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1.お詫びはNHK会長がすべき
8月26日、NHKは、先日、NHKラジオ国際放送で中国籍で40代の男性外部スタッフが沖縄県石垣市の尖閣諸島を「中国の領土」と原稿にない発言をした、いわゆるする「放送テロ」問題について、総合テレビなどで、謝罪放送を行いました。
26日午後5時50分から「NHKからのお知らせ」と題して放送された臨時番組で、今回の問題について「国際番組基準に抵触するなど、NHKが放送法で定められた責務を適切に果たせなかったという、極めて深刻な事態であり、深くおわび申し上げます」と女性アナウンサーが繰り返し、頭を下げました。
放送では「尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかで、領有権の問題は存在しない」とする政府の公式見解を説明。中国籍のスタッフは、英語でも「南京大虐殺を忘れるな。慰安婦を忘れるな。彼女らは戦時の性奴隷だった。731部隊を忘れるな」と発言していた件について、慰安婦問題は日韓政府間で解決済みという政府見解も伝えました。
そして、中国籍のスタッフについて「これまでにも原稿にはない内容を一方的に伝えていたことがないかについても改めて調査する」と表明しました。
NHK広報局によると、同様の内容は、同日午後1時からラジオ国際放送とラジオ第2放送の中国語ニュースの番組内でも中国語で放送したとのことです。
けれども、これら謝罪放送について、ネットでは「おわびはアナウンサーでなく会長など責任ある者がすべきだ」「誰も見ていないような時間」「今回の謝罪放送では、『日本政府の見解と異なる』とは伝えているものの、NHKの見解として『尖閣は日本のものです』とは言わない」など、多くの批判の声が書き込まれました。
確かにこれで、謝罪とするには軽すぎるのではないかと思います。
2.中国政府に拍手喝采を送るタイプ
問題発言をした中国籍の男性スタッフについても、段々と情報が出てきました。
NHK関係者によると、この中国人男性スタッフは中国山西省の出身で、現在49歳。留学生として日本に来たのは20代のときで、最終学歴は東京大学大学院卒というエリートだのだそうです。
中国人男性スタッフはナレーター・レポーターとして幅広く活躍していたようで、ナレーター派遣会社のHPには次のプロフィールと経歴が記載されていたようです。(現在は削除された模様)
・プロフィール:NHK国際放送局のアナウンサーをはじめとして、フリーのジャーナリスト、ラジオ番組司会者、テレビ番組コーディネーター、ライター、翻通訳者として、多岐にわたり活躍しているさらに中国人男性スタッフは、日本だけでなく中国メディアからの仕事も請け負っていたようで、中国のSNS「ウェイボー」で検索すると、中国人男性スタッフが中国の衛星テレビ局「フェニックステレビ(鳳凰衛視)」の「特約記者」として、カメラの前で日本の現地報道を行う動画が複数ヒットするという情報もあります。
・経歴(ナレーション):NHK「ラジオ・ジャパン」、「テレビで中国語」、「みんなでニホンGO!」、「プロジェクトX」(中国語版)、「東京の歩き方」、「Weekend Japanology」など
・経歴(その他):トヨタ自動車、ソニー、パナソニック、東芝、京セラ、ユニクロ、資生堂、ニコン等日本の大手会社、内閣府、経済産業省、警察庁等官庁の中国語VPナレーション実績百件近く
日本の放送にガッツリ食い込むと同時に、フェニックステレビの特約記者でもあるとなれば、中国からみれば、実に「使い甲斐」のある人物だとして、ターゲットにされてもおかしくありません。
この中国人男性スタッフの仕事仲間は「たしかに彼は、中国への愛国心を相応に持っていたと思います。しかし責任が強く、自らの思想・信条や一時の名声ために職場に迷惑をかけるようなことはしない絶対にしないタイプです。実際、これまでに問題を起こすようなことはしたことがありませんでした。そもそも、不規則発言をするような人物は中国系メディアや企業も起用を敬遠するので、今後のキャリアにも悪影響を及ぼす。なぜあんな発言をしたのか、理解できません」とコメントしていますけれども、その一方で「誰かに命令され、それを断ることができない事情があったとすれば、合点がいきます。彼が『特約記者』を務めていたフェニックステレビは、表向きは民間企業ということになっていますが、中国共産党の影響力を受けていると言われています。それだけに、彼が工作活動に利用された可能性も否定できません」とも述べています。
