

1.裏金非公認は十二名
10月9日、石破総理は衆院解散しました。いよいよ選挙戦がスタートです。
この日自民党は、石破総理大臣や菅副総裁、森山幹事長らが出席して、選挙対策本部の会合を開きました。
石破総理は冒頭、「本日、衆議院を解散する。私どもがこの選挙を勝つことが日本国のためであるという確信のもと、有権者に真摯に向き合い、誠実にこの選挙をたたかっていく。すべての同志が勝ち残ってもらえるよう全身全霊でこの選挙に臨む」と述べ、衆議院選挙の第1次公認候補として小選挙区と比例代表のあわせて279人を決定しました。
その後、森山幹事長が記者団に対し、政治資金収支報告書に収入を記載していなかった議員など12人を公認しないと発表しました。
今回、自民党が非公認を決めたのは12人は次の通りです。
1)党から「党員資格停止」の処分を受けた者3)~5)の6人については、地元での理解が十分に進んでいないと党が判断しての非公認です。
下村 元文部科学大臣
西村 元経済産業大臣
高木 元国会対策委員長
2)1年間の「党の役職停止」の処分が継続していて、政治倫理審査会で説明していない者
萩生田 元政務調査会長
平沢 元復興大臣
三ツ林裕己 元内閣府副大臣
3)半年間の「党の役職停止」の処分を受け、その期間が終わった者
菅家一郎 元復興副大臣
中根一幸 元外務副大臣
小田原潔 元外務副大臣
4)「戒告」の処分を受けた者
細田健一 元経済産業副大臣
5)処分は受けていないものの不記載があった者
越智隆雄 元内閣府副大臣
元議員の今村洋史氏
この処分にあたり、石破総理は前日8日、自民の森山裕幹事長、小泉進次郎選対委員長と2度にわたり会談。森山幹事長はこれに先立ち、東京、福島、愛知、佐賀の4都県連幹部と党本部で面会し、各選挙区の情勢を聞き取っています。
福島県連幹部は、裏金事件に関係した菅家一郎、上杉謙太郎両衆院議員を要望通り公認するよう求めたそうですけれども、森山幹事長は明確な回答をしなかったとのことです。
更に、政治資金収支報告書に不記載があった議員については、比例代表との重複立候補を認めないことに決定。対象は不出馬議員を除き、選挙区支部長を含め39人に上っています。
重複立候補の見送りで、全国11の比例ブロックで候補者が不足する可能性が出てきたことから、石破総理は、森山幹事長らに対し女性を中心に擁立を急ぐよう指示しています。
ただ、今頃、候補者擁立などと簡単に行くはずもありません。ドタバタもいいところです。
2.県連は公認済み
一方、自民の県連は候補者の公認申請を済ませていることが読売新聞の調査で明らかになっています。
政治資金不記載があった議員は43名、そのうち12名が非公認となりましたけれども、読売新聞が対象43名の所属する都道府県連に取材したところ、41名が公認申請していたことが分かりました。7日夕までに申請方針が未定だったのは福井県連だけ。福岡県連は不記載問題とは別に福岡4区で候補者調整がつかず、申請を見送ったとのことです。
地方組織では、執行部が原則公認するとの見立てから、公認申請を決めたケースが多いとみられていたのですけれども、自民幹部は「地元の要請は基本的に尊重するが、選挙情勢が厳しい場合は非公認になる可能性がある」と述べるなど、結局、**人については、地元の意向を無視して非公認を決めた訳です。
これについて、ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、非公認が決まる前日の8日に自身の動画で次のように述べています。
・非公認が6人から増えるかもしれない県連の意向を無視した非公認決定は地方の反乱を招くというのですね。前述したように、自民党は比例で候補者不足になるから女性を中心に候補者を立てろという方針を出していますけれども、地方県連の反発の中、擁立できるのでしょうか。
・そうなったら地方県連は怒るだろう
・自民党内の反乱/分裂が拡大してゆく
・政変は地方から起こる
3.岸田が描いた餅
何故、党執行部はこんな横暴をしたのか。
これについて、嘉悦大教授の高橋洋一氏は、自身の動画で、岸田前総理の暗躍について指摘しています。
件の動画について、デイリースポーツが記事にしています。
件の記事を引用すると次の通りです。
石破氏は裏金議員を非公認にする方針を打ち出している。高橋氏は、「非公認にされた中には、石破さんを一生懸命、推していた人もいる。可哀想だよな。石破さんは昔、後ろから鉄砲を撃つと言われてたけど、今や、前からも鉄砲を撃たれているって感じ。それか、何もなしの竹槍で『突っ込め!』と指示を受けているという感じもする」と皮肉った。岸田前総理が自身の再登板を狙って、石破総理に負けて貰おうとしているというのですね。
現役議員の40人ほどは小選挙区・比例代表の重複立候補も認めないとされており、高橋氏は、「ほとんどは旧安倍派。半分近くは落っこっちゃうかもしれない」と予想。「比例重複のところの人も、何人か石破さんに入れているんだよな。その人たちは後悔していると思うよ」と苦笑した。世論に従った形だが「世論といっても反自民の世論。公認するかでそんなの聞く必要ない」と話し「重複比例を認めなかった時点でマイナス20~25になっちゃう。選挙はたぶん負ける」と読んだ。
これらの決定に関しては、石破氏だけでなく、森山裕幹事長、岸田文雄前首相も入っていると睨む高橋氏は、ここから、自民敗北後に起こる展開を占った。
