恩着せメガネの再選戦略

今日はこの話題です。
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1.岸田内閣支持率17%


6月22、23の両日、毎日新聞は全国世論調査を実施しました。岸田内閣の支持率は、5月18、19日実施の前回調査(20%)より3ポイント減の17%で、3カ月ぶりに20%を切りました。昨年7月の28%以降、12ヶ月連続で30%未満が続いています。

不支持率は前回調査(74%)から3ポイント増の77%。不支持率が70%を超えるのは8ヶ月連続です。

また、次期衆院選後の政権はどのような枠組みが望ましいと思うかについては、最多の回答は「立憲民主党を中心とする野党連立政権」の33%で、「自民党、公明党に日本維新の会を加えた政権」の15%が続きました。現行の枠組みである「自民党、公明党の連立政権」と答えた人は11%にとどまり、「その他の政権」「わからない」との回答も各20%ありました。

衆院選後どのような政権が望ましいかについて、「自公維」と「自公」を合計しても26%で、「立憲中心の野党連立」の33%には届いていません。

この傾向は他の世論調査でも同じで、読売新聞が21~23日に行った全国世論調査でも、岸田内閣の支持率は23%と、2021年10月の内閣発足以降最低を記録。前回調査(5月17~19日の26%から3ポイント減り、不支持率は64%と1ポイント増加しています。

さらに、先週末閉会した国会で成立した改正政治資金規正法について、「評価する」は34%で、「評価しない」の56%が上回りました。改正規正法が、一連の「政治とカネ」の問題の解決につながると「思う」と答えた人は19%にとどまり、「思わない」は73%に達しています。政治資金を巡る一連の問題で岸田首相が自民党総裁として指導力を発揮していると「思う」は17%、「思わない」は78%でした。

また、政府が物価高対策として6月に始めた1人当たり年間4万円の定額減税について、「評価する」は36%、「評価しない」は59%とこちらも評価されていません。


2.定額減税と改正政治資金規正法


同じく、FNNの世論調査でも定額減税については、「大いに評価する」5.4%、「ある程度評価する」37.5%、「あまり評価しない」32.8%、「全く評価しない」21.9%との回答で、「ある程度評価」が最も多かったものの、「あまり」「全く」を合わせると、「評価しない」という答えが5割を上回っています。

また、「政治資金規正法改正」についても、「大いに評価」2.7%、「ある程度評価」27.7%、「あまり評価しない」32.6%、「全く評価しない」27.7%となり、総じて「評価」3割、「評価しない」6割との結果となっています。

これらは、9月の総裁再選をめざす岸田総理にとって、政権浮揚の切り札と見られていたのですけれども、定額減税の評価と政権支持の関係を見ると、定額減税を「評価」する人の中で「政権支持」は43.4%にとどまり、「政権支持しない」51.7%を下回っています。これは、定額減税を評価した人の中でも、政権を支持しない意見が高く、政権浮揚の下支え効果は大きくなかったことになります。
【定額減税への評価と政権支持】
      政権支持 政権不支持
評価する  43.4%   51.7%
評価しない 21.6%   74.8%
一方「政治資金規正法改正」については、政治資金規正法の改正を「評価する」と答えた中で、「政権支持」との答えは59.9%、「政権支持しない」37.5%となり、改正規制法を「評価する」との答えと、「政権支持」の答えとの相関がみられました。同じく改正規制法を「評価しない」と答えた人の中で「政権支持」は17.4%、「政権支持しない」78.8%とこちらも高い相関性が出ています。
【改正規正法への評価と政権支持】
      政権支持  政権支持しない
評価する  59.9%   37.5%
評価しない 17.4%   78.8%



3.酷暑乗り切り緊急支援


6月21日、岸田総理は、新たな物価高対策を発表しました。岸田総理は「二段構えの対応をとる」とし、第1段として、電気ガス料金補助金を8月、9月、10月に限り限定実施することを「酷暑乗り切り緊急支援」として、ガソリン補助金の年内継続とあわせて公表しました。第2段としては、年金世帯・低所得者世帯への追加給付金の支援検討するとしています。

なぜ、国会閉幕ギリギリのタイミングでこんな発表をしたのか。さすがに、国民が物価高に苦しんでいることを放置できなかったことと、少しも回復しない支持率浮揚を狙ってのことだと思われます。

