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1.自民党両院議員懇談会
10月7日、自民党は党所属の全国会議員を対象とした両院議員懇談会を党本部で開きました。
懇談会には、所属国会議員の6割に当たる186人が出席。冒頭を除き報道陣に非公開で約3時間にわたって行われ、約50人が発言しました。
石破総理は冒頭の挨拶で、「多くの同志が議席を失う結果となり、痛恨の極みだ。私が総裁に就任して比較的高い支持をいただいたのは、『自民党に国民の声が届いていないところを改めよ』という期待もあったと思う。総裁就任後、足らぬところが多々あり、本当に深く反省し、お詫びしなければならない……経済対策や物価高対策、能登半島で苦しむ方々への政策など国政にはいっときの停滞も許されない。国民の声に謙虚に耳を傾け、間違いない歩みを進めていくため、力をたまわりたい」と結束を呼びかけました。
また、森山幹事長は「いい結果を出すことができず、強く責任を感じている。首班指名や経済対策、来年度の予算編成、税制改正など、さまざまな政策を着実に進めていかなければならない。与野党問わず、民意を受けて選ばれた国民の代表であることを踏まえ、各会派の意見に真摯に対応していく」と陳謝しました。
出席者によりますと、懇談会では執行部の責任を問う声も出され「いずれかの時期に石破総理大臣は辞任すべきだ」といった意見もあったそうで、党が非公認とした候補者が代表を務める政党支部にも2000万円を支給したことをめぐって「情勢がさらに厳しくなった原因をつくった」などとして説明を求める声も相次ぎました。
一方「自民党が生まれ変わるためには本気の政治改革が必要だ」という指摘や「党が一丸となって政策を推進する環境をつくるべきだ」という意見もあったとしています。
懇談会後、森山幹事長は記者団に対し「およそ50人から意見をいただいた。整理して今後の党運営に生かしていきたい」と述べ、執行部の責任を問う声が出たことについて「いまは非常に難しい時でもあり、まずはしっかり首班指名の国会を乗り切り、補正予算や来年度の予算をしっかり乗り切っていくことが大事だ」とし、落選した候補者への対応について「出席者から、ヒアリングやサポートを求める意見も出た。ヒアリングをさせていただきたい」と述べ、意見を聴く場を設ける考えを示しました。
衆院選で与党過半数割れという事態を迎えているのに「比較的高い支持をいただいた」などとは、いったいどういう認識をしているのか理解に苦しみます。
2.燻ぶる石破降ろし
もっとも懇談会自身も荒れたようです。
会場となった党本部9階の会議室はピリピリムード。取材に押し寄せた数十人の記者やカメラマンは総裁と森山裕幹事長の挨拶が終わると部屋からだけでなく、9階フロアからも退場を求められました。
中座した出席者は「挙手しても前の方しか指されない。おまけに会場内は暑くて耐えられない。早く終えたい意図がありありだ」と党執行部の運営や姿勢への怒りが漏れ、ベテラン議員は「不満のマグマが噴き出した」と零しています。
懇談会後、何人かの議員は記者団に答えていますけれども、それは次の通りです。
柴山・元文部科学大臣(旧安倍派)「来年の参議院選挙で負けたら自民党に未来はない。衆議院選挙で非公認となった候補者が代表を務める政党支部にも2000万円が支給された問題は、国民世論といかにかけ離れたものであったか執行部は受け止めるべきで、検証すべきだ」責任を問う声の嵐です。それでも、石破総理をはじめとする執行部に対し、即刻辞めろではなく、補正予算成立後などいずれかのタイミングで止めるべきだというのに留まったのは、どちらにせよ長くないと見切っているのからなのかもしれません。
船田・元経済企画庁長官「『いずれ辞めるべきだ』という厳しい意見もあった。責任を共有し、自民党が生まれ変わることを国民に示すことがわれわれの責任だ」