「負けると石破下ろしが始まる。さすがにこのあいだ、総裁選をやったから、もう一回総裁選をやるのは現実的な話じゃない。究極的には、石破さんを下ろして、両院議員総会が開かれる。そこで国会議員の中だけで後継を決めるという手がある」と手続きを説明。「そのときに岸田さんはもう1回立つよ」と話した。
9月の総裁選で次点だったのは高市早苗氏だが、支持した多くが旧安倍派や裏金議員で、総選挙では20人近くが落選している可能性があるため苦戦は必至。「その人たちが落ちれば、岸田さんが後継になる可能性は高いんだよ」とストーリーの完結は第二次岸田政権と紐解いた。
「辞めざるを得なくなって、総裁選に出たかったけど辞めさせられたから、総裁になりたくて仕方がない石破さんをステップに使った。一番落としやすい人を立てといて、使っておいて、自分が後、という風に思える」と岸田氏が描いた餅を想像した。
「策士かもしれないけど溺れているかもしれない。そのときには与野党で過半数が取れない可能性が高いから、連立しなきゃいけないから、枠組みがぐちゃぐちゃになる。少数与党になって、綱渡りになる」とその後は不安定政権になる可能性まで語った。
先の総裁選決選投票で、高市氏を支持した議員の多くは旧安倍派。その多くの比例重複を認めずに落としてしまうことができれば、高市氏の総裁の芽は小さくなっていく。そこまで考えているのなら実に狡猾です。
岸田前総理は、先の総裁選で、「とにかく高市だけはダメだ」と旧岸田派のメンバーに号令をかけ、選挙戦の最終盤で、麻生氏、茂木氏と袂を分かち、石破総理の誕生を画策しました。
岸田総理は退任後も、日中は衆院議員会館に通い、総理時代に世話になった経済団体のトップらへの挨拶まわりを繰り返しているのだそうです。
ある自民党ベテラン秘書は「ただ、菅さんには健康不安説が流れるなど、支援した石破総理をどこまで支えられるかが不安視されています。そうなると、菅氏とともに、石破政権誕生の立役者の一人となった岸田さんが首相を退陣したばかりとはいえ、新たなキングメーカーとして躍り出てくる可能性が非常に高くなった。まあ、本人がどれだけ本気なのかという部分次第かもしれませんが……」と岸田前総理がキングメーカーとして君臨する可能性を指摘しています。
また、大手紙の政治部デスクは、岸田総理の今後について、「岸田前首相は、政府や党内ポストに、旧岸田派や連携が取れたメンバーを多数送り込むことに成功しました。続投した林芳正官房長官と小野寺五典政調会長だけでなく、旧宏池会の仲間である中谷元(げん)防衛大臣や小里泰弘農林水産大臣らがいます。特に解散総選挙に向けた政権公約を作る小野寺氏をグリップし、自身が誘導してきた金融緩和解除の流れを継続させるように動いています。石破政権が、2025年の参議院選挙前後に倒れるようなことがあれば、自身は『再登板も視野に準備を進める』と側近議員に話しています」と語っています。
これが本当であれば、高橋洋一氏が指摘しているように、岸田前総理は自身の再登板を狙っていることになります。
4.高市、用意しとけ
一方、高市氏は、先の総裁選で、散々妨害にあったにも関わらず、地方票では石破総理を抑えてのトップとなり、決選投票にまで進みました。
総裁選後、高市陣営の報告会と議員会館での挨拶回りを終えた高市氏は、総裁選で自身の支援に回った麻生氏のもとを訪ねました。麻生氏はその場で、高市氏に対して「自民党の歴史の中で3年以上総理を務めた例は7人しかいねえ。俺も菅も一年で終わった。石破はもっと短いかもしれねえ。だから高市、用意しとけ。議員は仲間作りが大事だから、これから半年くらい飲み会に行け」とアドバイスしたと報じられています。
これは、高市氏が次の総理の座を手にするための準備といえるでしょう。
これについて、十文字学園女子大学非常勤講師の坂東太郎氏は次のように述べています。
高市氏の総裁選に向けた努力がわかります。大善戦でしたから方向性も正しかったのでしょう。ただ内容は実に古めかしい。高市氏への批判でなく、こうした手法が奏功する自民党という組織の古さです。
「総裁選に向け」た「仲間作り」の勉強会を「政局的な動き」と派閥=「政局的」存在の幹部から批判される。「出る杭は打たれやすい」から「意欲が表に出ないように」「裏口からホテルに入る」。総裁選後は支援を受けた派閥領袖の「麻生氏のもとを訪ね」て得た助言が「これから半年くらい飲み会に行け」。今回は「総裁選のお礼を綴った手紙を各議員に送った」。こうした配慮が国のトップを決めるに等しい自民党総裁選で欠かせないとは。高市氏も勝つためとはいえ古めかしい義理人情世界を強いられてお気の毒です。本来は「出る杭」のまま堂々とホテル正面から入って飲み会より政策の勉強に時間を割くようなタイプ。それこそ選考基準になるべきでは。
まさに正論です。ただ、総裁選の論争で、小泉進次郎氏が、どんどんと党員支持を落としていったことを考えると、党員・国民のレベルでは既に政策が選考基準になっているように見えなくもありません。
決選投票で石破氏に票を投じた議員リストがネットに流れています。これが総選挙に影響を与えるのか否か。注目したいと思います。

最新版です(24/10/8 16:35時点)
— 二代目いんこ (@y32577) October 8, 2024
・決選投票で石破茂氏に投票した議員一覧
・決選投票で高市早苗氏に投票した議員一覧 pic.twitter.com/6Sq9Wpjx5i
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