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1.総裁選出馬表明を模索する各候補
異例のノロノロ台風10号が自民党総裁選に出馬に意欲を示す各候補の予定を狂わせています。
小泉元環境大臣は当初、8月30日に会見を開いて出馬を表明する予定が、6日に延期すると発表。林芳正官房長官も危機管理対応を優先し、3日にも表明する方向で調整しています。また高市早苗経済安保担当大臣も先週の予定だったのを9日にも会見を開く方向で最終調整に入りました。
更に、茂木敏充幹事長も出馬を模索しています。
一方、出馬に意欲を見せつつも推薦人20人の確保に奔走する候補もいます。
上川陽子外相は、8月25日、推薦人集めの状況について「20人をはるかに超える支持をいただいている。いま推薦人をどなたに、という最後の詰めをしている」と述べていたのですけれども、推薦人となると、立候補に必要な20人まで「あと数人」必要な状況です。
推薦人集めに上川氏本人と支援する議員が連日奔走しているのですけれども、水面下の攻防は熾烈を極め、12日の告示までギリギリの戦いが続いています。
「派閥には頼らない」と明言していた上川氏は、法相や少子化担当相といった要職経験や議員連盟の活動でつながりのある仲間に一人ずつ声をかける「草の根」運動を展開。自らが直接会って熱意を訴えるスタイルにもこだわり、徐々に支持を広げているそうですけれども、「あと数人」の上乗せは簡単ではないようです。
各陣営による推薦人の囲い込み、奪い合いは激しさを増し、。上川氏周辺によると「上川さんに付くと言っていたのに、別の候補者に流れた人もいる」とのことで、上川氏自身も8月29日、「支持と推薦との間にこんなに大きなギャップがあることを改めて感じている」と、漏らしています。
2.大本命小泉進次郎
そんな中、有力候補の一角と見なされている小泉進次郎氏で決まりだという説があります。
元朝日新聞政治部デスクの鮫島浩氏は「小泉進次郎氏で、ほぼ決まりでしょう。菅義偉前総理が力添えをしている進次郎氏が、第1回投票で過半数を取って圧勝することも十分に考えられます。ただ、党内での覇権争いのため、進次郎氏の当選を阻止したい麻生太郎副総裁は、麻生派から河野太郎氏、茂木派から茂木敏充氏、岸田派から林芳正氏と上川陽子氏、そして若手代表の小林鷹之氏と、できるだけ多くの候補を立てる “大量擁立” 作戦にうって出ました。候補者が多くなれば票が分散し、進次郎氏が第1回投票で過半数を取るのを阻止することができる。そして、上位2人による決選投票で “反進次郎” の票をまとめて、最後に勝利する大逆転を狙っているんです」と小泉進次郎氏が大本命だとしています。
鮫島氏のこの意見については8月19日のエントリー「候補者乱立の自民党総裁選」で取り上げたことがありますけれども、鮫島氏は「43歳と若くて明るいし、自民党の裏金のイメージを払拭する “選挙の顔” として申し分ない。台風の影響もあって出馬表明を9月6日と、他候補よりも遅くした “後出しジャンケン” 作戦も功を奏するでしょう。期待感を持たせて、進次郎人気は沸騰するはずです。そもそも、あまり早く出馬表明をすると、昔の金銭問題や不倫問題などのスキャンダルを蒸し返される可能性もあったわけです。タイミングとしてはベストでしょう。石破氏と違って、進次郎氏は国民人気が高いだけでなく、党内にも敵はいないので、議員票でも強いから決選投票で勝つ可能性も十分ある。いまや、最大の関心事は、進次郎氏が第1回投票で過半数を取るかどうか、です」と、それでも優位に立っていると述べています。
3.農業改革に失敗した小泉進次郎
そのせいなのか、小泉進次郎氏が総理総裁になったらという前提の記事もちらほら出てきているように見えます。
小泉進次郎氏については、「ポエム」とか「セクシー」とか「進次郎構文」だとかいろいろ揶揄されたりしていますけれども、要は、定見というか、しっかりとした考えが見えないということでしょう。
たとえば憲法改正についても、ある自民党関係者は「九条の建付けをきちんと理解しているかすら疑問です」と苦言を呈していますし、また別のマスコミの政治部記者は「そもそも彼の口から国家観のようなものを聞いたことがありません。演説を聞いても、経済や外交の話が出てこないのです。選挙の顔になり得るというだけでそんな人物にすがろうとしている自民党は浅はかと言うしかありません」と厳しく批判しています。
作家・ジャーナリストの冷泉彰彦氏は、8月28日のニューズウィークに「『セクシー発言』など問題ではない、小泉進次郎が農業改革に失敗した過去をどう評価するか」という記事を寄稿しています。
件の記事の概要は次の通りです。
今回の自民党総裁選では小泉進次郎氏の動向が話題になっています。そんな中で、同氏が過去に「気候変動問題はセクシーに」という発言をしたとして「言葉が軽い」などと改めて批判されています。この発言は、5年前の2019年の9月に環境大臣として国連温暖化サミット出席のためにニューヨークに出張した際のものです。冷泉氏は、小泉進次郎氏の過去の実績をしっかりと振り返り、きちんと評価すべきだと指摘しています。
そもそも、この「セクシー」という言い方は、クリスティーナ・フィゲレス氏というコスタリカの外交官の発言を引用しただけです。このフィゲレス氏というのは、パリ協定を主導した国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の事務局長だった人物です。また、この2019年の国連気候変動サミットの中心人物の1人でした。
責められるのは、そうした文脈を理解しないで表層的な報道をした当時のメディアです。小泉氏の立場としては、国連サミットに参加する際に最も大事な人物と意見交換した際に、キーワードを共有しただけです。それを知らずに誤解と偏見が今でも拡散しているというのは、実に見苦しい現象だと思います。
小泉氏の政策能力を評価する上で、もっと大事なのは環境大臣になる前の2015年から約2年間、自民党の農林部会長として農業改革に挑戦した経験です。この時の小泉氏は、日本の農業が「このままでは持続ができない」という危機感から抜本的な改革の議論を提起して、かなり激しく論戦を行っていました。多くの論点があったわけですが、具体的に小泉氏が戦った課題として「農林中金」と「補助金漬け」の問題があります。
まず、農林中金というのは、農協系の金融機関です。規模としては、預金残高60兆円、総資産100兆円というメガバンクに準ずる巨大金融機関です。2015年の時点で小泉氏は何を問題にしたのかというと、この巨大な金融機関が、農業融資をほとんどしていないという点でした。現在の日本の農業では、大規模化、機械化など、資金を投入して改革をしないと持続可能性が確保できないわけです。
にもかかわらず、潤沢な資金があるのに農林中金は貸出残高の中で農業融資が0.1%しかない、当時の小泉氏は、そんなことでは農林中金は存在意義がないと迫りました。これに対して全農サイドは「貴重な農家の資産は大切に運用しなくてはならない」と言って、農業融資の拡大を拒否したのでした。
その後、農林中金は、世界中で資金を運用するヘッジファンドとしての性格を強めていきました。その結果、今回の米金利高止まりによる債券価格の下落を受けた運用失敗で、単年度「1兆5000億の赤字」が見込まれ、一気に経営危機に陥っています。そう考えると、9年前の小泉氏の指摘、農協系の金融機関なら農業融資をせよ、そうでないなら存在意義はない、という指摘は改めて重たいものがあるわけです。
もう一つ、小泉氏は「補助金漬け農業」への批判を展開、こちらも全農など既得権益代表から激しい抵抗を受けました。ですが、それから9年、現在の日本の農業はコメ不足という深刻な危機に陥っています。原因は猛暑とインバウンド消費だとされていますが、それ以上に高齢化による耕作放棄の拡大が背景にあります。農業が持続不可能になっているのです。
そう考えると、農業の大規模化、機械化、世代交代などの抜本改革を迫りつつ、現状の延命をするためだけの補助金行政を批判した、9年前の小泉氏の提言は、こちらも改めて重たいものがあると思います。
では、小泉氏が日本の農業の持続可能性を確保するための改革の希望なのかというと、こちらは評価が分かれるところだと思います。まず、この農業改革に関しては、9年前の時点で結局は論戦に負けたのです。改革を唱えたけれども敗北して実現はできませんでした。この敗北した責任ということは、小泉氏として背負わねばなりません。
農林中金が危機に陥り、深刻なコメ不足が起きたことは、小泉氏の主張が正しかったことを示しているとは思います。ですが、そんなことを言っても、農林中金が外債で溶かしたキャッシュは戻ってきません。また増え続ける耕作放棄地を緑の水田に戻すことはできません。円安の中で食料自給率が上がらないのであれば、国民の生活は成立しなくなります。
そう考えると、小泉氏もまた、当事者として改革の実現に失敗した責任からは逃れられません。少なくとも、今回の総裁選ではこの点について小泉氏の評価が正当になされるべきです。改革者なのか、それとも改革を試みたが敗者に過ぎないのかということです。少なくとも「セクシー発言」を切り取って、言葉が軽いのどうのという表面的な評価をするのは、公平ではないと思います。
先日、スーパーから米が消えるという「米騒動」が起こり、米の生産・供給に脚光が当たりましたけれども、元農水官僚で現キヤノングローバル戦略研究所研究主幹のの山下一仁氏は、米が品薄になった理由について次のように述べています。
コメが不足しているのは減反政策のせいですよ。減反というのは、コメの生産を減らして、市場価格を上げる政策です。コメ農家が麦や大豆など他の作物に転作すれば、国が補助金を出す仕組みです。日本はこれを50年以上も続けているのです。今回の米不足は政府の減反政策のせいだというのですね。
コメ以外のパンやパスタなどの消費が増える中、従来と同じ量のコメを作っていたら、余って価格が下落してしまう。そうならないよう、年々生産を減らし、最近では水田の約4割を減反して6割しか使わず、ピーク時の1445万トンの半分以下の生産に抑えています。
ギリギリの生産態勢でやり繰りしているから、訪日客の消費が少し増えるなど、ささいな需要の変動があるだけで、あっという間に品薄状態となり、価格が高騰してしまう。それが今、足元で起きていることの本質です。
これに関連して、小泉進次郎氏は9年前に農業改革に取り組んだものの失敗した。冷泉氏はこれについて正しい評価をすべきだと指摘しています。
4.小泉進次郎は経験不足
8月30日、記者から経験不足を指摘された、小泉進次郎氏は「私は自分ですべてできるとは思っていません。まさに私のことを支えてくれるチームとして最高のチームを作り上げていきたい」と答えていますけれども、本気なのか、それとも、世間ウケを狙ったその場しのぎの発言なのか、ちょっと判断に苦しむところです。
そんな中、もし、小泉進次郎氏が総理になった場合、その内閣はどうなるのか。政治評論家の有馬晴海氏は次のように予測しています。
・進次郎氏は議員歴15年で経験不足ではないかといわれますが、自民党には優秀な政治家はたくさんいます。そういう人物を閣僚にして支えてもらえばいい。進次郎氏は、総理としてトータルコーディネートを考え、指揮官の役割を果たせばいいんです。有馬氏も、”進次郎総理”の経験不足は、経験豊かな閣僚で補えばよいという考えのようです。というか、それしかないのかもしれません。
・小泉進次郎内閣のキーワードは『刷新』。そのため、裏金問題を抱える議員は、たとえどれほど有能であっても、進次郎氏は今回起用しないだろうと考えました。
・それに『脱派閥』を主張する進次郎内閣なので、各閣僚の出身派閥は考慮していません。結果的に、無派閥の議員、そして進次郎氏を支援した菅義偉氏に近い人物が多くなりました
・財務大臣は梶山弘志氏ではないでしょうか。梶山氏は菅氏が尊敬していた梶山静六元通産大臣の子息。自身も安倍・菅内閣で経産大臣も経験した経済・財政通です。
・総務大臣に起用されるのは坂井学氏。彼は、菅内閣の官房副長官を務め、菅氏を支援する『ガネーシャの会』会長でもあります。そして、環境大臣には参議院から三原じゅん子氏でしょう。どちらも地元が神奈川の菅人脈。進次郎氏ともども地元の付き合いは信頼関係ができます
・進次郎氏を中心に自民党の若手議員で構成した『2020年以降の経済財政構想小委員会』のメンバーから4人選出しています。法務大臣に牧原秀樹氏、経済再生担当大臣に橘慶一郎氏、地方創生担当大臣に村井英樹氏、デジタル大臣には小林史明氏です。
・新しい時代の多様な生き方・働き方の観点から、自助の支援を基本とした社会保障制度改革などを提言するのが目的ですが、この小委員会は、進次郎氏の社会保障政策の “柱” となっています。メンバーはいわば “同志” ですね。牧原氏と小林氏は初入閣ですが、非常に能力の高い人物です。
・また、進次郎氏の大きな売りは若さということになりますが、新しい時代の国の形を想定できる若い同僚が目にとまります。
・進次郎氏は男女共同参画の意識が強いので、女性を5人は入れたいと考えました。当選2回で41歳の若さの小野田紀美氏は文部科学大臣。当選4回で38歳、外務副大臣も経験している鈴木貴子氏は沖縄北方担当大臣でしょう。三原じゅん子氏も含め、女性が活躍する内閣の象徴的存在になりうる人事です。
・加藤氏は菅内閣で官房長官を務め、安倍内閣では官房副長官も経験しているため、もちろん菅氏との関係も良好。政治的手腕も手堅いし、“女房役” として進次郎氏を支える官房長官の役職は適任だと考えました
・斎藤健氏は経済産業大臣に再任するでしょう。問題が山積みの産業界のなか、能力は折り紙つきですし、進次郎氏とは当選同期で関係も良好。高市早苗氏は党内から、特に元安倍派から根強い支持があります。経済安全保障政策の継続性を考慮して、経済安全保障担当大臣の再登用としました。
・同じ女性でいうと、上川陽子外務大臣も引き続き起用されるでしょう。岸田内閣での実績と、外交では同じ顔が幅を利かせる優位性が大切です。そして、目玉として防災省の新設を予想しますが、初代防災大臣には、提唱者の石破茂氏はどうでしょうか。
・総裁選では惜しい結果となりそうですが、さまざまな大臣を歴任し、永田町有数の勉強家でもあり、南海トラフ地震や豪雨などの災害が心配される今日、ご本人の知恵やアイデアなど手腕を発揮していただきたい
・厚生労働大臣に田村憲久氏が起用されれば、厚労大臣は2度めとなります。厚生政策では自民党一と高く評価されています。
・農林水産大臣は古川禎久氏を推奨します。前回は法務大臣ですが、どの分野の政策にも精通しており、特に地元・宮崎では農業問題にも精力的に取り組んできました。新しい農業政策に期待したいです。
・防衛大臣には小野寺五典氏。安倍内閣で同大臣を務めた経験者で、自衛隊からの信頼が大きい。党の国防部会で安全保障調査会長を務め、不祥事の相次ぐ自衛隊改革にも手腕を発揮すると期待されます。岸田派から一人となると、この人です
・内閣府における外局の長である国家公安委員長は、岩屋毅氏。知識・経験が豊富。
・復興大臣としては、“初入閣” となる松下新平氏。大臣就任が遅れたのは、派閥、能力、タイミングなどでよくある話。
・こども政策担当大臣は馬淵氏を予想します。野党・立民からの起用ですが、少子化対策には野党も男女も関係ない。6人の子育てをした経験を、かつて小泉純一郎首相から『表彰しなきゃいけない』と評価されたこともありました。内閣改造ごとの1年間ではなく、3年間くらいは一貫政策で出生増の成果を上げてほしい。
・国土交通大臣は、現職の公明党・斉藤鉄夫氏の留任でいいと思います。自公連立を組んで以来、国交大臣ポストは公明党枠。公明党内での人事になりますが、現職の斉藤氏を変える理由もない。手堅くソフトな答弁はイメージがいいので、内閣としてはありがたい人事です
まぁ、出馬表明もしてない段階で気が早いといえば早いですけれども、まずは誰が何人の推薦人を集めて出馬するのか。告示ギリギリまで決まらないのかもしれませんね。
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