

1.自民党税制調査会
11月6日、自民党税制調査会は非公式の幹部会合を開きました。これまで自民党税制調査会は、10人弱の「インナー」と呼ばれる最高幹部が非公開の場で方向性を決めてきたのですけれども、今回は自公の過半数割れを受けて、野党協力が必要になってきたことから、可視化されつつあります。
今回の焦点はなんといっても、税控除の見直しです。
国民民主党は103万円の壁対策で、基礎控除などを103万円から178万円に引き上げることを求めています。自民党税制調査会内では、国民民主党案では巨額の税収減になることから、修正を求める意見が多いとみられ、また、103万円の壁対策だけでなく、6つある年収の壁全体を超長期的に見直していく議論を並行して行うことを主張する声もあがっているといわれています。
自民党は国民民主と政策協議の実施では一致していて、どこまで折り合えるかが注目されており、協議は公明党とも進める方針で、12月中に税制改正の大綱を取りまとめたい考えとしています。
19日、自民、公明、国民民主の3党は、政府が月内の決定を目指す総合経済対策に、国民民主が訴える「年収103万円の壁」見直しとガソリン減税の方向性を明記することで調整に入ったと報じられています。3党の政調会長会談後、国民民主の浜口誠氏が記者団に「そういう姿勢が示された」と明らかにしました。
会談には浜口氏のほか、自民の小野寺五典氏や公明の岡本三成氏が出席。3氏は20日に改めて協議し、経済対策の文言を詰めるとし、更にこれとは別に3党の税調会長会談も行われる予定としています。
103万円の壁見直しは企業からも歓迎されています。
11月14日、帝国データバンクは103万円の壁の引き上げについての企業アンケートの結果を発表しました。調査は2024年11月8日~12日、1,691社を対象にインターネットで行われました。
調査結果のサマリは次の通りです。
日本の社会全体にとって「103万円の壁」引き上げをどう考えるか尋ねたところ、引き上げに「賛成」が67.8%、「反対」は3.9%だった。他方、103万円の壁自体を「撤廃すべき」は21.9%だった。「賛成」と「撤廃すべき」を合わせた9割の企業が103万円の壁について見直しを求めている。企業コメントを見ても、103万円の壁引き上げ賛成や撤廃が大部分を占めています。
企業からは「103万円の壁を意識するパートの方が多く、引き上げれば働き控えが解消される」(飲食店)、「最低賃金の引き上げが加速するなか、制度の見直しは避けられない」(運輸・倉庫)、「減税効果により消費活動が活発化する」(不動産)と、働き控えの解消に一定の効果を果たすと考えるほか、減税効果によって手取り収入が増えることに期待する企業が多かった。
一方で、引き上げには賛成ながらも、「社会保険料の106万円・130万円の壁もあるので、所得税のみの見直しでは働き控えはそれほど変わらない」(情報サービス)と社会保険料も含めた制度見直しの必要性や、財源をどう確保するかについての声も聞かれた。
また、「撤廃すべき」と回答した企業からは「働いても税金を払うことが損になるとの世間の風潮を感じる。103万円の壁は制度が古く、撤廃し、働いたら金額に関わらず応分の税を徴収する文化が最も公平」(情報サービス)と、複雑な現行の制度刷新や公平性を求める声も聞かれた。

2.悪夢の大連立
11月19日、産経新聞は「「悪夢の大連立」とならぬよう 石破首相と野田代表は考えが近い? 自民再建の王道とは」という論説記事を掲載しました。
件の記事の概要は次の通りです。
衆院選で立憲民主党は、政治とカネの問題の影響で自民党や石破茂政権への批判票の受け皿になった。だが、日本維新の会や国民民主党の議席を合算しても過半数には届かなかった。これは有権者が立民を政権政党として認めなかったことを意味するのではないか。記事では、「令和7年度予算案成立と引き換えに内閣退陣」とのシナリオが飛び交っているとしながらも、自民立憲の大連立の可能性について触れています。
選挙前、立民の野田佳彦代表は「政権を取れる千載一遇のチャンス」と語っていた。確かにこれほどの逆風が自民やその政権に吹き荒れることは、そうない。それでも政権を取れなかった。この事実は重い。
一方の自民はいつまでも大敗に打ちひしがれている場合ではない。来夏の参院選でも与党が過半数割れした際には、政治はより不安定なものになろう。政界の混乱に気を取られ、外交安全保障に本腰を入れられなかった場合、ほくそ笑むのは中国、ロシア、北朝鮮といった専制主義国家だ。
