エンタメ化する政治を改革するもの

今日はこの話題です。
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1.ホワイト石丸とブラック石丸


先日の都知事選で165万票を集め2位となって、注目を集めた前安芸高田市長の石丸伸二氏ですけれども、選挙後も次々と地上波に登場しては、何かと話題になっています。

とりわけ、都知事選当日、開票結果を踏まえて各メディアとのインタビューに選挙事務所からの中継で応じた石丸氏。その中で、社会学者の古市憲寿氏と激しいやりとりをしたり、元乃木坂46の山崎怜奈からの質問を受けた際には「前提が正しくない」などと指摘するなどして、ネットでは、「石丸構文」なるワードと共に一気にその裏の側面も知られるようになった感があります。

7月14日、その石丸氏はTBS「サンデージャポン」に生出演し、先述した古市憲寿氏や、元乃木坂46の山崎怜奈氏とのやりとりについて、「大前提として、私はずっとあの調子でメディアと向き合ってきました。愛情なんです。メディアにもっとちゃんとしてほしい、頑張ってほしいという思いで向き合ってきました。日本中が注目しているあのタイミングだったので、絶対に外しちゃいけないと。メディアの現状を知ってもらうには、自分が引き受ける役割がある……ちゃんとした質問に対してはしっかり答える。そうなっていないところについては、この場で言うべき質問ではなかったと分かるように対応しています。1番悪いのは4年後にメディアがまた繰り返すこと。今回あれだけやれば、次絶対に同じことやらないと思います」と説明しました。

これに、MCの爆笑問題・太田光氏から「あえて注目を引きつける戦略もあった?」と問われると、石丸氏は「そうですね。ここは外しちゃいけないっていうポイントっていう意識はありました。完全に戦略です」と答えています。

石丸氏については、同じく14日、フジテレビ「ワイドナショー」に出演したフリーアナウンサーの古舘伊知郎氏は「石丸さんって人は、ホワイト石丸とブラック石丸を使い分ける人だと思う。よく言えばハイブリッド、悪く言えば2枚舌」と評し、「だからああやって敵をつくってオールド議会と戦ってみせた。そっから勇躍、都知事選っていう流れになった。そうすると選挙戦ではホワイトを出し続けた。終わった瞬間、メディアに対して今度はブラック石丸を出して。その後、特集組まれてホワイト石丸なんですよ。なんでそんな七面倒くさいことやるんだっていう話でいえば、政治をエンタメ化するっていう彼のコンセプトがある。とにかく政治をエンタメ化して、けんかも見せる。その果てに、新しい政治やろうよっていうのが狙い」と分析しています。




2.現実離れな石丸回答


石丸氏は、同じく14日放送の読売テレビ「そこまで言って委員会NP」に出演し、パネリスト達と激論を交わしています。

泉房穂・元明石市長は、選挙期間中の石丸氏の街頭演説を3回聞いたとし、「具体的に聞かせてもらえますか……殆ど政策を語ってなかったので、大きく変えるというメッセージで、みなさんが熱狂していたと思う」と前置きし、日本を「どう変えていきたいのか」と質問しました。

石丸氏は「人口減少」を危惧していると回答。「殆どの方は知っている話のはずですが、その危なさになぜか気づけていない」と断言しました。

これに田嶋氏から、人口減少を止めるための「どういう具体的なことを考えていますか」と質問されると、石丸氏は「今の社会の規範では無理。先進国は人口減少を克服できていない。例えば、一夫多妻制を導入するか、遺伝子的に子どもを生み出すとか……社会が変わるのは100年、200年、日本だと300年はかかるかもしれない。300年間、もたせるために少しでも人口減少のペースを緩やかにし、少ない人口でも国際的な地位を失わないようなシステムを作っていく」と大胆な案を提示しました。

けれども、今は無理だとし、300年持たせるためのシステムを作っていくというのは、つまるところ、現実的な策は持っていません、と言っているに等しいと思います。一夫多妻制を導入するとか、遺伝子的に子どもを生み出すとかに至っては、どこかの異世界とかSFの世界の話に聞こえ、もっと現実離れしています。

