

1.すずつき入る
7月4日午前、中国東部・浙江省の沖合を航行していた海上自衛隊の護衛艦「すずつき」が一時、中国の領海内に入ったことが明らかになりました。
当時、「すずつき」は中国軍の訓練の監視任務に当たっていて、中国側から退去勧告を受け領海の外に出たとのことです。
鹿児島県沖や沖縄県の尖閣諸島の沖合では、中国の艦船が日本の領海内を繰り返し航行していますけれども、逆に、海上自衛隊の護衛艦が中国の領海内を航行するのは異例なことで、防衛省が当時の経緯を調べているということです。
7月11日、林芳正官房長官は午前の会見で、自衛隊は日本周辺の海空域で警戒監視などさまざまな活動を行っているとした上で、「自衛隊の運用に関する事柄のため、答えを差し控える」と述べています。
同じく11日、中国外務省の林剣報道官は会見で「日本の艦艇の違法かつ不適切な行動について厳正な抗議を行った。日本側は技術的なミスだったと説明した……日本側に対し徹底的な調査を行い、同様の事態を繰り返さないことを約束するよう求める」と述べています。
国際法で、各国の艦艇は、沿岸国の秩序や安全を害さなければ領海を通過できる「無害通航権」が認められているとはいえ、護衛艦ですからね。もし、実弾を積んでいたとしたら、「無害だ」と言い張ったとしても相手は納得しないでしょう。
いつも遺憾砲しか撃たない日本が、いきなりこんな大胆な動きをしたのは驚きです。
2.酒井良海上幕僚長更迭
一方、防衛省や自衛隊の幹部を大量処分するという事件も起きています。
7月12日、防衛省は安全保障に絡む「特定秘密」の杜撰な管理や海上自衛隊員による潜水手当の不正受給などがあったとして、懲戒免職11人、停職83人を含む計218人(延べ220人)の処分を公表しました。「背広組」と呼ばれる防衛官僚の幹部によるパワハラも初めて認定しました。
防衛省によると、違反や不正が確認されたのは、国の安全保障にかかわる「特定秘密」の情報の取り扱いと、潜水手当の受給、部隊で無料で提供される食事の飲食、パワーハラスメントの4件です。
このうち「特定秘密」をめぐっては、海上自衛隊の艦艇38隻で船舶の動向に関する情報などを資格のない隊員でも見ることができる状態にするなど陸海空自衛隊などで合わせて58件の違反が確認されたということです。
そして、潜水手当をめぐっては、海上自衛隊の幹部を含む隊員62人が、実際には潜水をしていないのに潜水したことにするなどして、手当を不正に受け取っており、不正受給した手当は、記録が残っている2017年4月から、おととし10月までの5年半で合わせておよそ4300万円に上るということです。
また、海上自衛隊では幹部を含む隊員22人が、基地の中に住む隊員だけに無料で提供される食事を資格がないのに食べ、不正飲食した食事代は、去年3月までの3年間で合わせておよそ160万円。このほか、防衛政策の立案などを行う内部部局では、課長級以上の幹部職員3人が部下に威圧的な言動を繰り返すなどのパワーハラスメントを行っていたということです。
このように、200人以上が一斉に処分されるのは極めて異例の事態で、木原防衛相は最も多くの違反があった海上自衛隊を新たな体制に立て直す必要があるとして、トップの酒井良海上幕僚長を今月19日付けで交代させることを明らかにしました。
3.ワシントンサミット宣言
7月10日、北大西洋条約機構(NATO)は、首脳会議を行い、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対し、年間400億ユーロ(約7兆円)以上の支援を来年も継続することなどで合意しました。
NATOが首脳会談後、共同宣言を発表。ウクライナのNATO加盟について「不可逆的な道」と従来より踏み込んだ表現で言及したものの、具体的な道筋については、昨年の首脳会議と同様に「加盟国が同意し、条件が整えば招待する」としています。
また、ウクライナへの安定的な支援を継続するため、ドイツに兵士への訓練や兵器供与の調整を担う新司令部を設置。ウクライナ政府との意思疎通を円滑化する目的で、NATOの文官である上級代表を首都キエフに初めて常駐させ、核戦力の近代化を進めることにも言及しています。
