石破はトランプの相手になるか

今日はこの話題です。
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1.首班指名選挙


11月11日、衆参両院での本会議で首班指名選挙が行われ、自民党総裁の石破茂総理が第103代総理に選出されました。

参院では本会議での投票で石破氏が過半数を獲得したのですけれども、衆院では1回目の投票で投票総数の過半数を得た候補がなく、石破茂総理と立憲民主党の野田佳彦代表による決選投票になりました。衆院で決選投票になるのは史上5度目のことです。

指名選挙での各候補の得票は次の通りです。
1回目:∥自)石破 茂 221/191 ∥立)野田 佳彦 151/148 ∥維)馬場 伸幸 38/38 ∥国)玉木雄一郎 28/28 ∥れ)山本 太郎 9/9 ∥共)田村 智子 8/8 ∥無)吉良 州司 4 ∥参)神谷 宗幣 3/3 ∥保)河村たかし 3/3

2回目:∥自)石破 茂 221/191 ∥立)野田 佳彦 160/148 ∥無効 84
決選投票では、石破総理が221と変わらず、野田代表は151から160とわずか9票の積み増ししかありませんでした。

野田代表の首班指名での多数派工作については、共産党が前向きな姿勢を示していましたから、上積みはそこからのものと思われますけれども、残り1票がどこから流れたのか分かりません。




2.石破トランプ電話会談


首班指名され、本格的な政権スタートとなった石破総理ですけれども、多難な前途が待っています。

11月7日、石破総理は、アメリカのトランプ次期大統領と電話会談を行いました。

その模様について外務省のサイトでは次のように説明されています。
11月7日、午前9時30分から約5分間、石破茂内閣総理大臣は、ドナルド・トランプ次期米国大統領(The Honorable Donald Trump, President-elect of the United States of America)と電話会談を行ったところ、概要は以下のとおりです。

冒頭、石破総理大臣から、トランプ次期大統領の大統領選挙での勝利に対して祝意を伝えました。
両者は、日米同盟を新たな高みに引き上げるために協力していくことを確認しました。
両者は、双方にとり都合の良い、できるだけ早期のタイミングで対面での会談を行うことで一致しました。
石破総理はトランプ次期大統領との電話会談について、記者団に「お互いにいい仕事ができることを楽しみにしているということで会談を終えた……非常にフレンドリーな感じがした。言葉を飾ったりつくろったりするのではなく、本音で話ができる方だ」と述べ、周辺には「選挙に勝ったトランプ氏の高揚感が伝わってきた」と漏らしています。

官邸幹部は、どうにか祝意を伝えられたことに「上出来だ」と安堵した一方、第2次トランプ政権はトップダウン型の運営を強め、「ディール(取引)」をより重視されるだろうと見込まれることから、外務省幹部は「首脳レベルの関係が一番重要だ。首相に頑張ってもらうしかない」と述べています。


3.たった5分で会談と呼べるのか


ただ、今回の初の電話会談は通訳を交えて約5分間という異例の短さだったことから、各所から批判の声が上がっています。

勿論、通訳入れて5分なら碌な話も出来なかった筈だ。同盟国なのに軽い扱いになっている、という類の批判です。

日本の総理はこれまでも次期大統領と選挙後に電話会談を行っていますけれども、2016年は安倍晋三総理がトランプ氏と約20分間、20年の菅義偉総理はバイデン氏と約15分間の時間が取られています。

今回も、フランスのマクロン大統領は欧州首脳の中でいち早く6日夕に約25分間トランプ氏と電話会談し、韓国の尹錫悦大統領も、7日午前7時59分から約12分間、会談しています。

歴代総理と比べても他国首脳と比べても短いことは間違いありません。

これについて、法政大学大学院教授の白鳥浩氏は次のように解説しています。
・解説通訳を介した5分間の「会談」であるが、はたして「会談」とよべるのであろうか?
・通訳が入るとすれば、正味半分ぐらいの「挨拶」をかわしたというところではないか。
・何といっても、トランプ氏は「経営者」であり、もともと「政治家」ではない。そこで、おのずから相手のトップとの「交渉(ディール)」を行うことを重視する。そこでは、相手を信頼するに足る、時間を共有する、という事が必要であり、会食を共にしたり、ゴルフなどの何らかのアクティビティを共有する経験が必要である。
・ところが、石破氏は、初の外遊であるASEAN首脳会議でも、各国首脳との夕食中に中座して自室に籠っていたという。そうした姿勢では、トランプ氏とは良好な関係を構築できない。
・そもそも国内の支持の低い首脳は、「ディール」では足元を見られる。しっかりとした交渉相手として見られない可能性もある。トランプ氏との関係は石破外交の今後が問われることとなる。
手厳しい指摘です。ASEAN首脳会議で、各国首脳との夕食中に中座して自室に籠っていたとは、外交する気があるのか疑ってしまいたくなるほどです。