現在、社会規範として一夫多妻制があるものとしてイスラム社会があるにはありますけれども、日本人の大多数がイスラムに改宗するとは思えませんからね0。それを考えるとやはり現実離れしています。

案の定、スタジオのパネリストからは「それがなんだっていうのか」「どうしたらそうなる」とツッコミまくられていました。

また、東京に一極集中した人口を地方に環流・回避するようにするという主張についても、医師の丸田佳奈氏から「それって移動が起きているだけで、東京で子どもを産まないですよ」とダメ出しされ、「産むっていう行為にたどり着く、ほとんどの女性が産みたいなという具体的に何をしますか」と詰め寄られました。

石丸氏は「そのために、え~」と言葉を詰まらせ、少し考えると「東京以外にも正解がある」と固く目を閉じて、「言葉にすると、すごく緩いんですけど、地方の魅力、そこに住んで、働いていいなという意識がないので、東京以外は魅力がなくなってますね」と回答しました。

けれども、これは現状分析しているだけであって、解決のための具体策ではありません。こちらも同様に、作家の竹田恒泰氏から「だとすると、都知事の仕事で、地方都市の首長の仕事。例えば、泉さんのように実績を上げて、こういうふうにしたら人口減少を止めることができる」と実績に基づいた政策を求め、都知事選に出馬せずに、安芸高田市長として、だれもが納得する「人口減少」の大胆政策を成し遂げたほうが、説得力があったと苦言を呈されていました。

前述した「サンデージャポン」では、「ちゃんとした質問に対してはしっかり答える」といっていた割には、ぼんやりした答えしかしていない印象です。




3.大衆は政策には興味がない


けれども、この石丸氏が都知事選で蓮舫氏を上回る165万票を集めたのも事実です。

その大きな要因の一つに無党派層の「受け皿」になったことがあるのですけれども、では、どうやって無党派層の支持を集めたのか。これについて石丸陣営で選対事務局長を務めた藤川晋之助氏は朝日新聞のインタビューで次のように答えています。
――なぜ石丸氏は165万以上の票を獲得できたのでしょうか。

街頭演説を200回超やったが、特徴的なのは、細かい政策を全く言わないことだった。自己紹介を言い続けた。「小さな問題はどうでもいいんだ」といって「政治を正すんだ」という話をずっとやり続けた。それでも来る人の8、9割は「すごい」と言って帰っていく。たいして演説はうまくないし、政治の現場を知る人たちからは「中身がない」と批判ばっかりだった。だが、彼はそれを含めてわかってやっている。

彼は「長い時間演説し、政策を主張したって、今までの政治家は政策や公約を守ったことあるのか」と言う。有権者が本気になって政策を見て、「この政策こそ必要だ」として投票するような選挙に、今は全くなっていない。
藤川氏は「大衆は政策には興味がない。今の政治は腐っているとくり返すだけで維新ぐらいの党はできると分析しているとのことですけれども、筆者は7月11日のエントリー「石丸構文が引き付けたもの」で次のように述べたことがあります。
筆者は石丸氏に若年層からの支持が集まったのは、単にネット戦略が上手かっただけではないのではないかと考えています。

それは、若年層の鬱屈した不満の発散として、石丸氏がそれをやっているように見えます。

若年層は、政治に興味がないのではなくて、政治に絶望して、何をやっても無駄と諦めている。そして、報道しない自由を行使し、自分達の声を少しも報じないマスコミを特権階級、上級国民として見えている可能性があるということです。

ゆえに、そんな絶望しかない政治の世界に乗り込んで、マスコミという特権階級をバッサバッサと切り捨てる石丸氏を「悪を成敗するヒーロー」として、自身を慰めると同時に支持する対象となる。そんな構図があるのではないか、と。

もちろん、「石丸構文」を見抜いて中身がない/説明してないと喝破する人も沢山いるのですけれども、「悪を成敗するヒーロー」を求める人が相対的に多ければ、そちらの方に流れていくことは避けられません。