また、この中国人男性スタッフと仕事をしたことがあるという業界関係者は、「仕事ぶりは真面目でもめたこともありません。温厚な人柄で感情的になることはなく、話しぶりから頭が良いことが伝わるタイプでしたから、今回の一件を聞いて驚いています。メディア関係の勉強をしていたと話していましたから、報道への興味関心も強かった」と語っています。
更に、件の中国人男性スタッフを知る放送関係者は、彼について「NHKの関連団体『NHKグローバルメディアサービス』と業務委託契約を結ぶ49歳の中国人で、NHKのニュース原稿を中国語に翻訳し、ラジオで読み上げる業務を担当。正規のNHK職員ではないため、翻訳やナレーションの仕事をあっせんする会社にも登録していました……肩書はNHKスタッフではなく、香港が拠点の衛星放送局フェニックステレビの特派記者となっていました。同局は実質的に中国政府が出資する国営メディアみたいなものですから、NHKの国際放送と兼業するのは避けるべきでしょう」と明かした上で、「反日教育を受けた世代で、政治的な話になると熱くなる面がありました。日本滞在歴が長い中国人だと、尖閣問題など日中がもめるニュースも冷静に見られるものですが、彼は中国政府に拍手喝采を送るタイプでしたよ」とコメントしています。
NHKはこの中国人男性と2002年から外部スタッフとして契約していて、今回の問題で8月21日付けで契約を解除し、損害賠償請求や刑事告訴を検討しているとしていますけれども、そもそも、このような人物と契約しかつ「放送テロ」を止めることができなったことについて、厳しく追及され、その責を問われるべきだと思います。
3.公共放送とは何か
今回の問題で、NHKには多くの批判が集まり、国会で追及すべき、だとかNHKは解体だなどと世論の声が上がっています。
NHKは自らを「公共放送」だと自任し、受信料を徴収する根拠としていますけれども、その「公共放送」の前提から疑うべきだという意見もあります。
2023年03月、早稲田大学社会科学総合学術院の有馬哲夫教授は、デイリー新潮のインタビューで「公共性」をどう考えるかについて、次のように答えています。
――NHKは公共放送なのだから受信料を支払うのは仕方がない、と思っている人は多いのではないでしょうか。有馬氏によると、NHKの言う公共放送とは何かという定義から定まっていないとし、日本は対外広報をNHKの国際放送に頼っていると指摘しています。
有馬:そもそも支払いの義務を課している法律そのものの建付けがおかしいと私は考えていますが、その問題は置いておくとして、まず考えていただきたいのは「公共放送」とは何か、ということです。NHKは、自分たちが「公共放送」なのだから受信料を受け取る権利があると主張します。でも、「公共放送」って何でしょうね。定義できますか?
――受信料を取っている放送、ということでしょうか?
有馬:それでは話が堂々めぐりでしょう。受信料を取る放送局だから受信料を取れるのだ、と言っているのと同じです。
受信料以外の収入で運営している公共放送は世界中にあります。オーストラリア、イタリア、フランス、韓国などでは公共放送が広告を流しています。とくに、オーストラリアは受信料を廃止してしまって「公共放送」を政府交付金で運営していますが、それでは問題があるので元に戻そうという話にはなっていません。
――では、よく言うところの「客観・公平・中立」が公共放送の条件とか?
有馬:NHKはそれに近い説明をしていますね。「いつでも、どこでも、誰にでも、確かな情報や豊かな文化を分け隔てなく伝える」ことが基本的な役割だとか、「特定の利益や意向に左右されることなく、公共放送の役割を果たしていける」といった説明をホームページでしています。しかし、これも変じゃないですか。
――どこがでしょう?
