国民民主は令和の秀吉になれるか

今日はこの話題です。
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1.なんでも呑む


10月31日、国民民主党の玉木代表は、記者団に「基礎控除引き上げは必要だ。それを全くやらないのであれば協力できない。予算も法律も通らないだろう」と、年収103万円を超えると所得税が課される「103万円の壁」の見直しが与党との協力条件になるとの考えを示しました。

この日、自民党の森山裕幹事長と国民民主党の榛葉賀津也幹事長が会談し、法案や予算案など個別政策ごとに両党間で協議を進める方針で合意。11月11日に召集される予定の特別国会前に、石破総理と国民民主の玉木代表による党首会談を開催することも確認していますけれども、その協力も「103万円の壁」の見直しが前提だと釘を刺された訳です。

森山幹事長は会談後、小野寺五典政調会長に自民、公明、国民民主3党による政策協議の開催を指示。小野寺政調会長は記者団に「経済対策、補正予算の議論を至急進めなければいけない。意見を伺い、予算に反映できるものはしていきたい」と述べ、自公国の協議が本格化する模様です。


2.死んでも飲めない


この国民民主の動きに焦っているのが財務省です。

11月1日、週刊現代は「財務省が「玉木首相の可能性」に顔面蒼白…!「消費税5%」「年収の壁」「給食費タダ」「高校まで完全無償化」ヤバすぎる大盤振る舞いに「死んでも飲めない」と猛反発」という記事を掲載しました。

件の記事の概要は次の通りです。
「年末の防衛増税の実施時期決定も、来年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化という財政健全化目標の達成も、みんな吹き飛んだ。レームダック(死に体)政権の断末魔の巻き添えをできるだけ食わないよう、守りを固めるしかない」

旧民主党へ政権交代した2009年以来の、自民・公明両党の衆院過半数割れという事態を目の当たりにして、財務省幹部はこううめいた。

石破茂首相は公示前の4倍(28議席)に勢力を増やした国民民主党を取り込んで政権延命を図ろうと躍起の体だ。自民、国民民主両党は10月31日、政策協議を開始することで合意した。首相が掲げた経済対策の裏付けとなる2024年度補正予算案だけでなく、25年度予算案や税政改正大綱についても協議するという。

国民民主側は11月11日に予定される特別国会における首班指名選挙で、野党第一党である立憲民主党の野田佳彦代表を支持しないことで、石破首相の続投に手を貸す代わりに、衆院選で公約した「手取りを増やす」政策を飲ませようとしている。

首相官邸筋からは「国会で石破さんが再び首相に選出されても、少数与党内閣のままでは政権運営の迷走が果てしなく続く。最終的には国民民主の政策を丸呑みし、連立政権入りを誘うしかないのでは……」と、なりふり構わぬ声も漏れる。

窮地に立つのが財務省だ。補正予算を巡っては、首相が選挙期間中に「財政支出が13兆円超だった2023年度の経済対策を上回る規模とする」とぶち上げていた。石破政権の党内基盤の弱さを熟知する主計局は、「財政規律の回復など、とても打ち出せる状況ではない」と見切り、一回限りの補正での大盤振る舞いは容認する覚悟を固めていた。

ガソリン、電気・ガス代補助については「無能なバラマキ政策の典型」と呆れつつも年度内に限って延長を認め、公明党が公約した低所得世帯や年金生活者への給付金支給も盛り込む腹だった。

だが、与党過半数割れによって、政局の焦点が石破政権と野党の中でもとりわけバラマキ色が強い国民民主との連携協議に移ったことで、補正の膨張どころでは事は収まらなくなった。

