ベラルーシで拘束されたVIVANT

今日はこの話題です。
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1.東京から来たサムライの失敗


9月5日、ベラルーシの国営放送「ベラルーシ1」は、15分の番組「東京から来たサムライの失敗」を放送しました。

これは、拘束した日本人男性が日本のスパイだったというもので、現地メディアは、ベラルーシでスパイ容疑により日本人が拘束されたのは史上初だと伝えています。

日本政府関係者などによると、件の男性は、ベラルーシ南東部のゴメリ国立大で日本語教師をしていた中西雅敏氏とのことです。

中西氏は、出国直前だった7月上旬に、国家保安委員会(KGB)にスパイ活動容疑で身柄を押さえられ、拘束されました。

番組では中西氏とみられる男性がベラルーシの情報機関KGBに拘束され車両に連行されていく際の様子も放送され、ベラルーシとウクライナとの国境で軍事施設などを含む9000枚以上の写真を撮影するなど情報収集を行っていたとしています。

2018年にベラルーシ人女性と結婚したのを機にゴメリ州に移り住んだという中西氏は、丸刈りで手錠をかけられたまま出演。ロシア語で「国境近くに行き、線路や橋を撮影した」「ベラルーシ軍の施設や配置などについて情報を収集した」「写真は国家公安委員会に渡そうと思った」「これは犯罪だ」「私の活動はベラルーシの安全に損害を与えた。後悔している」などと、罪を認める様子も映っています。

番組では、ベラルーシ国家保安委員会の当局者がスパイ活動容疑で捜査しているとし、中西氏について「捜査に協力し、違法行為の詳細を証言している」と語っています。

番組でスパイの証拠として取り上げられたのが、妹の元夫で日本の情報機関と関係があるとする「Mike Sato」なる人物とのLINEトークです。トークでは〈ベラルーシ進出はかなり厳しいのが実情〉〈明日は大使館関係者と飲みに行く〉などのやりとりがされており、ロシア語で「監督者」と説明されていました。

この「Mike Sato」と中西氏の情報交換は、ロシアによるウクライナでの「特別軍事作戦」が始まった2022年2月以降に頻繁になったとした上で、2人がやり取りしたとするSNSの画像をうつしながら、「2人はウクライナの避難民の存在や、ロシア軍の武器、それに戦略的な施設を撮影することの危険性などについて関心を持っていた」と伝えています。




2.ベラルーシ外務省に放映中止を強く申し入れた


この問題に関し、9月6日、ベラルーシ外務省は現地に駐在する日本の山本広行大使を呼び、ベラルーシの安全保障に損害を与えたとして抗議したことを明らかにしました。ベラルーシ外務省によると、中西氏への捜査は最終段階にあるとしています。

一方、日本政府は同じく6日、林芳正官房長官が閣議後の件の番組を放映したことについて「極めて遺憾」だとし、放映後ベラルーシ外務省に抗議したことを明らかにしました。

林官房長官は、「前日の番組予告において、当該男性の人権の保障の観点から問題がある内容が含まれていたことを受け、放映に先立ち、在ベラルーシ日本大使館からベラルーシ外務省に放映中止を強く申し入れた……結果として放映されたことは極めて遺憾だ。放映後直ちにベラルーシ外務省に対して抗議した……いずれにしても政府としては、邦人保護の観点からできるかぎりの支援を行っていく」と述べ、在ベラルーシ日本大使館からベラルーシ外務省に対し、放映中止を強く申し入れていたことを明らかにしています。

これに対し、ベラルーシ外務省は声明で中西の活動は「ベラルーシ共和国の安全保障に害を及ぼした……捜査は完了に近づいており、日本人が犯した罪に対する処罰は裁判所が決定する」と述べ、日本政府の抗議についても「日本人の行動の犯罪性を暴く番組の放送に対する抗議は、さらに馬鹿げたものに見える 」とコメントしています。


3.リアルVIVANT


では、拘束された中西氏は本当にスパイだったのか。

中国問題グローバル研究所所長の遠藤誉氏は、7月4日、中国が反スパイ法を改正した理由を解説した記事を公開しているのですけれども、その中で、次の様に述べています。
習近平が反スパイ法を改正した「中国国内の事情」を、中国人女子留学生がはまったハニートラップなど、具体例を挙げて考察する。同時に、それでは日本はどうすべきか。これまで絶対に公けにしてはならないと黙ってきたが、これ以上黙っていることが果たして日本のためになるのか否かを考えたとき、思い切って公開した方が良いのではないかと思うに至ったので、文末で少しだけ触れる。

