日中外相電話会談と児童殺傷事件

今日はこの話題です。
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1.日中外相電話会談


10月9日、岩屋外相は就任後初めて中国の王毅外相と電話会談を行いました。

会談は午後6時からおよそ45分間行われ、両外相は、日中両国が戦略的互恵関係を包括的に推進し建設的かつ安定的な関係を構築するという大きな方向性を共有していることを確認しました。

その上で岩屋外相は、先月、中国で日本人学校に通う男子児童が登校中に刃物を持った男に襲われて死亡した事件について「中国の在留邦人の不安が高まっている」と指摘し、一刻も早い事実の解明を求めるとともに、両国で再発防止策を確認していくことを提案しました。

また、東京電力福島第一原発にたまる処理水の海洋放出をめぐり、両外相は日中両国が日本産水産物の輸入を再開することで合意したことを評価し、岩屋外相は再開を早期に実現するよう求め、中国が東シナ海で軍事活動を活発化させていることに深刻な懸念を伝えるとともに、台湾について「最近の軍事情勢を含む動向を注視している」と述べ、台湾海峡の平和と安定は国際社会にとって極めて重要だと強調しました。

翌10日、石破総理は、ラオスの首都ビエンチャンで日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議などに出席。中国の李強首相や韓国の尹錫悦大統領らとの個別の首脳会談にも臨んでいるのですけれども、日中首脳会談では「両国は戦略的互恵関係を包括的に推進し、安定的な関係を構築するという大きな方向性を共有している」と両国間の懸案を議題とした上で、中国広東省深圳市で日本人学校の男子児童が刺殺された事件に関する真相解明や再発防止を求めた。

また、東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出を巡り、日中両政府が合意した日本産水産物の輸入再開の早期実現も要請。中国軍機による領空侵犯など、中国軍の活動の活発化に関しては、深刻な懸念を伝えたとあり、前日に岩屋外相が中国に伝えた懸念を繰り返して念を押した形です。


2.王毅氏は日本の岩屋毅外相と電話会談した


この、日中外相会談について日中政府双方の公式発表を見ると次の通りです。

日中外相電話会談 令和6年10月9日 

10月9日、午後6時から約45分、岩屋毅外務大臣は、王毅(おう・き)中国外交部長と電話会談を行ったところ、概要は以下のとおりです。

冒頭、岩屋大臣から外務大臣就任の挨拶を述べ、それに対し、王毅外交部長から祝意が伝えられました。
双方は、日中両国が「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、「建設的かつ安定的な関係」を構築するという大きな方向性を共有していることを確認しました。また、岩屋大臣から、両政府の努力を通じて両国民が日中関係発展の果実を得られ、それが実感できるよう王部長と共に取り組んでいきたい旨強調しました。

双方は、ALPS処理水の海洋放出と日本産水産物の輸入規制に関する両政府の発表を共に評価し、岩屋大臣から、日本産水産物の輸入回復を早期に実現するよう求めました。

岩屋大臣から、ブイを含む東シナ海情勢、8月の中国軍機による領空侵犯事案や9月の空母による我が国領海に近接した海域の航行といった中国軍の活動の活発化につき、深刻な懸念を改めて伝え、領空侵犯について十分な説明を行うよう求めました。また、岩屋大臣から、台湾について、最近の軍事情勢を含む動向を注視している旨述べ、台湾海峡の平和と安定は我が国を含む国際社会にとって極めて重要である旨改めて強調しました。

また、岩屋大臣から、邦人拘束事案や深圳で日本人学校の児童が暴漢に襲われ死亡した事件により、中国在留邦人の不安が高まっていることを指摘しつつ、一刻も早い事実解明を求め、再発防止のあり方について領事当局間で確認することを提起し、双方は、引き続き、意思疎通を行っていくこととしました。
双方は、日中両国の協力の可能性についても議論し、それを具体化していくべく、今後対話や協議を重ねていくこととなりました。

