イスラエルが抱える二つの爆弾

今日はこの話題です。
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1.新たな人質取引交渉


8月16日、アメリカのホワイトハウスは、カタール、エジプトとともに出した共同声明で、「両国政府の高官らは来週末までにカイロで再会合し、本日提示された条件に基づいて合意を締結することを目指す」と述べました。

アメリカは合意によって、イランとレバノンのヒズボラによるイスラエルへの報復攻撃が回避されることを期待しています。

ワシントンポスト紙は、カタールのモハメド・アル・サーニ首相がイランの指導者らと会談し、合意をまとめるための激しい外交努力が行われている間はイスラエルを攻撃しないようイラン政府に要請したと報じています。

ヒズボラと関係のある匿名の情報筋もワシントンポスト紙に対し、停戦努力に支障をきたす可能性のある大規模な攻撃は自制すると語っています。

もっとも、アメリカのバイデン大統領は「3日前よりもずっと近づいている……何か不吉なことを言いたくない……まだそこまでには至っていないが……近づいている」と説明しています。

一方、ハマス幹部のサミ・アブ・ズフリ氏は、ロイター通信に対し、バイデン政権は「偽りの肯定的な雰囲気」を作ろうとしており、ガザでの戦争を止める真意はなく、ただ時間を稼ごうとしているだけだと批判。

また、イスラエルのネタニヤフ首相官邸は、「イスラエルは、人質解放協定への同意を拒否するハマスを説得しようとしたアメリカと仲介者の努力を評価する……イスラエルの基本原則は調停者とアメリカによく知られている……イスラエルは、彼らの圧力によってハマスが5月27日の原則を受け入れ、合意の詳細が実行されることを期待している」とコメントしています。

イスラエルとハマスは合意が成立しなかったことについて互いに非難し合っており、バイデン氏が5月31日に初めて発表し、イスラエルが5月27日にすでに受け入れていた3部構成の合意の枠組み案を相手方が受け入れることを拒否したと主張しています。

アメリカ、カタール、エジプトの3カ国は共同声明で、「過去48時間にわたりドーハで、各国政府の高官らが、停戦合意と人質・拘束者の解放を目指し、調停者として集中的な協議を行ってきた」と述べ、会談について「真剣かつ建設的で、前向きな雰囲気の中で行われた」と評しています。

そして、「本日早朝ドーハで、アメリカはエジプトとカタールの支援を得て、バイデン大統領が2024年5月31日に提示した原則と安全保障理事会決議第2735号に沿った橋渡し提案を両当事者に提示した……この提案は過去1週間の合意事項を基にしており、合意の迅速な実施を可能にする形で残された溝を埋めるものである……作業チームは今後数日間、合意の広範な人道的条項の実施に向けた取り決めや、人質や拘束者に関する詳細など、実施の詳細について技術的な作業を続ける……人命を救い、ガザの人々に救済をもたらし、地域の緊張を緩和するという結果への道が今や開かれた……3カ国の首脳が先週述べたように、『これ以上時間を無駄にすることはできず、いずれの当事者もこれ以上の遅延の言い訳はできない。人質と拘束者を解放し、停戦を開始し、この合意を履行する時が来た』」と声明で強調しています。

アメリカは、ドーハ会談でイスラエルとハマスの双方から自国の提案への同意が得られなかった場合、「橋渡し文書」と呼ばれる文書をテーブルに載せると述べていたのですけれども、ここで出してきた形です。

バイデン政権の高官は「この48時間、ここにいる全員の意見は、この問題を解決に導くための新たな精神がここにはあるということだった」と来週カイロで終了する協議で合意できると期待しているとのことです。


2.ヒズボラのイマド4


8月16日、レバノンのヒズボラが、ミサイル発射が可能な巨大な地下トンネル網を披露するビデオをイスラエルに公開したと、アルマヤディーンニュースチャンネルの公式テレグラムが伝えました。

トンネル内の空間は広大で、数台のトラックやバイクが通行できるほどのスペースがあり、多くの人が活動し、バイクに乗って猛スピードで通り抜ける様子も映っています。トンネルはミサイルのほか、照明、技術、コンピューターなどを備えた地下ネットワークの一部であると見られています。

ビデオのテキストは、「イスラエルはいつの日か予想もしなかった運命と現実に直面するだろう。我々との戦争はレバノン国境からヨルダン国境までパレスチナ全土に広がっている。紅海、キルヤト・シュモナ、エイラートまで……これらの標的は我々の所有物であり、ミサイルは完璧な安全を確保した状態で標的に配置され、配備され、集中されている」とイスラエルを脅迫しています。

