自国パーシャル連合

今日はこの話題です。
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1.野田代表の首班指名投票要請


10月30日、立憲民主党の野田佳彦代表は、日本維新の会、共産党の党首と相次いで会談し、特別国会での首相指名選挙で自らに投票するよう求めました。

共産の田村智子委員長は政治改革への連携を野田氏と確認しつつ、首相指名選挙での協力要請には「自公政権に対する(衆院選の)民意に応える行動をしていきたい。前向きに検討をしたい」と応じました。共産はついこの間まで「立憲共産党」と揶揄されるくらいべったりだったのが、今回の総選挙では、共産は、立憲の野田代表が安全保障関連法の継続を示唆したことに反発。立憲候補のいる選挙区も含めて213人の独自候補を擁立しました。

それで結果は、立憲が大幅議席増だったのに対し、共産は2議席減。今後も見据えると共産が立憲に擦り寄るのも理解できます。

一方、維新との会談は首尾良くとはいかなかったようです。

政治改革や国会改革の協議を進めることは一致したものの、野田代表が会談の「一番の柱」とした首班指名選挙の対応では色よい返答は得られませんでした。維新の馬場代表は記者団に「大義や具体的な改革案がなければ、我々はくみしない」と述べました。

更に、国民民主党は党首会談そのものに応じず、立憲主導の野党連携は厳しい情勢です。


2.決選投票


これで、11月11日に開かれるとされる特別国会での首班指名では石破総理が選ばれる可能性が一段と高まってきました。

首班指名選挙では、1回目の投票で投票総数の過半数に達する議員がいない場合、上位2人による決選投票を行って総理を選びます。

与党が過半数を確保していれば1回目の投票で総理が決まるのが通例です。

ところが、今回は与党で過半数を確保していませんから、自民、立憲それぞれが過半数を確保すべく多数派工作を行っている訳ですけれども、国民民主の玉木代表は、国民民主党は1回目、2回目ともに『玉木雄一郎』と書くと明言しています。

一方、維新も、藤田幹事長が指名選挙では『馬場代表』の名前を書くと明言しました。これにより決選投票では、維新、国民の投票は無効票になる見通しで、結果、野田代表の票を上回る見通しの石破首相が選ばれる公算が大きくなったというわけです。

因みに、衆院での決選投票は過去に4例ありました。1948年の吉田茂氏と片山哲氏との決選投票で、吉田氏が選出。1953年、吉田茂氏と重光葵氏とで争われた決選投票で、吉田氏が選ばれています。

1979年、自民党内の権力闘争による内紛のため、大平正芳氏と福田赳夫氏の決選投票となり、17票差で大平氏が指名されました。1994年は、自民、社会、新党さきがけが立てた村山富市氏と、新生党や公明党などが推す海部俊樹氏が争い、村山氏が選ばれています。

国民民主の玉木代表が、決選投票で無効票になってでも、自分の名前を書くという判断をしたことについて、立憲と連携するより自民党と連携した方が、国民民主の政策を実現できるとみているからだとも言われています。

玉木代表は、自民との政策協議を通じて、国民民主が掲げている『103万円の壁』の引き上げなどを政府与党に丸のみさせ、政策実現したい考えで、それとバーターで首班指名選挙では、自民党の後押しとなる無効票を選択したと見られています。

こうした玉木代表の動きに対して、立憲の幹部は「結果として石破首相を応援する行為だ。選挙で出た民意と反対の行動だ」と批判しているようですけれども、玉木氏にしてみれば、国民民主の政策を実現するための行動であり、民意に沿っていると反論できますから、立憲の批判はあまり意味がないように思います。

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3.パーシャル連合


10月31日、自民党の森山裕幹事長は、国民民主党の榛葉賀津也幹事長と国会内で会談し、石破総理と国民民主の玉木代表による党首会談開催を要請しました。

榛葉氏は森山氏との会談後、記者団に「日程を調整する。特別国会前になるだろう」と述べ、応じる考えを示しています。

榛葉氏によると、森山氏から政調会長同士の会議体設置の提案もあったそうなのですけれども、国民民主は各党と等距離を保つ方針で「政策ごとに協議する」と拒否。榛葉氏からは、特別国会の首班指名選挙で1回目、2回目とも玉木氏の名前を書く方針も伝えたようです。

自民党側から、政調会長同士の会議体設置なんて、要するに政策のすり合わせをして事実上の連立化を狙ったものと思われますけれども、そちらは断られた形です。

それでも、森山氏は記者団に、首相指名での国民民主の対応について「大変ありがたい」と述べ、決選投票になった場合、石破総理の名前を書くことについては「政党が主体性を持ってお決めいただくことが大事だ。直接、正式に要請をしたことはない」とコメントしています。

