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1.進次郎出馬す
9月6日、自民党の小泉進次郎元環境相は、東京都内で記者会見し、党総裁選への立候補を正式に表明しました。
出馬表明は6人目で、小泉氏の総裁選出馬は初めてとなります。
出馬会見で小泉氏が語った概要は、選挙ドットコムによると次の通りです。
・私が総理になったら1年以内に実現する改革と、中長期を見据えた構造改革の方向性を説明します。総理・総裁になったら、できるだけ早期に衆議院を解散し、私の改革プランについて国民の信を問うことにしたい
・すべての改革の前提となるのは政治の信頼回復です。なぜ自民党は信頼を失ったのか、なぜ今も前に進めないでいるのか。それは政治の金の流れがいまだに不透明だということです。使い道の公開は10年後で良いという政策活動費はもうやめます、非公開で良いとされてきた旧・文通費は公開、残金は国庫に返納を義務付けます
・(裏金問題への対応)今回の問題の当事者となった議員を選挙で公認するかどうかは説明責任を果たしてきたか、再発防止に向けた取り組みを進めているかに基づき、地方組織や地元有権者の意見などを踏まえて、新執行部において厳正に判断します。
・その上で選挙で選ばれた新たなメンバーで自民党を作り直し、今までの自民党ではできなかったこと、これからの私たちだからこそできることに挑戦します
・次の時代も稼げる新しい産業がうまれる国にしたい。日本の産業の柱を一本足打法から二刀流、そして世界へ。そのためには必要な人材が必要な場所で輝けるように労働市場改革を含め、聖域なき規制改革を断行します
・大企業に眠る豊富な資金、人材、技術を開放し、スタートアップや中小企業に流れ、スタートアップが既存企業と公平に競争できる環境を整備しなければならない。
・賃上げ、人手不足、正規・非正規格差を同時に解決するため、市場の改革の本丸・解雇規制を見直します
・ライドシェアも全面解禁し、地方の移動の不便を解消します。業界や既得権益側が認める範囲内でしか政策をすすめることができない自民党を変え、国民の願いや希望が叶う聖域なき規制改革を進め、自民党を真の国民政党に立て直します
・お一人おひとりの人生の選択肢の拡大に取り組みます。「年収の壁」の撤廃、労働時間規制の見直し、「選択的夫婦別姓」の導入など選択肢を広げます。
・憲法改正について。私は、戦後初めての国民投票を実施したい。自民党の立党以来の国民との約束を守ることに全力を尽くしたい。たとえ、国民投票で否決される可能性があっても70年間一度も国民に憲法改正の是非を問う機会する提供しなかった現状を打破したい。国民の皆さんに問いたい、自衛隊が私たちの国の憲法に書いてすらいない、おかしいと思いませんか?防衛力の強化、予算の増額はもちろんですが、憲法に自衛隊を明記する。それがだめなのかどうか国民に聞きたい。
小泉氏は、首相就任後1年で実施する政策として政治改革や規制改革などを挙げ、その後に取り組む中長期的な構造改革も掲げ、早期解散を宣言しました。
2.知的レベルの低さで恥をかくのでは
小泉進次郎氏は、2012年の衆院選で初当選し、「将来の首相候補」として早くから注目されてきましたけれども、その発言はたびたび物議を醸してきました。
2019年に環境相に就任した直後、ニューヨークの国連本部で開かれた気候行動サミットに出席した後の記者会見では、「気候変動のような大きな問題はセクシーに取り組むべきだ」などと発言。「意味が分からない」などと批判を浴びました。
また、同じく環境相時代、政府が2030年度の温室効果ガス排出を46%削減する目標を定めたことについて、TBS系「NEWS23」のインタビューで「おぼろげながら浮かんできた」と発言し、炎上しています。
ネットでは「進次郎構文」と揶揄されるなど、訳が分からない発言のイメージがついてしまっている小泉氏ですけれども、仮に総理に就任すれば、国会の予算委員会などで野党の厳しい質問に答えなければならなくなります。
ある安倍派の若手議員からは「立憲民主党の新代表がベテランの野田佳彦氏になったら、予算委員会でコテンパンにやられる。全く太刀打ちできないだろう」とか、「彼が米国の大統領になるかも知れないトランプ氏や、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平主席とやりあう姿が全く想像できない」などと危惧する声も上がっています。