王毅氏は日本の岩屋毅外相と電話会談した。2024-10-09 20:27 

2024年10月9日、中国共産党中央委員会政治局員で外相の王毅氏は日本の新外務大臣岩屋毅氏と電話会談した。

岩屋毅首相は、日本の新内閣は日中戦略的互恵関係を包括的に推進する用意があり、建設的で安定した二国間関係の構築に尽力すると述べた。様々な分野における日中協力は大きな可能性を秘めており、日本は中国とのあらゆるレベルでの意思疎通を強化し、協議を通じて懸案を解決し、両国国民にさらなる利益をもたらしたいと考えている。日本と中国は、アジアと世界の平和と安定に対して重要な責任を負っている。激動する国際情勢に直面し、日本の新内閣は対話と協調外交の推進に尽力し、中国と協力して協力を強化し、地域の平和と安定の促進と世界的課題への対応に一層貢献していきたいと考えている。

王毅外相は、日本の新内閣と岩屋毅外相が就任以来、両国関係を安定的に発展させるために発表した前向きなシグナルを中国は高く評価していると述べた。中国と日本は一帯を隔てた緊密な隣国であり、互恵協力と共同発展は両国国民の基本的利益にかなうものである。私たちは新内閣の新たな展望と中日関係の新たな展開を期待している。双方は歴史に学び、初志を忠実に守り、協力を拡大し、干渉を排除し、中日戦略的互恵関係を全面的に推進し、新時代の要請に応える建設的で安定した二国間関係を構築すべきである。

王毅外相は、中国の対日政策は常に安定性と継続性を維持しており、日本が台湾問題に関する政治的約束を遵守し、一つの中国の原則を揺るぎなく堅持し、客観的、合理的、前向きで友好的な理解を確立することが期待されると強調した。 「お互いが協力パートナーであり、お互いの脅威ではない」といった重要な共通認識が実際の行動に反映され、二国間関係が正しい軌道に沿って健全かつ安定的に発展することを促進している。混沌とした国際情勢に直面して、地域全体の平和と安定を維持することは大変な努力であり、特に外部勢力が問題を引き起こし、地域の対立や衝突を引き起こすことを防止しなければならない。
一見して分かるとおり、日本側は個別具体事例についての懸念と改善を伝えたのに対し、中国側は一般的な原則論を述べるのみで、日本の懸念については、なんら回答していません。いったのは日本は台湾問題に口を出すなと、自分のいいたいことをいっています。

45分という会談時間、通訳含めると正味20分かそこらくらいでしょう。突っ込んだ話はなく、互いに懸念と要望を伝えただけに終わったのではないかと思います。


3.中国駐在を見直す動き


日中外相会談の成果云々に関わらず、現地は動きはじめています。

日本人の男子児童が中国人の男に刺殺された事件は、中国に進出している邦人企業に衝撃を与えています。

10月17日、外務省の岩本桂一領事局長は、北京で中国の鄧励・外務次官と会談し、早期の事実解明と邦人の安全確保を求めました。中国側は事件を「偶発的な事件」としており、この日の会談でも具体的な動機の説明はなかったとのことです。

東京商工リサーチは、11日に「中国の日本人駐在員」に関する5793社を対象にした企業アンケート結果を公表しています。

そのサマリは次の通りです。
9月、中国・深センで日本人学校に通う男児が襲われ、死亡した事件が日本企業に波紋を広げている。東京商工リサーチ(TSR)が10月上旬に実施した企業向けアンケート調査で、企業の約3%が中国に日本人従業員を駐在させており、そのうちの8割超が駐在員に注意喚起したと回答した。新規駐在の停止や家族の帰国を促す企業も出ており、今回の事件が改めて中国ビジネスの難しさを浮き彫りにした格好となった。

東京商工リサーチ(TSR)は10月1日から8日まで、中国で日本人男児が殺害された事件を受け、企業向けに「中国の日本人駐在員」に関するアンケート調査し、5,793社から回答を得た。

中国での駐在員について、駐在を「させている」企業は2.7%(5,793社中、157社)、「させていない」企業は97.2%(5,636社)で、約3%の企業で日本人駐在員がいることがわかった。

規模別では、大企業が14.1%、中小企業が1.5%と、圧倒的に大企業が多い。

今回の事件を受け、「駐在者に注意を喚起した」企業は83.0%(112社中、93社)と、8割を超えた。また、数は少ないが、「駐在中の従業員に家族の帰国を促した」2.6%(3社)、「新規駐在を停止した」1.7%(2社)、「新規駐在の場合、家族帯同を原則禁止した」0.8%(1社)など。

