合は、適切に対応するつもりだ。

アレクサンダー・ユナシェフ: アレクサンダー・ユナシェフです。

あなたは、ゼレンスキー氏は非合法であり、ウクライナ最高議会だけが合法的な機関であると繰り返し述べています。議員の誰かがあなたにシグナルを送ったり、あなたに交渉を試みたりしたことがありますか?我々は水面下で誰かと交渉しているのですか?

ところで、最近はどのくらい睡眠をとっていますか?

ウラジーミル・プーチン: 最高会議の議員たちのことを言っているのか?

アレクサンダー・ユナシェフ: はい。

ウラジーミル・プーチン: 私はこれについて何も知らない。あなたは私が「繰り返し述べた」と言ったが、私は何も言っていない。私は単に状況を分析しただけだ。というか、我々の弁護士がウクライナ憲法の条項を分析したのだ。私は憲法の条項、具体的には大統領の任期は5年を超えてはならないと明確に規定している。第83条について言及した。第109条、第110条、第112条では、戒厳令が発令された場合、最高会議議長が最高司令官の権限を含む権限を掌握すると規定している。そこにすべて明確に述べられている。

戒厳令法では大統領選挙は行われないとも規定されている。しかし大統領の権限を延長するとは述べられておらず、これは大統領の任期が終了したことを意味する。

最後に、憲法裁判所は2015年に大統領の任期は5年を超えてはならないと明確に述べた判決を下した。では、我々は何を話しているのだろうか。西側諸国は単に、今は適切な時期ではないため、大統領を交代させたくないのだ。私はすでにこのことを述べており、誰にとっても明らかであるはずだと信じている。彼は、徴兵年齢の引き下げを含むすべての不人気な決定の責任を負わされ、後に交代させられるだろう。これは2025年前半のどこかで起こると私は信じている。

オルガ・サムソノワ:RIAノーボスチ通信。大統領、こんにちは。

記者会見ですでにこのことについて質問されていると思いますが、西側諸国は緊張を高め続け、常に状況をエスカレートさせています。

ウラジーミル・プーチン:そうだ、彼らはそうするのだ。

オルガ・サムソノワ:彼らは何を達成しようとしていると思いますか?彼らの目標は何ですか?これはおそらく挑発であり、あなたを挑発し、反応を引き出そうとしているのでしょうか?

ウラジーミル・プーチン:まさに、それが我々が見ていることだ。あなたが言ったように、彼らは常に緊張を高め、状況をエスカレートさせている。どうやら彼らは、我々がいつかは引き下がると期待しているようだ。しかし同時に、彼らはロシアに戦略的敗北を与えることで戦場で我々を打ち負かしたいと言い続けている。これはロシアにとって何を意味するのだろうか? ロシアにとって、それは国家としての地位の喪失を意味する。それはロシア国家の千年の歴史の終わりを意味する。これは誰にとっても明らかなはずだ。そこで、なぜ我々は恐れなければならないのかという疑問が生じる。最後まで毅然とした態度を貫く方が理にかなっているのではないだろうか? これは形式論理学の入門編だ。大学では形式論理学を1学期だけ学んだと思うが、よく覚えている。その授業を教えた教授のことも覚えている。

このように考える人、特にこのように言う人は、また大きな間違いを犯していると思える。

ウラジーミル・プーチン:あと2、3、質問をうけよう。どうぞ。

ヴェラ・デシヤトワ: ヴェスティFMラジオのヴェラ・デシヤトワです。

特別軍事作戦地域からの報告によると、ウクライナ軍はハリコフ地域で新たな反撃を準備しているとのこと。確認された情報はありますか? また、我が国の軍隊はそれを撃退する準備ができていますか?

