国際法違反と判断されたイスラエル

今日はこの話題です。
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1.イスラエルのパレスチナ自治区占領は国際法違反


7月19日、国連の主要な司法機関である国際司法裁判所(ICJ)は、イスラエルによるパレスチナ占領政策は国際法に違反していると勧告。イスラエルにはヨルダン川西岸と東エルサレムで続くユダヤ人の入植活動を停止する義務があるとしました。

イスラエルは1967年以来、ヨルダン川西岸と東エルサレムの約160カ所に入植地を作り、約70万人のユダヤ人が住んでいるのですけれども、このイスラエルによるパレスチナ占領について、ICJが法的判断を示すのは初めてのことです。

ICJは昨年1月、国連総会の要請を受けて、この件の審理を続けていたのですけれども、国連総会はICJに対し、被占領地のパレスチナ人に対するイスラエルの政策や慣行ならびに占領の法的性格について、見解を示すよう求めていました。

その答えが国際法違反という訳です。

ICJのナワフ・サラム裁判長は、「イスラエルがパレスチナ被占領地にとどまり続けることは違法……イスラエル国家は、パレスチナ被占領地に自らが違法にいる状態を、可能な限り速やかに終わらせる義務がある」とした上で、イスラエルの政策と慣行は、パレスチナ自治区の「大部分の併合」に相当すると明言。こうして占領した地域のいかなる部分に対しても、イスラエルに「主権を主張する権利はない」としました。

そして、更に、ICJはイスラエル軍による2005年のガザ地区撤退後も、同地区に対する実質的支配が続いているため、イスラエルの占領は終わっていないとの見方も示し、イスラエルに対し、ヨルダン川西岸地区と東エルサレムから自国の入植者全員を退去させるよう求め、占領によってパレスチナ人にもたらした被害については賠償するよう勧告しています。


2.国際司法裁判所勧告の政治的意味


このICJの勧告に対し、イスラエルのネタニヤフ首相は、19日に声明を出し「ユダヤ人は自分たちの土地において、占領者などではない。自分たちの永遠の首都、エルサレムにおいても、先祖代々の土地ジュデアとサマリア(ヨルダン川西岸)においても、ユダヤ人は占領者ではない……ハーグにおける嘘の判断が、この歴史的事実をゆがめることはない。そして同様に、われらの祖国の全域におけるイスラエル入植地が合法であることにも、疑いの余地はない」と反発しました、

他方、パレスチナ側はICJの判断を歓迎。パレスチナ解放機構(PLO)執行委員会のフセイン・アル・シェイク事務局長は、「パレスチナの人々の権利と、パレスチナ人の自己決定権にとって、歴史的な勝利だ……接収、入植、追放、占領下の住民に対する人種差別的慣行を通じたユダヤ化計画を破綻させ、敗北させる勝利だ」と評価し、さらに、「国際社会は国際司法の意見を尊重し、パレスチナ自治区の占領をイスラエルにやめさせなくてはならない」と呼びかけました。

今回のようなICJによる「勧告的意見」そのものに法的拘束力はありませんけれども、今回の勧告は今後、国連総会に送付され、国連総会で対応を決定することになります。もちろん、勧告に基づく国連決議が採択される可能性もあり、その場合は国連決議が今後の交渉や合意の法的枠組みとなることもあり得ます。

その意味で今回のICJの勧告は、政治的意味合いが大きいものだといえます。

更にいえば、ICJの今回の勧告は、南アフリカ政府がイスラエルがガザ地区でパレスチナ人に対するジェノサイドを行っているとする提訴とは別であり、こちらでも同様の判断が下された場合は、より一層の国際的圧力が強まるものと思われます。

実際、ICJは、イスラエルが被占領地のパレスチナ人に対してさまざまな制限を課していることについて、「人種、宗教、民族的出自などにもとづく包括的な差別の仕組み」に相当すると指摘。さらに各国に対し、援助や協力の提供を含めて、現状維持につながるような一切の行動は避けるよう、呼び掛けています。


3.強まる国際的圧力


このICJの勧告に、早速、EUが反応しています。

7月20日、EU外交安全保障上級代表のジョセップ・ボレル氏は、声明で、ICJの勧告的意見はEUの立場と「ほぼ一致している」との見解を示し、「国際法違反が絶えず増加している世界において、問題となっている主題に関係なく、一貫してすべての国際司法裁判所の決定に対する揺るぎないコミットメントを再確認することは、私たちの道徳的義務である」とし、今回の勧告について、「EUの政策への影響を考慮しつつ精査する必要がある」とコメントしました。

既にスペイン、アイルランド、ノルウェーの欧州3ヶ国はパレスチナを国家として承認していますけれども、今回のICJ勧告で更に承認する国が出てくることも考えられます。

また、日本政府も重い腰を上げました。

23日、日本政府は、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸でパレスチナ人に対する暴力行為に関与したイスラエルの入植者4人に対する資産凍結を閣議了解しました。

昨年10月、ガザ地区でイスラエル軍とイスラム組織ハマスが軍事衝突して以降、ヨルダン川西岸でも入植者によるパレスチナ人への暴力が増加していることを踏まえた措置とのことですけれども、林芳正官房長官はこの日の記者会見で「一部の過激派による暴力や脅迫、財産の破壊などの行為は死傷者を伴い、パレスチナ住民が長年居住してきた住居からの退去を強いられるなど深刻な問題となっている」とコメントしています。