日本企業は安全対策を急ぐが、中国では殺傷事件が相次ぎ、外務省は「複数人で外出する等、十分な安全対策をとるよう」注意を呼びかけている。駐在員と家族の安全面への不安を引き金に、中国ビジネスの転換を迎える可能性も出てきた。
当然の回答です。政府があてにならないとなれば自衛するしかないのですけれども、その8割が「駐在者に注意を喚起した」という対応では、甘すぎるのではないかと思います。

中国政府は犯行に及んだ中国人犯人についての詳細を明らかにしていませんけれども、読売は、事情を知る中国当局者に近い関係者の話として、「男は職探しがうまくいかず不満を持っていて、『何か大きなことをすれば自分が注目され、日本人を刺せば反響が大きく、自分を支持してくれる人もいるだろうと思った。日本人学校の場所はネットで探した』との趣旨の供述をしている」と報じています。

この関係者によれば、男は広東省外の出身で、事件当時は深圳市に隣接する東莞市に住んでいたとのこと。両市の境界から学校までは最短でも30キロ離れているそうです。

この話が本当であれば、マスコミが報じられる程度に情報がリークされているということであり、もしかしたら、日中政府間で水面下でなんらかの情報交換がされているのかもしれません。


4.中国人によるスイス児童殺傷事件


中国人による児童を狙った殺傷事件は他国でも起こっています。

10月1日、スイス・チューリッヒ市北部エリコン地区の住宅街で、路上を歩いていた幼稚園児の集団に中国人の男がナイフのようなもので切りつけ、子供3人が負傷するという事件が発生しています。

チューリヒ市警察は男を逮捕。チューリヒ市警察によると、怪我をしたのはいずれも5歳児。1人は重傷で、残り2人は中程度の怪我を負い、病院に搬送されたとのことです。園児は学童施設のスタッフに連れられて、現場近くの幼稚園から学童施設に徒歩で移動途中だったそうで、学童施設のスタッフが別の男性の助けを借りて男を取り押さえました。

容疑者は23歳の中国人で、警察は凶器や犯行動機などの詳細はまだ明らかにしていません。

この事件について、「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」紙は、「中国国内でナショナリズムが高まっていることに対する懸念はあるが、中国政府は、殺傷事件が外国人に対する広範な反感を反映したものではないと強調している」と報じていますけれども、スイス最大の政党である右派「国民党」はソーシャルメディアでこの事件に言及し、「輸入犯罪にうんざりしているなら、国境を守るための嘆願書に署名してくれ」と、ナイフを持った両手の写真も添えた記事を投稿しています。


5.スイス公共放送協会への圧力


この事件について、中国政府はまたぞろ隠蔽に走っています。

スイス公共放送協会のウェブサイト「スイスインフォ」は事件当時、その詳細を報じていたのですけれども、その後、「スイスインフォ」は「2日配信の記事を、検察・警察の報道発表などを基に修正・追記しました。なお警察・検察の声明や、国内外のメディアは容疑者の男の国籍を公表しているが、スイスインフォは自社の報道ガイドラインに基づき、国籍については言及しない」と発表しました。

児童を襲撃した犯人は中国人の23歳の男性で昨年からスイスに留学していた学生とまで明らかになっているのですけれども、スイスインフォはその容疑者の国籍を削除するというのですね。

10月2日の最初の記事では「チューリヒ、ナイフで園児襲撃、複数男児ケガ、中国人男逮捕」という見出しだったのが、4日には「チューリヒ、男がナイフで園児襲撃、命に別状なし」という見出しに変更され、「中国人男逮捕」は削除されていたというのです。

国内外のメディアは容疑者の国籍を公表しているのに、「スイスインフォ」は、自社の報道ガイドラインに基づいて国籍を削除したことから、中国から何らかの政治的圧力があったのではないかという見方も浮上しています。まぁ、中国ならやっても少しも不思議ではありません。

これら事件について、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、「中国国内でナショナリズムが高まっていることに対する懸念はあるが、中国政府は、殺傷事件が外国人に対する広範な反感を反映したものではないと強調している」と報じていますけれども、どんなにプロパガンダや言論弾圧をやったところで、現実が改善しなければ、中国から距離を置くのは当然の行動です。

日本のみならず、各国の企業が中国から続々撤退していく流れが出来上がるかもしれませんね。



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