このトンネルは、イマド4と呼ばれ、施設がどこにあるのかは明らかになっていません。ヒズボラはここは秘密の場所であり、いかなる「外国」諜報機関にも発見されていないと主張しています。

親イランメディアのアル・マヤディーン紙は、このトンネル施設について「ミサイル発射台を備えた高度な地下施設と広大なトンネル網」と表現。また、親イラン派の報告書は「最先端の技術システムと、外部とつながる安全な通信ネットワークを備え、数分以内に発射命令を受信できる。さらに、ネットワークの通信はセキュリティ強化のため高度に暗号化されていると言われている」と評しています。

ヒズボラは2023年10月以降、すでにイスラエルに対して7500発のロケット弾と200機のドローン攻撃を仕掛けています。イスラエルは10ヶ月に及ぶ紛争の間、ヒズボラの攻撃に対して正確かつ均衡のとれた対応を取ることを優先してきまし。イスラエルは14000人の子供を含む約60000人を北イスラエルから避難させています。

アル・マヤディーン紙はヒズボラが公開した新しい地下施設について、「これらのチームは、発射作戦のために事前に決められた座標に基づいて活動する。さらに、独占情報筋によると、この施設には野戦病院と、8か月から1年間の期間、居住者を支えるのに十分な物資が備えられている」と報じています。

過去、イランも同様の地下ミサイル基地とドローン基地を公開していることから、イランはヒズボラにこれらの基地の建設方法を助言するだけでなく、知り得た詳細をヒズボラと共有している見られています。

一方、この地下施設を公にするという行動は逆に、軍事行動に出る可能性は少ないというメッセージではないかという見方もあるようです。




3.イスラエルは自滅している


7月13日、アメリカの政治専門紙「ザ・ヒル」は、「イスラエルは自滅している」とする記事を掲載しています。

件の記事の概要は次の通りです。
・イスラエルが敵からの脅威に直面していることを否定する人はほとんどいないだろう。しかし、ユダヤ国家にとって最大の危険は自ら招いたものであることは、誰も語らない。イスラエルの機能不全の政治は、ガザでの現在の惨事とはほとんど関係のない理由で、数十年以内にイスラエルを自滅の道へと導いた。

・この現実は、いくつかの目覚ましい成功によって覆い隠されてきた。イスラエルは2022年にフランス、ドイツ、イギリスよりも高い一人当たりGDP(約5万5000ドル)を記録した。同国のテクノロジー部門は驚くべきイノベーションを推進しており、ノーベル賞、軍事力、テレビ番組形式などにおいて実力以上の成果を上げている。

・しかし、2つの理由により、これらすべてが消えてしまう可能性がある。

・1つ目は、1967年の戦争中にアラブ人が居住する地域を占領したことである。イスラエルは愚かにも50万人以上の入植者をヨルダン川西岸に送り込んだため、今や絶望的に窮地に追い込まれている(入植者には民主的権利があるが、パレスチナの隣国にはそれがない)。イスラエルは2005年にガザから撤退したが、 10月7日のハマスによる侵攻で軍が再びガザに引き戻された。

・イスラエルとこれら2つの地域の人口は1500万人で、アラブ人がわずかに多数派を占める。多くのパレスチナ人は分割(「二国家解決」)の試みを放棄し、代わりにイスラエルへの併合と統合を要求している。もしそれが実現すれば、より裕福で、より流動的で、西洋的な生活様式に愛着を持つ多くのユダヤ人が逃げ出すだろう。ユダヤ人は再び少数派になる。何百万人ものアラブ難民の子孫が招き入れられ、その地は最終的にパレスチナと改名されるだろう。

・イスラエル人は一国家解決を選択肢として退ける傾向があるが、彼らは自分たちが何を選ぶか考えている。それでも、それがデフォルトの結果である。パレスチナ人が統合と平等を要求すれば、彼らは国際社会から多大な支援を得るだろう。イスラエルがそれに抵抗しようとすれば、イスラエルは疎外され、貧困に陥るだろう。たとえ不完全な例えではあるが、「アパルトヘイト」の叫びは耳をつんざくほどのものとなるだろう。軍需品と外交的援護をアメリカに頼る輸出志向のイスラエルには、頼れる場所はほとんどないだろう(特に、今日の大学の進歩主義者たちがその頃にはワシントンに居座っていたら)。