4.訪米するネタニヤフ


このように、国際社会から批判と圧力が強まっているイスラエルですけれども、ネタニヤフ首相はハマスの壊滅を掲げ強硬な姿勢を崩していません。

ガザの保健当局は、22日のハンユニスへの攻撃で70人が死亡したと発表。これまでの死者は3万9006人にのぼったとしています。

そんな中、ネタニヤフ首相は、ハマスとの一連の衝突が始まって以降、初めて、アメリカを訪問し、バイデン大統領と会談。軍事支援の継続を求めました。

アメリカに出発前、ネタニヤフ首相は記者団に対し「誰が大統領になろうとも、イスラエルはアメリカの中東における強力な同盟国であり続ける……人質解放とハマスの壊滅という目標を達成するために議論する機会にしたい」と述べており、アメリカ大統領選でトランプ前大統領が返り咲くことも念頭に入れています。

実際、ネタニヤフ首相は今回の訪米中にトランプ前大統領との直接会談を要請したと、アメリカ政治専門サイトのポリティコが22日に事情に詳しい関係者の話として報じています。

件のポリティコの記事の概要は次の通りです。
・イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、今週米国滞在中にドナルド・トランプ前大統領と直接会談することを要請したと、この交渉に詳しい2人の人物が明らかにした。

・ネタニヤフ首相は今週ワシントンを訪れ、ジョー・バイデン大統領、カマラ・ハリス副大統領、連邦議会議員らと会談する予定。また、水曜日には議会で演説を行う予定だ。

・ネタニヤフ氏とトランプ氏のチームはここ数日、両首脳がフロリダで直接会談する可能性について協議している。トランプ氏はまだ会談に同意していないが、この案を完全に拒否したわけでもないと関係者は語った。

・関係者の1人は、会談が実際に行われるとすれば、トランプ氏が木曜日にノースカロライナ州で集会を行った後の週の後半になる可能性が高いと述べた。

・トランプ陣営とワシントンのイスラエル大使館はコメントの要請に応じなかった。

・この会話は、バイデン氏が大統領選から撤退するという歴史的な決断を下し、ハリス氏が大統領選に向けた選挙活動を強化している中で行われた。ハリス氏はまだチームを結成し、ガザ戦争に対する自身の立場をどう示すかを含め、外交政策の姿勢をまとめている最中だ。

・トランプ大統領はイスラエル国家の熱烈な支持者であり、2017年にエルサレムを正式に首都と認めた。翌年、米国大使館をエルサレムに移転した。

・しかし、彼とネタニヤフ首相は近年不仲になっている。トランプ氏は、2020年のバイデン氏の勝利後のネタニヤフ首相の祝辞に激怒。また、バイデン前大統領は10月7日ごろ、同国の諜報活動の失敗についてネタニヤフ首相を非難した。また、首相に対し、人質を早く帰国させる合意を固めなければ、トランプ政権は彼に好意的に思わないだろうと脅した。

・「私が就任する前に彼らは戻ってくるべきだ。さもないと、非常に大きな代償を払うことになるだろう」とトランプ大統領は先週、ミルウォーキーで行われた共和党全国大会での演説で述べた。

・ネタニヤフ首相が今週トランプ大統領との会談を実現できれば、前大統領からの支持や、ヨルダン川西岸とガザ地区における自身の政策、さらに同地区北部国境でのヒズボラに対するキャンペーンへの支持獲得に役立つ可能性がある。

・また、ハリス陣営が民主党政権の一部との対立が深まっているネタニヤフ首相をどう扱うかまだ模索している時期に、トランプ氏にネタニヤフ首相とのより正式な意思疎通を確立する機会を与えることにもなる。

・米国とイスラエルは今週、ガザでの停戦と残りの人質全員の解放に向けた協議の前進を望んでいる。両国の代表団、およびエジプトとカタールのチームは先週中東で会合する予定だったが、イスラエルはチームを派遣しないことを決定したとワシントンに伝えていた。
これまで、ネタニヤフ首相とトランプ前大統領は仲が良いとされていたのですけれども、この記事では近年不仲になっているとのことで、直接会談も取り付けられていないとのこと。

トランプ前大統領にしても、ここまで国際的批判を浴びているイスラエルに安易に接近することに慎重になっているのかもしれません。

ハマスやヒズボラと戦争している最中、ネタニヤフ首相がわざわざアメリカまで来るということはそれだけ軍事支援を含むアメリカの後ろ盾を必要としている証拠です。

ネタニヤフ首相は、誰が大統領になってもイスラエルはアメリカの同盟国だ、と述べていますけれども、ガザの状況を打開することなく、ハマスを攻撃し続けるままで、今後、アメリカの支援が受けられるのかどうか。注目していきたいと思います。



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この記事へのコメント

  • 名無しの者

    イスラエルを批判するのは簡単だが今回は今更ながらだがハマスのテロから始まった
    ハマスにパレスチナの人達を守る気は無いことは今までの行動でわかる
    人の盾に女性、子供をを平気で使っている
    それに守られているハマスの戦闘員を攻撃をすれば
    非戦闘員も犠牲になるのがわかってやっている
    子供達の悲惨な映像を国際社会にアピールしてイスラエルだけに非難が集まるようにするやり方に強い憤りを覚える
    ハマスが諸悪の根源であることはパレスチナの人達もわかっていると思う
    イスラエルにも今までの悪行を反省させる為にも国際社会はハマスの解体を推進すべきです
    2024年07月24日 10:15