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1.尖閣は中国領土と報じたNHK
8月19日、NHKラジオの国際放送と、ラジオ第2で生放送された中国語ニュースの中で、ニュースを読んでいた中国籍の40代男性の外部スタッフが、沖縄県の尖閣諸島について、「中国の領土である」と発言をしたことが発覚し、NHKは同日夜の番組で謝罪しました。
問題のスタッフはNHKの関連団体が業務委託契約を結んで、2002年から原稿の翻訳や読み上げを担当していたようです。
当初、NHK広報は、この中国人スタッフの詳細な発言内容について、「放送を通じて本人の主張を拡散させることになるため」という理由で公表を控えていたのですけれども、損害賠償を求めるなど状況の変化を踏まえて公表することにしたと説明しています。
ところが、このスタッフは、尖閣だけでなく、慰安婦や南京について、原稿にない発言もしていたことが、22日に行われた自民党の情報通信戦略調査会で明らかになりました。
その発言内容は次の通りです。
「釣魚島と付属の島は古来から中国の領土です。NHKの歴史修正主義とプロフェッショナルではない業務に抗議します」(中国語)NHKの稲葉延雄会長はこの情報通信戦略調査会の会合で謝罪。調査会終了後、報道陣に「NHKの(報道の正確性などを定めた)国際番組基準に抵触する極めて深刻な事態。視聴者、国民に深くおわび申し上げる」と陳謝しました。
「南京大虐殺を忘れるな。慰安婦を忘れるな。彼女らは戦時の性奴隷だった。731部隊を忘れるな」(英語)
NHKは、このスタッフと業務委託契約を結んでいた関連団体を通じて本人に厳重に抗議し、21日付で契約を解除したと説明。今後、損害賠償を請求し、刑事告訴の検討を含めて厳正に対処するとしています。
また、問題の放送は生放送で行われていたことから、20日から事前収録に切り替え、他の言語についても今月中に事前収録にするとしています。
そして、井上樹彦副会長をトップに検討体制を作り、原因究明を行って関係する役職員の責任を厳しく問い、再発防止策を策定するなどと回答しています。
自民党の情報通信戦略調査会事務局長の大岡敏孝衆院議員は会合後、報道陣に「放送法違反の案件で非常に深刻と受け止めている」と指摘し、改めて調査会で説明の場を作るとしています。
2.極めて重大な事件だ
今回の問題について、国会議員からはNHKトップの責任を厳しく問う声が上がっています。
8月20日、無所属の松原仁元拉致問題担当相は、X(旧ツイッター)で、「経営陣がいかに責任を取るか問われる国民的大事件だ」と投稿。22日には、夕刊フジの取材に「大事なことは3つ。①まずNHKが経緯などを含めて事実関係を明確にすること、②最大の再発防止策として責任の所在を明らかにすること、③今回はトップが責任を取るべきレベルの極めて重大な問題であること」と強調。秋の臨時国会が開かれれば、「もちろんすぐに委員会で責任を追及する」と明言しています。
また、NHK出身の自民党の和田政宗参院議員も21日、自身のXで「NHKは事態を矮小化している」「『外部スタッフ』と言うが、ニュースを伝える人物はNHK職員と同等の責任を持たせているはず。また、尖閣以外にも言及していると思うが、なぜ隠すのか? 公共放送の放送が占拠されたわけで、極めて重大な事件だ」と批判しています。
更に、国民民主の玉木代表は、20日の記者会見でNHKの今回の放送について「厳正に対処すべき案件」と問題視し、国会の場でNHK側に経緯説明を求める考えを示していたのですけれども、21日にNHK幹部から対応方針の説明を受けたとX(旧ツイッター)で明かした上で、NHK幹部に対し「二度と同じことが起きないよう厳正な対処を要請」し、「『尖閣が中国の領土』であるとの放送は、『不適切な放送』ではなく、わが国の主張に反する『間違った放送』だ」と指摘したと投稿しています。
これに対し、NHK幹部は「今後『不適切な放送』という言い方はしない」と約束したそうです。
3.スパイではないか
当然ながら、今回の問題は、国会議員以外からも批判の声が上がっています。
X(旧ツイッター)では、「これで受信料寄越せは詐欺」「彼(この委託された)はこの国で英雄扱いされるだろう」「習近平にNHKの成果(尖閣)を報告行く」などと批判が殺到しました。
評論家の石平氏は「中国人スタッフの契約解除をもって終わるのはあってはならない。中国共産党政権の浸透工作の有無を含めて背後関係について国会で追及すべきだ」と処分の甘さを指摘。お笑い芸人のほんこん氏は、Xでこの件を報じる一部メディアの記事を添付。「なんで間違うの?考えられない」と指摘。続くツイートでも「中国籍の外部スタッフとは 工作では?」と投稿しています。
この「放送事故」で、NHK局内も大騒ぎになっているようです。
