潮目が変わった自民党総裁選

今日はこの話題です。
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1.河野太郎の総裁選出馬表明


8月26日、河野太郎デジタル相が国会内で記者会見し、自民党総裁選挙への出馬を正式表明しました。

記者会見には、所属する麻生派の議員5人が同席。産経新聞によると、その5人は次の通りです(敬称略)
≪衆院当選7回≫井上信治
≪当選5回≫武藤容治
≪当選4回≫牧島かれん
≪当選1回≫土田慎、英利アルフィヤ
河野デジタル相の会見での詳しいやりとりは、こちらで報じられていますけれども、要旨は次の通りです。
【決意】:欧州でウクライナへの侵略が起こり、アジアでは一方的に力で現状変更しようとする動きがある。世界の形を議論しなければならない総裁選だ。改革と言うのは簡単だ。傷だらけになりながら改革をとことん進めていく。
【政治資金問題】:政治の信頼回復は急務だ。政治資金収支報告書への不記載額の返納でけじめとし、前へ進んでいきたい。報告書のデジタル化で透明性を高くする。
【不記載議員の公認】:捜査権を持った検察が調べて分からない。真相究明は難しい。返納でけじめがつけば、自民候補として国民の審判を仰ぐことになる。
【エネルギー政策】:電力需要が急速に伸びている。今は電力を最大限供給するため、水素やアンモニア、核融合の技術、リプレース(建て替え)も選択肢としてある。
【憲法改正】:憲法議論を前に進め、なるべく早く発議に持っていきたい。
【選択的夫婦別姓】:認めた方がいいと思っている。
【経済・財政政策】:経済を言い訳にせず、財政規律を取り戻す。日本の将来のためにやらなければいけない改革をしっかり進め、分厚い中間層をもう一度つくっていく。



2.河野太郎の強みと課題


河野デジタル相は会見で「裏金返金要求」「財政規律重視」を訴えるとともに「コロナワクチン」や「マイナンバーカード」などの自身の実績をアピールしましたけれども、その強みと課題について、日本大学危機管理学部教授/東京工業大学特任教授の西田亮介氏は次のように指摘しています。
・現職議員への“裏金返金要求”:「あまり大きく取り上げたくない問題であり党内での評判が良くない。波紋も広がっている。なおかつ、国庫返納では『裏金の流れと使途を知りたい』という国民のリクエストにも応えられない」

・麻生派からの支援を受けた選挙活動:「歴代の総理を支えてきた麻生氏からの支持が得られなければ、今回の総裁選への挑戦が難しくなるという印象を(周囲に)与えている。そして河野氏はこれまで派閥の動きとは異なった振る舞いや実績を残してきたと目されているが、『結局、派閥を尊重せざるを得ないのか』とも思われてしまうだろう」

・財政規律を重視する方針:「知りたいのは、岸田政権の政策でもあるのは財政規律に目を向けながら、そのうえで我々の生活にどんな利益をもたらしてくれるのか。それが今回の会見では伝わってこなかった」

・河野氏の「実績」に対する党内評価:「マイナカードやコロナワクチンなどを成果と捉えているかもしれないが、『国民の合意なしに政策を“ゴリ押し”する』という印象もあるだろう」
あまり芳しくない評価です。

また、新潟国際情報大の佐々木寛教授は次のように指摘しています。
・エネルギー政策:「電力需要予測は人口減や省エネの技術革新でも上下する。脱原発と直接言わなくても『将来的に再生エネルギーの100%を目指す』などと主張できる。それも出てこないのは腰砕けではないか」

・脱原発の棚上げ:「自民で主流派を占める原発推進議員の支持を得るための迎合だ。国の骨格をなすエネルギー政策の信念より、政局を優先させた」
更に、派閥の問題について、学習院大の野中尚人教授は「内向きのロジックが強く、国民に対する説明責任を果たさない。派閥政治そのものの自民党政治は、結局意思決定のプロセスを隠し、国会で議論せず、文書の破棄までする……個々の議員も派閥に忠誠を誓えば能力がなくてもポストが得られる。国民が何を求めているかを考えない」と批判。それでも派閥に甘い姿勢を取る河野氏に対し「唯一派閥として残る麻生派に頼ろうとしている……極めて中途半端な戦略。派閥改革で徹底的に踏み込むような対応が必要だったはず。うまくいかないだろう」とコメントしています。