一方、中国に関して、ロシアに軍事転用可能な部品を輸出しているなどとして「決定的な支援者」だと過去の首脳会議と比べても強い文言で批判しています。
共同声明で中国に関して触れた部分を引用すると次の通りです。
26. 中国は、いわゆる「無制限」のパートナーシップとロシアの防衛産業基盤への大規模な支援を通じて、ロシアのウクライナに対する戦争を決定的に支援する存在となっている。これにより、ロシアが近隣諸国や欧州大西洋の安全保障に及ぼす脅威が増大している。国連憲章の目的と原則を遵守する特別な責任を負っている国連安全保障理事会の常任理事国として、我々は中国に対し、ロシアの戦争活動に対するあらゆる物質的および政治的支援を停止するよう求める。これには、ロシアの防衛部門への入力となる武器の部品、装備、原材料などの軍民両用物資の移転が含まれる。中国は、自国の利益と評判に悪影響を与えることなく、近年最大のヨーロッパ戦争を可能にすることはできない。ロシアが脅威になっているのは中国のせいだ、と思いっきり批判しています。
27. 中国は、欧州大西洋の安全保障に引き続き体系的な課題を突きつけている。我々は、中国に起因する偽情報を含む悪意あるサイバー活動やハイブリッド活動が継続しているのを目にしている。我々は、中国に対し、サイバー空間で責任ある行動をとるという約束を守るよう求める。我々は、中国の宇宙能力と活動の発展を懸念している。我々は、中国に対し、責任ある宇宙行動を促進するための国際的な取り組みを支持するよう求める。中国は、より多くの弾頭とより高度な運搬手段の増加により、核兵器の急速な拡大と多様化を続けている。我々は、中国に対し、戦略的リスク削減の議論に参加し、透明性を通じて安定を促進するよう求める。我々は、同盟の安全保障上の利益を守る観点から相互の透明性を構築することを含め、中国との建設的な関与に引き続き前向きである。同時に、我々は共通の認識を高め、強靭性と備えを強化し、中国の強制的な戦術や同盟の分裂を図る取り組みから身を守っている。
4.NATOはロシアの次に中国と戦争したがっている
このNATOサミットについて、国際情勢YouTuberの及川幸久氏は自身の動画で次のように述べています。
・今日7月11日に、3日間に渡ったNATOサミットが終了した。及川氏はNATOはロシアの次に中国と戦争したがっていて、其の尖峰として日本に戦わせようとしているのではないかと述べています。
・今回のNATOサミットで、NATOはロシアの次に中国と戦争したがっているのかと、匂わせる声明が出てきた
・今回のNATOサミットはNATOが出来て75周年の記念サミットだった。
・NATOの共同声明は、表向きは、ウクライナにさらに430億ドルの支援をしますとこれまで通りの話。
・ところが中国の話が出てきたんです。NATOはロシアの次に中国と戦争したがっているのじゃないかという疑惑が出てきた
・どういうことかというと、戦場はアジアなのでNATOは関係ない。
・そこで今回、太平洋の国々をNATOサミットに招待していた。
・それが日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド。こういう国々もNATOと一緒に中国と戦ってくれという話をどうもしてたんじゃないかという話になっている
・ウクライナはNATOに加盟したい、ゼレンスキー政権はNATOに加盟したいで、NATOはウクライナを加盟させたいということで、両者の意見は一致してるが、なぜかこの3年間実現していない
・NATOはウクライナを加盟させると言いながらなかなかそうできない、結局条件を満たせないってことなのだが、今回は、もうウクライナのNATO加盟は引き返すことのできない道であるという言い方をした
・7月10日のニューヨークタイムズの記事で、NATOが初めてロシアにウクライナ攻撃の支援をしている中国を批難というのがでた。
・NATOのトップ、ストルテンベルグ事務総長が記者会見で「ロシアがウクライナ戦争を続けられるのは中国のせいなんだ」と発言した。