・二国家解決はパレスチナ人にとって有利なことではないが、イスラエルの存続にとって極めて重要である。しかし、イスラエルの右派はそれを理解できないほど愚かである。

・そして、投票パターンの変化(悲惨なガザ戦争が実際に引き起こすかもしれない)がない限り、イスラエルの右翼はどんどん成長している。その主要な構成要素は、黒い服と信仰心で知られる超正統派ユダヤ教徒であるハレディ派の人々だ。その信者は平均して一人あたり7人ほどの子どもを持ち、まもなくイスラエルのユダヤ人の6人に1人を占めることになる。彼らは時を刻む2番目の時限爆弾だ。

・このグループは奇妙な二元性を示している。主流社会から離れていながら、同時に現代世界とは相容れない革命的現実に社会を容赦なく引きずり込んでいるのだ。男性と女性は非常に制限された役割を担っている(女性はハレディ派政党の議員になることができず、多くの場面で男女分離に直面している)。彼らは一般に、独立した学校制度で男の子に数学、科学、英語を教えることを拒否し、生涯にわたる宗教の勉強を主張し、国が給付金で報いることを期待している。男性の半分だけが就労しており、その多くは国が資金を提供する宗教サービスの仕事に就いている。彼らは子供一人につき国からの補助金を受けており、彼らが支援する右派連合がイスラエルを紛争に巻き込んでいるにもかかわらず、軍務に就くことを拒否している。

・彼らの出生率は他のイスラエル人の3倍なので、人口に占める割合は1世代ごとに倍増する。現在の傾向では、人口減少や異人種間の結婚は少なく、2060年までに彼らはイスラエルのユダヤ人の過半数を占めることになるだろう。転換点が近づくにつれ、世俗的なユダヤ人の流出は加速すると予想される。これは国の経済に壊滅的な打撃を与え、イスラエルの繁栄の基盤となっているテクノロジー部門を壊滅させ、西側諸国の観光業を壊滅させ、国の自衛能力を阻害することになるだろう。

・これら2つのダイナミクスにより、次のようなシナリオが生まれる。

・ヨルダン川西岸地区(およびガザ地区)が正式に併合されるか否かに関わらず、事実上イスラエルの領土となっている地域の住民のほとんどはアラブ人となるだろう。

・(イスラエルが1967年に獲得し、ガザの場合は最近再獲得した土地に住む)アラブ人のほとんどは、非市民、つまりパレスチナ人である。約200万人がイスラエルのアラブ人である。

・ユダヤ人人口のうち、現代社会に反抗する雇用不可能な宗教過激派の割合は、着実に増加していくだろう。より身近な世俗的なイスラエル人は、大規模な脱出を経験するだろう。

・イスラエルは核兵器を持っているかもしれないが、大きく変化したユダヤ人に対してとどめを刺したいという地域の多くの敵の誘惑は圧倒的なものとなるだろう。

・世界中のイスラエルの敵は、この大惨事を歓迎するかもしれない。しかし、私を含め、イスラエルを救う価値があると信じている人もいる。イスラエルを救うには、一連の困難な手術、つまり否定できないリスクを伴い、予測可能な困難に直面する断固たる行動が必要になるだろう。

・パレスチナ戦線では、イスラエルは安全保障上のリスクにもかかわらず、おそらく和平協定なしにパレスチナ人との分離を強行しなければならないだろう(もちろん和平協定の方が良いし、試みるべきだが)。唯一の救いは、イスラエル人入植者のほぼ80%が1967年以前のイスラエル国境付近に住んでいるという事実であり、そのため国境を少し調整すれば、ヨルダン川西岸の奥深くに住むユダヤ人は10万人にとどまるだろう。おそらく彼らを排除する必要があるだろう。

・本質的に、この国境は、イスラエルが2000年代の第二次インティファーダ後に築いた 安全保障の壁となる可能性がある。

・パレスチナ人との分離は人口統計的にも理にかなっており、パレスチナ人にいくらかの正義をもたらすだろう。しかし、単に新しい国境の向こうから軍を撤退させるのも危険を伴う。この地域はイスラエルの都市に近すぎるため、ハマスや侵略を企む他のテロリストに占拠される危険はない。入植者が追い出されたにもかかわらず、イスラエルは軍の現状維持を余儀なくされるかもしれない ― 少なくとも、世界がより良い解決策を見つけるまでは。

