トランプ・ゼレンスキー電話会談

今日はこの話題です。
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1.トランプ・ゼレンスキー電話会談


7月19日、トランプ前大統領はウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行ったことをソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で明らかにしました。

トランプ前大統領は、電話会談について「とても良かった」と評価した上で、「わたしは、次のアメリカ大統領として平和をもたらし、戦争を終わらせる」と述べ、ロシアとウクライナは「暴力を終わらせ、繁栄へのを開く合意」の交渉に臨むことになると和平仲介に意欲を示しました。

一方、ゼレンスキー大統領は会談で「ロシアのテロに抵抗する能力の強化をアメリカが支えてくれたことへの感謝をウクライナは忘れない」とも伝え、「わたしは、ウクライナの自由と独立を守るため、アメリカの超党派による支持が不可欠だと指摘した」とし、「公正かつ真に永続的な和平実現にどのような措置が必要かについて、トランプ前大統領と個人的に協議することで合意した」と述べています。

トランプ前大統領は、みずからが大統領に選ばれれば、ウクライナ侵攻を終わらせると繰り返し主張していますけれども、その具体策については、現時点では明らかにしていません。

今回の電話会合はゼレンスキー大統領の外交努力の一環とみられていますけれども、ゼレンスキー大統領はトランプ前大統領が大統領に返り咲いた場合に支持を得たいと考えています。

けれども、トランプ前大統領はアメリカがウクライナ支援に多過ぎる資金を費やしていると示唆しており、副大統領候補のバンス上院議員はさらに懐疑的です。


2.何が対価で、誰がそれを支払うのか


ゼレンスキー大統領はトランプ前大統領との会談前日の18日、BBCの単独取材に応じています。

その概要は次の通りです。
・ドナルド・トランプ前大統領が大統領に再選された場合、トランプ前大統領との協力は「大変な仕事だが、自分たちは働き者だ」と語った。
・ゼレンスキー大統領は、アメリカの政権担当者とは相手が誰だろうと連携するつもりだと語った。
・去年、トランプ前大統領が「自分なら、ゼレンスキー大統領とプーチン大統領に会えば、24時間以内に戦争を終結させられる」と主張していたことについて、ゼレンスキー大統領は問題は「何が対価で、誰がそれを支払うのか」だと答えた。
・ゼレンスキー大統領は、戦争を24時間で終わらせる簡単な方法は、「ウクライナに対価を支払うよう圧力をかけること」だが、それは「戦争を止めて、奪われたものを与えて、そして忘れる」ということだと批判。この方法では「プーチン大統領が領土を取り、勝利を宣言する……誰も刑務所に行かないし、誰も責任を問われない、全くのゼロだ……自分たちは絶対にそれには応じない」と述べた。
・J・D・ヴァンス上院議員を副大統領候補としたことについて、ゼレンスキー大統領は「(ヴァンス氏は)ウクライナで何が起こっているのか、本当に分かっていないのかもしれない。だからこそ私たちは、アメリカにかかわっていかなくてはならない」と話した。
ゼレンスキー大統領は、終戦の代償をウクライナだけが支払うことは絶対認めないと述べています。50:50のイーブンとは言わないまでも、0:100で敗北することだけは拒絶したいように見えます。




3.世界中がロシアに圧力をかける必要がある


BBCは、ゼレンスキー大統領に対して、さらに、全面侵攻開始以来3回交代したイギリスの首相らとの関係や、欧州からの支援について質問を重ねました。

イギリスでは、18日から欧州政治共同体(EPC)の首脳会議が開かれており、ゼレンスキー大統領はこの日の午後に演説を行っています。

EPCは、ロシアのウクライナ侵攻を受けてフランスのマクロン大統領が設立した組織です。欧州連合(EU)の27加盟国に加え、イギリスのような20の非加盟国が参加しています。EUと比べて、非公式ながらも、協力醸成の場となっています。

ゼレンスキー大統領は会合前に、イギリスのキア・スターマー新首相と会談。スターマー首相は、「必要な限り」ウクライナに寄り添い続け、ウクライナ援助に30億ポンドを提供すると約束しています。

ゼレンスキー大統領は、「イギリスの姿勢が変わるとは思わない……しかし、スターマー首相には特別な存在になってもらいたい。国際政治について、世界の安全保障を守ることについて、ウクライナの戦争について語ってもらいたい」と、スターマー首相の在任期間が、イギリスの外交政策における「特別な」時代になることを望んでいると述べた上で、ウクライナには「新しいページが必要なだけでなく、そのページをめくる力が必要だ」と語りました。

ウクライナは、協力諸国が今夏の提供を約束した戦闘機「F-16」が到着すれば、自分たちの戦いを大いに助けてくれるものと期待しているのですけれども、ゼレンスキー大統領は、「約束から18カ月がたったが、まだ届いていない」と述べ、ウクライナがロシアの制空権に反撃し「空の封鎖を解く」ためには、新しい戦闘機が不可欠だと強調しています。

ゼレンスキー大統領は「すべての領土を武力で取り戻すという意味ではない。外交の力が助けになると思う……ロシアに圧力をかけることで、外交的解決に合意することは可能だと思う」と、戦場でロシアが弱体化すれば、交渉の席でウクライナは有利になることも踏まえ、ロシアを説得し、戦争の終結を検討させるためには、世界中がロシアに圧力をかける必要があると語っています。