あるNHK職員は次のように述べています。
局内では、なぜか事故翌日の20日になって事実が公表されていました。意図的ではないでしょうが、上層部は慌てふためいているのでしょう。今回の“放送事故”が起きた国際放送は、日本国内の文化や情勢を海外向けに放送する『国の事業』という位置づけなので、多額の税金が投入されています。そのため、国会に経緯を報告することになると思います。そのうえで、上層部が本気で心配しているのは、スタッフが『スパイだったのではないか』ということです。思想的な背景を隠してNHKの関連団体に入り、そこで得た情報を本国に伝えていたのではないかという疑惑です。多額の税金が入っている事業に“スパイ”が潜り込んでいたとなったら一大事ですからね。今後、スタッフがどの情報にアクセスしていたのか、ログイン情報を調べることになるでしょうNHKの国際放送は、国の重要政策や見解などを海外に伝えるため、放送法で本来業務と定めており、国から交付金が出ています。今回の問題について、NHK党の立花党首は自身の動画で次のように述べています。
・尖閣諸島が中国の領土だということをNHKのあれ国際放送になるんですよね放送法では総務相が放送事項などを指定して、国際放送を行うよう要請できるとも定められていて、NHKは公式サイトで「報道機関として、放送の自由と番組編集の自由を最優先に、自主的な編集のもとで国際放送を行っている」と説明しています。
・国際放送っていうのは外国に向けたそのラジオなんですけども、公共放送じゃなく国際放送になる
・普通のNHKの放送はこれは公共放送として受信料からやるんですけども国際放送については国からお金をもらってNHKが業務
委託を受けてやってるんですね
・だからそういう意味では正確に言うと今回の事件はNHKの放送で起こったっていうよりも国の放送で起こったっていうことなるんです。
・日本の政府が、国の放送で尖閣諸島は中国の領土だって言ったことになるんです
・NHKの不適切は外患誘致罪になる
・外患誘致罪って殺人よりの罪重いんですよ。死刑しかないんです。
・外患罪ってその国を滅ぼすためのいわゆる戦争を誘導するような罪がある。
・解雇じゃなくて逮捕ですよ。直に逮捕しなきゃいけないような案件。
・これは総務省が総務大臣がしっかりとここについてNHKに対して電波止めるようなことしなきゃいけない
NHK関係者は「生放送とはいえ放送の体制に問題はあった。ただ、NHK全体のガバナンスに政治が介入する契機にならないか懸念している」と話しているそうですけれども、その「自由な放送」を行使して、国益を損なった以上は、その責任は問われてしかるべきで、単に問題発言のスタッフを解雇したからハイ終わりではないでしょう。
NHKの国際放送が国の事業である以上、そのスタッフがスパイだったのかどうか含めて、徹底的に調査すべきだと思います。
4.外国人労働者が増える日本が抱える重大な問題
8月22日、マネー現代は、今回の問題について、「NHKが国際放送で『尖閣諸島は中国の領土』と発言し波紋…外国人労働者が増える日本で起きる『重大な問題』」という記事を掲載しています。
件の記事の概要は次の通りです。
【前略】記事では、在留外国人、在日中国人の増加により、「日本人の常識」が通用しなくなり、かつては起きなかったような問題が、今後も起きる可能性は十分にある点と、在日中国人と日本人では、それぞれ使っているメディアが異なることで、同じニュースでも受け止め方が異なる可能性がある点を指摘しています。
報道後、日本のSNSでは「NHKがこのような国益を損なう放送をしたことは重大な問題」などと批判が相次いだが、中国のSNSでは「よくやった」などの投稿があった。
もともと原稿(台本)に書いていなかったことを、なぜこの中国人の男性が発言したのか。靖国神社で見つかった中国語の落書きに関するニュースのあとの発言だったとのことだが、詳細は明らかになっていない。
日本ではNHKの責任を問う声が大きいが、この一件が起きたあと、私が感じたことは2つある。本件と直接関係ないことだが、1つ目は現在の在日中国人についてだ。
法務省の統計によると、2023年末時点で、日本には約82万人の中国人が住んでいる。
これは全在留外国人の約3分の1に当たり、6年前の2017年より9万人以上も増加している。在留資格別でみると、最も多いのが「永住者」で約33万人、次に多いのが「留学」で約13万4600人、他に「技術・人文知識・国際業務」が約9万2000人、「家族滞在」が約7万6000人などとなっている。
同事件の40代の中国人男性が、どのような在留資格で日本に住んでいるのかわからないが、20年以上のベテランスタッフだったという報道があるので、「永住者」である可能性がある。