【中略】

では日本はどうすべきかと言えば、スパイ防止法を制定するか、あるいは専門の諜報員を養成するしかないのではないかと思うのである。

これまで何十年も日本国のために口外してはならないと思い、グッと呑み込んで我慢してきた。しかし、これ以上一般の日本人犠牲者が増えるのは耐えがたいので公開することを決意した。

実は筆者は長きにわたって法務省の公安調査庁の某支部に「情報提供」をするという形で協力してきた「過去」がある。もちろん報酬は「ゼロ!」だ。

その情報は自分自身が研究を深め、あるいは海外で資料調査や取材など、学問的視点から得た知見の範囲に限られていた。どうか提供して下さいと執拗に追いかけられ、日本国のためになるならと、膨大な時間と体力を消耗しながら提供してきた。

ところが、ある時点で、「研究のための出張のついでに、中国の某地点で、〇〇に関する情報を取ってきてほしい。その証拠写真も撮影してほしい」と頼まれたのである。

えっ?

それって、スパイ行為じゃないですか――?!

非常に不愉快になり、毅然と断った。

ところが、その後、日本語学校や大学関係者あるいは企業関係者で、中国に出張する際に、筆者同様の依頼を受けた人たちがいることを知った。

これ以上の詳細はさすがに書けない。

しかし、筆者自身の経験から言えるのは、もしプロの諜報員がいれば、一般庶民が「餌食」になることもないし、また日本にスパイ防止法があれば、相手国(たとえば中国)の日本におけるスパイ活動をしている人間を拘束・逮捕し、万一日本人が中国などで拘束・逮捕された場合は、日本で拘束・逮捕している者(相手国スパイ)と交換することによって日本人の釈放につなげることができる。アメリカやカナダなど、普通にやっていることだが、日本は、中国人などのスパイ天国になっているだけでなく、中国で日本人が拘束・逮捕されるケースがあまりに多い。

今年3月下旬にも、アステラス製薬の幹部が帰国する際に突如、中国国家安全局によって拘束された。

4月3日のコラム<カードなしに拘束日本人解放を要求し、「脱中国化はしない」と誓った林外相>にも書いたが、林外相自身が中国の外交トップ王毅氏と会いながら、ただニコニコと握手するだけで、拘束された日本人を取り返すこともできずに帰国してきた。

このようなだらしない国は滅多にない。

もっと日本人を守れるよう法整備をし、毅然とせよと言いたい。
リアル「ベッパン」なのかと思わせる驚くべき暴露です。ただ、ドラマのベッパンと違うところは、ずぶの素人にそれをやらせていることで、これが本当だとすると、邦人を危険に晒したまま放置していることにもなりかねず、非常に問題だと思います。


4.決裂した裏取引


今回の拘束について、筑波大名誉教授の中村逸郎氏は「岸田首相の退陣表明以降、日本の政治的空白が生じている。ロシアによるウクライナ侵攻をめぐっては、側面支援するベラルーシに対しても西側諸国は経済制裁を科しています。ロシアのプーチン大統領も盟友のルカシェンコ大統領も制裁解除を切望しており、邦人男性は揺さぶりに利用されている可能性がある」と指摘していますけれども、その可能性は十分にあると思います。

ただ、筆者は、中西氏を材料として、日本とベラルーシ政府はとっくに水面下交渉をしているのではないかと見ています。

というのも、中西氏が拘束されたのが7月上旬だったにも関わらず、今になってそれが公に報じられたからです。

ここからは筆者のただの妄想ですけれども、ベラルーシ政府は中西氏を拘束後、すぐに日本政府と裏取引交渉を開始。中西氏の解放とスパイ行為を不問にする代わりに、ベラルーシへの経済制裁を解除するように持ち掛けたのではないかということです。

「2か月時間をやるから、答えを持ってこい。ノーというなら、本件を公開する」と脅した。けれども、結果として、日本は経済制裁を解除せず、ベラルーシは公開に踏み切ったということではないかということです。

中西氏以外に「ベッパン」役を請け負った人が他にいるのかどうか分かりませんけれども、もしベラルーシにそのような人がいれば、更なる拘束もされる可能性がありますし、経済制裁を解除しない以上、中西氏の命にも危害が及ぶかもしれないことは政府としても考えておく必要があるのではないかと思いますね。



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この記事へのコメント

  • ルシファード

    先ずは日本でも情報機関を持つ事が必要でしょう(同時にスパイ禁止法も成立させないと)時代は情報戦と探り合いの世界でしょう
    2024年09月10日 12:29