進撃のトランプとヒートアップするアメリカ

今日はこの話題です。
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1.トランプ登場


7月15日、アメリカの共和党の全国大会がウィスコンシン州ミルウォーキーで開催されました。

トランプ前大統領の暗殺未遂のわずか2日後の開催だけに、会場の周囲には厳重な警備が敷かれました。周辺は数ブロック先まで車両が通行止めとなり、金属探知機や爆発物探知犬を配した保安検査場が何重にも設置され、物々しい雰囲気に包まれる一方、セキュリティーチェック後のエリアでは出店が並び、お祭りムードも漂いました。

会場では、トランプ暗殺未遂事件で犠牲になった男性を悼み、黙祷がささげられました。夜には、負傷した右耳に白いガーゼのようなものをつけたトランプ氏も姿を見せ、柔らかな表情を浮かべながら支持者に手を振り、歓声に「ありがとう」と応じました。

大統領候補の指名投票では各州・地域の代議員が候補者への投票数を読み上げる点呼投票でトランプ氏が全2429票のうち2387票を獲得。トランプ氏は正式に共和党の大統領候補に指名され、支持者から大きな歓声で迎えられました。

この日、トランプ氏の演説はなかったものの、およそ1時間にわたって滞在。関係者の演説を聴いたりしていました。

アメリカのメディアは、「トランプ氏はいつもと違い、控えめに見えた」などと、トランプ氏の態度に変化がみられたと伝えています。

銃撃事件後、初めて公のイベントで支持者の前に姿を見せたトランプ氏について、会場にいた支持者の女性は「とても興奮した。彼は殺されていたかもしれないのに、ここに強い姿でいる。涙が出そうになった」と話し、また別の女性は「トランプ氏がこの国をよくしてくれるはずだ。この国の未来に希望を持てる。またアメリカはよくなると思う」と語っています。




2.ジェームズ・デイヴィッド・ヴァンス


この日の大会では、副大統領候補も発表され、トランプ氏が起用を発表したJ・D・ヴァンス上院議員が指名されました。

トランプ氏はこの日、副大統領候補に、オハイオ州選出上院議員のJ・D・ヴァンス氏を充てることを発表。「私がアメリカを再び偉大にするのを助けるため、彼はできることをすべてやるだろう」とSNSで述べています。

ヴァンス氏はオハイオ州ミドルタウンで生まれ育ち、海兵隊に入隊してイラクで従軍。その後オハイオ州立大学とイェール大学ロースクールで学位を取得し、シリコンバレーでベンチャーキャピタリストとしても活躍しました。

ヴァンス氏は、トランプ氏が初めて大統領選に出馬した2016年に出版した自叙伝「ヒルビリー・エレジー」で、製造業が衰退した「ラストベルト」の一つであるオハイオ州の貧困に苦しむ白人労働者の姿を描き、ベストセラーになりました。

この本により、ヴァンス氏は、ニューヨークの異端児ビジネスマンがアメリカ中部、特にトランプ氏の大統領当選を助けた労働者階級や田舎の白人有権者の間で人気を集めていることを説明できる人物という評価を得ることとなります。

ドナルド・トランプ・ジュニア氏はこの本を愛し、政治家としてのキャリアをスタートさせる際にヴァンス氏の存在を知ったそうで、二人は意気投合し、友人関係を続けています。

トランプ氏が2016年の選挙で勝利した後、ヴァンス氏は故郷のオハイオ州に戻り、反オピオイド慈善団体を設立。更に講演活動にも精力的に取り組みました。ヴァンス氏は、共和党のリンカーンデーディナーの人気ゲストとなり、母親の麻薬中毒で経験した苦難など自身の体験談が人々の共感を呼んでいます。

ヴァンス氏は元々、トランプ氏の支持者ではありませんでした。

2016年当時、共和党の「絶対トランプ反対派」だったヴァンス氏はトランプ氏を「危険」で「大統領職に不適格」と呼んでいました。けれども、2021年にヴァンス氏がトランプ氏と面会した時には、ヴァンス氏は、トランプ氏の大統領としての功績を挙げて、意見を翻し、トランプ支持派に鞍替えしています。

ヴァンス氏は上院議員当選後、議会でトランプ大統領の熱烈な支持者となり、トランプ大統領の政策と行動を絶えず擁護しました。

保守派ヘリテージ財団のケビン・ロバーツ会長は、介入主義的な外交政策からの転換、自由市場経済、そして「アメリカ文化の拡大」など、重要な問題に関して、ヴァンス氏を保守運動の主導的な代弁者と評しています。

また、副大統領候補者選びのプロセスに詳しい関係者は、バンス氏は共和党候補に討論スキルとトランプ氏のビジョンを明確に表現する能力をもたらすだろうとコメントしています。

更に、保守系活動家グループ「ターニング・ポイントUSA」の創設者チャーリー・カーク氏は、ヴァンス氏はアメリカ第一主義の世界観を説得力を持って表現しており、ミシガン州やウィスコンシン州など、トランプ氏が2020年の選挙で僅差で敗れた州で助けになる可能性があると述べています。




3.温度を下げる必要がある


共和党大会前日の14日、バイデン大統領は、ホワイトハウスの大統領執務室から国民に向けての演説を行いました。

バイデン大統領がホワイトハウスの大統領執務室から国民に向けて演説するのは、就任以来3回目。執務室からの演説は、特に深刻な事態について大統領が国民に語りかける際にのみ行われるのが通例となっています。1回目は2023年6月に連邦政府の債務上限引き上げを連邦議会に働きかける際。2回目は昨年10月のハマスによるイスラエル攻撃を受けてのものでした。