従って、政策がどうのこうのではなく、自分達の鬱憤を晴らしてくれる存在として、今は、石丸氏が支持されているだけだったとすると、たとえ、今後、マスコミが石丸氏を叩きに走ったとしても、増々石丸氏に支持が集まってしまう可能性があります。

要するに、選挙以前のところに問題があるということです。
このように筆者は、石丸氏が支持を集めたのは、「政策がどうのこうの」ではなく、「自分達の鬱憤を晴らしてくれる存在」として、支持されたのだ、と分析したのですけれども、藤川氏のインタビューを読むと、そう外してはいないな、という意を強くしました。

なんのことはない、政治への信頼などとっくに失われていたという訳です。


4.候補者の実績を報道せよ


けれども、このまま「政治は腐っている」と連呼するだけで政治がよくなる道理はありません。

7月8日放送のAMEBAPriimeで都知事選および都議補選についての分析と評論が行われたのですけれども、出演した前明石市長の泉房穂氏と小林史明衆議院議員の議論は注目すべきかと思います。

泉氏は選挙報道について「見直した方がいい。終わった後に議論するのもいいが、選挙前から、どの候補者がどういう考えなのかが分かれば、公平性のバランスをとることは可能だと思う……テレビ討論会をするべき。もし来なかったら来なかったらで。それを前提にやれば、結果的に来ると思う。次からテレビ局は自主規制せずにやったらいい」と主張すると、小林衆院議員は、都知事選で5番手だった安野貴博氏について「安野さんは東京都やデジタル庁でご活躍頂きたい。もっと早くから既存メディアが取り上げていれば、1桁増えるような得票数だったかもしれない。一方で、石丸さんは好き嫌いが分かれる候補だったので、既存メディアに取り上げられていたら票が下がっていた可能性がある」との見方を示し、「アメリカは大統領選で政党ごとに予備選で絞られていって、最後、両党の代表の1対1で勝負するから、報道が可能になっている。でも、都知事選の56人が同時に出てきたときに、どうやってやるかが今まで想定されていなかった。予備選みたいなものを入れたら、出馬のハードルが上がってしまうので、どう整理するかをやっていきたい」とコメントしました。

また、都議補選で8つの選挙区に候補者を擁立した自民党が、2勝6敗という結果だったことについて、泉氏が「危機感が薄い……国政で圧倒的な自民党が、2人しか勝てないというのは党の見直しをするぐらいの話じゃないのか」と指摘すると、小林議員は「自民党が悪かったと言ってる限り、候補者は自民党のせいにしたくなってしまう。各選挙区で自民党の票と自分で取れる票のダブルで勝ってきた。公の場で“自民党が悪かったから負けた”と言うことが彼らにとってプラスではない」と反論しました。

これに対し、泉氏が「国民にとってどうかではないか。自民党が圧倒的に力を持ってる状況だから、この結果を踏まえて、国民の方を向いた政党に衣替えしていくとか、そこで中心人物になると期待してたのに」と漏らすと、小林議員は「今、国民の皆さんに危ないと思ってますと伝えるより、補選で頑張った方々、支援いただいた方々にどういうメッセージを伝えるかが大事だと思っている」と答えました。

泉氏は「自民党が悪い」と言っているのですけれども、これは石丸氏が「政治が腐っている」と連呼しているの何ら変わりません。

また、泉氏は「自分が自民党を変えるぐらい言えばいいのに」と提案したのですけれども、これに対し小林議員は「口で変えるって言うのは簡単。中で、汗をかかなければいけない。反対する人を説得し調整していく。表でかっこよく言うと、その調整はできなくなる。今まさにその調整の当事者だから」と反論しています。

この小林議員の態度はまさに、有権者が本気になって政策を見て、「この政策こそ必要だ」として投票するような選挙に戻すためのものであると思います。

その意味で、マスコミは候補者の政策は勿論のこと、その候補者がこれまでどんな政策を実現したのか、どのような汗をかいてきたのか、というプロセスをそれこそドキュメンタリー番組にしてでも報じていく、そのような改革が必要になるのではないかと思いますね。





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