深圳の日本人男児殺害事件

今日はこの話題です。
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1.深圳の日本人男児殺害事件


9月18日朝、中国南部・広東省深圳市で18日朝、深圳日本人学校に通う日本人の10歳男児が刃物で刺され、翌19日未明に死亡する事件が発生しました。

亡くなられた男児の御冥福を心よりお祈りいたします。

現地警察によると、男性容疑者がその場で逮捕されたそうです。

深圳にも拠点を持つ日本企業トップは「残念でたまらない」と悲しみと憤りを露わにしました。特に子供連れで中国に駐在している社員の間では深圳に限らず不安が広がっているとのことです。

中国では6月に江蘇省蘇州市で日本人学校のスクールバスを待っていた日本人の母子が刃物で切り付けられる事件が起きたばかり。また、吉林省吉林市でアメリカ・コーネル・カレッジから吉林市の大学に派遣されている教員4人が刃物で刺され負傷する事件も起きています。

短期間で相次ぎ日本人の子供が襲われる事件が起きたことに動揺が広がっているのですけれども、中国政府は「偶発的な事件」と強調するばかりで、動機など詳細を説明していないことは、在留邦人の不安感を一層、増大させています。

中国の主要メディアの報道はごく一部にとどまり、深圳の事件を知る中国人は多くはなく、子供を北京の日本人学校に通わせる男性は「情報がないため対策を取りにくい」と語っています。


2.上川外相臨時会見


今回の事件について、岸田総理は「極めて卑劣な犯行」とし、「中国側に対し、事実関係の説明を強く求めていきます」と述べました。

また、19日、上川外相は臨時会見を行い、この件について触れています。その模様は次の通りです。
上川外務大臣臨時会見記録 (令和6年9月19日(木曜日)9時09分 於:本省正面玄関)
冒頭発言
(大臣)昨日18日、登校中に男性に襲われて負傷し、病院で治療を受けていた深圳(しんせん)日本人学校の児童が、19日未明に逝去されたとの報告を受けており、深い悲しみを禁じ得ません。心からのお悔やみを申し上げます。御家族の御心痛は、本当に、察するに余りあるものであります。政府としては、引き続き、全力で御家族の支援にあたってまいります。

 本事件発生後、直ちに現地に在広州総領事らを派遣し、必要な支援を行ってきております。また、在中国大使館及び在広州総領事館から中国側に対し、事実関係の説明を求めるとともに、日本人の安全確保について万全を期すよう、強く求めたところであります。そして、昨日18日でありますが、岡野外務事務次官から、呉浩江(ご・こうこう)在京中国大使に対しましても、同様の申入れを行ったところございます。

 そもそも外務省といたしましては、本年6月の蘇州における事件の発生を受けまして、これまで日本人学校、補習授業校等に対しまして、安全対策の再点検を早急に行うよう伝達の上、各在外公館からも安全対策の指導を行ってきたところであります。更に、9月18日が柳条湖事件が発生した日であることを踏まえ、14日、中国外交部に対しまして、日本人学校の安全対策について万全の対応を行うよう、申入れを行ったところであります。そうした中で本件事案が起きてしまったことを大変残念に思っております。

 私は、今般の事案を極めて重く受け止めているところでありまして、改めて、中国側に対しまして日本人の安全確保を求めていくとともに、日本人の安全対策を含め、再発防止に向けてどのような追加的な措置が可能か、事務方に検討を指示いたしました。私からは以上です。

質疑
(記者)中国側からは、事件の詳細についてどのような説明があったのか、どのような言葉があったのか、お聞かせいただいて宜しいでしょうか。

(大臣)今、犯人の身柄は拘束されているところでございまして、その背景や、また動機についても、これから尋問をした上で明らかになることと思います。今、私自身が予断をもって申し上げるということもできませんので、そうした事実関係につきましては、早急に説明を受けるよう、中国側に対しましても申入れを行ってきているところであります。