ウラジーミル・プーチン:我が軍はあらゆる可能性のあるシナリオに備えている。

ハリコフ戦場については、すでに述べたとおり、秘密ではない。6か月前、もし彼らが国境地域のロシア人コミュニティを攻撃し続けるなら、ウクライナ領内に安全地帯、衛生地帯を設けなければならないと明言した。彼らは砲撃を続け、我々は約束どおりに行動した。

うん、我々は、この背後に主にアメリカとヨーロッパがいることを知っている。彼らはウクライナに対し、どんな犠牲を払ってでも我々の部隊を国境まで追い払うよう圧力をかけている。もう一度強調するが、どんなことでもやるよう求めている。そして、2024年に予定されているNATOサミットとその後の米国選挙を前に、これを大成功として宣伝するつもりなのだ。

実際に何が起こるかはこれから見ていく。しかし、これがどんなものであれ、これが現実であることは間違いない。私が何を言っているのかは分かっている。もちろん、それが現実に基づいていないのであれば、ウクライナ軍に再び打撃を与えることになるだろう。これから見ていく。

いずれにせよ、我々が理解しているように、私はハリコフなどに進軍する意図はないと言ったが、それは依然として戦術的な戦場であり、敵はそれを戦略的成功として見せかけようとする。もし成功したらであるが。彼らが実際に何をするか見てみよう。しかし、これはすでに大きな損失を伴っている。おそらく、状況は同じ方向に展開すると思う。

我々が話しているのは敵対行為であり、非常に不安定な状況なので、予測するのは非常に困難だ。人々が銃撃され、犠牲者が出ている。そのため、現時点で何かを言うのは難しいが、私の評価は先ほど言ったとおりだ。
プーチン大統領はウクライナの越境攻撃について、ロシアに対する侵略攻撃に近いところまで来ていると答えた上で、西側諸国がウクライナに軍事支援をして代理戦争させるのであれば、ロシアも同じことができる筈だ、と返しています。

それを考えると先日交わされた事実上の露朝軍事同盟は、韓国と日本に対し、北朝鮮を使った軍事攻撃、代理戦争をされたくなければ、ウクライナへの軍事支援を止めろという外交メッセージをも含んでいるとも言えます。




3.ゼレンスキーは排除されようとしている


プーチン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領について、交代させられるだろうと述べていますけれども、元・ロシア共産党機関紙の「プラウダ」は、4月17日に、ウクライナと西側では、ゼレンスキーの排除について話し始めたとする記事を配信しています。

件の記事の概要は次の通りです。
ゼレンスキーは生と死の危機に瀕している。彼の解任はすべての人に歓迎されるであろう。問題は、世界のプレーヤーがそれをどのように使用するかだ。

ウクライナと西側では、ゼレンスキーの排除について話し始めた。

・西側諸国はゼレンスキーを解任するだろう。
この状況は、腐敗したキーウ政権への無意味な支援にうんざりしている西側諸国が、ウクライナのゼレンスキー大統領に、ロシアとの領土的妥協を求めるよう呼びかけているという事実によって特徴付けられる。しかし、彼は絶対に望んでいない。

ウクライナのテレグラム チャンネルZeRada が徐々に悪化する状況について書いているように、ゼレンスキーは自分の政策を「変える」ことができず、「先見の明のある人」、つまり目標を見て無意識にそれに向かっていく人だ。彼の目標は、1991年の国境内でウクライナがNATOに加盟することだ。

「ロシア連邦による追加の領土の押収と何千人もの犠牲者につながった」のはこの目標であった。
「これはゼレンスキーにとって非常に危険な道である。州はこの不合理な頑固さのために彼を解任することができる」とチャンネルは予測している。

このような同盟国からの裏切りの瞬間はキエフでも見られる。そのため、ウクライナ大統領の警備員は、毒殺を恐れて、英国のテレビ司会者ベア・グリルスの手からチョコレートを受け取ることを禁じた.。

・西側はウクライナに対する立場を変えた。
ここ数週間、西側の影響力のあるメディアの多くは、2022年2月24日の陣地へのロシア軍の撤退と引き換えに、クリミアをロシア連邦に任せるべきだと示唆している。もちろん、これはモスクワには適していないが、アメリカ人はその反対を確信している。

・「ロシアは負けなければならない」から「妥協を探す必要があるか」に立場が変わったのはなぜか?
西側諸国は、2023年に財政赤字が完全に解消されたウクライナを支援する準備ができていない。これはハンガリーのヴィクトル・オルバン首相が間接的に発言し、ウクライナを存在しない国と呼んだ。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領が北京訪問後に語ったように、ヨーロッパ人は米国の属国になることを拒否し、中国に向き直っている。もう少しでEUは崩壊するだろう。これによる米国にとってのリスクは計り知れない。