斎藤洋明・衆院議員「政治資金収支報告書への不記載の問題について総括しなくてはいけない。しっかり総括しないかぎり国民の信頼は得られないと申し上げた。『今回の懇談会をガス抜きと考えているならとんでもない』という発言もあり、これで終わりではないという空気だった」
尾崎正直・衆院議員「『今回の選挙結果をしっかり総括しないと次の参議院選挙は戦えない』、『敗因を何だと考えているのか』などと説明を求める意見が出た。ただ、総じて『みんなで石破総理大臣を支えていこう』ということはコンセンサスになっていた」
小林・元経済安全保障相「わが国が置かれている厳しい状況を考えると、内政も外政もとにかくスピード感をもって政策を進める必要があり、党一丸となってその環境をつくっていく必要があると申し上げた……今回の総選挙では2000万円の問題などさまざまな決定の経緯や背景を多くの同僚が説明を受けておらず、明確な説明をしてほしいと要望した。これで終わりにすることなく、答えを求めていきたい」
稲田・元防衛相(旧安倍派)「選挙の敗因は、争点が明確ではなく『裏金』問題一色になったことだ。少数になったが政権与党として骨太の政策をしっかりと提示して、一致団結し、石破総理大臣を支えることが必要だ」
津島淳・衆院議員「政治資金の不記載の問題や2000万円の問題など、総裁選挙から衆議院の解散・総選挙への一連の流れの中で、全体の総括や反省、それに検証は不可欠だ。国民の意見を聞く第一歩として、苦杯をなめて落選した候補者に一刻も早く話を聞くべきだ」
青山繁晴・参院議員「政権選択選挙で負けたのに責任を取らないのでは、自民党が民主主義を掲げることはできない。石破総理大臣のもとで来年夏の東京都議会議員選挙と参議院選挙を行うことが民意だとは思わない。補正予算を成立させ、その直後に潔く辞意を表明すべきだ」
3.微妙なバランスになった各党議席
自民党の敗北に終わった総選挙の結果について、政治ジャーナリストの角谷浩一氏は、次のように述べています。
・今回の結果を受けて石破おろしとの見方もありますが、おろしたところでどうにもならない。裏金議員を非公認としたのは苦渋の決断でしたが、結論、それでも有権者からは認められなかったというだけのこと。非公認にして負けたから石破がやめろというのは筋が通らないでしょう。また、政権交代の可能性について角谷氏は次のように予想しています。
・石破さんの責任もないとは言わないが、まだ何もやってない中で、今回の選挙は岸田政権の通信簿という意味合いが強い。選挙では負けましたが、問題のある議員を排除し、政治とカネの問題を浄化しようとしたことはむしろ功績。感情的にトップの責任論に持っていくことは得策とは言えませんし、仮におろしたら自民党がさらに総スカンを食らうことも考えられます
・今回の惨敗は、森山幹事長の失敗というところが大きい。短期決戦の選挙日程を決めたのも森山さんですし、選挙中盤の討論番組では『連立の拡大も視野に』という公明党のモチベーションを下げる不用意な発言もあった。極めつけが2000万円の活動費。あれも最終的な会計責任は森山さんです。政治とカネが争点のこの選挙戦で、あのタイミングに出すというのは、やはり感覚がズレていると言わざるを得ません。
・ただ、本当の意味で決定打となったのは、2000万円そのものよりも、その後の萩生田氏の『ありがた迷惑』発言では。平均年収400万円という時代に、2000万円という大金をもらっておいてありがた迷惑とは、いったい何様なんだというのが正直なところ。おそらく日本中の国民がカチンときたでしょう。あの発言で自民党の金銭感覚、やっぱり金にだらしないんだという体質が透けて見えてしまった。『こんなお金は受け取れません』という姿勢であればここまでのことにはならなかったのではないでしょうか
・野党がバラバラな現状でそれはないでしょう。野田さんは自分が代表になって大勝したと思っているかもしれませんが、今回は共産党と距離を置いたこと以外は、ほとんど自民のオウンゴールで伸びただけ。自民党にお灸をすえるという消極的な動機で目的で投じた人は、野党が新しい政治を提案できないならやっぱり自民でいいと戻ってしまう。今回議席を伸ばした党も、手放しで勝ったというわけではありません。角谷氏は、今回の総選挙で、与党も野党もそれぞれが総すくみの状態で緊張感のある微妙なバランスになったと指摘し、一番の勝者は国民だと指摘しています。