衆院選の責任を取らずに居座り、選択的夫婦別姓など国の基本政策で発言が揺れ、言葉に信頼を置けない。そんな首相をいただく国の威信は低下しよう。
政権を取れなかった立民と大敗した自民。両党は一体どこに向かうのか。
令和7年度予算案成立と引き換えに内閣退陣とのシナリオが飛び交っている。
しかし、石破首相は近著『保守政治家 わが政策、わが天命』で「私などが首相になるようなことがあるなら、それは自民党や日本国が大きく行き詰まったときなのではないか。しかもそれは天が決めること。天命が降りない限り、それはありえないことでしょう」と記している。首相は「天命」に逆らってまで、辞任することは当面なかろう。
躍進した国民民主党は、「年収103万円の壁」の解消に向け、強気の姿勢を崩していない。自民は財務省がはじき出した税収減の試算を盾に、全面的な受け入れに抵抗している。
国民民主と案件ごとに神経戦を繰り広げるのなら、いっそのこと財政規律派として知られ、財務省に近いとされる野田氏と手を結んだほうが政権は運営しやすい。石破首相がそう考えても不思議ではない。つまりは大連立である。
「衆参ねじれ国会」となっていた平成19年、当時の福田康夫首相と民主党の小沢一郎代表は大連立で一旦は合意したが、小沢氏が党に持ち帰ると反対の大合唱に遭い、実現しなかった。当時の民主内には「政権交代するかもしれないのに、なぜ自民と連立を組む必要があるのか」との声が大勢を占めていた。
今は状況が異なる。立民にとって自民と連立を組み、求心力を失っている石破首相から主導権を奪うのは悪くない選択肢だ。
そもそも首相と野田氏は「考えが近い」との見方が永田町にある。野田氏は選択的夫婦別姓の推進派だ。首相は国会で「家族の在り方の根幹に関わる問題」として早期導入に慎重な姿勢をにじませたが、かつて前向きな姿勢を示していた。
野田氏はまた、女系天皇容認論者といわれている。首相は産経新聞のインタビューに「男系男子で継承されるべきだ」と述べたが、以前はBSフジ番組で「女系を完璧に否定していいのか」と語っていた。
国の基本を崩す「悪夢の大連立」とならぬよう、自民は新総裁の下、保守の精神に立ち返り、岩盤保守層を取り戻すしかない。これが党再建の王道だ。
もっとも、経済評論家の渡邉哲也氏は、11月10日に「立憲との大連立 可能性がゼロとは言わないが、考えられない話です。永田町でそんな話は出ていません。無責任に吹聴している人がいるようですが、、、選挙になった場合、ほとんどの議員が選挙区がかぶる相手と連立できるわけがない。それならば、国民民主や維新と組んだ方が良いわけです」と全否定していることを考えると、現実には「令和7年度予算案成立と引き換えに内閣退陣」をメインシナリオとしながらも、サブとして大連立の可能性が囁かれているという程度なのかもしれません。
立憲との大連立 可能性がゼロとは言わないが、考えられない話です。永田町でそんな話は出ていません。無責任に吹聴している人がいるようですが、、、選挙になった場合、ほとんどの議員が選挙区がかぶる相手と連立できるわけがない。それならば、国民民主や維新と組んだ方が良いわけです。
— 渡邉哲也 (@daitojimari) November 9, 2024
3.自民と立憲を近づけたい人達
ではなぜ、大連立という「考えられない」話が飛び交うのか。
一つには、石破自民と野田立憲の政策が近いこと、予算委員長のポストを立憲に譲り渡したこと。そして、自公が取り込みを狙う国民民主が減税政策を曲げないと宣言するやいなや、玉木代表の女性スキャンダルが飛び出すなど、国民民主を排除して、自民と立憲を近づけたいかのような動きが見えるからだと思います。
これについて、ジャーナリストの山口敬之氏は11月13日、自身の動画チャンネルで次のように述べています。
・玉木さんの女性スキャンダル。スクープの写真を取った7月に出なかったんですか。どうして今日まで4ヶ月寝かされてたんですか山口氏いわく、アメリカのトランプ対反トランプの戦いが日本でも起こっているというのですね。いわば代理戦争です。
・このまま行って玉木さんが連立に参画してたら103万円のは176万まで上がってたわけです
・それをどうしても封じ込めたいのは財務省だったわけです
・これが全部が繋がってる可能性がある。恒久減税につながることはあらゆる手段を持って阻止しようとする人たちが玉木さんを刺したんじゃないかということになるんですね
・財務省に盾をつくとこういうことになって消されてしまう
・もう1つ残る疑問というのは、なんで石破政権は何のメリットもない自分の首を閉める政権運営をするのか。