また、裏金問題について、河野デジタル相は「不記載と同じ金額を返還していただくことでけじめとする」と述べ、けじめをつけた議員は次期衆院選で公認する意向を示したのですけれども、神戸学院大の上脇博之教授は「目新しさのある主張で自身の存在感を出しつつ、安倍派の議員に助け舟を出そうとしているのでは……河野氏は裏金問題を解決し、国民の信頼を本気で得ようとしていない……多数派に押し切られ、却下された案を総裁選でもう一度掲げるなら理解できる……今になって唐突に何か主張されてもあきれるばかりだ」と批判しています。

前回総裁選前の世論調査で、次の総裁に相応しいのはとの問いに、河野デジタル相は、31.9%でトップに位置していたのですけれども、共同通信社の今月17〜19日の世論調査によると、次の総裁に相応しいのは石破茂氏が25.3%でトップ。小泉進次郎氏、高市氏に続き、河野氏は9.7%の4位に沈んでいます。

政治ジャーナリストの泉宏氏は「デジタル相としてマイナ保険証の相次ぐトラブルへの対応も強引で、世間の批判の表れだろう」と人気低下を分析。今回の総裁選に関しては「現状では、惜しかった前回よりも逆風の中での戦いになる……61歳とまだ若く、次回、次々回の総裁選への出馬も視野に入っている。将来を見据えると、ひどい負け方はできない……麻生派を離れたら、そもそもの推薦人が集まらないだろう」とコメントしています。


3.河野太郎は上位に残れない


こうした評価をみると、河野デジタル相の総裁選の勝利は、厳しい道のりのように見えます。

これについて、ジャーナリストの三枝玄太郎氏は、8月30日、自身の動画で、今回は上位には入れないのではないかと述べています。件の動画の説明欄から引用すると次の通りです。
自民党麻生派(志公会)が27日、横浜市のインターコンチネンタルホテルで開いた派閥研修会の様子が永田町で話題になっています。会長の麻生太郎副総裁が講演で、次期総裁選に立候補を表明した河野太郎デジタル相を支援すると明言しながら、「他候補の支援も容認する」と述べたのです。

麻生氏は河野氏について「同じ釜の飯を食って育ってきた同志としてしっかり応援していきたい」と述べた一方で「志公会以外からも多くの支援者を集める努力をしていかねばならない」と支持の拡大を呼びかけたのです。

「一致結束弁当みたいに縛り上げるつもりはない」と述べた麻生副総裁。いったい、河野さんを支援するのか、しないのか、首をひねった記者もいたようです。

多くの関係者が言うのは、「麻生さんは河野さんを支援する気はないな」という事でした。本来であれば、皆の前で河野太郎さんを紹介して、「一言、決意を述べてもらいたい」などと言って、本人からスピーチをさせるのが常道ではないのか、それをしなかったのは、麻生副総裁は事実上、河野さんを応援しないということだ、というのです。

河野さんといえば、女系天皇の容認、反原発、過度な再エネ傾斜、自然エネルギー財団問題、日本端子の問題、マイナカード問題、ワクチン問題、そのパワハラ気質、ブロック気質が話題に上っており、前回総裁選のときと違い、人気は急降下。総裁選でもかなり下位に終わるのではないか、と言われる始末です。

フジテレビの竹俣紅アナウンサーが河野氏に「芸能人やオリンピック選手とは違い、正当な批判を誹謗中傷という言葉を盾にして、権力を振りかざすのではないか」と至極真っ当な意見をぶつけて話題になっています。

河野人気も今は昔。河野さんを見限った麻生副総裁はいったい誰を応援するのでしょうか? 僕は決選投票にこそ麻生さんの真骨頂があるような気がします。小泉進次郎さんには間違ってもつかないでしょう。あちらには武田良太元総務相という麻生さんと犬猿の仲の参謀がいます。

となると、麻生太郎さんは誰を応援するのか。高市早苗さんか、小林鷹之さんか、目が離せないところです。
三枝氏の解説を聞くにつけ、麻生副総裁は河野デジタル相を本気で応援する気はないのではないかと思えてきます。