小泉氏は党三役入りしたことはなく、閣僚経験も環境相の1回のみ。安倍派の閣僚経験者は「政治経験が少なく、『軽量級』というのはその通りだ」と指摘するように、経験不足は否定できません。
当然ながら、出馬会見でも、それに関する質問が飛びました。
フリージャーナリストの1人が「小泉さんが首相になってG7に出席したら、知的レベルの低さで恥をかくのではないかと、皆さん心配している。それこそ日本の国力の低下にならないか。それでもあえて総理を目指すのか」と際どい質問をしたのですけれども、小泉氏は「私に足らないところが多くあるのは事実だと思う。完璧でないことも事実だ。しかし、その足りないところを補ってくれる最高のチームをつくる……15年間、野党の経験、与党の経験、積み重ねてきた。そういったことを国際社会の舞台でも発揮して、国民の皆さんに大丈夫だなと安心感を持っていただけるように最大限努力していきたい」と答えました。
小泉氏は2019年9月に環境相に就任した際の最初の記者会見でも「同じようなご指摘をいただいた」ものの、その質問をした記者からは、2年後の環境相退任時には「花束をいただく関係になった」と紹介し、フリージャーナリストとも「そうなれれば嬉しい」と話しました。
小泉氏はG7など国際会議で、知的レベルの低さで他国首脳と会話できないのではないかと質問しているのに対し、チームを作って足りないところを補って貰うと答えたのですね。
けれども、全ての国際会議でその最高のチームが傍について「子守り」してくれる訳ではありませんからね。うまく躱したつもりかもしれませんけれども、事実上まともには答えていません。
小泉氏の答弁能力を巡っては、旧岸田派中堅議員が「1人で政権運営をやるわけではない。周りが支えれば大丈夫」と述べていますけれども、フォローするにも限界があります。
3.声をかけても全部ブロックされる
それでも、小泉人気は党内でも衰えていません。
党内には、衆院解散・総選挙を意識して、報道各社の世論調査で「次の首相」候補として人気が高い小泉氏を支持しようとの動きが広がっているようです。
派閥裏金事件以来、自民党の若手議員は「地元に戻ると、裏金を何に使ったのかと厳しい批判ばかり受ける」とこぼし、ある中堅議員は「選挙が厳しい人ならみんな小泉さんだ」と、早くも小泉氏との二連ポスターを作成していることを明かしています。
小泉氏が会見で早期解散を打ち出したのも、党内のそうした声が聞こえていたからなのかもしれません。
自民関係者の一人は、「党勢回復への期待値で小泉人気が高まっている」と述べ、小泉氏陣営の議員も「今日の記者会見を見て、応援に回ってくれる議員がもっと増えるといい」とコメントしています。
小泉氏については、バックにいるとされるキングメーカー・菅前総理の力が相当に効いているようで、自民党の野田聖子元総務相は6日のBS日テレ番組で、「新しい派閥が出現している。やっぱり菅さんはとても強い。声をかけても全部ブロックされる」と党総裁選への立候補に必要な推薦人集めをする際、菅義偉前総理から妨害を受けていることを明かしています。
4.もしも小泉進次郎が総理大臣になったら
依然として総裁選の大本命の一角と目される小泉氏ですけれども、一部からは本当に総理になってしまったらヤバイという懸念の声も上がっています。
9月6日、京都大学大学院工学研究科教授の藤井聡氏は、現代ビジネスに「もし小泉進次郎が総理大臣になってしまったら…!『親譲りのアメリカの操り人形』『日本破壊が加速する』と言える、これだけの理由」という記事を寄稿しています。
件の記事の概要は次の通りです。
自民党総裁選の有力候補として、TVで中心的に取り沙汰されるのが小泉進次郎氏だ。確かに一般国民対象の世論調査における「一番人気」は進次郎氏であることは間違いないが、総裁選というのは単なるアイドルグループの人気投票ではない。日本の命運を担う総理を決する選挙なのだ。9月2日のエントリー「総裁選大本命小泉進次郎の実力」で、小泉氏はかつて農業改革に取り組み失敗したことを取り上げましたけれども、藤井聡教授によると、これはアメリカの差し金だというのですね。
