石破解散

今日はこの話題です。
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1.早期衆院解散


9月30日、石破新総裁は記者会見を行い、首班指名を受けるなど、諸条件が整えば10月27日に解散総選挙を行うと表明しました。筆者は年内解散もないだろうと思っていましたので、正直驚きました。

与野党は10月4日に衆参両院で石破新総理の所信表明演説を行う方向で調整しているとのことで、石破氏周辺は、27日投開票の場合、9日解散の可能性が高いとの見通しを示しています。

解散について、石破氏は国会論戦を経てからが望ましいとの考えを示しているのですけれども、野党は衆参予算委員会での質疑を求める構えで、石破氏は予算委の代わりに9日に立憲民主党の野田佳彦代表らとの党首討論を行う方向で検討しています。

衆議院の解散・総選挙について石破新総裁は、NHKの「日曜討論」で「閣僚もかわるので国民の判断をなるべく早く仰ぐべきだし、仰ぐだけの材料の提示をなるべく早くしたい。この両方を満たさなければいけない」と述べたのに対し、立憲民主党の野田代表は、盛岡市で記者団に対し「国民に信を問うための判断材料を整えるための論戦から逃げようとするならばそれは『裏金解散』と言わざるを得ず、旧統一教会の問題も含めて再調査しないと言うのなら『臭いものに蓋解散』だ」と批判しています。




2.二つの解散規定


解散を巡って、石破総裁と野田代表は早くも論戦を繰り広げています。

9月29日、石破総裁と野田代表はフジテレビ番組で、衆院を早期解散する場合の憲法条項を巡り、応酬を展開しました。石破氏は、内閣不信任決議案が可決された際の衆院解散を定める69条に触れ「国民に新政権ができたことの判断を求めるのは69条に該当しないが、趣旨には合致する」と主張。野田氏は「全く納得できない」とし「7条解散」に当たると批判しました。

解散は憲法7条と69条で規定していて、それぞれ次の通りとなっています。
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。
第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
過去24回の解散のうち、69条解散は4回だけで、大半が7条に基づいて解散が行われてきました。

衆議院の解散権は「首相の専権事項」と言われる一方で、首相が都合のよいタイミングで解散権を行使することについては根強い批判があり、憲法学の観点からも解散権の限界について議論されてきた過去があります。

第二次安倍政権では2回、衆議院の解散が行われましたけれども、2回目の2017年の臨時国会冒頭での「国難突破解散」は強い批判がありました。石破総裁が解散権の限界について言及するようになったのは、この後ともみられています。

7条解散について、政府は2017年10月6日の政府答弁書で次のように答えています。
衆議院の解散は憲法第七条の規定により天皇の国事に関する行為とされているところ、実質的に衆議院の解散を決定する権限を有するのは、天皇の国事に関する行為について助言と承認を行う職務を有する内閣であり、内閣が衆議院の解散を決定することについて憲法上これを制約する規定はなく、いかなる場合に衆議院を解散するかは内閣がその政治的責任で決すべきものと考えている。この衆議院の解散権は、内閣が、国政上の重大な局面等において主権者たる国民の意思を確かめる必要があるというような場合に、国民に訴えて、その判定を求めることを狙いとし、また、立法府と行政府の均衡を保つ見地から、憲法が行政府に与えた国政上の重要な権能であり、その行使が、法の支配との関係で問題があるとは考えていない。
このように、「国政上の重大な局面等において主権者たる国民の意思を確かめる必要があるというような場合」に、内閣の政治的責任で決められるとしています。


3.解散は総理の専権事項ではない


元々、石破総裁は、7条解散否定論者でした。

2020年7月2日、共同通信加盟社論説研究会での講演で、「解散は憲法69条に基づき、内閣不信任決議案が可決された場合に限るべき」だとする持論を主張しています。

また、今年4月には、憲法審査会で「私は解散が総理の専権事項だとは必ずしも思っていない」と発言。更に6月14日には自身のブログで次のように述べています。
【前略】

会期末が迫り、内閣不信任案の提出、解散の有無などが取り沙汰されていますが、いつも申し上げているとおり、衆議院の解散は内閣不信任案の可決や信任案の否決など、内閣と衆議院の立場の相違が明確となった場合に限り、内閣が主権者である国民の意思を問うために行われるべきものであって(憲法第69条「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」)、単に天皇の国事行為を定めたに過ぎない第7条を根拠として「今解散すれば勝てる」とばかりに衆議院を解散することは、国会を「国権の最高機関」とする憲法第41条の趣旨にも反することになるのではないでしょうか(私は政治的美称説には立っておりません)。
すべての衆議院議員の身分を瞬時に失わせる解散権の行使は総理の権力の源泉とも言えますが、選挙に不安を抱える衆議院議員がこれに恐れおののく、という姿が、国権の最高機関の構成員の姿として正しいとは思えません。二院制を採る我が国においては参議院議員も三年に一度改選されるため、概ね二年に一度の頻度で国政選挙が行われているのが実情ですが、これでは国政が安定するのは困難でしょう。このテーマは憲法の議論の中でももっとクローズアップされるべきであり、私もより深く考えてみたいと思っております。
かつて保利茂・衆議院議長は、衆議院の恣意的な解散を厳しく戒めた「解散権について」と題するメモを認められ、これは没後の昭和54年に公表されています。小泉総理の郵政解散の際に議論されたものの、最近はほとんど聞くことがありません。偉大な先輩の知恵を学ぶことの重要性を強く思う昨今です。