財務省は衆院選直後から石破政権が国民民主の取り込みに動くと睨み、水面下で政策要求された場合、どこにレッドラインを引くか「頭の体操」を始めていた。

選挙公約に掲げられた「実質賃金が継続してプラスになるまで消費税を一律5%とする減税案」は「死んでも飲めない」(主税局幹部)のが本音だ。「年収の壁」(所得税の非課税枠)を103万円から178万円に引き上げる案は、国・地方で年7兆6000億円もの税収減が見込まれ、「言い値通りに受け入れるわけにはいかない」(同)。ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除も、一度引き下げれば元に戻すのは困難で、「地方を含めた税収減の影響が深刻」という悩ましい代物だ。

財務省は代わりに、国民民主が力を入れる子育て世代支援策の一環として、全国小学校での給食無償化を提案することを検討。「年収の壁」の引き上げを巡っては、税政改正議論の俎上に載せた上で事実上先送りするか、少なくとも減税額の大幅圧縮を図りたい方針だ。

だが、大幅議席増で勢いに乗る玉木雄一郎代表が、その程度の「アメ」で納得するとは思えない。ある国民民主幹部は「仮に石破首相が再任されても、立憲民主など野党が内閣不信任案を国会に提出し、うちが乗れば、たちまち内閣総辞職に追い込まれるだろう」と、石破政権の足元を見て強気の姿勢を隠さない。

「お家の一大事」にもかかわらず、財務省が渋い姿勢を示しているのは、大幅な歳出増を飲んで国民民主の協力を取り付けても、石破政権の生い先は長くないと見ているからだ。

ある主計局幹部は「政権の寿命は、せいぜい25年度予算案が国会で成立する来年3月までだろう。それ以降は、自民党内で来夏の参院選を睨んだ『石破降ろし』の嵐が吹き荒れる」(官房筋)と予想する。

仮に国民民主と連携できたところで連立の組み換えにまで発展しなければ、政権基盤は揺らいだままだ。そんな中で自民党内から「石破氏が選挙の顔では戦えない」との声が噴き出せば、首相は降板せざるを得なくなる。そんな「ゾンビ政権」のために大幅な税収減を受け入れることなど「考えられない」というわけだ。

ちなみに、財務省内では次期首相に関して「9月の総裁選で石破氏や高市早苗氏、小泉進次郎氏に次ぐ4位と健闘した林芳正官房長官が浮上してくるのではないか」との見立てもある。ただ、「選挙の顔」として役不足感は否めず、財務省シンパの首相を期待する願望のたぐいと言えるだろう。

政局シナリオで最も懸念されているのは、下野を恐れた自民党が、自・公・国の連立政権樹立のために玉木氏に首相ポストを明け渡す事態だ。

自民党は1993年、新生党(当時)や日本新党(同)など非自民・非共産8党の連立勢力に政権を奪われ、結党以来初めて下野した。翌年、日本社会党(同)や新党さきがけ(同)と連立を組んで政権復帰を果たしたが、その再来劇である。この際、自民党は社会党委員長だった村山富市氏を首相に戴く奇手を繰り出し、政権奪回につなげた。

そんなデジャブが財務官僚の頭をよぎるのは、野党第一党である立憲民主党の野田佳彦代表も、政権交代への思惑から玉木国民民主に対し、共闘を求めて熱心にアプローチを掛けているからだろう。

両党の支持母体である連合も巻き込んだ工作だけに、玉木氏が立憲側に転ばないとも限らない。国民民主内には「反自民勢力にとどまったほうが、来夏の参院選を有利に運べる」(幹部)との声もある。

自民党有力OBは「玉木首相案は、下野を防ぐ最後の切り札であるのは確かだろう」と解説する。

実は、旧竹下派分裂の影響により1993年の衆院選で自民党が単独過半数割れした際にも、自民を離党した小沢一郎氏ら政権交代勢力と、下野を免れたい自民党側の間で、選挙で躍進した日本新党の細川護熙代表の取り込み合戦が起きたという。両陣営とも細川氏に首相ポストを約束したが、結局、自民党が一敗地にまみれた形となった。