出入国在留管理庁によると、「永住者とは、在留活動、在留期間のいずれも制限されないという点で、他の在留資格と比べて大幅に在留管理が緩和される」とある。
一般企業に勤務する「会社員」の場合、当初は上記の「技術・人文知識・国際業務」などの資格を得て働くことが多いが、長く滞在しているうちに「永住者」に変更するケースがある。他に日本国籍を取得することもある。「永住者」や「日本人」になれば、より生活しやすくなるからだ。
東京都内だけみても、大手、中堅、中小企業に勤務している中国人は、ここ数年で非常に増えた。業務内容も国際業務や貿易など「中国」に関するものだけでなく、営業、総務、経理、広報、研究開発など、ありとあらゆる部署、部門に中国人社員が在籍している。
むろん、マスコミも例外ではない。新聞、出版、放送、広告業界にも中国人がおり、私も彼らと直接仕事をしたことが何度もある。日本生まれ、日本育ちで日本語がネイティブの中国人もいるが、中国生まれ、中国育ちで、留学のため来日し、そのまま日本で働いているという中国人もいる。今回の男性も、マスコミ業界の一角で働いていた。
どのような業界で働いていても、「一社員」であるかぎり、その企業の方針、スタンスに則って業務を遂行することが求められるが、マスコミの場合、しかも、国家間の問題を報道する場合は、基本的に日本政府のスタンスに沿うことは当然だ。
とくにNHKのような公共放送の場合、それが求められる。NHKに直接雇用されていなくても、今回、放送内容に個人の見解を挟んだことは重大な問題といえる。
だが、人手不足問題が常態化し、多文化共生が求められる中で、中国人を含め、外国人を採用・雇用する日本企業は年々増え続けている。
そうした中で、これまで「日本人の常識」と思われていたことが、徐々に通常しなくなってくることも考えられ、今回のように、かつては起きなかったような問題が、今後も起きる可能性は十分にある、と感じた。
大卒者など外国人留学生の日本企業への就職の機会は、日本人と同様で平等だ。給与など待遇面も同様で、日本では、外国人だからといって差別されることはない。
しかし、今回の一件を見て、これから、日本企業が外国人を採用する際、従来はなかった「確認事項」などを用意し、それを順守・徹底することが必要になってくるかもしれない。また、企業側の管理体制の見直しも求められるだろう。
もう1つ、今回の問題で私が感じたことは、在日中国人と日本人は通常、見たり、読んだり、聴いたりしているメディアが異なるという点だ。
海外に住む日本人も同様だが、海外に住んでいても、現地メディアの情報を現地の言葉で100%理解することは難しい。
そこで、大きなニュースであれば、いったん日本語メディアの報道を見て、現地のニュースを理解するという人も多い。両方のメディアを同時に見ているという人もいるが、母国語のほうが、情報がすんなり入ってくるので楽だという人のほうが多いだろう。
日本に住む中国人も同様で、日本語が堪能な人でも、ふだんは中国メディア(中国のテレビ番組、ニュースなど)を見ていることが多い。日本のニュース(たとえば自民党の総裁選挙など)も、中国語メディアでまず読んで、概要を理解する、という人も少なくない。
そのため、私たちは同じニュースを見て、知っているのだが、そのときのメディアの「種類」やメディアの「見方」は異なるということがある。
これは母国語が違うのでやむを得ないことだが、同じ日本企業に勤務していて、会議などで情報を共有しているはずだ、と思っていても、実際、その情報の“濃度”は日本人同士の“濃度”とは異なるかもしれない。
そのため、私たちは、「そういうことがあるのだ」ということを念頭に置いておくべきだし、これは、今後、中国人を始め、外国人と接する機会が多くなる日本人にとって、必要になるのではないかと感じている。
今回の件は、NHKの国際放送という、国内外に住む外国人に日本のニュースを、その国の言葉で放送するという番組の中で起きた。世界17カ国の言語で放送されるもので、中国語放送は主に中国人に向けたものだった。そのため、中国語がネイティブの中国人スタッフが担当する番組だったが、発信元は日本であり、日本の公共放送である。だからこそ、今回の件は問題だと感じる。このような問題が起きたことは、今後、日本企業が外国人を採用・雇用する上で、非常に重要な問題を含んでいると感じている。
川口クルド人問題をみれば、既に「日本人の常識」が通用しない事態が起きつつあることは現実になっています。
多文化共生とは言葉では綺麗ですけれども、実際はそんな簡単なものではありません。歴史を振り返れば、日本とて、開国と鎖国を繰り返しながら、いまの社会を作り上げていったことを考えれば、それも知恵の一つとして考えていく必要があるのかもしれませんね。
この記事へのコメント
ルシファード