【後略】
更に石破総裁は、総裁選立候補を表明した8月24日、記者から衆議院解散の時期について問われた際、「全閣僚出席の予算委員会というものを一通りやって、この政権は何を考えているのか、何を目指そうとしているのかいうことが、国民の皆様方に示せたその段階で、可能な限り早く信は問いたい、問うべきだ、私はそのように考えております」と答えていました。

9月6日に小泉進次郎氏が立候補表明の際、「総理・総裁になったらできるだけ早期に衆議院を解散し、中長期の改革プランについて国民の信を問う」と早期解散論をぶち上げたのに対し、石破総裁は、9月14日の日本記者クラブの討論会で「解散で衆院議員がいなくなることはよく認識した方がいい。世界情勢がどうなるかわからないのにすぐ解散しますという言い方は私はしません。解散していい状況が整うかどうかを判断する」と、早期解散には慎重姿勢を示していました。

更に、翌15日、NHK「日曜討論」でも「自民党の都合だけで勝手に決めてはいけない。それほど重いものだ。その時の政治情勢がどうなっているかをあわせて考えないと『今すぐやります』という話にはならない」と述べていたのですね。

それが、9月25日のBSフジ「プライムニュース」では、「国民の大勢の方が判断できる材料は出さねばならないが、同時に新政権であるのだからなるべく早期に信を問うのも当然」と発言がブレ出し、総裁選で当選した後は、年内解散にまで言及するようになりました。

そしてさらに、今日、年内どころか9月解散、10月投開票です。石破総裁が豹変したのは、幹事長に就任する森山氏が早期解散を強く進言したからだと報じられています。自民党長老の早期解散圧力に簡単に折れてしまった訳です。


4.論考人事の石破内閣


昨日のエントリーで、党内基盤の弱い石破総裁が解散に打って出るには、内閣支持率、政党支持率の回復具合を見ながらになるから、内閣・党役員人事が直近のポイントになると述べましたけれども、その面々についてぽろぽろ報じられています。

組閣について、ジャーナリストの三枝源太郎氏が自身の動画で解説しているのですけれども、その動画の説明欄を引用すると次の通りです。
・組閣の概要がかなり報道されるようになりました。麻生太郎副総裁は、自民党最高顧問として処遇することになりました。麻生氏は受諾していますので、これは決まりだと思います。
 
・総務会長は鈴木俊一・財務相、防衛相は中谷元・元防衛相という当選回数の多い人が目立つ人事です。マスメディアは「党の総力を結集した人事」と言いますが、果たしてそうでしょうか?
 
・石破茂・新総裁は「総裁を争った他の方も重職に就かせる」と言明しました。高市早苗・経済安保担当相は、すでに総務会長には就任しないことが明らかになっています。29日、小林鷹之・元経済安全保障担当相も自民党広報本部長の職を固辞しました。
 
・それはそうでしょう。勝ったとはいっても、高市氏とは僅差です。その高市氏に幹事長もさせないというのでは筋が通りません。安倍晋三元首相は、いろいろと腹にはあったでしょうが、石破茂氏を当時、幹事長職に据えました。小林氏に関しても、大臣をやった人を自民党の広報本部長というのは、それほどの重職ではなく、担当相を経験した人(小池百合子氏、高市早苗氏などの例があります)か、入閣前の人(古屋圭司氏などの例があります)が就くケースがほとんどで、総裁選で争った相手で、それなりに得票した人で、しかも大臣経験者を広報本部長というのは…だと思います。

・それに入閣は、ほとんどが自らの推薦人になった人です。数えてみると、推薦人20人のうち、6人、政治家から出す官房副長官2人は、2人とも石破氏の推薦人です。

・最側近で、石破氏が総裁に決まった時は、涙を流していたと言われている岩屋毅氏は重要閣僚の外相(防衛相のときにレーザー照射問題で、弱腰が指摘されました)、赤沢亮生氏(経済再生担当相)、伊東良孝氏(地方創生担当相・沖縄北方担当相)、小里泰弘氏(農相)、平将明氏(デジタル担当相)、村上誠一郎氏(総務相)です。それに官房副長官は、橘慶一郎衆院議員と青木一彦参院議員が就任します。官房副長官は大臣ではありませんが、意外に重要なポストで、若き日の安倍晋三元首相も務めています。鈴木宗男氏も官房副長官のときは、絶大な権力を持っていたと言われ、のちに東京地検特捜部に逮捕される萌芽になったともいわれています。
 