その点を鑑みたとき、この「小泉人気」は、極めて危険な社会状況であるという旨を、8月29日公開の「『地頭がよくない』『日本は終わる』…選挙用の人気というだけでやらせてよいのか、小泉進次郎『総理』へのこれだけの疑念と酷評」で展開した。
この記事では、小泉氏は確かにアイドル的人気はあるものの、「環境大臣」に就任した折りに多くの市井の民が驚く「小泉構文」とも揶揄される意味不明な「ポエム発言」を繰り返し、瞬く間に政治家・大臣としての「資質」に大いに疑問符が付くこととなった、その結果、政治記者達からも自民党議員達からも完全なる「ダメ出し」を出され、「オワコン」化していたのだ、と解説した。
つまり、定型的な演説やワンフレーズトーク以外は可能な限り自由な発言を控え、「ナイスガイ」イメージを保つ戦略を続けてきた小泉氏の「化けの皮」が、環境大臣に着任し公然と言葉を発しなければならなったことで一気に「剥がされた」のである。結果、進次郎氏の総理の目は完全に「潰えた」と多くの政治記者や議員達が認識するにいたったのだが、この度の岸田総理の退任表明を機会に、またぞろ人気が一気に上昇したというわけだ。
もう以上の指摘だけで、小泉氏に総理を「やらしちゃいけない」と判断するに十分な理由が与えられているとも言えようが、その理由は実はそれだけに留まらない。
以上は「総理としての資質を著しく欠いている」というものだが、実際にはそういう“消極的”な理由だけでなく、「日本の国益を毀損し、日本破壊を加速する」という、より“積極的”でより恐ろしい理由を指摘することができるのだ。
そもそも小泉進次郎氏は、彼自身がどこまで自認しているかはさておき、「アメリカのジャパンハンドラー達の意向にそって、アメリカの国益のために日本を積極的に傷付ける政治」を実際に展開してきた人物なのだ。
多くの国民が認識していないところだろうが、進次郎氏は日本を代表する親米政治家であった父・小泉純一郎氏の差配の下、アメリカのCSIS(戦略国際問題研究所」)の研究員を勉めていた人物なのだ。
CSISは「アメリカの国益」を最大化するために設立されたシンクタンクだ。つまりそれは定義上、アメリカの国益のためには日本の国益を毀損することを全く厭わない研究を進めるシンクタンクだ。
そして進次郎氏はそのCSISで、後の彼の政治家人生に決定的な影響をもたらす重大な転機を迎える。小泉進次郎氏を政治学者として徹底研究し、進次郎氏がいかなる政治家であるのかを客観的に描写した中島岳志氏は、次のように指摘している。
「(進次郎氏は)ここ(CSIS)でジャパンハンドラーズの代表的人物とつながり、影響を受けます。彼らは日本の有力政治家と接触し、自らの利益にかなう方向へと誘導することで知られます。小泉さんの外交・安全保障観は、親米を軸に構想されています。」(東洋経済ONLINE、2019年7月14日「小泉進次郎という政治家を徹底分析してみる」)
ちなみに、「ハンドラー」とは「操る者」という意味であり、「ジャパンハンドラー」とは「日本を操る者」の意だ。
では実際に進次郎氏は、CSISのジャパンハンドラーズ達に陰に陽に「操られ」てきたと言えるのだろうか? この点は、彼がこれまで実際に何をやってきたのかを振り返ればスグに理解できる。
まず進次郎氏は、TPPをはじめとした「自由貿易」推進のための「改革」に熱心に賛成した。無論TPPそれ自身は紆余曲折したわけだが、元来TPPは日本のマーケットを狙う米国が、日本国内の様々な規制を緩和、撤廃させようとして仕掛けたものだ。そしてその推進にあたって、ジャパンハンドラーズ達は、日本国内の「ハンドル」である進次郎等を通して、日本のTPP加入を推進せんとしたである。
TPPや自由貿易協定によって米国は大きな利益を得ることになるのだが、その一方で日本は極めて深刻な被害を受けることになる。この<真実>に思いが至っている国民は、専門家も含めて限られているだろうが、その被害は現在の「農業」の状況を見れば一目瞭然だ。
TPP等による様々な貿易協定によって日本は国内の農業を積極的に「保護」することをどんどん放棄していったわけだが、その結果、農家の所得が激しく下落してしまった。例えば、最新の統計では平均年収(収入から必要経費を引いた額)はわずか「1万円」という信じがたい水準にまで下落してしまっている。そうなれば農業の若い担い手はますます減少し、2040年には農家が3分の1にまで激減すると見通される程にまで立ち至ってしまっている。
