イランの戦略に踊らされるイスラエル

今日はこの話題です。

画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。



2024-08-07-202700.jpg

1.近いところも遠いところも


8月4日、アメリカのブリンケン国務長官はG7諸国の代表と電話会談を行い、イランとヒズボラによるイスラエルへの攻撃は早ければ今後24~48時間以内、つまり月曜日にも始まる可能性があると語りました。

ただ、4月13日のイランによるイスラエルへの攻撃とは異なり、報復がどのような形になるかは不明だとし、アメリカはイランとヒズボラの攻撃を可能な限り制限し、イスラエルの反応を抑制することで、緊張の悪化の連鎖を断ち切る努力をしていると述べています。

そして、ブリンケン国務長官はG7外相に対し、イラン、ヒズボラ、イスラエルに対し最大限の自制を保つよう外交圧力をかけるよう求める一方、この地域における米軍の増強は防衛目的のみであると語ったそうです。

この電話会議に出席していたある情報筋によると、ブリンケン国務長官はガザ地区人質事件と停戦協定をめぐるイスラエルとの最近の協議について報告した際、いらだちを露わにした口調だったと伝えられています。

同じく4日、イスラエルのネタニヤフ首相はガラント国防相と軍、そして諜報機関の長官らとの会談を行っています。

会談前、ネタニヤフ首相は「イランとその手先は、我々をテロで締め上げようとしている。我々は、近いところも遠いところも、あらゆる前線とあらゆる分野で彼らに対抗する決意だ。我々に危害を加えようとする者は、非常に重い代償を払うことになるだろう」と述べていますけれども、「近いところも遠いところも、あらゆる前線とあらゆる分野」で対抗すると述べている辺り、どこから誰が攻撃してくるのか分からないという緊張感が窺えます。


2.いつどのように


ブリンケン国務長官はG7外相に早ければ月曜日から始まると述べていたのですけれども、月曜日も火曜日にも特にこれといった攻撃はありませんでした。

ただ、アメリカ軍が駐留しているイラク西部アイン・アルアサド空軍基地にロケット弾2発が落ちて米軍5~7人が負傷し、うち1人が重傷を負い、アメリカ軍はイラク内の親イラン武装勢力による攻撃と発表していますけれども、これが先月31日にハニヤ氏が暗殺されたことに対する報復レベルの攻撃かどうかは不明とのことです。

ブリンケン国務長官の電話会談の翌5日、バイデン大統領とハリス副大統領は国家安全保障チームから、イランとヒズボラがイスラエルに対していつ攻撃を仕掛ける可能性があるのか​​、またその攻撃が具体的にどのようなものになるのかはまだ不明であると伝えられたと、報じられています。

それによると、アメリカ当局者らによると、バイデン大統領とハリス副大統領は、アメリカ情報機関から、ヒズボラとイランおよびその代理組織からの2波の攻撃シナリオを予想していると伝えられたとのことですけれども、誰が最初に攻撃するのか、またどのような攻撃をするのかは、アメリカ情報機関にとってまだ不明だということです。

ホワイトハウスは声明で「彼らは、わが軍を防衛し、わが軍人に対するいかなる攻撃にも、わが国が選んだ方法と場所で対処するために講じている措置について話し合った」と述べていますけれども、国防総省は今後数日中に親イラン民兵による米軍への攻撃が増えると予想しており、中東で高まる緊張により、民兵はここ数カ月に比べて米軍への攻撃に対するイランの抑制が弱まっていると感じていると強調しています。


3.戦時体制のイスラエル


対するイスラエルは国内も戦時体制にあります。

イスラエル保健省は、イランとその中東の代理勢力との全面戦争に備えて、イスラエルのホテルの部屋数百室を接収し、イスラエルの民間防衛当局と医療当局も、一般市民にどう対処し、誰に連絡すべきかについての指示を放送しています。

イスラエルの国営電力会社は、発電所がドローンやミサイルの攻撃を受けた場合、12時間から48時間の停電を予想していると発表し、国民の不安が増大。イスラエル人は発電機やバッテリーを買うために地元の店を占拠している状態です。

ネタニヤフ首相は、イスラエルは防衛面でも攻撃面でも、あらゆるシナリオに十分備えていると述べていますけれども、現在、レバノン、シリア、イラク、イエメン、イランの複数の場所から数千機のドローンとミサイルがまもなく発射されるというのが一般的に予想されているようです。

イスラエルの政治・安全保障アナリストらはこれまで、イスラエルの上級指導者を標的にする可能性、イスラエルの諸都市へのロケット弾の大量発射、あるいは世界のどこかにあるイスラエルの外交使節団への攻撃など、ヒズボラの差し迫った報復のシナリオを数多く論じてきたそうですけれども、いつだれがどこでどのように攻撃されるのか全く分からないまま備えよと言われても、限界はあると思います。


4.待たせるのも懲罰の一部だ


8月6日、ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ氏は、ベイルートでのヒズボラの軍事司令官フアド・シュクル氏の暗殺から1週間を記念したテレビ演説で「結果がどうであれ、抵抗勢力はイスラエルの攻撃を見逃すことはないだろう……神のご意志があれば、我々の対応は強力かつ効果的で影響力のあるものになるだろう」と演説で述べ、ベイルートの南郊に集まったヒズボラの構成員や支持者から喝采を浴びました。

ナスララ氏は、ヒズボラは適切な時期を待って対応するつもりだとする一方、その形態や時期については示唆せず、ヒズボラに報復しないよう説得する国際的な試みはすべて無駄だった語りました。

そしてナスララ氏は、シュクル氏の暗殺と先週テヘランでハマス政治局長のハニヤ氏が暗殺されたことについて、この2件の殺害は明らかに「イスラエルの功績」だとし、これを紛争の潮目がイランの抵抗軸に不利に転じている兆候と捉えるべきではないと述べた上で、「落ち着け」と語りました。

ナスララ氏は、ヒズボラはイスラエルとの戦闘が国境地帯を越えてレバノン全土に広がるのを阻止しようとしていたとし、「レバノンとの緊張激化を選んだのはイスラエルだ」と主張しました。

さらにナスララ氏は「イランは応戦し、ヒズボラも応戦し、敵は待つだろう...敵を待たせるのも懲罰の一部だ」と述べ、対イスラエル攻撃を遅らせるのはイスラエルに心理的圧力をかけるための戦略の一環だと明らかにしています。

8月6日のエントリー「ネタニヤフの挑発とイランの戦略」で、イランの戦略として、他国からの支援をさせなくすると同時に「全面攻撃するぞするぞ詐欺」をして、イスラエルを極度な緊張体制に置き続けることもあり得ると述べましたけれども、カナダ、イタリア、ドイツ、あるいはイギリスがイスラエルへの武器輸出を止めたことや、ヒズボラの攻撃を遅らせるのは懲罰の一部だと明かしたことを考えると、本当にイランは全面攻撃するぞ詐欺による心理的消耗戦をイスラエルに強いているのではないかとさえ思えてきます。

ネタニヤフ首相は、ハマスやヒズボラ、あるいはイランをも壊滅させたいと思っているのかもしれませんけれども、もしかしたら、イランとその周辺国に戦略で一段上を行かれているのかもしれませんね。


  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント