ゼレンスキー内閣閣僚の大量辞任

今日はこの話題です。
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1.アイルランド国民はウクライナ国民と共にある


9月4日、アイルランドのサイモン・ハリス首相はウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談し、二国間協定に署名しました。

この協定にはウクライナの地雷除去に関する共同作業やサイバーセキュリティに関する共同作業が含まれており、ゼレンスキー大統領はこれによりウクライナ国民が救われ、欧州の回復力が向上すると述べています。

更に、ゼレンスキー大統領は「ウクライナの復興へのアイルランドの参加は、我々国民、我々の国々、そして我々のヨーロッパの生活様式にとって大きな支援となるだろう……私はアイルランド国民に感謝します。ロシアが我が国に侵攻し始めてから、皆さんが10万人以上のウクライナ国民を受け入れ、本当に温かく歓迎してくれたことを私は知っている」とアイルランドの支援に感謝の意を表しました。

ハリス首相は「アイルランド国民はウクライナ国民と共にある」と述べ、アイルランドはウクライナのEU加盟に向けた取り組みを支持することを明らかにしました。

一方、ハリス首相は、アイルランド政府が新たにアイルランドに到着するウクライナ人に対する財政支援を削減する決定をしたことについて、「アイルランドは今後も常にウクライナ出身の人々を支援し続ける」と述べ、アイルランドに迎え入れられた約10万9000人のウクライナ人が「アイルランド社会に信じられないほど前向きな貢献をした」とコメントしています。

けれども、難民制度は持続可能性の観点から常に検討されているとし、これらの変更は無料の食料、宿泊施設、労働の権利を与えられていた人々に適用されると述べました。

アイルランド首相のウクライナ訪問は、ウクライナの人道支援活動と「復興と最終的な再建」を支援するためにアイルランドがさらに3600万ユーロ(4300万ポンド)を拠出することを約束したことと並行して行われました。

この最新の資金提供発表により、2022年2月以来のアイルランドのウクライナへの資金提供総額は3億8000万ユーロを超える額に膨れ上がっています。


2.我々は新たなエネルギーを必要としている


そんな中、ゼレンスキー政権は大幅な内閣改造を計画しています。

9月4日、ゼレンスキー大統領は記者会見で、「我々は新たなエネルギーを必要としている」と述べ、最大規模となる内閣改造の必要性を示唆しました。

今回の改造では閣僚の半数が更迭される見通しとのことですけれども、前日の3日、閣僚4人が辞任しました。

ウクライナ最高議会によると、辞表を受理したのは、カムイシン戦略産業相、マリュスカ法相、ストリレツ環境保護・天然資源相、ウクライナ国有財産基金総裁のヴィタリー・コヴァル氏の4人で、更にゼレンスキー大統領が、シュルマ大統領府副長官も解任したと伝えられています。

そして、ステファニシナ副首相、イリーナ・ヴェレシュチュク副首相も辞任を申し出たそうです。

ステファニシナ氏は欧州大西洋を統合して担当し、ヴェレシュチュク氏は一時的占領地再統合の担当でした。また、カムイシン戦略産業相は兵器生産の拡大で重要な役割を果たしてきました。

ゼレンスキー大統領は演説で、ウクライナが最善の結果を達成できるよう国家機関を整備すべきだと指摘。「そのため、閣僚や大統領府で多数の人事異動が行われることになる」と述べ、今回の変更により外交政策と国内政策の個々の分野に与えられる重みが若干変わることになるだろうとコメントしています。

欧州大西洋の統括担当と一時的占領地再統合担当の副首相を外す、そのまま別の役職に横滑りさせるのか分かりませんけれども、これら担当を異動させるということは、ロシアとの戦争終結を視野に後始末に入ろうとしたのではないかとさえ勘ぐってしまいます。


3.クレバ外相辞任


更に更に、同じく4日、ドミトロ・クレバ外相も辞意を表明しました。

クレバ氏は、ゼレンスキー政権で重要な位置を占め、特に海外の政府高官とのやり取りで、最も公的な立場にある人物の一人でした。クレバ氏は有能な政治家であり、頼りになる人物と見られており、ゼレンスキー政権の内閣で最も有力なメンバーの一人でもあったとされています。

辞任には、議会承認が必要になるのですけれども、クレバ氏の辞任についてはまだ承認を行っていないものの、コヴァル国有財産基金総裁とベレシュチュク副首相の辞任は保留、残りの3人の大臣と副首相1人の辞任は承認したとのことです。

クレバ氏と辞表を提出した他の人物は、ゼレンスキー政権の他の役職に任命されると広く見られており、ゼレンスキー大統領は、今月下旬のアメリカ訪問に向けて新たなチームを準備しておきたいと考えているとも見られています。