・野田さんは野党を取りまとめて、政権交代までこぎつけないと勝ったとは言えない。仮に立憲民主党と国民民主党が合併して元に戻っても、過半数にはまだ足りない。この先は野党も批判だけではなく、政権運営に関わる意思表示をしていく必要があります。政策面で与党に協力する気があるのか、野党側の器も問題になってくる
・今回の選挙の一番の勝者は誰か? 強いて言うならば、有権者たる国民です。与党も野党もそれぞれが総すくみの状態で、緊張感のある微妙なバランス。これは裏を返せば、どこも頑張り次第で政権を目指せる、非常に健全な状態と言えます。次の中間試験となる参議院選挙が来年7月に控えていることも重要。それまではこの状態が続き、各党協力的にならざるを得ません。与党は謙虚に、野党は覚悟を持って、日本の政治全体のレベルがあがるチャンスになります。
・もっと言えば、その先に政界再編があると思う。今回は全体を通して、自民、公明、共産という古い党が負け、比較的歴史の浅い政党が勝った。そこから国民全体の意識は変化を求めているのだと気づかなければいけません。古い体質の政治はノー、新しい政治には期待がある一方、何が正しいかは国民もまだ分かっていない。今はそんな状態です。価値観も多様化し、多数派が過半数に満たない時代。政党もくっついたり離れたりを繰り返し、多様な考えをまとめて成長していくことが求められるのではないでしょうか
4.辞任必要ないの裏側
では、石破総理は辞任せず総理の椅子にしがみつくのか。
これについて、複数の報道機関が行った世論調査で、石破総理は「辞任すべきでない」とする意見が多数を占めたことが注目を集めています。
共同通信社が10月28、29の両日の実施した緊急の電話世論調査で、総理が過半数割れの責任を取り辞任すべきだとの回答は28.6%にとどまり、辞任は必要ないが65.7%に上った。内閣支持率は32.1%で、内閣発足に伴う10月1、2両日調査の50.7%から18.6ポイント急落。不支持率は52.2%でした。
また、読売新聞社が10月28、29両日に実施した世論調査でも、総理は辞任するべきだと思うかについて「思わない」が56%、「思う」は29%。内閣支持率は34%で1、2両日の調査の51%から下落。不支持率は51%と前回32%から大幅上昇しています。
石破内閣の不支持率が高いにも関わらず、総理の辞任が必要ないという倒錯した状況について、報道ベンチャー「JX通信社」の米重克洋社長は、「内閣支持率が下がったのは首相への評価だろう。ただ、『政治とカネ』や物価高の問題は前政権からあった。就任したばかりの石破首相が負うべきではないとの有権者心理が働いているのではないか……『しばらくやってもいい』という、積極的支持ではなく消極的支持だろう。首相に関しては過去の発言との矛盾も問われかねない」と、厳しい政権運営を強いられる可能性を指摘しています。
先述した角谷浩一氏も、「今回の選挙は岸田政権の通信簿という意味合いが強い」と述べていることを考えると、今回の大敗の責は岸田前総理にも多分にあることになります。
また、裏を返せばこの結果は、岸田再登板に国民がノーを突き付けたともいえ、権謀術数、策を弄しまくった岸田前総理も、「策に溺れた」という結末になったのかもしれません。
これらを考えると、石破総理が政権を続けていくためには、反岸田政策を取ればよいことになってしまいますけれども、裏切りの二つ名を持つ石破総理が、またぞろそれを発揮するのか。筆者としては、自説である増税路線、財務省を思いっ切り裏切って、国民民主の減税政策を丸呑みすることを期待したいところですけれども、結局は国民の声、民意をどこまで把握し、尊重するか、それに掛かっているのではないかと思いますね。
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