そしてそれが、現下のスーパーの棚から米が消えるほどの米不足にもまた、繋がっていることは明らかであるが、こうして日本はTPPをはじめとした自由貿易の推進によって大きな被害を実質的に受けるに至ったのである。そしてその一方で、日本の食料についての外国依存が不可避的に進行し、アメリカ等の諸外国が日本人相手のビジネスをますます拡大することとなったのである。
言うまでも無いが、もしも日本が自由貿易に対してここまで前のめりでなければ、農家の所得は守られ、ここまでの国益毀損は回避されていたことは確実だ。
進次郎氏はこうして、アメリカが望む方向、すなわち、日本の農家を潰し、アメリカの農家の収入の拡大に貢献したわけだが、彼が取り組んだのはTPP等の自由貿易協定の締結推進だけではない。彼はより“直接的”に、アメリカが望む日本の農業潰しに積極的な活動を展開したのだ。
彼は自民党の農業部会長を勤めていたが、この時に彼が熱心だったのが「農協改革」だった。
日本の農業は、諸外国に比して政府からの「公助」の水準が圧倒的に低く、したがって、農家同士が助け合う「共助」の仕組みとしてJA農協が発展させ、その勢力の維持を図ってきた。
しかし、そんな農協の「せい」では、日本の農業が一定「守られて」しまい、それがアメリカの農家のビジネス拡大にとっての大きな「障害」となっている―――というのがアメリカの見立てだ。アメリカはしたがって、日本の農協を解体せんと様々な画策を進めてきたわけだが、そんなアメリカの意向にそった仕事を「与党農業部会長」の立場を駆使して徹底推進せんとしたのが、進次郎氏だったのだ。
彼は農協の「株式会社化」を図るのだと主張し、農協の重要な金融機関である90兆円もの資金を抱えた「農林中金」を解体し、農業の“護送船団”を改革するのだと主張した。さらに、農家同士の「協力」関係を解体し、さまざまな「競争原理」を各所に導入すべきだと主張した。
こうした改革は全て、アメリカの国益に叶うものだ。農協の各種取引が自由化され、株式会社化されれば、アメリカ人が株主になることで、農協が持つ膨大な資産をアメリカの産業界、農業界が好き勝手に利活用し、米国益を拡大することが可能となるからだ。しかも「農林中金」が自由化されれば、アメリカがその膨大な資金を「活用」して利益を拡大することが可能となる。この後者の改革論は、父親の小泉純一郎総理がアメリカの要望に従って「郵便貯金」を自由化せんとしたのと全く同じ構図にある。
結局、こうした改革論の全てが成就することはなかったが、彼が総理になれば、こうした「アメリカ国益に叶う改革」を推進することは確実だ。
【中略】
かくして小泉進次郎総理の誕生は、その政治家としての基礎的能力の不足故にまっとうな政治が進められなくなる、という問題があると同時に、アメリカのジャパンハンドラー達の「操り人形」として、日本の国益がより積極的に破壊されていく深刻なリスクがあるわけだ。しかも国益毀損の程度から言うなら、この後者の問題の方が、より深刻だと言えよう。
以上の分析を通して筆者は、小泉進次郎氏の総理就任は、極めて深刻な国難状況をもたらすであろうと確信しているのである。
なお、本稿で指摘したのは「アメリカ」からの影響が肥大化するという指摘であったが、進次郎氏が巨大な影響を受けるのはアメリカだけではない。国内最強組織とも言われる財務省の影響を濃密に受ける政治家でもある、という点を忘れてはならない。この点も、今財務省が後生大切にしている「プライマリーバランス規律」を導入した父純一郎氏の生き写しなのだ。
だからこそ進次郎氏が岸田氏の「増税メガネ」路線を踏襲することは確実なのだが―――この点を指摘するにはまた一定以上の解説が必要となる。ついてはその論点については次回の記事にて、改めて解説することとしよう。
果たして、藤井教授がいうアメリカの「ジャパンハンドラーズ」が今も力を持っているのかどうか分かりませんけれども、仮にそうだとすれば、小泉進次郎総理の誕生は、日本の国益の棄損に繋がるのかもしれないことは留意しておくべきではないかと思いますね。
この記事へのコメント
ルシファード