(記者)この間の中国側の協力姿勢をどう評価してらっしゃるかということと、あと日中関係に与える影響をどう評価されているか、お願い致します。

(大臣)こうした事案は、あってはならない、これはどの国におきましてもあってはならないことであります。とりわけ、この登校中の児童に対して、卑劣な行為か行われたということに対しては、誠に遺憾であると思っておりまして、私自身大変、親御さんのご心痛も考えると、胸が詰まり潰れる思いでいっぱいでございます。中国側も、そうしたことについては、安全対策、しっかりとするようにという申し入れをしてきたところでありますので、そのことも含めまして、これから、更に、どのような対策がとれるか、ということについては、しっかりと申し入れをし、対策についての具体化を図っていくべく、最善の努力をしてまいりたいというふうに思っております。
中国政府に対し、詳細説明と安全確保を求めるとしていますけれども、6月に起った、江蘇省蘇州市で日本人学校のスクールバス襲撃事件について、中国政府は刃物で切り付けた中国人の男を阻止しようとして刺されて死亡した中国人女性を英雄として持ち上げて「美談」にする一方で、効果的な対策を取ることはありませんでした。


3.日本人は絶対近づいてはならない


9月18日、金杉憲治・駐中国日本大使は、中国側に対し「在留邦人の安全、安心、万全な警備を改めて働きかけた」ことを北京市内で記者団に語りました。

金杉大使によると、中国側に真相究明や背景に関する説明も求めたものの、「残念ながら今のところわれわれが満足できるような説明はきていない」とし、今回の事件が日本人を狙ったものであるかどうかについても「まだ背景が分からない」とコメントを避けています。

金杉大使は連続して日本人が襲われたことについて「本当に忸怩たる思いだ」と述べ、中国側に「邦人コミュニティー全体の危機意識をしっかりと受け止めた上で対応してほしい」と適切な対応を求めると共に「在留邦人の安全、安心について大使館、総領事館を挙げて最大限努力していきたい」と述べています。

同じく18日、中国に進出する日系企業の団体「中国日本商会」はホームページで談話を発表し、事件について「極めて深刻に受け止めており、このような事案が発生したことは極めて遺憾だ」と表明。商会は、今回の事件を受けて日中両政府に対し在中邦人の安全確保を改めて求めるとともに、「事件の背景を含めた詳細情報を速やかに明らかにすること」を求めています。

対する中国はどうかというと、19日、中国外務省の林剣(りん・けん)報道官が記者会見で、「不幸な事件」だとして「遺憾」の意を表明し男児に対して哀悼の意も示しました。

けれども、林氏は「類似の事件はいかなる国でも起きる可能性がある……個別の事件が中日両国の往来や協力に影響しないと信じている……中国側は一貫して有効な措置を取り続けており、中国にいる全ての外国人の安全を保障している」と強調。犯人の動機など詳細については「現在、調査中であり、中国側の関係部門が法に照らして処理する」と述べるにとどめています。

これについて、評論家の石平氏は「日本人男児殺害事件に関し、中国外務省は「どの国でも起こり得る」と主張。しかしそれは全くの強弁と嘘。どこの国でも外国人に対する刑事的犯罪が起こりうるが、10歳の日本人子供を意図的に狙った殺人は、中国という反日野蛮国家ならではのこと。その背後には中国政府の反日煽動と教育がある。……その言いたいところは要するに、「どこでも起こりうることだから中国政府に責任はない」「どこでもありうることだから騒ぐな」ということ。無責任な野蛮国家・中国の本性剥き出し。そんな国には、日本人は絶対、近づいてはならないのである」とツイートしています。

この通りだとすると、やはり日本人の理解の遥か彼方にあると思わざるを得ません。




4.野放しの中国SNS


石平氏は、事件の背後には中国政府の反日煽動と教育があると述べていますけれども、国際関係の専門家の間でも、中国の民族主義的感情が、外国人への暴力増加に波及しているのではないかと指摘されています。

19日、北京の在中国日本大使館は中国のSNS・ 微博ウェイボーに治療中だった男子児童が死亡したことを中国語で投稿しました。投稿には哀悼のコメントが中国語で寄せられ、「子どもに手を出すのはテロでしかない」などと憤りを示す意見が多かったそうです。

その一方、清朝末期の列強の支配に不満を抱いた中国民衆による反乱事件「義和団事件」になぞらえ、「義和団は常にいる」など歴史問題を持ち出すコメントや日本人学校への不満をぶつけたものもあり、「中国国内の学校では中国政府が認めた教材を使うよう管理すべきだ」との書き込みもありました。