4.潮目が変わった総裁選


総裁選については、小泉進次郎氏が最有力で、2位に石破氏、小林氏が食い込むかどうか云々といった言説が出ていたのですけれども、ここにきて潮目が急に変わってきたという意見も出てきました。

8月28日、ジャーナリストの山口敬之氏はネット番組「文化人放送局」でそれについて解説しています。

該当部分を拾ってみると次の通りです。
・総裁選の潮目がこの2日で大きく変わりつつある
・自民党の派閥の領袖クラスが寄って集って高市さんの推薦人を剥がしたり、高市潰しで高市包囲網を敷いて、ある種相当追い込まれれていた。
・しかしいくつかの事象があってはい高市早苗さんが総理総裁選に勝って総理総裁になる可能性が高まってます。
・何が起きてるか。自民党の総裁選の場合、ぶら下がりとかインタビューで「出ます」と言うということと、出馬会見をするってことは全く意味が違う
・どう違うかというと誰が同席するかが全てなんです
・出馬会見をきちんとしますという時には、まず自民党総裁選は推薦に20人を集めないと出馬できない
・出馬会見をする時に普通は20人の推薦人候補を揃えてその人たちと一緒に記者会見するんです
・小林鷹之さんも20人と一緒に会見しましたね。要するに推薦に20人がまず第1ハードル。これがね実は結構高いんですよ
・20人の推薦人を簡単に集められる人っていうのはなかなかいなくて。
・だからこそ自民党に派閥っていうのがあって。これまでは(派閥に逆らったら)冷やし食わせるとか派閥から追い出すとか派閥の幹部が処分できた
・今はそういう意味では派閥による締め付けの力がすごく弱まってる状態
・だからこそ今までの総裁選の中ではかなりそのバトルロワイヤル的な推薦人の剥がしあい、それから陣営の人の取り合いあと嘘の付き合いみたいなことになってるんですね
・総裁選っていうのは総理総裁を決めるという意味では最高の権力闘争です。
・仁義なき戦いなんですね。結構何でもありなんです。
・スキャンダルを新聞に欠かせたり嘘の情報を流したり、それから向こうの陣営の人を剥がしてきたり、もう要するに人間の本質に
関わる人を追い落とす、権力の座近づくためには何でもするというのは人間の社会的本性なんです
・今回行われている高市潰し今までのそうしたよくある1対1の対決という基本系ではなく、高市さんの場合は高市さんとそれ以外ほとんど全ての領袖がありとあらゆる手を使って高市さんの推薦人を剥がしたりしてるんです。こんな醜い総裁選は初めてです。
・今ね高市さんのことすごく嫌いだという人は清和会の中にいるんです
・高井さんはかつて清和会安倍派です。そこから森さんが引退して町村派っていうのに変わる時に町村さんじゃなくて安倍晋三さんがいいと言って高市さんは運動したんです。
・でも森の一声で町村派になったんですね。そしたら町村さんは総裁にふさわしくないとして活動した私はあの町村派にいるの
は失礼だからあの派閥を出ていきますと言って無派閥になってずっと無派閥でやってるんです。
・ところが安倍さんが第1次政権で第2政権と総理をやった時、安倍さんとしては高市さんを清和会ではないけれども総務会長とか総務大臣とか要職に抜擢したんです。
・これが清和会に残った人たちが面白くないんですよ。じゃ自分は派閥に残って雑巾がけしてんのに高市さんはもう出てって好きなことやってるのになんであの人だけ要職になるわけ、なんであの人だけ閣僚になるわけって言っていわゆるやっかみなんです嫉妬のようなそういうものがこう渦巻いている。
・一時期はあの高市さんのとこには簡単に言うと10人ぐらい剥がされた。常軌を逸した高市潰しが組織的に自民党全体で行われていたという状況だったんです。
・ところがはいこの2日ぐらいで風が変わってきたんです
・麻生さんが河野デジタル大臣を派閥として原則支援する方針を表明しました。
・河野氏にとってはプラス要因ですがこれで勝てるのかは不透明なままです
・一見すると今自民党の派閥は全部解散して麻生派だけが派閥として残ってるそんな中で麻生さんが河野太郎を同士としてしっかり応援し行きたいと公の場で発言をしたわけです。