国民民主争奪戦も過熱すれば、双方が玉木氏に首相ポストというニンジンをぶら下げる展開となる可能性も否定できない。村山首相や細川首相の場合は財政規律への理解があったが、玉木氏の場合、そうなる保証がないだけに厄介だ。

玉木氏は旧大蔵省出身(1993年入省)とはいえ、「財務省シンパと見られては政治家として致命傷になる」との思いからか、かねて積極財政派をアピールしてきた。今回の衆院選では消費減税のほか、年5兆円の「教育国債」を発行し、3歳からの義務教育化や高校生までの授業料を完全無償化する政策などバラマキ色を全開モードにしていた。

そんな人物が権力の頂点に立てば、財政健全化の目論見も雲散霧消しかねない。自民一強時代が続いたこの15年、時の政権をどう操るかに血道を上げてきた財務省も、今は政局の流動化に翻弄されているのが実態だ。
財務省は政権が国民民主の要求を飲んで、減税するのではないかと反発しているというのですね。財務省は、いったいどちらを見ているのか。国民の方を見ていないのは確かです。

ただ、石破政権は政権維持のためには国民民主の協力は必須と考えているようで、権力が集中する予算や税でも、国民民主との協議の場を設けることを約束。財務省の聖域ともいえる部分に手を突っ込むことを許可しました。

国民民主の政策について、政権幹部の一人は「なんでものむ、という状態だ。予算成立までは、それで乗り切るしかない」と漏らしたそうですから、背に腹は代えられないということでしょう。もちろん、石破政権が「大財務省様」に逆らえるのかどうかは分かりません。


3.減税で7.6兆円の経済効果


国民民主が主張する「年収の壁」の103万円から178万円への引き上げについて、早速「ザイゲンガー」論が出てきました。

10月30日、所得税と住民税の基礎控除を現行より75万円引き上げた場合、国と地方の合計で年約7兆6千億円の税収減になる見通しであることが政府の試算で分かったと報じられています。

現行制度では、年収が基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)の合計である103万円を超えると所得税が発生しますけれども、これのせいで、パート従業員などが手取りの減少を意識して働く時間を抑え、人手不足の一因になっているとも指摘されています。

国民民主の玉木代表は、今回の総選挙でそうした声をいっぱい聞いたと漏らしています。

この金額が引き上げられれば、パート従業員などが従来の「年収の壁」を越えて働きやすくなるだけでなく、サラリーマンや自営業者などにも広く減税の恩恵が及ぶとされています。

いつぞや、NHK党の濱田参院議員が、減税しようとすると財源がないというが、バラマキするときにはなぜか財源が出てくると国会でいったことがあるような記憶があるのですけれども、岸田政権時、世界各国に盛大にばら撒いたのをみた後では、濱田議員の指摘はその通りであると思いますし、流石にこの言い分はおかしいと思う人が多くいるのではないかと思います。




4.財務省の抵抗が始まった


この財源論について、財務省の抵抗だと指摘する識者もいます。経済評論家の三橋貴明氏です。

10月31日、三橋氏は自身のブログで「財務省の抵抗が始まった」という記事を掲載し、その旨を説明しています。

件の記事を引用すると次の通りです。
未だに「与党過半数割れ」の意味が分からない人が(Youtubeのコメント見ていると)少なくないようです。

「国民民主党が減税(等)を自民党に受け入れさせ、石破に投票して、また裏切られたらどうするんだ!」

その場合は、その後の予算案、法案に賛成しなければいいだけの話なのですよ。自公政権はすぐに詰む。

そういう意味で、国民民主党は首班指名選挙で石破に入れる条件として、いくつかの減税案を呑ませ、連立に入らない方が良いかも知れません。

どうせ、財務省が国民民主党の減税案を骨抜きにしようとするに決まっていますので、その責任を押し付けられかねない。閣外にあれば、自分たちの「良い政策」を財務省及び自公が潰したと声高に訴え、次回の選挙で有利に戦える。

