中国軍機の領空侵犯について

今日はこの話題です。
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1.中国軍機の領空侵犯


8月26日、防衛省統合幕僚監部は26日午前11時29分から同31分にかけ、中国軍のY9情報収集機1機が長崎県の男女群島沖の日本領空を侵犯したと発表しました。防衛省によると、中国軍機による領空侵犯を確認したのは初めてのことです。

防衛省統合幕僚監部によると、Y9は中国方向から飛来し、午前10時40分頃、長崎市の南西約150キロに位置し、五つの主要な無人島からなる男女群島の南東の空域で旋回を開始。同11時29分頃、群島の東から領空に侵入した後、左に旋回して南東方向に進み、同31分頃に領空を出ました。その後、群島南の上空で再び旋回した後、午後1時15分頃、中国方向へ飛び去りました。

航空自衛隊はF15戦闘機とF2戦闘機を緊急発進(スクランブル)させ、直ちに領空から退去するよう警告しました。武器使用はありませんでした。

領空侵犯を受け、外務省は岡野正敬事務次官が中国の施泳駐日臨時代理大使を同省に呼び、「極めて厳重に抗議するとともに、再発防止を強く求めた」と発表。中国側は「本国に報告する」と応じたそうです。

これまでに防衛省が発表した領空侵犯の事例は計46件あります。その殆どはロシアによるもので、直近では令和5年10月に、ロシア所属とみられるヘリコプターが北海道根室半島沖で領空侵犯したことがあります。

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2.領空侵犯未遂は479回


中国の航空機による領空侵犯は過去2例、確認されている。平成24年12月に尖閣諸島周辺で、中国国家海洋局の固定翼機1機が領空を侵犯。平成29年5月には、尖閣諸島周辺の日本領海に侵入した中国海警局の巡視船を離艦した小型無人機1機が領空侵犯するのを自衛隊が確認しています。

けれども、領空侵犯未遂となると、その件数は激増します。

防衛省統合幕僚監部によると、領空侵犯の恐れがある外国機に対する航空自衛隊戦闘機による緊急発進の回数は令和5年度、669回で、そのうち中国が479回。全体の約72%に上ります。

中国機の活動範囲は、尖閣諸島周辺のほか、最近は九州西方沖で無人機の飛行が目立つようになっています。今回、長崎沖の領空にまで有人の中国軍機が侵入してきたことで自衛隊幹部は「中国がさらに活動をエスカレートさせた可能性がある」と述べています。

日本政府は、今回の領空侵犯について、中国に強く抗議するとともに意図の分析を急ぐ構えで、官邸筋は「冷静に対処していく」と語っています。

外務省関係者は「意図や狙いは現時点では分からない」と説明。

防衛省幹部も「故意なのかどうか分析が必要だ……毅然と対応するが、中国側も事態をエスカレートさせようという局面ではないはずだ。過剰に反応しない方がいい」と述べ、別の防衛省関係者は「日本側の反応を見ている可能性がある」との見方を示しています。

元海将補で笹川平和財団の河上康博・安全保障研究グループ長は「日本の対処力を確認しようとした可能性がある。今後も挑発の度合いを上げていく恐れがあり、小さな変化を長期間重ねて既成事実化していく戦略の一環だ」と指摘しています。


3.政治空白を狙った中国


河上康博・元海将補が指摘したように、日本の対処力を確認するという意味では、中国からみて今回のタイミングはベターだといえます。

なぜなら、岸田総理が次期総裁選への不出馬を表明し、総裁選中という、「政治空白」に近い状態であるからです。

こういうタイミングを狙ってくるというのは、よくあることで、2010年に尖閣沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船にぶつかってきた、いわゆる「尖閣沖衝突事件」が起こった時も、ちょうど、菅直人首相と小沢一郎氏が民主党代表選で争っていたタイミングでした。

政治空白の時でも、官邸・防衛省・自衛隊が連携し、一丸となって対応できるのかどうか、有事対応含めて、モニタリングされているとみてよいかと思います。

しかも、今回はそれに加えて、日中友好議連が5年ぶり訪中するというタイミングです。

8月27日朝、自民党の二階俊博元幹事長が率いる超党派の議員による日中友好議連が、北京に向かいました。

訪朝団について、マスコミは、習近平国家主席との会談が実現するかが焦点です、なんて報じていますけれども、前日に領空侵犯されておいて、翌日にノコノコと訪中することは、領空侵犯を問題視していないという外交メッセージだと受け取られかねません。

それで、訪朝団が習近平国家主席はおろかずっと下の序列の政治局員としか会談できなかったとしたら、完全に格下扱いになります。


4.報復と外交メッセージ


一方、中国世論は今回の領空侵犯で沸き立っています。

26日、中国の短文投稿サイト微博では、中国軍情報収集機による日本領空侵犯を伝える日本や香港のメディア報道が転載され、海上自衛隊護衛艦が7月に中国領海を一時航行したことに触れ、領空侵犯は「報復だ」「よくやった」などと肯定的に捉える投稿が相次いでいると伝えられています。

7月14日のエントリー「日本はNATOの手先となるか」で、筆者は、海自艦の中国領海侵犯について、中国の反応を確かめるのみならず、NATOが対中戦争するときに日本も参加するという外交メッセージも含まれているのではないかと述べたことがありますけれども、6月以降、アメリカ海軍が主催する環太平洋合同演習「リムパック」に合わせ複数のNATO加盟国が軍艦を太平洋に派遣。今月22日には、F35B戦闘機を搭載するイタリア海軍の空母「カブール」が初めて日本に寄港しています。

その意味で、今回の領空侵犯は、インド太平洋地域で日米両国に同調するNATO加盟国などの軍の動きが活発化しているのを牽制した可能性もあるとの指摘もあります。筆者もその可能性は十分にあると思います。

もしそうだとすれば、中国が”領海”ではなく”領空”を侵犯してきたことにも意味があると捉えるべきかもしれません。

というのも、NATOが対中戦争に軍艦を派遣しても、こちらは航空戦力で対応するぞ、というメッセージだとも受けとることができるからです。

日本はNATOの手先になる必要はありませんけれども、抑止力自身は持っておく必要はあります。

日本の政治空白を狙った中国の挑発。ポスト岸田に誰を選ぶかが、日本の答えになるような気がしますね。



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