・麻生さんは今までねずっと黙ってたんです。本人はね全く総裁選自体発言してなかったんです。これがものすごく重要なことなんです。
・同じ釜の飯で育った同士、麻生派が河野氏以外の候補支援も総裁選の一本化見送るという記事です。
・総裁戦で1枚で動くことに意味があるんです。ほとんどそのために存在するのが自民党の派閥なんです。
。ところが麻生さんは自分はね河野太郎をしっかり応援していくよって言ったけど自分の派閥の54人いるんですね
・その人たちははっきりて自由でいいと、それがこの一本化見送りっていうことなんです
・これは実は大ニュースなんです。
・ものすごく大きなことで。じゃあ麻生さんは本気で河野太郎を総理にしようと思ってんだったら派閥全体でやりますよね。全員一本化しますよね
・今自民党に残った唯一の派閥しかも麻生派っていうのは麻生さんのリーダーシップとか人格に惚れにいて所属してる人が多いんですね。非常に結束力の高い派閥だから麻生さんが河野太郎やるって言ったらあのみんなやるんです。基本的に。
・1本化してくれたらどさっと来るのに逆に一本化しなかったから、僕はね河野太郎が総理になる目がほとんどなくなったと思います。
・河野太郎の出馬会見、麻生派から5人しか、同席しなかった。麻生派54人その中で5人、1割、いくら1本化見送るって言っても、ほとんどそ麻生さんの意向に沿って動くんなら、たった5人なんです。
・河野太郎は出場会見するにあたって絶対20人揃えたかったんです。うん揃えられなかったんですよこの人。
・けど小泉進次郎はねもっとふわっとしてんですよ。なんとなくふわっと集まってる人たちは小泉進次郎を応援していると総理総裁になるだろうからその時に自分は大臣にしてくれんじゃないかなというような現世利益で小泉をやってる人はほとんどなんですね
・菅さんの支配下にある例えば小石河とHKTってこのグループの下にいる人たちも浮いてるんです。
・もう浮いてるってことはなんかこう簡単にこう流れとか潮目が変わりそうですよね。
・要するにその高市がいい河野太郎がいいって惚れ込んでる人は、もうそんな風がどうなろうと負けようと支えるわけですね。
・でもそういう信念で動いてる人はもう1割もいないんです。9割がいわゆる浮動票と言っていいわけ。
・9割も不動票でこの人たちはずっと立場表明を留保してえ最後に勝馬に飛び乗りたい人たち。
・これが麻生派の中に40人からいる。ま麻生さんがもうお前河野太郎って言われたら言うこと聞くかもしれないけど、はっきり言うこと聞いた人は5人しかいなかった。これ同じことが茂木派でも二階派でも森山派でもでも起きてるんです。
・特に小泉進次郎をふわっとやってる人もそもそもがその自分の現世利益、自分の人事のためにやってる人だからこっちが勝つと思ったらこっち飛び移る可能性が1番高いのが小泉陣営なんです
・推薦人で総裁選勝てませんからね。そんな中で高市さんがうねりを集め始めてるって僕は言ったのは、そういう人の中のある程度の影響力のある人が高市が勝っちゃうんじゃないかということに気がつき始めてるとそういうことなんです。
・例えば清和会の中にいます。岸田派の中にいます。それから茂木派の中にもいます。ということは少なくとも3人以上っていうことですか。
・3人どころじゃないんですよ。もっといるんです。これが推薦人になるかどうかは別にして。いずれ高市陣営にいずれ入ってくる人っていうのがかなりのボリュームでうわーっと増えてたのがこの2日間なんですよ
・それで潮目が変わったということなんです。
山口氏によると、自民党議員の9割は日和見で勝ち馬に乗ろうとしている人ばかりの状況だそうで、そこに各派閥で影響力を持っている重鎮が、もしかしたら高市氏が勝つのではないかと気づき始めた。その影響で、高市陣営に入りそうな人がここ2日でどっと増えたのだそうです。

水面下でこのような動きが起こっているのだとしたら、あるいは高市総理総裁の芽が出てきたということです。注目していきたいと思います。





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