もっとも、10日放送のフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」では、政府関係者を取材した結果として、石破総理との会談時、トランプ氏がフロリダ別荘で祝勝パーティーの途中だったとのことで、「大騒ぎでパーティーやってるところでは音声が聞き取りづらいということで、別室に誘導して来てもらって、そこで電話会談を行い、移動時間を含めると結構な時間がかかったと、わざわざ来たのはすごいことだってことを、政府関係者は説明しています」と報じています。

この番組に出演した自民党の小野寺五典政調会長は、「正確にお話をすると、トランプさんはもっと話したかったらしいですが、石破さんのほうから中座している最中ですからあんまり長く引き留めると、という配慮があったと聞いています……かなり時間刻みでやっている次の大統領ですから。しかも、どちらが当選するか分からず、日程が始めからおさえられず、なるべく早くというと、向こうは無理して中座して出てきてくれたので、こちらは配慮して早めに戻っていただいたと聞いています」と説明していますけれども、政府も批判の声を相当気にしている様子が窺えます。


4.石破はトランプの相手になるか


では、果して今後、石破総理はトランプ大統領のカウンターパートナーになれるのか。

これについて、キャノングローバル戦略研究所の峯村健司氏は次のように指摘しています。
・トランプ氏は”絶対に”石破首相と合わない。大好きだった安倍元首相亡き今、外交面で手強い相手になる。
・(絶対なんて)あまり使わない言葉ですが、やはり安倍さんとの仲が、唯一日本との関係を保っていたものなんです。もともとトランプさん自体は、日本に結構厳しい対応だった。『日本の家電と車がわれわれの経済をダメにしているんだ』と。トランプさんは唯一安倍さんとの友情で、なんとかつなぎ止めていたところなんです。
・2016年、トランプさんが当選した時にすぐにニューヨークのトランプタワーに会いに行った時から信頼を勝ち得て、しょっちゅう電話をする仲だったと聞いています。
・安倍さんはもう亡くなっているのですけれども、側近から聞いた話ですが、今でもトランプさんは疲れた時とか、落ち込んだ時に『シンゾーに会いたい』と漏らしているという話を聞きます。それぐらいまだ安倍さんに対する思いは強いということだと思います
・石破さんというと、安倍さんに対して批判したりして党内野党と呼ばれていたわけで、この話はアメリカも当然知っています。そうなってくると『アベのライバルか』となるとあまりプラスに働かないのではないかと私は思います
・まず一番は関税です。同盟国であっても日本に対しては10パーセントの関税をかけると言っています。もしかけられると日本の製品が売れなくなる
・トランプさんをずっと見てきて思うのですが、とにかく“ディール”。取引が好きなんです。ビジネスの取引と一緒なので、中国に対してがつんと言っているところがある。実際にアメリカの商務省の幹部に聞いても、『本当にこれをやるかどうかというよりは、習近平氏に対してがつんと言ってやる。交渉を有利に進めるためだ』と言っていますので、読めない点はかなりあると思います
・もう一つ言うと、在日米軍の駐留経費の負担をもっと出せと言ってくる。全部飲んでしまうと4~5倍とか。大変な負担になると思います。
・十分ありえます。1期目の時もなんとか安倍政権が、いかに我々がお金を払っているかとうまく説得して、駐留経費が上がらなかったんです。ひょっとしたら2期目の時には要求してくるだろう。もっと払わなきゃいけないことになり得ますね
・トランプ政権の側近の人間に聞いたら、『今(防衛費が)2パーセントで喜んでいるけど、そんなもんじゃない』と。『当然3パーセントだから、アメリカ並みにしてくれないと困る』とは言っています」
石破総理は相当厳しい”ディール”を持ちかけられそうです。

けれども、それ以前の問題があります。それは石破総理がトランプ大統領にとって「ディール」するに足る相手かどうか、という点です。

取引とは要するに「約束の履行」です。約したことを守れなければ、取引相手になりえません。

味方を後ろから撃ち、言ったことをコロコロ変える石破総理が、トランプ大統領との約束事を守れるのか。もし、約束を守れない男だとトランプ大統領から見限られてしまったら、相手にされなくなるのではないかと思います。

先述した白鳥教授も「国内の支持の低い首脳は、『ディール』では足元を見られる。しっかりとした交渉相手として見られない可能性もある」と指摘していますけれども、石破総理の弱点はここにあります。

それでも、安倍総理のような人たらし、人間的魅力でもあれば、まだ多少なりともカバーできたかもしれません。けれども、先の総選挙では、石破総理が応援演説に入った候補は13勝63敗。二連ポスターも避けられたという話も聞きます。こちらも絶望的です。

国内支持もない裏切者。これでマトモな交渉ができるとは思えません。

石破総理は自分で撒いた種というか、自らの因果に苦しむことになるのではないかと思いますね。




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