有馬:この理屈だと、民放は不確かな情報を分け隔てしながら伝えてもいいことになりませんか。あるいは、「特定の利益や意向に左右」されてもいいことに。国民の知る権利に応えること、不偏不党、表現の自由を確保すること、民主主義の健全な発達に資すること等々は、民放にも課されています。放送法は、その目的として「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」とあります。不偏不党は民放も守らなければならない。だからこそ、ときおり特定の政党に肩入れした番組が批判されるわけです。ことは政治に限りません。ニュースを見る限り、NHKが民放と比べて企業に厳しいということもないのではないでしょうか。番組に企業名が出ないことは多いですが、ほとんど宣伝みたいなニュースも珍しくありませんよ。民放がクライアントの顔色をうかがっているのは間違いないでしょうが、NHKは政権与党の顔色を異常にうかがっていますしね。
――そうですか? NHKの番組は、結構「左寄り」とされることも多いと思います。それで故・安倍総理とトラブルになっていた時期もあったと記憶していますが。
有馬:政権に対して厳しい報道をすることもあるでしょうし、番組によっては左翼的なものもあるのは事実です。また、民放も放送免許を人質にとられている以上は、総務省の顔色をうかがわなくてはなりません。しかし、NHKの場合は、民放以上に総務省、政府に忖度をしなければならない強い動機があります。それが受信料です。「NHKは受信料で運営されているからこそ報道が中立で信頼できる」と考えている人もいるでしょうが、私は「NHKは受信料で運営されているからこそ政権の意向や経営委員が前にいた企業の利害に左右される」というほうが正しいと考えています。
――それでも特定の企業の宣伝はしないと思いますが……。
有馬:そうでしょうか。たしかに民放は企業名や店名、商品名を番組内で伝えることに抵抗がないので、宣伝につながる内容がNHKよりも多いのかもしれません。しかし、NHKもニュースで特定企業のスマホの最新機種の発売などは平気で伝えますよね。また、自分たちが関わる有料イベントやら刊行しているテキストやらはどんどん宣伝しています。
――だんだん「公共性」というものがわからなくなってきました。
有馬:無理もないことなのです。この問題は総務省の検討会などでもずっと議論されていて、きちんとした答えが出ていないのです。2020年11月の「公共放送の在り方に関する検討分科会」では構成員の新美育文氏が、受信者に契約を締結することを強制する以上は、「公共放送とは何ぞやということをきちんと議論しないといけないのではないか」と問題提起をしています。他の受信料関係の検討会の議事録でも、歴代の構成員は常に「NHKの言う公共放送とは何か」という問いを発しています。逆に言えば、その問いへの正解が定まっていないということです。繰り返しますが、公共放送だからテレビを持っている人が全員、受信料を払うなどという制度は世界的に見てもスタンダードではありません。このようになったのは、制度導入時の政権側の思惑、端的に言えば吉田茂総理と当時の官僚にとって都合が良かったからです。国民のためではなく、当時の政府のために導入されたのです。
――受信料制度は吉田茂総理が導入したと言いますが、戦前から受信料はあったはずでは?
有馬:その通りです。戦前はラジオを買った人は、受信料を払わなくてはなりませんでした。前提にあるのは、「電波は国のものだ」という考えです。だから国家が管理しなければならないという理屈ですね。1924年に犬養毅逓信大臣が、ラジオ放送を「公共目的」に限定して、広告を流すことを禁じ、受信料で運営することにしました。この時代の法律にもツッコミどころがないわけではないのですが、ただ、たしかに当時のNHKは「公共放送」をしていましたし、国民もそれを必要として望んでいました。だから誰も制度に疑問を抱かなかった。しかし、その後戦時体制になっていくにあたり、NHKは完全に「軍国プロパガンダ機関」になってしまったのはご存じの通りです。「公共放送」なのだから、放送も「国務に準ずる」という理屈でそうなった。結果として、戦争を推し進める機関となってしまいました。当然、戦後、日本を占領したアメリカはこれを問題視しました。
――そのあたりの経緯は、本にかなり詳しく書かれていますが、要するに政府との関係を切り離そうとしたということですよね。
そうです。GHQは政府、あるいは軍部に支配されたNHKが戦前、戦中に何をしていたかをよく知っていました。大本営発表で国民をだました、正真正銘の戦犯だという認識だったのです。だからこそ、「放送の民主化」が必要だと考え、そのような政策を実行しました。1945年12月には、NHKの再組織を目的に、17人からなる「放送委員会」を作り、彼らに協会の運営を命じました。委員の顔ぶれは、一つの分野、一つの階層に集中しないように配慮されていました。かなり左翼系の人も含まれています。これは戦前が軍国主義的・右翼的な組織だったという認識からバランスを取ろうとしたためです。また、放送の民主化、自由化をねらって放送法を制定することもGHQは進めていきました。
――当時、GHQの側は受信料の強制徴収などは考えていなかった、と書いてありますね。
有馬:そうです。私はGHQでこの件に関わった元民間通信局分析課長代理のクリントン・ファイスナー氏、元民間情報教育局局員のヴィクター・ハウギー氏、フランク馬場氏らから一定期間、継続的に聞き取り調査を行ったことがあります。彼らは受信料については「払うことができる人、あるいは払う意思のある人から徴収する」という方針だったと証言してくれました。敗戦直後の日本は荒廃し、住居のない人、生活が困窮した人が数多くいました。そういう人たちから無理に受信料を取る必要はありません。しかし一方で、そういう人たちも生活に必要な情報をラジオで得なくてはなりません。また、引き揚げ者についての情報を欲していた人もいます。そういう人たちから強制的にお金を徴収すべきではない、とGHQは考えていたのです。
――でも、それではNHKを運営できないのでは?