・どういうことかと言うと中国がロシアに貿易している、例えば軍民両用の装置、民間用に見せて実は軍事用にも使えるものを貿易で売っている。
・中国がロシアに、例えば超小型電子技術などこういうものを貿易で売ってる、提供してる、だからだからロシアがウクライナ攻撃
できるようなミサイルを作ることができるんだと、中国からの貿易がなかったらもうロシアなんかミサイルなんか作れないしウクライナに勝てるわけないんだ、とこういうこと言ってる
・そこで全NATO加盟国が中国に対してこのような状況を続けさせるわけにはいかないと表明したと、ストルテンベルグ事務総長は言っている
・さらにはNATOは中国に対してロシアへの全ての物質的政治的支援を止めるよう要求したわけです
・その上で中国さえ手を引いてくれれば、ロシアなんてNATOが全面的にバックアップしたらウクライナが勝つに決まってるんだと、そうなればウクライナのNATO加盟は引き返すことのできない道なんだと、ちょっと非現実的なんですけどそんな話をしている
・ウクライナのNATO加盟というのはしかるべき時が来たら、加盟できるできるかどうかではなくいつできるかだ、こういう力強い発言をストルテンベルグ事務装置はされていた
・これに関して中国は当然反論しています。中国はロシアと貿易しているが武器支援はしてないと言っている。これ実は事実なんです。
・中国はロシアと親しいし、プーチンとえ習近平は何度もあっている。
・しかし中国はこのウクライナ戦争に対しては、うまく中立の立場を保ってる。貿易はしてるけど武器支援は実はしてない。
・しかしNATOの言い分は、いやいや一見武器を支援してないように見えてハイテクのものはすぐ軍需に使えるんだと、拡大解釈をしてるわけです。これはNATOの常套手段。こうやって、いろんな国を挑発するわけです
・これに対してえ中国はNATOは対立を煽っていると、決してこのチャンネルとしては中国を庇う立場ではないんですけど、中国の言ってることは事実だと思いますね
・問題は日本、韓国、オーストラリアニュージーランドが招待参加してるわけです。
・そしてこの問題を共有してる。中国を挑発するために今回のNATOサミットがある。その次の展開としてアジアで戦争になった場合、NATOってのは北太平洋なんで太平洋全然関係ないんです
・そこでNATOと一緒にというか、NATOの代わりに中国と戦ってくれますよねってことで呼ばれてる。
・これが今回の75周年目のNATOのサミットだったわけです。
・NATOのウクライナ支援は失敗したので、誰かのせいにしなきゃいけないから中国のせいにしようと、要はそういう話だったんだ
という風に言われています。
・これはナラティブ、作り話です。完全な作り話ですね。問題はこの作り話はNATOの公式声明になってるんです。
・さらにはこのNATOの作り話に日本も参加するのかと、ここが問題です。
・我々日本としてはまさかこのNATOがやろうとしている、アジアでの戦争にみすみす巻き込まれるのか、十分見ておかなきゃいけない
話です。
5.日本はNATOの手先となるか
NATO首脳会談に出席した岸田総理は、その成果について、会見で次のように述べています。
・(NATO(北大西洋条約機構)首脳会議における総理の発言内容、出席の成果について)これは、筆者の妄想にしか過ぎませんけれども、冒頭に取り上げた、海自護衛艦が中国の領海に入った件や、防衛省、自衛隊の大量処分は、NATOが目論む対中戦争に備え、日本政府が準備しているのではないか、と。
まず、NATO首脳会合のパートナーセッションに、3年連続、出席いたしました。このセッションでは、ロシアによるウクライナ侵略ですとか、インド太平洋の情勢など、国際的な安全保障情勢について、さらにはNATOとインド太平洋のパートナー、すなわちIP4(日本、豪州、ニュージーランド、韓国)との協力についても議論を行いました。そのセッションにおいて、御指摘のように、今、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障環境、ますます不可分になっている、こうした認識を私の方から申し上げ、最近の露朝軍事協力の進展といった動きにも懸念を表明した点で、認識を一致することができました。また、欧州各国がインド太平洋に対して関心を強めているという動きについては、歓迎も申し上げました。