・中堅・若手の多くは石破氏の推薦人から出ているのです。実に20人中8人。

・それでいて、重要閣僚の防衛相には、自らが幹事長を務めたときに、副幹事長として支えた中谷元・元防衛相を選任。どうせなら長島昭久氏を初入閣させればよかったのに…とも思いましたが(ただ、長島氏は首相補佐官に就任しました。岸田内閣における木原誠二氏と同じ立場ですから、これは要注目です)

・高市氏、小林氏、茂木氏、林氏の推薦人からは入閣はゼロでした。河野太郎氏の推薦人からは、浅尾慶一郎氏(環境相)、武藤容治氏(経済産業相)、加藤勝信氏の推薦人からは、阿部俊子氏(文部科学相)、御法川信英氏(どこかは未定)。これは裏切った方でしょうか?(わかりませんが)小泉進次郎氏の推薦人からは、三原じゅん子氏(子ども政策担当相)が入りました。国家公安委員長に内定した坂井学氏はガネーシャの会ですから、菅義偉・元首相に対する配慮でしょうか? 上川陽子氏の推薦人からは、牧原秀樹氏が法相に内定しました。城内実氏は経済安保担当相になりましたが、1回目も2回目も高市氏に投票した、と公言していますから、これは高市氏に一定の配慮を見せたということなのでしょうか?

・やはり重鎮はそれなりに遇するけれども、初入閣組は圧倒的に自派の功労者を充てており、やはり「論功行賞」が強く働いた人事だと思わざるを得ません。

・あれっ?と思ったのは、旧茂木派のメンバーは誰ひとり入閣していないということです。茂木敏充氏の名前もどこにもありませんでした。徹底的に干すということなのでしょうか? わかりませんが。
 
・いずれにせよ、なかなか論功行賞人事が露骨なことと、安倍晋三氏を「国賊」とまで呼んだ村上氏を入閣させたことに、安倍さんに対する思いを感じます。これでは、党内融和など期待するべくもありません。
ずばり論功行賞人事であり、党内融和など期待すべくもないと斬って捨てています。

もっとも、10月9日に解散するのなら、1カ月どころか1週間程度だけの内閣であり、形だけのものといえなくもありません。




5.充電のすすめ


三枝氏も動画で指摘していますけれども、今回の石破内閣には高市氏、小林氏が名を連ねていません。このことから、一部で、高市氏は次の総裁選に向けて準備を始めたのだという声もあります。

まぁ、あんな結末になってホイホイと石破内閣に入るとも考えにくい。

夕刊フジ「ZakZak」は、29日に「「石破政権は短命に終わる」高市早苗氏に〝充電のすすめ〟 総裁選決選投票で敗北 閣僚や党の要職に就かないほうがいい理由」という記事を掲載しています。

記事の概要は次の通りです。
・自民党総裁選で、高市早苗経済安保相(63)は1回目の投票で1位となったが決選投票で石破茂元幹事長(67)に敗れた。高市氏を応援してきた作家でジャーナリストの門田隆将氏(66)はこの結果を嘆きながらも、「石破政権は短命に終わる」と予測する。高市氏の今後に向けての思いも聞いた。

・高市氏は1回目の投票で、国会議員票、党員・党友票ともに石破氏を上回ったが、決選投票で逆転を許した。

・門田氏は「いまの自民党は財務省寄りの緊縮財政を推す議員や『親中派』の議員、左翼リベラル議員らに牛耳られ、国民の意思があっても逆転されることが分かった。高市氏のような、分かりやすい保守現実主義政策を打ち出しても、もう突破することはできなくなった」と話す。

・それでも高市氏には自民党にとどまってほしいという。

・「高市氏を支持しなかった自民党の議員たちは、エリート特有の〝万能感〟を持ち、一方で確たる国家観も歴史観もない。左翼リベラル政党となった自民党から〝保守・現実派〟の支持層は離れるので、次の衆院選も来年の参院選も石破政権では勝てないだろう。高市氏については『自民を割って外に出てほしい』という意見もあるが、そうは思わない」

・一方で門田氏は、高市氏は閣僚や党の要職に就かないほうがいいと話す。

・「『高市氏がいるから石破政権にはまだ存在意義がある』みたいな言われ方をされてはいけないし、石破政権と運命を共にしてはならない。自民が下野する可能性も高くなったと思うが、高市氏は走り続けてきて体も相当疲れているだろう。いまは日本を救うために充電期間を設けてほしい」と強調した。
確かに石破政権が短命に終わるなら、高市氏が政権に入ってそれに巻き込まれるのは得策ではないでしょう。昨日のエントリーでも触れましたけれども、ネットでは石破総裁に投票した議員リストが出回っています。それで落選運動が起こるのかどうか分かりませんけれども、不満を抱えた保守層がより積極的な行動に出る可能性はあります。

仮に、総選挙で、石破総裁に票を投じた議員が落選しまくって、逆に高市氏に投票した議員だけ生き残るようなことになれば、その負け方にもよりますけれども、石破政権の性格も変わらざるを得ません。

とりあえずは来月の解散総選挙でどう民意が示されるか。要注目です。

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