今でも、西側諸国はウクライナ軍への弾薬の供給に同意できず、武器はウクライナに届けられないか、標準以下の状態で届けられる。
確かに、2月25日のエントリー「ウクライナから手を引く欧米」で、西側諸国はウクライナ支援に消極的であることについて述べましたけれども、5月あたりから急に風向きが変わり始めました。

5月10日、ウクライナ軍関係筋は、6~7月に「F-16」戦闘機の初めての供与を受けるとの見通しを示し、5月30日、アメリカのバイデン大統領は、アメリカが供与した兵器でロシア領内を攻撃することを一部で認める決断を下しています。


4.プーチンの予測


これらをみると、4月までは、ゼレンスキー大統領を辞めさせようとしていた西側諸国が5月になって方針転換したのかとも思いますけれども、先述したプーチン大統領の発言を振り返ってみると、このように述べています、
・我々は、この背後に主にアメリカとヨーロッパがいることを知っている。彼らはウクライナに対し、どんな犠牲を払ってでも我々の部隊を国境まで追い払うよう圧力をかけている。もう一度強調するが、どんなことでもやるよう求めている。そして、2024年に予定されているNATOサミットとその後の米国選挙を前に、これを大成功として宣伝するつもりなのだ。

・西側諸国は単に、今は適切な時期ではないため、大統領を交代させたくないのだ。私はすでにこのことを述べており、誰にとっても明らかであるはずだと信じている。彼は、徴兵年齢の引き下げを含むすべての不人気な決定の責任を負わされ、後に交代させられるだろう。これは2025年前半のどこかで起こると私は信じている。
プーチン大統領は、ウクライナの越境攻撃は、NATOサミットと米大統領選挙を控えた、西側諸国の宣伝の為だと看破し、そのためには、今ゼレンスキー大統領を交代させる訳にはいかないのだ、と述べています。

今年のNATOサミットは7月、アメリカ大統領選は11月ですけれども、7月9日~7月11日に行われるNATOサミットまでに、ウクライナがロシア軍を国境外に追い払うことができるとは思えませんし、ここまで膠着すれば11月になっても難しいのではないかと思います。

プーチン大統領は、ゼレンスキー大統領が交代させられるのは、2025年前半のどこかだと述べていますけれども、これはアメリカ大統領選が終わり、新大統領が就任してからのことですから、要するにそこまでは続くと見ていることになります。


5.揺れる欧州


けれども、ウクライナ支援は大成功だというためにゼレンスキー大統領を辞めさせないのだとしても、11月に大統領選挙を控えるアメリカならまだしも、EUについては先日EU議会選挙が終わったばかりです。

その結果は御存知のとおり、右派政党の大躍進に終わっています。

仮に、ロシア軍をウクライナから叩き出すことができて、大成功だと宣伝したとしても、どれほどの効果があるのか。しかも、現状、ロシア軍を撤退させられる見込みは殆どありません。

先日行われたG7サミットで、各国はウクライナへの一層の支援を表明しましたけれども、今年のG7議長国・イタリアでは、ウクライナ支援の在り方に変化を求める声が上がり始めています。

イタリアのメローニ首相は2月にウクライナを訪問し、支援継続を約束。国民からも人道や財政の支援については、依然、6割以上の支持を得ているのですけれども、かたや「軍事支援」となると話は変わります。

軍事支援を支持する声が多かった去年春と比べ、秋には差が縮まり、今年4月には、ついに「支持しない」が逆転しました。市民からは「武器供与のせいで我々の借金が増えるばかりだし、第三次世界大戦になるのが心配です」とか「ウクライナはロシアのほうが強いということを受け入れ、領土の一部を与えて戦争を終わらせるべきだと思う」という声があがっています。

こうした声を受け、連立与党の一角である極右政党「同盟」のクラウディオ・ボルギ上院議員は「2年が経ち、この方法(武器支援)が機能しないことがはっきりした……ウクライナがロシアに勝利するための条件が存在するかのように振る舞うのは非現実的だ」などと、ウクライナはいますぐロシアと和解のテーブルにつくべきだ、と公言しています。

プーチン大統領jの予測通り、来年前半にゼレンスキー大統領がその座を追われるのか。注意してみていきたいと思います。



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