有馬:そこが日本人の多くが勘違いしているところです。実はアメリカには公共放送がたくさんあります。カーラジオを聴きながらアメリカを移動すると、広告を流さない放送局が結構あることに気付くはずです。これらは慈善団体や宗教団体、教育団体などが運営しています。基金や寄付をもとにしているのです。ファイスナー氏やハウギー氏はよく私に「公共放送とは聴取者の善意(寄付)で支えられるものだ」と言っていました。そして、メトロポリタン美術館やスミソニアン博物館を例として挙げていました。
――日本でそういう寄付による運営が成り立ったかはわかりませんが、当時のGHQは圧倒的な権力を有していたはずなのに、どうしてそういう方向に進まなかったのでしょうか。
有馬:まず、日本の官僚やNHK側は「強制すれば取れるのだから取りたい。これまで通りの規模の組織を維持していくには必要なのだから、これまでも取ってきたし、これからもそうする」と考えていたということです。もちろんこうした反動的な動きに対しては、GHQは反発しました。受信料制度や放送を巡ってのGHQと日本政府側との攻防はこのあと数年にわたって続きます。「抵抗勢力」の頂点にいたのが吉田茂総理です。彼は戦前、戦中と同様に政府にとって都合のよい巨大メディアがある状態を望みました。吉田総理に歯止めをかけていたマッカーサー最高司令官が去ったこともあり、結局、占領体制の終結とほぼ同時期に、吉田総理はそういう状況をつくることに成功したのです。
――それによって政権に弱腰の巨大メディアが誕生した、ということでしょうか。
有馬:総務大臣が、受信料規定だけでなく、約款や経営や予算まで認可権を持っています。そのような強大な権限を持つ政府の意向がNHKに影響しないはずがありません。両者は常に密接な関係にあるのです。近年では、政権に厳しいコメントをしたキャスターらが「降ろされた」といったことがよく取り沙汰されています。これらは単なる人事異動だということですが、本当でしょうか。あるいは、歴史をさかのぼればもっと露骨に政治との関係が明らかになったことがありました。1967年に黒い霧事件で選挙の苦戦が予想されたとき、当時の佐藤栄作総理はラジオ受信料を無料にすることを公約にして、実際に無料にしました。また、1984年にNHKは突然、犯罪報道において、それまでは逮捕された人を呼び捨てだったのに、肩書のある人は肩書で、それ以外の人は「容疑者」と呼ぶことにしました。これは田中角栄がロッキード事件で裁かれる身となったことと関係しているという見方があります。一般の記者には左翼的傾向が強い人もいるのですが、組織としては完全に「上」の意向を常に意識しているのです。
――戦後、GHQは政治との関係が近くなりすぎることを恐れて受信料制度には反対していたのに、吉田茂総理や官僚たちの意向によって現在のような形になったという話を伺いました。また、それゆえに結局、NHKは政権に甘い報道しかできないのだ、と。
有馬:現にNHKが政権の問題点を突くような報道をしていないでしょう。政権の「疑惑」についての報道をしているので、それなりに厳しいスタンスもあるように見えるかもしれませんが、あれは単に検察や警察が動いている、あるいは野党が追及していることの後追いのレポートに過ぎません。新聞や週刊誌がやっているような類の調査報道で、政権の問題点を率先して暴いた事例がどれだけあるのでしょう。あれだけの記者を抱えていながら不思議な話です。疑惑の類に限りません。政策の問題点を指摘することがありますか? 多くの場合、政府の方針を伝えたうえで「国民への丁寧な説明が求められます」とか「問題はまだまだあります」といったどうでもいいコメントを添えるだけでは。
――厳しいですね。しかし、たとえば災害報道などはどうでしょうか。やはり公共放送の存在意義があるのでは。
有馬:NHKも自らの公共性を説明するにあたって、真っ先に「安全・安心を支える」という方針を掲げています。これは災害時などの情報提供を想定したものです。しかしこれも前回のインタビューで指摘したように、民放との違いが明確ではありません。大きな災害が起きた際には、民放もやはり視聴率などを度外視して、災害情報を流していました。それ以上に根本的なことを忘れているのではないですか。
――というと?