今回の事件以前から中国の動画アプリには、日本人学校の前で「ここは日本の租界か」「中国人は入れない」とわめき立てる動画が投稿され、数十万回以上の再生回数を稼いでいます。日本人学校の厳格な警備体制に対して疑問を呈したり、「政治スパイ活動との関係を連想させる」との荒唐無稽な指摘をしたりする投稿も散見されています。

6月の江蘇省蘇州市での事件直後には、検索大手の百度(バイドゥ)、交流サイト(SNS)の微博(ウェイボ)や抖音(ドウイン)などが反日など民族感情を刺激する投稿に対する規制を相次いで発表。政権批判以外に対する取り締まりは異例で、排外主義の過熱が社会不安につながることを懸念する中国政府の対処とみられています。それぞれのアプリで数百の投稿やアカウントが削除、凍結されたのですけれども、規制を擦り抜けた投稿は現在も残り続けています。

中国では当局がSNSを管理しているのですけれども、こうした動画を野放しにしているのではないかとも囁かれています。


5.自衛に走る日系企業


日本のネットでは、「渡航禁止にすべきだ」とか、「帰国命令を出すべきだ」といった意見も大分上がっているのですけれども、今のところ日本政府は目立った動きは見せていません。

深圳を除くその他の地域の日本人学校は、通学バス含めて警備体制をさらに強化して運営を続ける方針だそうですけれども、保護者の懸念は膨らむばかりです。

日本政府が何もしない中、現地の日系企業は自衛に走っています。

パナソニックホールディングスは、帯同する家族が希望する場合、一時帰国費用を会社負担とするほか、カウンセリング窓口も設置しました。ただ、日本企業の間では、アステラス製薬の日本人男性が中国当局に拘束・起訴された事件などもあり、中国赴任の希望者が減り続けているそうで、ある日系大手メーカー関係者は「家族連れを中心に赴任を辞退する動きが続出すれば、企業活動が成り立たなくなる」と漏らしています。

また、2022年12月から工場の自動化(FA)に関連する拠点を置く三菱電機は「現地の安全状況について情報収集している。判明次第、中国の各拠点に注意喚起する」とし、海外の安全情報を全社に周知するリポートを準備するそうです。

深圳に中国・比亜迪(BYD)との合弁会社を持つトヨタ自動車は、「駐在員に対して大使館から発出されている情報や、現地の日本人学校が出す情報を共有している」と、駐在員に注意喚起しています。

日本自動車工業会の片山正則会長は19日の定例記者会見で「自動車業界は世界中に根を生やして活動している。政府には在留邦人の安全確保について今まで以上に強化をお願いしたい」と注文。全国銀行協会の福留朗裕会長も19日の記者会見で「中国政府には再発防止に向けた徹底的な対策に努めていただきたい」と求めた。中国の駐在経験が長かった福留氏は「上海に娘2人を帯同して勤務していたこともあり、このニュースを聞くと胸がつぶれる思いだ。激しい憤りを感じている」と語り、会員各行へ注意喚起し、安否確認体制の構築などを促したと明らかにしています。

深圳市は中国有数の経済都市で、進出する日本企業も多く、深圳日本商工会の会員企業数は372社に上ります。在北京の日系企業で構成する中国日本商会は、日中両政府に対し、邦人の安全確保や事件の背景などの詳細な説明を強く求めるとともに、今後の企業活動への「強い危機意識」を伝え、中国日本商会の本間哲朗会長は、19日に北京で開かれた大使館と日本人学校関係者との緊急会合で「従業員とその家族の安全と安心の確保は、我々が中国で事業活動を継続するための基本中の基本だ。両国政府に対して在留邦人の安全確保を強くお願いする」と強い危機感を示しています。

中国政府は現在、不景気の中で海外からの投資呼び込みに熱心ですけれども、日中外交筋は「こんな状況では投資などできないと日本企業が考えるのは当然だ。中国政府は日中関係の根幹に関わる問題と受け止めて対応する必要がある」と当然の指摘をしています。

けれども、今の岸田政権に期待の声は上がっていません。

ポスト岸田政権が誰になるのか分かりませんけれども、中国に阿る政権では、いつまで経っても邦人の安全確保など覚束ないことを国民は皆知るべきではないかと思いますね。



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この記事へのコメント

  • naga

    > 中国に阿る政権では
    自民党の総裁候補は極一部を除き中国に阿る方々だと思います。野党は殆ど党丸ごと阿るでしょうし。
    2024年09月21日 20:54