・森山幹事長は石破茂を守る気は全くない。もう脳死状態の人をそのまま縛って海に投げ込んだのが、予算委員長と法務委員長の現状なんです
・結果として選択的夫婦別姓がこのまま行ったら成立しちゃう。その背後にいるのは財務省がやってんだから
・財務省がなんで選択的夫婦別姓を通そうとしてるんですか。これに関する答えが海の向こうにある
・トランプ大統領がLGBT政策、ハリス副大統領が行ってた政策に対して、もう性別は2つだけだと。女子スポーツから男子を締め出すという風に主張していたというニュースがありまして。
・もう1つ非常に興味深いのはトランプ大統領はFRB、アメリカの連邦準備局、日本でいう日本銀行、要するにアメリカのドルを司って発行してる組織、中央銀行ですねこれについてトランプさんは解体的見直しをすると言ってるんです
・トランプさんが一方でアメリカの民主党がやってる過激なジェンダー政策を元に戻そう。LGBTのような過激なものは認めない。他方同じトランプさんが中央銀行であるFRBの解体的見直しと言った。これセットなんですね
・ということは今回国会で首班指名があって、立憲民主党の財務省の広報官である野田義彦立憲民党代表が予算委員長と法務委員長をとって、選択的夫婦別姓をやりますと言った同じ日に恒久減税につながる103万円を176万にしましょうとかトリガー条項を凍結を解除しましょうと主張して大躍進した玉木さんがなぜかこの時期にスキャンダルで大きく力を削がれた
・これはトランプさんがLGBT法は巻き戻します、FRBを解体的見直しをしますと言ってるのと同じことが日本で11月に起った
・トランプさんの敵、反トランプの人たちのいわゆる橋頭保っていうんですか。その牙城のうちの1つがFRBだからなんです
・向こう側が今、死力を尽くしてできることを仕掛けてきてるんだと思ってください
・というのは来年の1月20日にはトランプ大統領が発足して、FRBも解体されるかもしれない。そしてトランスジェンダリズムやめましょう。日本で起きてるの同じ左翼の先導にノーという政権が生まれちゃう。
・その過激なことを進めていたのが実は通貨発行を司る中央銀行なんだと。FRB、日本で言えば財務省日銀だということなんです
・その不透明な通貨発行権、財政規律主義者、増税主義者に石破、森山、野田佳彦はもう完全に牛耳られてる
・でもその人たちが今最後の悪がきを世界ではしてる。だからトランプさんが大統領になる1月20日の前にできる全てのことをやろうとしてるわけです
・実は11月7日に玉木さんはアメリカのラームエマニエル大使に呼び出されてるんです。
・一体どんな話をしたか。玉木さんは自分の自論を曲げずに、その選挙でこういうことを言って戦った以上、例えば103万円のことトリガー条項のことはそのままやるという風にまある種突っぱねたというか、自分の選挙で行ってきたそのまま述べたと言われてるんです
・エマニュエルにとっては面白くないことですよね
・国民民主党の玉木さんに会ったけど突っぱねたと言われてるんです。
・その直後に玉木さんのスキャンダルが出てきた。この因果関係は分かりません。7日にあった後11日に出たということだけは事実です。なぜか7月に撮られた写真が7月に完結してる取材がですよ。
・日本というのは、結局財務省・国税庁・特装部こういう人たちが様々な政治家のスキャンダルを引き出しに入れておいて、都合の悪いことを言い出したやつは法律に違反してたら特装部が逮捕しちゃう。法に違反してないんだったら調べてるうちに見つかったこれスキャンダルをマスコミに書かせるそうやって殺してきたわけです
・日本というのは非常に不透明なことが不透明な順番で恐喝・脅迫・恫喝・殺害そういうことによって選挙で選ばれてない国外勢力に牛耳られている植民地なんだということをもうこの際はっきり申し上げるしかないですね
4.トランプ政権は石破内閣打倒を仕掛けてくる
昨日のエントリーで、石破総理がアメリカのトランプ次期大統領との早期面会を断念したことを紹介しましたけれども、これについて、元産経新聞記者の三枝玄太郎氏は自身の動画で解説しています。
その内容について、解説動画の説明欄から引用すると次の通りです。
朝日新聞が15日朝刊で「習近平氏と『戦略的互恵関係』確認へ 首相、15日に日中会談」と1面トップで報じました。ところが、その脇に「トランプ氏面会『困難な情勢に』」というスクープ記事が「ベタ記事」で掲載されているのです。この説明の通りだとすると、石破総理の外交センスにかなり危ういものを感じてしまいます。石破総理周辺でこの辺りをアドバイスする人はいないのでしょうか?