有馬:実際に災害に遭った方ならわかるはずですが、テレビの放送などはほとんど、あるいはまったく役に立たないのです。なぜなら、大災害で電力喪失が起きてしまえば、放送を受信できる機器は使えなくなるからです。私は2011年の東日本大震災を宮城県で経験しました。停電がおよそ1週間続いたので、放送は一切受信できませんでした。あの時は中継設備も被害を受けたため、放送できたエリアも限られていたはずです。つまり、現状の災害放送というのは、被害に遭っていない人が被害状況を見るためのものであって、被災者たちが情報を得るためのものにはなっていません。経験をもとにいえば、あの時、人々が頼ったのは、携帯電話、スマホでした。つながりにくくはなっていたものの、何回か試せばメールは送れました。安否情報を確認するための掲示板にもアクセスできました。自分の周囲の被害状況、交通や病院や支援物資についても地方自治体や地方紙のホームページで情報を得ました。本当に被災者のためを思うのならば、こうしたネットの情報を充実させていく方向に努力したほうがいいのではないですか。
――地味、というと怒られるかもしれませんが、国際放送もNHKが公共性を主張する根拠になっていると思います。たしかにこれは民放がやっていない領域なのではないでしょうか。
有馬:それは事実で、日本は対外広報をNHKの国際放送に頼っています。しかし、それが国益につながっているかといえば、はなはだ疑問です。2020年度にNHKが国際放送に見込んだ予算は292億円でした。そのうち政府の交付金が36億円です。これをどう見るか。少し前のデータとして、2014年の総務省の調査(「国際放送の現状」)では、NHKの国際放送を視聴した経験を各国の人に聞いたものがあります。これによると、イギリスで4.5%、アメリカ(ニューヨーク)で4.6%、フランスで4.3%でした。この「経験」というのは、一生に1回でもあれば「ある」にカウントされています。この数字が決して高くないのは、中国の中央電視台の国際放送の視聴経験者と比べるとわかります。こちらはイギリスで16.2%、アメリカで12.9%、フランスで8.5%となっているのです。これは実感としてもわかります。というのも、私は欧米やオーストラリアに海外出張によく行くのですが、ホテルのテレビの番組表にNHKの国際放送を見たことがありません。BBCとCNNはたいてい入っていて、最近はそこに中央電視台が入り込んでいるのです。中央電視台の実体は、中国共産党のプロパガンダ機関です。当然、中国政府のプロパガンダが流されています。彼らは莫大な費用をかけて衛星アンテナを供与したり、あるいは各国のケーブルテレビに奨励金のようなものを出していたりしています。ところが、NHKの国際放送はこれと比べるときわめて甘い内容です。日本の文化、食べ物、観光地に関するものがほとんどで、日本政府の立場を世界に伝えるものではありません。中国のプロパガンダに対するカウンターの役目を担えていないのです。
――しかし、中国やロシアならいざ知らず、日本の場合、政府の立場を広めるのが正しいと言えるのでしょうか。
有馬:何でもかんでも現政権の言い分を流すことが信頼につながるのかはさておいて、日本国として定まった方針や認識はあります。たとえば北方領土、尖閣諸島、竹島については国家としての認識は定まっているでしょう。あるいは歴史認識についてもそうです。もちろん日本国内でこうした認識や政策に異論を唱える自由はありますが、国際放送は基本的に国の立場を代弁して構わない、というかそうする必要があります。そしてここでも放送ではなく、ネットを活用する方針に転じるほうがいいと私は考えています。YouTubeを充実させたほうがよほどいいのではないでしょうか。コストも削減できますし、効果も期待できるはずです。なお、コストでいえば、国内の政府広報も同様でしょう。今でも総理大臣が重要な会見を開く際には、夜7時のニュースの時間を意識することがあるようです。コロナ禍では、菅総理もそういう会見を開いていました。しかし、いまどき働いている人でそんな時間にテレビを見ている人がどれだけいるんでしょうか。あるいはもともと若い人はNHKの7時のニュースなんか見ていません。災害情報と同様、もっとネットを上手に活用したほうがいいというのが当然なのですが、その取り組みが非常に遅れています。やはりNHKの「公共性」を問い直す時期に来ていると言わざるを得ません。もう一つ、「公共性」の観点でいえば、協会職員の給与や、財務状況も広く国民が知っておくべきポイントだと思います。