前述のFNN世論調査でも、最も取り組んで欲しい政策は「物価高対策」47.5%、次いで「賃上げ・雇用・景気」35.4%、「年金・医療・介護」33.9%、「子ども子育て支援」30.5%と続いた。国会の焦点だった「政治資金規正法改正」は14.7%にとどまり、以下「行革・財政再建」9.6%、「外交安保」9.3%、「環境・エネルギー」6.9%、「憲法改正」4.9%となっていて、5月に行った同じ質問と比較すると、「物価高対策」への要望は5月の36.6%から6月は47.5%と急進しています。
【岸田首相に取り組んで欲しい政策】
            6月  5月
物価高対策      47.5% 36.6%
賃上げ・雇用・景気  35.4% 36.9%
年金・医療・介護   33.9% 35.8%
子ども・子育て    30.5% 29.0%
政治資金規正法改正  14.7% 17.2%
行革・財政再建    9.6%  10.6%
外交安保       9.3% 10.9 %
環境・エネルギー   6.9% 7.1 %
憲法改正       4.9% 6.7 %
この物価高対策への国民の反応は決して芳しいものではありません。

SNSには「やる時はやる漢。それがキッシーです」と評価する声があるものの、「恩着せメガネ発動!」「『電気代補助を再開しました』と言いたいがために、電気代の値上げをさせて電気代補助を再開するという露骨なパフォーマンス。物価高対策の表明より辞任の表明を心待ちしております」「まず手を付けるべきは消費税だろ 一体いつまでトボける気なの?」「『人気取り以外には絶対にやりたくないんだけどね』とか考えてそう 全ては国民のためではなく保身のため」「やらないよりマシだが、岸田の頭だと冬は寒いけど暖房は我慢してってことね」など厳しいコメントが並んでいます。


4.負担感がある


最近は「増税メガネ」から「恩着せメガネ」と揶揄されている岸田総理ですけれども、この綽名は、今月から始まった定額減税について、給与明細にその減税額を記載させるようにさせたからです。

6月14日、帝国データバンク(TDB)が14日公表した〈定額減税に関する企業の影響アンケート〉で、定額減税の事務について「負担感がある」と回答した企業が実に約7割(66.8%)に上っています。

アンケートでの企業からのコメントを拾うと次の通りです。
・定額減税で事務社員の負担が増えた。給与ソフトが対応していると言っても、最終的には人の目でチェックしなければならない (金融、中小企業)
・社会保険料の算定基礎届提出や労働保険料の年度更新等とタイミングが重なっているため、現時点で担当者に大きな負担となっている。また、給与支給後にも従業員からの問い合わせ対応が予想され、定額減税ではなく年末調整での一括対応や 4 万円の定額給付など、別の方法がなかったのか疑問に思う (出版・印刷、中小企業)
・定額減税は、会計ソフトの改修費用が発生かつ業務負担が増加している。一方で、社員側はうれしいと思う (飲食料品・飼料製造、中小企業)
・定額減税は、給与ソフトメーカーや市町村役場、企業の事務担当者に多くの負担をかけてまでやることではないと思う (建材・家具、窯業・土石製品卸売、中小企業)
・給与、賞与処理を行うために手続きを理解しなくてはいけないため、勉強に時間がとられた。また、疑問点を調べるのにも時間がかかり、事務負担が大きすぎる (旅館・ホテル、中小企業)
・給与計算部署の勉強時間、事務負担、従業員への説明など手間が発生。国が想定している定額減税相当額分の所得税率を下げた方が民間企業の事務面では助かる (娯楽サービス、中小企業)
・定額減税による事業への効果・影響が期待できない一方で、対応のための経費が増加した (情報サービス、小規模企業)
・定額減税は給与システムが対応してくれるため事務負担はない (建設、大企業)
・家族経営であり、定額減税における事務負担はほとんどない (不動産、小規模企業)
・給与事務は外部委託しているので定額減税の負荷は感じない (化学品製造、中小企業)
企業側からはボロクソです。

帝国データバンク情報統括本部の担当者は「『負担感がある』と答えた企業を規模別に見ると、大企業が68.3%、中小企業が66.6%、小規模企業が62.6%と、大差ありませんでした……従業員10人以下の家族経営や給与処理を外注している小さな企業ほど、負担感は少ないようです。共通しているのは、定額減税の複雑な仕組みを理解するのに時間がかかること。一括給付ではないので分かりにくい。減税分を反映した給与を出した後、ちゃんと引かれているのか、事後に従業員からの問い合わせもあるでしょう。1回で引ききれない減税分は翌月以降に持ち越されるので、扶養家族がいれば、その分がきちんと引かれているのかを最終的にチェックする必要も出てきます。経理・事務担当者にとって、大変な1年だと思います」とコメントしています。

また、立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏は「中小零細企業から給与計算を委託されている税理士の方は、『手間は増えるが追加手数料を取るわけにもいかない』と頭を抱えていますよ。物価高で国民生活が逼迫する中、事務負担が増えるだけで効果の期待できない定額減税が悪評ふんぷんなのは当然。人気取りにしても酷いと言わざるを得ません」と指摘しています。