まあ、そういうことはすでに国民民主の皆さんの方が真剣に議論していると思いますが。

とりあえず、例の「103万円の年収の壁」問題は、すぐに実現して欲しい。

理由は、年収の壁があるために、ちょうど今の時期にパートやアルバイトの方々がシフトを減らしてしまうため、事業者側の人手不足が洒落にならない状況になるためです。

【中略】

ほら来た。

年収の壁を178万円に引き上げたら、
「高所得者ほど効果が大きい!」
と喧伝し、政策に対する嫌悪感を引き起こし、そして「何もやらない」で済ます。

ちなみに、共同通信以外のメディアも、全く同じ数字を使い、「不公平感」「財源が~」を煽っている。「政府の試算」とは、財政研究会のペーパーのことです。財務官僚の抵抗が始まっています。

そもそも「税収減を補う財源」の意味が分からない。税金を取らない、というだけの話。

財源など、初めから国債発行です。

このタイミングで「税は財源ではない」の議論が深まれば良いのですが、そこまではいかないでしょう。

年収の壁をなくし、年間7兆6千億円の減収になったとして、財務省が、
「それでは、減収分を補填するために増税を。あるいは、あの支出を削減を」
とやってくること確実です。

許してはならない。
まさに仰るとおりです。




5.国民民主は令和の秀吉になれるか


国債どころか、財務省の横暴を止めるだけでもかなりの財源が出てくるという話もあります。

先日の自民党総裁選への出馬を目指した、青山繁晴参院議員は、9月8日に公開された「選挙ドットコム」チャンネルで次のように述べています。
・解散については「日本各地を回り、地元選出の議員や議員を目指す人々、主権者と語り全体の状況を判断すべき……その上で、全世界的なインフレに対し、消費減税をしてから解散」
・令和5年度は税収が伸び、剰余金が10.4兆円となった。日本では、決算で剰余金が出た場合、財政法6条により、半分は国の借金の返済に充てるということが決まっている。「半分は国の借金の返済に充てても消費税2%分下げられるが、財務省は国債の発行予定額を減らし、消費減税を潰した。そのことについて国会にも国民にも説明がない」
・「財政法第4条で、日本だけは国の借金ができないと規定されている。建設国債以外は赤字国債」
・財政法第4条は、「日本に戦時国債を発行できないようにするためのもの」。こうした制度は、世界の他の国には基本的にない
・日本は第2次世界大戦後、4000万人以上人口が増えた。税収も増える、社会保障中心に高齢化も進むので歳出がもっと増える。財政法4条がある限り、借金できない。増税するしかない
昨年度は、税収が増え10兆円以上の剰余金が出たにも関わらず、財政法6条で定められている半分を借金返済に充てるというのを、財務省が勝手に破って、国債発行を減らして、減税できないようにした。それも国会にも国民にも説明せずにやった、というのですね。

横暴以外の何者でもありません。

国民民主は、103万の壁の引き上げ以外にも、ガソリンの二重課税の原因でもあるトリガー条項を解除するよう主張しています。トリガー条項の解除については、軽油、灯油、重油も引き下げられる今の補助金を入れる形のほうがよいという見解もありますけれども、筆者は「減税」することで安くなった、という事実を作った方が、長期的にはよいと思います。

なぜなら、減税なんてできっこない、という財務省による「国民の洗脳」が解ける切っ掛けになり得ると思うからです。

10月31日のエントリー「もしも豊臣秀吉が総理大臣になったら」で、筆者は、今、国民が求め、秀吉ならやるであろう政策として、令和の「検地」があると述べましたけれども、国民民主が政府を押して、103万円の壁引き上げをはじめとして、トリガー条項凍結解除など「減税」を実現していくことは、まさに「検地」を実施することの一環になり得ると思います。

先述した濱田参院議員ではありませんけれども、減税するときは「ザイゲンガー」と叫ぶくせに、ばらまく時には何故か財源が出てくるカラクリを是非「検地」によって明らかにしていただきたいと思いますね。







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