けれども、その内容は極めて貧弱で日本の文化、食べ物、観光地に関するものがほとんどで、日本政府の立場を世界に伝えるものではないのだそうです。
更に、欧米やオーストラリアのホテルのテレビの番組表にもBBCとCNNはたいてい入っているのに、NHKの国際放送はなく、最近はそこに中国の中央電視台が入り込んでいるのだそうです。中央電視台の実体は、中国共産党のプロパガンダ機関ですから、当然、中国政府のプロパガンダが流されています。
今回は、その数少ない、日本が対外広報の主力としているNHKの国際放送で「尖閣は中国領土だ」などと放送テロをされた訳です。とても契約解除だとか謝罪で済む話ではないことは明白です。
4.ワクチン後遺症というカード
8月20日、NHK福岡の「ロクいち!福岡」が、武漢ウイルスワクチンによる健康被害報道を14分間も報道したと一部で話題になっています。
昨年5月15日放送のニュースウオッチ9では「新型コロナ5類移行一週間・戻りつつある日常」と題し、実名で3人の遺族のコメントを流した一方、ワクチン接種後に死亡し、ワクチンが原因で死亡したと訴えていることについては全く触れていなかったことで炎上したことがありましたけれども、それから比べると大きな方針変更ではないかと思います。
まぁ、NHKとはいえローカルだけに、それほど影響はないだろうと思いきや、意外とそうでもないようです。
8月28日、立憲民主党の原口一博衆院議員は、「NHKが新型コロナワクチン被害を報じた途端に、私たちのようにワクチン被害と危険を訴えてきた人たちを陰謀論者と断じてきた議員などが手のひらを返したように、実は私も危険だと言い出せないでいたと言い始めている。嘘をつくなと言いたい」とツイートしています。
ネットでも潮目が変わったという書き込みがされています。
単なる偶然だとは思いますけれども、このタイミングでの報道は、結果として、NHKによる政府への牽制になってしまう可能性もあるかもしれません。
8月24日のエントリー「尖閣は中国領土と報じたNHK」で、NHK関係者が「生放送とはいえ放送の体制に問題はあった。ただ、NHK全体のガバナンスに政治が介入する契機にならないか懸念している」と語ったことを取り上げましたけれども、例えば、NHKに政府が介入してくるのなら、ワクチン後遺症問題についてこれからバンバン報道するぞと逆に利用されることがあるのではないか、ということです。
仮にそうなった場合、NHKは政府を相手に脅しをかけていることになるのですけれども、それで、尖閣は中国領土だ発言が消えてなくなる訳ではありません。
政府はNHKへの追及の手を緩めることなく、今回の報道テロ問題を明らかにし、二度とこうした問題が起こらないよう、必要に応じて、スパイ防止法も含めた法整備を進めていただきたいと思いますね。
NHKが新型コロナワクチン被害を報じた途端に、私たちのようにワクチン被害と危険を訴えてきた人たちを陰謀論者と断じてきた議員などが手のひらを返したように、実は私も危険だと言い出せないでいたと言い始めている。
— 原口 一博 (@kharaguchi) August 28, 2024
嘘をつくなと言いたい。… pic.twitter.com/gpgAqimaic
この記事へのコメント
季節旅行者
管理人様、できましたら、総務省への問合せ等の結果について、ブログで発表お願いいたします。