バイデン大統領は約6分半の演説で、「暴力は決して回答にならない」と強調した上で「この国の政治的発言は熱くなりすぎている。温度を下げる必要がある……アメリカでは私たちは意見の違いは投票によって解決する、銃弾によってではない」と、呼びかけ、「アメリカを変える力は常に、国民の手にあるべきだ。暗殺者になろうとする者の手ではない……どれだけ強い信念を抱いているとしても、決して暴力に訴えてはならない……私たちは意見が合わないかもしれないが、お互いに敵ではない。ご近所同士だし、友人同士だし、同僚同士、市民、そして何より、私たちはお互いに同じアメリカ人だ……アメリカの民主主義で意見の相違は避けがたいことだ……しかし、政治は決して文字通りの戦場であってはならないし、ましてや、殺害の場などであってはならない」と訴えました。

一方、トランプ前大統領は、同じく14日、事件後初となるワシントン・エグザミナー紙のインタビューに応じています。

トランプ前大統領は、自身の暗殺未遂事件で選挙戦が一変したと述べ、「国を一つにするチャンスを与えられた」と説明。共和党大会での演説について「いかに皆ひどく、腐敗しているのかを語るのは、それが事実であってもよくないと思った。とても勇ましい演説を用意したが、あの経験の後でそんなことは言えない…全米だけでなく、全世界を一つにするチャンスだ」と、歴史の要請に応えるとしています。

トランプ前大統領は、翌15日の共和党全国大会では演説しませんでしたけれども、大会最終日の18日に指名受諾演説を行う予定とされています。


4.状況を利用させるな


けれども、バイデン大統領、トランプ前大統領の思いとは別に共和党、民主党の両陣営はヒートアップしています。

トランプ前大統領の暗殺未遂事件に至ったペンシルヴェニアの会場での警備について、シークレットサービスを批判する声が出ていますけれども、共和党内からは、バイデン大統領が前大統領を厳しく非難し続けたことが今回の暗殺未遂につながったという声が相次いでいます。

今回、副大統領候補に指名されたJ・D・ヴァンス上院議員は事件後、「バイデン陣営はこれまで、ドナルド・トランプ大統領がいかに独裁的なファシストで、何としても阻止しなくてはならないのだと主張し続けてきた……そういう物言いが直接、今回の暗殺未遂につながった」と批判しています。

今月8日付の米政治サイト「ポリティコ」記事によると、バイデン大統領はこの日、大口献金者との内々の電話会談で「自分の仕事はひとつ、それはドナルド・トランプを倒すことだ。それには自分が最適の人間だと確信している。なのでもう討論会のことを話すのはやめよう。今はもう、トランプに照準を合わせる時だ」と話したとされています。

この報道に、共和党マイク・コリンズ下院議員はソーシャルメディアに、「ジョー・バイデンが命令した」のだと発言し、マーシャ・ブラックバーン上院議員も、「ほんの数日前、バイデンはトランプに照準を合わせるべき時だと発言した。そして今日、暗殺未遂があった」と13日夜にソーシャルメディアに投稿しています。

対する民主党は、党重鎮のティム・ケイン上院議員はBBCに対して、暗殺未遂事件をバイデン氏や民主党のせいにしようとする共和党関係者の発言は「おぞましい」と非難。「こうした銃による暴力という病が、なぜアメリカで作り出されているのかを分析する必要がある。我々だけが世界で突出している。アメリカには実に良いところが実にたくさんあるが、自分に正直に鏡を見つめないとならない……いったいどうやって20歳が、これほどの被害をもたらす殺傷力のある自動式の銃を手に入れられるというんだ」と、反論しています。

また、超党派研究団体「アドバンス・デモクラシー」は、通信アプリ「テレグラム」上の右派チャンネルや、右派ウェブサイトに上がっている報復を呼びかける投稿を追跡しているそうです。

例えば、極右団体「プラウドボーイズ」の支部によるチャンネルには、トランプ前大統領に敵対する全員を「DCの往来で吊るすべきだ」などと、首都ワシントンでの公開処刑を呼びかける投稿もあったり、トランプ支持者たちの掲示板には、「今こそ戦争だ」、「共存したくないのは向こうの方だ」などと報復を求める投稿が相次いでいるとのことです。

その真偽は分かりませんけれども、もし仮に、バイデン陣営の裏に黒幕か何かがいて、トランプ前大統領の暗殺を指示していたとしたら、今の状況を逆に利用してくるのではないかと思います。

たとえば、自分達でバイデン大統領を暗殺するなりなんなりで引きずり下ろしたあとで、やったのはトランプ支持者だとかなんとかいって、罪を擦り付ければよいからです。

実際、ネットではそれを指摘する投稿がバンバンされているようですけれども、大統領経験者すら暗殺しようとする「黒幕」がいるのなら、バイデン大統領を暗殺して、別の若い候補を立てようと画策したとしてもおかしくありません。

ただ、トランプ前大統領の暗殺未遂を受け、バイデン大統領、トランプ前大統領の警備が厳重になり、当日の警備を疑う声がガンガン上がっている状況で、再びの銃による暗殺決行は難しいとは思いますけれども、殺ろうと思えば、なんだってありですからね。

民主党の大統領候補指名は、今月下旬、当初の予定通りにオンライン投票という形で行われ、8月19日にシカゴで今年の党大会を開くことになっていますけれども、さしあたっては、そこまでに何も起こらないことを祈りつつ注視していきたいと思いますね。






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