4.ウクライナの全領土返還は交渉の前提条件ではない


ゼレンスキー大統領とのインタビューを終えた、BBCのクリス・メイソン政治編集長は、その感想を次の様に語っています。
私は多くの政治家にインタビューさせてもらえる。

そして正直に認める。私は政治家が好きだ。

皆さんの代わりに政治家を点検し、皆さんが答えを必要としている事柄について、政治家に質問する。それが私の仕事だ。

その一方で、公職に就くというのは、志の高い行為だと私は思っている。

多くの政治家は、政治以外のことで生計を立てたほうが、もっと穏やかで楽な暮らしができるはずだ。それに、そうした方が収入は多いはずだ。

けれども民主主義が機能するには、公職に就くことを良しとする人たちが必要だ。公職に就いて、それにつきものの個人攻撃に身をさらすのを覚悟の上で。

そして私は時折ありがたいことに、特に抜きんでた政治家に会う機会に恵まれる。

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はそういう政治家だ。少なくとも私が話をする政治家の中では。なぜなら、彼は戦時下のリーダーだからだ。

ウクライナでの戦争では、間接的にとはいえ、西側の価値観や本能や利益がロシアと対決している。そしてその戦争において、一つの国と国民が、敵の猛攻にさらされている。ゼレンスキー大統領はその国民を体現する存在だ。

テレビのコメディアンで俳優だった彼は、今や自国の大統領だというだけでなく、同胞の国民が存亡の危機にさらされている、まさにのるかそるかの局面での大統領となった。その結果、世界で最も顔を知られている一人になった。

その彼がイギリスを訪れた際、私は皆さんの代わりにいくつか質問をする機会を与えられた。そういう場に招かれるとは、なんてありがたいことだろう。

ロシア政府に命を狙われている人物だ。なので予想通り、周囲の警備は屈強なものだった。

ゼレンスキー大統領が約1年半前にロンドンを訪れ、ウェストミンスター宮殿でイギリス議会を前に演説した際、私は現場で、そのコミュニケーション能力の高さを目の当たりにしていた。

そして今回、一対一のやりとりでも、その能力を再び目にすることになった。

とても英語が上手だが、長いインタビューになると(私たちのは約40分だった)、ゼレンスキー大統領はウクライナ語で答えることが多い。特に、言葉遣いの正確さが重要だと本人が思う内容についてはそうだ。

なので私たちは、英語に切り替えるのを本人が楽しんだ時を除いては、通訳を介して話をした。

私はあえて、ウクライナ社会上層部の本質的な病理とは言わないまでも、そこにがっちり組み込まれているように見える汚職体質について、尋ねてみた。

外国の私たちがそれを知っていること自体、いかにウクライナ政府がその問題を重視しているかの証拠だと、彼は答えた。さらに、汚職摘発で大勢が職を失っていることも、ゼレンスキー大統領は指摘した。

ロシアがウクライナ全面侵攻を開始してから2年半だが、その間のイギリス首相はサー・キア・スターマーで実に4人目だ。しかし、またしても新しいイギリス首相とやりとりすることになった事態について、ゼレンスキー大統領は前向きだった。

イギリスは国内政治がどれだけ混乱しても、常に一貫してぶれることなく自分を支えてくれたからだという。

スターマー新首相は1週間前の10日、首相として初の外国訪問で米ワシントンを訪れ、北大西洋条約機構(NATO)首脳会談に出席した。その場でジョー・バイデン米大統領は、ゼレンスキー大統領がすぐ隣にいる状態で、よりによってロシアのウラジーミル・プーチン大統領と名前を言い間違えた。

私はその時、その場のすぐ先の廊下で、スターマー首相の記者会見が始まるのを待っていた。会見では、誰もが唖然としたバイデン大統領の言い間違いについて、記者の質問が集中した。スターマー首相はゼレンスキー大統領と同じように、ありがちなことだと、受け流そうとしていた。

しかし今回のインタビューでゼレンスキー大統領は、ドナルド・トランプ前米大統領がウクライナの今後について発言してきた内容については、受け流そうとはしなかった。もっとはっきりと自分の見解を口にした。しかも英語で。

それと同時にゼレンスキー大統領は、自分の思う限り、ウクライナの全領土返還は、戦闘終結の前提条件には必ずしもならないと認めた。

また、「すべての領土を武力で取り戻すという意味ではない」とも言った。こういう発言がどういう反応を呼ぶのか、今後を注目したい。

ウクライナでは今も激しい戦争が続く。何万人もの命が失われ、何百万人もの人が家を失い、数十億ポンドが費やされてきた。

「今こそ自由と民主主義のために立ち上がる必要があるし、その場所はウクライナだ」。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長はこれに先立ち、私にこう言った。

これは、モスクワやワシントン、そしてそれ以外の場所の人たちへのメッセージだ。そしてウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、この戦争に勝つため皆さんの支持が必要なのだと、訴え続けている。
ゼレンスキー大統領が「ウクライナの全領土返還は、戦闘終結の前提条件には必ずしもならない」と認めたことは注目に値します。なぜなら、ロシアとの条件闘争に応じるということになるからです。

けれども、それもこれも、トランプ前大統領が大統領になってからの話です。今のところは成り行きを見守るしかありませんね。



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