これについて、ウクライナの政治学者ミコラ・ダヴィディウク氏は、政府内に大きな意見の相違はないとした上で「昨年秋、そして12月、そして5月にこれを実行したいと考えていた。彼らはそれについて話していたので、何か行動を起こす必要がある。さもないと人々は信じないだろう」と、ゼレンスキー大統領は内閣改造の好機を感じていただろうと指摘。「西側諸国は、米国の選挙、ドイツとフランスの選挙問題など、対処すべき国内問題が山積しており、今彼を批判することはできない」とコメントしています。

改造内閣のメンバーについて、冒頭取り上げたアイルランドのハリス首相との記者会見で質問が飛んだのですけれども、ゼレンスキー大統領は、候補者らが政府参加の招待を受け入れるかどうか分からないため、後任を発表することはできないと躱しています。


4.ゼレンスキー大統領の内閣改造で権力掌握の疑惑


9月4日、このゼレンスキー大統領の内閣改造について、アメリカの政治専門メディアのポリティコ紙は「ゼレンスキー大統領、内閣改造で権力掌握の疑惑が浮上し大きな反発に見舞われる」という記事を掲載しています。

その概要は次の通りです。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は水曜日、ロシアが全面侵攻を開始して以来最大規模の政府人事異動を議会が開始したことで、キエフで反発を引き起こした。

モスクワ軍がウクライナ東部に進軍し、キエフが西側同盟国にロシア領土へのミサイル使用を働きかけるなか、野党幹部はゼレンスキー大統領が権力を集中させるため、政府要職に近しい同盟者や忠誠心の高い人物をどんどん配置していると非難した。

ゼレンスキー氏の政党は2019年に過半数を獲得したため、同氏には政府を召集する権利がある。ウクライナがロシアの侵攻と戦う間も施行されている戒厳令は、大統領にさらなる権限を与え、選挙を禁止している。しかし、一部の反対派は大統領が権限を越えたと言っている。

「現政権の行動はすべて、大統領とその官邸による権力の組織的集中化を物語っている」と野党欧州連帯の議員イヴァンナ・クリンプシュ・ツィンツァゼ氏はポリティコに語った。「政府高官の辞任が相次いだことは、今や同国に深刻な統治危機が生じていることを物語っている」

退陣に向かう人々の中に、水曜日にまだ説明されていない理由で辞任を申し出た、人気の高い外務大臣ドミトロ・クレバもいる。

この記事に登場する他の人物と同様に、匿名を条件に内閣改造について率直に語ったウクライナの元高官は、クレバ氏が解任されたのはゼレンスキー氏の強力な官邸トップ、アンドリー・イェルマーク氏との衝突が原因だろうと語った。「彼らの間に対立があることは誰もが知っていた。私は一度、その一幕を目撃したこともある」とこの高官は語った。

「クレバ氏はその役職上、(アントニー・)ブリンケン(米国務長官)、(アンナレーナ・)バーボック(ドイツ外相)など多くの人々と直接のコンタクトを確立していた。たとえ彼が300%忠実であったとしても、大統領府は、自分の担当官かどうか確信が持てない人物にそのような連絡経路を委ねることはできない」と当局者は付け加えた。

ゼレンスキー大統領は指導のために高官に頼っているが、キエフとワシントンのコミュニケーションは主に大統領自身の事務所、具体的にはイェルマーク氏が主導している。ルステム・ウメロフ国防相もバイデン政権と親しく、ロイド・オースティン国防長官と頻繁に会談している。

この2人は引き続きその地位にある。両氏は先週ワシントンを訪問し、バイデン政権の高官らと会談した。

ゼレンスキー大統領の関係者や顧問はポリティコに対し、クレバ氏は世界中でよく知られ、テレビにも頻繁に出演しているが、過去1年間、キエフとワシントンの関係や戦場での野望を前進させるためにほとんど何もしていないと語った。その代わり、クレバ氏は新著の宣伝に努めていたと関係者らは語った。

イェルマーク氏とクレバ氏はPOLITICOのコメント要請にすぐには応じなかった。

ゼレンスキー大統領に近いウクライナ政府関係者やアナリストらはこうした批判を否定し、疲弊した戦時政権の強化を狙った長期計画を大げさに騒がせないよう野党に求めた。

「今日、我々は新たなエネルギーを必要としており、これらの新たな措置は様々な方向で我々の国家を強化することにつながる」とゼレンスキー大統領は水曜日のキエフでの記者会見で述べた。

ゼレンスキー大統領に近いウクライナ当局者によると、今回の内閣改造の目的は、内閣の立て直しと、解任された閣僚らの再任に加え、インフラ、文化、農業、退役軍人問題など、長らく空席となっていたポストの補充だという。

「ゼレンスキー氏の統治スタイルは、政府をより精力的で効果的なものにするために、定期的に内閣改造を行うことだ」と、ウクライナのペンタ政治研究センターの政治アナリスト、ウォロディミル・フェセンコ氏はポリティコに語った。「若き改革者、オレクサンドル・カムイシン氏がどうなったかを見ればわかる。カムイシン氏は、無能な前大臣から戦略産業省を引き継ぎ、わずか1年で国内の兵器生産を3倍に増やしたのだ」