「恩着せメガネ」と揶揄されるのは理由がないわけではありません。


5.責任は最終的に誰かがとらなければならない


解散もできず、総理の椅子に座り続けるには、9月の総裁選で再選するしかなくなった岸田総理ですけれども、過去の総裁選では現職が敗れたのは一度きり。現職が続投をめざした場合はそのまま再選というのがこれまででした。

ところが、今回はそうでもないようです。

朝日新聞は6月中旬に全国の自民党都道府県連の幹事長あてにアンケートを行い、総裁選で岸田総理の再選を望むかどうかを質問しました。

アンケートには、全47都道府県連から返信があり、総裁再選を望むかどうかの質問に「はい」と答えたのは岸田総理の地元である広島や茨城、福岡、「いいえ」は岩手、岐阜、静岡、愛知、岡山だった。「わからない」は8府県、「その他」と無回答は計31都道府県でした。

殆どが「その他」と無回答なので、これですべてわかる訳ではありませんけれども、衆院補選や地方選で連敗していることや、6月4日、自民党横浜市連が市内で開いた会合で幹部から、「党の顔」を代えるために岸田総裁の退陣を求める声が上がったことなどから、潜在的不支持は相当あるのではないかと思われます。

岸田総理退陣論は、身内の自民党議員からも出ています。

6月16日、麻生派の斎藤洋明衆議院議員は新潟県新発田市で開いた自らの会合で、政治とカネの問題をめぐり「原因究明と処分が十分なされていないというのが国民の評価であり、実態だ。信頼を得られるような対処ができなかったにもかかわらず、無理やり政治改革をしても国民の理解は得られない……岸田総裁は頑張っているが、責任は最終的に誰かがとらなければならない……裏で引きずり下ろす必要はない。次の総裁選挙で、真に自民党を改革できるような候補を応援したい」と述べました。

続く22日、今度は茂木派の東国幹衆議院議員が、北海道旭川市で開かれた自民党の会合で、「個人的な思い」と前置きした上で「ゆめゆめ再選などと軽々しく口にすることではなくて、自民党に新しい扉を開く、その橋渡し役を私は担ってもらいたい……自民党は人材豊富だ。9月の総裁選では国民の信頼回復のため、新しい門出が求められると思う」と発言しています。

これらはそれぞれ麻生派、茂木派の若手議員であることから、麻生氏、茂木氏が岸田降ろしの一環として、若手にそう言わせたのだ、という見方もあるようです。

更に翌23日に配信された文芸春秋のオンライン番組で、菅前総理が、9月の総裁選について「刷新感を国民に思ってもらえるかどうかが、1つの節目になる……このままでは政権交代してしまうとの危機感を持つ人は増えている」と「総裁交代論」に言及。総裁選では、新たなリーダーが出てくるべきかとの質問に「そう思う」と答えています。

菅前総理の発言について、6月24日、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」に出演した政治ジャーナリスト田崎史郎氏は「菅さんはこの3年、ずっと不満を募らせてきた。総理に対する批判はしなくても、煮えたぎるような不満は持っていたが、総理が総裁選への意欲を示されたことで、ついに我慢の限界を超えて、昨日の発言になったと思う」と解説。「前総理が現職を批判するのはいけないということで我慢をされてきたが、菅さんの発言は今後の政局に大きな影響を与えると思う……党内では菅さんに拍手喝采を送る人も多いと思う」と述べています。

そして、9月の自民党総裁選について、「これまでとかなり変わると思う。派閥単位で動いていると、我々も誰が勝つかは分かりやすいが、現在派閥として残っているのは麻生派だけだ。他の人は無派閥になっており、1人1人が判断してやることになるので本当に読みづらく、どう動くか分からない総裁選になると思う」とコメントしています。

麻生派、茂木派に加え、菅グループからも岸田降ろしを仕掛けられているとすると、たとえ総理といえど、これに抗うのは難しいのではないか。9月の総裁選は日本にとっても、大きな山場を迎えるのではないかと思いますね。



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この記事へのコメント

  • naga

    岸田首相はいまいちですが、代わりの顔ぶれを見ると岸田首相の方がましと思えます。
    菅前首相が首相に復帰するなら一応歓迎ですが(神奈川の特徴で再生エネルギー押しなところが不安)  高市氏は良いと思いますが、仮になってもどこの派にも属さず政権を維持できるのか不明。
    野党はというと実務能力があるように見えないのと、中国や韓国、ロシアの工作員のような人物ばかりでいまいちを通り越して危険なレベルです。(自民党でも石破氏や河野氏は同様)
    私は消去法で岸田が良いと思います。岸田を追い出すともっと地獄を見るのでは思います。かつての民主党時代のように。
    2024年06月27日 13:31