成果についてですが、地域を超えた同志国の連携の重要性、改めて確認されたこと、そして日NATOの協力関係を一層強化していくことでも一致いたしましたし、さらには、IP4とNATOとの間でも、旗艦事業について合意をすることができ、IPとNATOとの持続的な協力の確立、こういった点についても確認したこと、これらは成果として挙げられると考えています。
・(防衛省・自衛隊の不祥事が明るみになり、今後のNATOや同志国との情報共有の在り方に影響を及ぼす可能性がある中、大臣や幹部の責任や処分も含めた現時点での対応方針について)
御指摘のように、防衛省・自衛隊において、特定秘密の不適切な取扱いなど、複数の事案が確認され、このことによって、国民の皆様に御心配をお掛けしていることについて、まずお詫びを申し上げなければならないと思っています。そして、木原防衛大臣からは、複数の事案の調査結果、さらには関係者の処分について報告を受けておりますが、日本時間12日に公表をする、こうした報告を受けているところです。現在の安全保障環境、今回のNATO首脳会合、議論を振り返りましても、改めて大変厳しいものがあると認識をしています。その中で、我が国の防衛、一分の隙も許されない状況にあると考えておりますが、そういった中、木原大臣においては、防衛大臣の責任として、強力なリーダーシップを発揮し、防衛省・自衛隊の組織そのものの早急な立て直し、さらには防衛体制を万全なものとする、こういったことに取り組むことによって、国民の信頼回復に全力で当たってもらわなければならないと考えています。以上です。
【以下略】
遺憾砲しか撃たない日本が、いきなり護衛艦で中国の領海に入ったのは、中国の反応を確かめると共に、有事になったら、日本はやるぞ、という外交メッセージを送ったとも解釈できます。
また、有事の際、「特定秘密」が漏れる体制であれば、戦争なんて覚束ない。ゆえに、大量処分と体制見直しを図っているのではないか。
気になるのは、これらが報じられたのが7月11日と12日という、NATOサミットの共同声明が出た直後だということです。護衛艦「すずつき」が中国領海に入ったのは4日なのに、報じられたのは11日です。そして、その翌日に防衛省・自衛隊幹部の大量処分です。
これも、見方によれば、日本のNATOに対する外交メッセージだとも解釈できます。つまり、対中戦争の際には一緒に戦ってくれというNATOの要請に「分かりました」と返答したのではないかということです。
これがただの妄想であればよいのですけれども、かなり気になりますね。
この記事へのコメント
金 国鎮
韓国にも接近している。
彼らの社会は東アジア諸国の中国・韓国・日本と相い入れるような社会だろうか?
彼らは軍事力には今も昔も敏感だ。
一方東アジアの3カ国の中で中国のみがロシアと軍事的・経済的に接近しているが、漢人の
中国が多民族のロシアとうまくやって行くのは難しいと睨んでいる。
東アジアは歴史的に中央アジア諸国を通じてヨーロッパ諸国と付き合ってきた。
欲ボケの東アジア諸国とNATO諸国がどうしてうまく付き合っていけるのか分からない。
ロシアがウクライナを軍事的に抑えている限り、ロシアは東アジアを守る盾となっている
と考えるのが常識ではないだろうか?
自由と民主主義はバイデンとゼレンスキーの脅し文句にしか過ぎない。
東アジアがロシアをそう考えればNATO諸国は政治的に崩れていく。
そのためにNATO諸国はアアメリカを引き入れて必死だがトランプはそうではない。
中国はそれに気づいている。日本・韓国はどうだろうか?
日本・韓国がドルにしがみ続く限り、ドル暴落でも起こらない限り続くだろう。
基本は軍事的に肥大した戦前の日本が英・米と戦争を起こして崩れていった。
周辺のアジア諸国を正しく評価できなかったが今も続いている。