・ハレディ派の面では、イスラエルはコアカリキュラムを課し、児童手当、宗教サービス部門の肥大化、宗教研究への奨学金、徴兵免除を廃止する必要がある。こうしたショック療法を通じて、国民が徐々に雇用可能になり、現代社会にある程度溶け込み、妥当な出生率が採用されることに同意するだろうと期待されている。

・右派連合ではこうしたことは起こり得ない。なぜなら右派は存続するためにハレディ派と入植者の政治家に依存しているからだ。だからイスラエルを救うには政治的大変動が不可欠だ。

・イスラエルの「現代」部分(本質的に国を築き、繁栄を牽引し、かなりの程度まで国防の責任を負っている部門)の多くのメンバーは諦めている。すでに国を去っている者もいる。また、現在のイスラエルを2つの国に分割することを考えている者もいる。テルアビブからハイファまでの海岸沿いは、ほとんどが世俗的でリベラル、圧倒的にユダヤ人が多い国、そしてそれ以外の地域は宗教的・国家主義的な国で、パレスチナ人と自由に争うことができる国だ。人口分布はそれぞれ500万人ずつでほぼ均等になるが、どちらを防衛できるかは難しい。

・現代のイスラエルはまだ救われる可能性がある。しかし、危険は部外者が考えるよりもはるかに大きく、それを回避するには抜本的な行動が必要となるだろう。
この記事によると、イスラエルは「1967年の戦争中にアラブ人が居住する地域を占領したこと」と「ユダヤ教ハレディ派を中心とするイスラエル右派の成長」によって、これまでの繁栄が台無しになりかねない自滅の道を歩んでいるというのですね。


4.イスラエルが抱える二つの爆弾


1967年、イスラエルとアラブ連合(エジプト・シリア)の間で第三次中東戦争が勃発します。 この戦争で圧勝したイスラエルは、ヨルダン川西岸地区と東エルサレム、ガザ地区、 シナイ半島及びゴラン高原を軍事占領下に置きました。国連安全保理事会は決議242号を採択し、 イスラエル軍の西岸及びガザからの撤退を求めたのですけれども、イスラエルはこれに応じませんでした。

軍事占領下では、パレスチナ人の基本的人権は保障されず、社会・経済の発展も阻害されました。 また難民キャンプでは基本的な生活インフラも整備されず、生活環境は劣悪なまま放置されました。

これが、今になって、民主的権利を求め、イスラエルへの併合と統合を求める圧力となっているというのは、あるいは、北朝鮮が韓国との統一を要求しているものの、韓国がその負担を嫌がっている構図に似ているかもしれません。

また、ユダヤ教ハレディ派についてですけれども、ユダヤ教は正統派、保守派、改革派、超正統派の大きく4つの流れに分かれています。

ハレディ派は、ヘブライ語で「神を畏れる人々」を意味し、超正統派に分類されます。

ローマ帝国から追放され、世界各地を転々としたユダヤ人も19世紀ごろになると、近代化する西欧社会に同化する流れが生まれました。けれども、それに反発して伝統に忠実な生き方を選んだのがハレディ派です。

ナチス・ドイツによるホロコーストを経て、移住したユダヤ人が1948年にイスラエルを建国したのですけれども、ハレディ派の多くは、メシア(救世主)が現れないとユダヤの主権は実現できないと信じ、イスラエル国家を認めていません。

ハレディ派は戒律を厳格に守り、イスラエルの人口の約12%を占めています。ハレディ派の人々は、集会やイベントの情報を知らせる紙を建物の壁に貼ったり、安息日である金曜日から土曜日にかけては電気や火を使った作業を原則行わなかったりします。

また、家庭では子どもを多く持つことが奨励され、平均の出生率は6.5。2050年にはイスラエルの人口の4人に1人を超正統派が占めるという予測も出ている程です。

イスラエルの政界は政党が乱立し、政権樹立には連立工作が必須となります。ハレディ派政党は与党側につき、補助金や徴兵免除の維持と引き換えに政権を支える立場を担ってきました。現在のネタニヤフ政権でも、超正統派の2政党は政権維持に欠かせず、議席数以上の政治力を発揮しています。

そんな彼らがイスラエルの存続にとって極めて重要とされている、 二国家解決を理解できないほど愚かなのだとしたら、イスラエル政府にとっても非常に厄介な存在だといえます。

これらの2つの問題に対する解決方法を見いだせない限り、ザ・ヒル紙が指摘するように、イスラエルは自滅への道を歩んでいるのかもしれませんね。




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