国民民主の榛葉幹事長は、「我々は各党と立ち位置等距離ですから、しっかりと自民党や各党が政策実現のために協力してほしいというのであれば案件ごとに対応する」と述べ、今後は、自民党と国民民主党の幹事長らが会談し、政府が11月の取りまとめを目指している経済対策などについて政策協議を始めることで合意したようです。

国民民主は、衆議院選挙の公約にも掲げていた「年収の壁」の見直しや、ガソリン税の一部引き下げなど手取りが増える経済政策を盛り込むよう強く求めていますから、この実現を与党に強く求めるものと思われますけれども、自民党幹部は「財源がかかるから簡単ではない」と漏らし、自民中堅からも「政策を丸飲みすれば党内から反発も出る。八方塞がりだ」という声も出ているようです。

今のところ、石破政権は、国民民主との「連立」や「閣外協力」ではなく、「パーシャル連合」を目指しているようです。

「パーシャル連合」とは、衆院や参院で過半数がない与党が個別テーマごとに野党と部分的に協力し、法案などの成立を図る方策で、野党側は協力案件以外では政権に連帯責任を負わず、敵対的な国会対応をとることもできます。

過去には、小渕内閣が1998年、金融危機に対応する「金融再生関連法案」を巡り、野党案をほぼ丸のみして成立させた事例などがあります。




4.賭けと良いとこ取り


では、今後、国民民主が、自公政権を引きずり回して自身の政策を実現していくのか。

これについて、夕刊フジが、10月30付の記事「「政策実現」狙う玉木代表と「延命」狙う石破首相 国民民主の「103万円の壁」「トリガー条項」…うまくいくのか〝いいとこ取り〟戦略」でそう簡単ではないと警鐘を鳴らしています。

一部引用すると次の通りです。
【前略】

一方、自公両党は来月に取りまとめる経済対策で、国民民主党を念頭に政策協議を呼びかける検討に入った。対象となるのは、国民民主の看板政策といえる「103万円の壁」の撤廃だ。パートで働く人らの年収が103万円を超えると所得税が課税され、逆に手取りが減るため労働時間を抑えてしまう問題で、その上限を178万円に引き上げるよう主張している。与党側も年収の壁解消を訴えているため実現の可能性が高い。

もう一つの看板政策が、ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」凍結解除だ。今年の通常国会で自公と国民民主の3党で協議したが、決裂した経緯もあるが、政権内で影響力を持つ有力議員は「もうそんなことは言っていられない。財務省は反対するだろうが、凍結解除を迫るしかない」と語る。

玉木氏の「いいとこ取り」戦略はうまくいくのか。

政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「玉木氏は部分連合に前向きだが、党内でも労組系の候補とは温度差もあるだろう。来年には東京都議選や参院選を控え、『自民に政権を維持させたままでいいのか』と党内や支持者、立民など他の野党からの反発も予想される。『部分連合』の話が表に出るのが早すぎる感もあり、玉木氏はさらに駆け引きを続けるのではないか」と指摘した。


また、ミンカブ・ジ・インフォノイドが運営する、資産形成に関する情報メディア「MINKABU」が、次の記事を上げています。
【前略】

そこで国民民主党が政策実現のため、与党に丸飲みを要求すれば断り切れないだろう。年収103万円を超えると所得税が課税される「103万円の壁」解消やガソリン価格のトリガー条項凍結解除などの政策が実現されることになれば、物価上昇に苦しむ国民にとってはプラスとなる。財政規律を重んじる財務省は反対するかもしれないが、今の政治状況を考えれば最終的には従わざるを得ないはずだ。玉木氏は「新しい与野党の文化をここでつくらないとダメだ。それがいま問われている」と強調する。

もちろん、石破首相にとって国民民主党との協力関係は「賭け」だ。予算案や税制改正関連法案などで国民民主党の政策を採り入れることで可決・成立を目指すことはできる。だが、「一体、どこまで飲めば良いのかわからない」(自民党幹部)と不安視する向きは少なくない。自民党からすれば採用したつもりであっても、すべて丸飲みでなければならないのか。一部だけでも盛り込めば良いのか。少数与党である限り、その疑心暗鬼は生じることになる。

加えて、石破首相にとっては来年夏に参院選を控えていることも気がかりだ。選挙前になれば各政党は対決姿勢に転じざるを得ない。
石破総理にしてみれば、国民民主との協力は、どこまで国民民主の政策を飲めばよいのか分からない不安があり、来夏の参院選前には対決姿勢に転じるかもしれないという警戒感が拭えないことから、「賭け」になるというのですね。

けれども、「賭け」であろうがそうでなかろうが、政治の成否を判断するのは最終的には国民です。国民の顧みない「賭け」をいくらしたところで意味がありません。

野党の声とて国民の声の一部ですし、野党の方が議席を持ったということは、国民の声は野党により多くあるということです。野党の声を聞かないと予算一つ通せない。岸田政権のように、国民の声を聞かない政治を見た後では、これくらいの緊張感があるほうが、ある意味マシだといえるのかもしれませんね。



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