「今や彼はゼレンスキー氏のお気に入りなので、彼をさらに近づけた」とフェセンコ氏は語った。

秋はウクライナにとって極めて重要な時期となるだろう。政府や大統領府を含む国家機関を強化しなければならないとゼレンスキー大統領は火曜日の声明で述べた。

ゼレンスキー氏の中道政党「人民の奉仕者」の議会代表ダビド・アラカミア氏は水曜日遅く、ゼレンスキー氏を含む議員らが会議を開き、主要な新候補者を決定したと発表した。

現外務副大臣で元大統領府副長官のアンドリー・シビハ氏がクレバ氏の後任となる。

大統領府のもう一人の副官、オレクシー・クレバ氏は副首相兼インフラ・地域政策相に就任し、オルガ・ステファニシナ氏はEU統合担当副首相の職に留まり法務相も兼任する。

大統領府副大臣のミコラ・トチツキー氏は、偽情報との戦いを強化するため、新たな文化情報政策大臣に就任する。

カムイシン氏は大統領府に赴任し、引き続き軍備とインフラの問題に取り組む。国営兵器会社ウクロボロンプロムの現CEO、ヘルマン・スメタニン氏が戦略産業大臣としてカムイシン氏の後任となる。

「ウクライナには才能に恵まれている。大統領の立場に耳を傾け、大統領にとって誰と仕事をするのが一番心地よいかを考えなければならないと思う」と、人民奉仕者党の議員で議会外交委員会委員長のオレクサンドル・メレシュコ氏はポリティコに語った。

「官邸に近い人物だけが政府高官のポストに就いているというのは真実ではない」とメレシュコ氏は、自由主義的で親欧州のホロス党出身のウメロフ国防相を例に挙げて述べた。

「もちろん、戦争中は戒厳令で禁じられている選挙が行われないなど、自由と民主主義には制限がある」と政治研究者のフェセンコ氏は語った。

「しかし同時に、ゼレンスキー大統領がこれまで築いてきた体制は、我々が残忍な侵略に抵抗し、外国からの支援を固めることを可能にしてきた」と彼は続けた。「残念ながら、このような戦争の最中に完全に民主主義を維持することは不可能だ」

この論理は、ゼレンスキー大統領の国内反対派には完全には通用しない。彼らは、大統領が最近の行動で行き過ぎたと考えており、ロシアの戦争が長引く中、より代表性のある政府を望んでいる。

「現時点では統一ではなく救済政府が必要だ」とクリンプシュ=ツィンツァゼ氏は述べた。「だが、ウクライナ政府が法の支配に戻る場合にのみ協力することに同意する。戦争さえも言い訳にはならないからだ」

ウクライナには汚職の歴史があり、米国はこれまで何度も、キエフが当局者の調査を強化し、政治的、財政的な不正行為を取り締まるよう主張してきた。

バイデン氏のチームは以前、キエフ政府に対し、より多くの市民社会の声を政府に取り入れるよう求めてきた。

ホロス党のヤロスラフ・ジェレジヤク議員はフェイスブックへの投稿で新顔の不足を批判した。

「ゼレンスキー氏は新たなエネルギーが必要だと言っているが、この『偉大なる再導入秩序』には、まだ新しい人物の姿が見当たらないのに気づいていますか?」と議員は質問した。「すべての変化は、すでに王国にいる人々の入れ替わりにすぎないのです。」

今のところ、西側同盟国は、大統領が政府に忠誠派を詰め込んでいるとの印象に若干の不安を抱いているにもかかわらず、ゼレンスキー大統領とキエフ政権に対する批判を公にあまり表明していない。

米国では、政権当局者はこの人事異動に対する感情については慎重だった。

「懸念すべき理由があるかもしれない」と政府高官は述べたが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。このコメントは、同高官が匿名を条件に率直に語った後に出されたもの。

しかし、キエフの観察者たちは、この戦争は、平時であれば違った見方をされるかもしれない行動の正当な理由以上のものだと述べている。

「ゼレンスキー大統領の首席補佐官イェルマーク氏が権力を握りすぎているとの批判があるにもかかわらず、パートナーたちは依然として我々を支援している。なぜなら彼らは我々の状況を理解しているからだ。彼らは戦争が終わり選挙が行われればすぐにウクライナは民主主義の再起動を迎えると理解している」とアナリストのフェセンコ氏は語った。
ポリティコ紙によると、内閣改造は、ゼレンスキー大統領が政権を維持するためのものであって、お気に入りで周りを固めているというのですね。

ポリティコ紙の見立てのとおりだとして、こんな状態でウクライナはどこに向かおうとしているのか。冒頭で取り上げたように、アイルランドだけでなく、欧州各国にウクライナの人々が難民として逃れています

彼らが祖国に戻れるのはいつになるのでしょうか。



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