ベタ記事とは、1段見出しの小さな記事のことです。通常は発表モノで、しかもあまり重要ではないものを掲載するいわば「埋め草」記事です。
ところが、読んでみると、
石破茂首相が今回の南米外遊後の日本への帰路の途中で模索しているトランプ次期米大統領との面会について、複数の日本政府関係者が朝日新聞の取材に『実現が困難な情勢になっている』との見通しを語った。
首相はG20サミット出席後、米国に立ち寄り、トランプ氏の自宅のあるフロリダ州などで同氏と面会する方向で調整していた。しかし、政府関係者によると、トランプ氏は新政権の人事の調整を本格化させており、日程の調整が難航しているという。
立派なスクープではありませんか? しかし、朝日はベタ。習近平国家主席との会談の予定を1面トップにしました。しかし、戦略的互恵関係とは、一度は第一次安倍政権時に提唱したものの、中国のあまりに東シナ海、南シナ海での傍若無人な侵略行為によって言われなくなりました。これを岸田政権になって復活させたものです。しかし、「戦略的互恵関係って意味が分からん」と批判を受けたものであって、これでは中国にもアメリカにも良い顔をしているようにアメリカ側に捉えられかねません。
トランプ陣営は、石破内閣が親中政権であるという情報を間違いなく入手しているでしょう。それをわざわざ裏付ける日中会談で「戦略的互恵関係を強調、確認」って、トランプに喧嘩を売っているのでしょうか?
僕はロッキード事件にアメリカの陰謀の影があったように、アメリカのトランプ政権が、石破内閣の打倒を仕掛けてくるような気すらしてきました。
5.麻生が温存させた高市カード
三枝氏は「トランプ政権が、石破内閣の打倒を仕掛けてくるのではないか」と述べていますけれども、もし前述の山口敬之氏が指摘するように、トランプ対反トランプの代理戦争が日本の政界を舞台に行われているのだとしたら、トランプ政権が、石破内閣の打倒を仕掛けてくることも考えられなくもありません。
筆者個人的には、来年3月の来年度予算成立まで、待って、それでも石破政権が続くようなら、相手をして考えてもいいか程度扱いでしばらく放置するのではないかと思っていますけれども、もしも三枝氏のいうように、石破内閣の打倒を仕掛けてくるとしたら何が考えられるのか。
ロッキード事件のように、またぞろ裏金だなんだで引きずり下ろすことも考えられなくもありませんけれども、石破内閣は先の解散時に「裏金隠し解散ではないか」と詰め寄られても「判断国民に委ねたい」と逃げ、その挙句に与党過半数割れ、自身で両杯ラインを与党過半数とし、その結果、国民からノーと判断を下されても尚、総理に居座る御仁ですからね。
7日の自民党両院議員懇談会で散々に批判されても辞任を口にしませんでした。ちょっとやそっとの仕掛けでは辞任しないのではないかと思えてきます。なんとなれば首班指名されず、法の下に引きずり降ろされるくらいしかないのではないかとさえ。
仮に、トランプ次期大統領が来年就任した後も石破総理が全然会談できないとなると流石に国内からの批判の声も高まることは間違いありません。
もし、そのタイミングで、トランプ大統領が麻生太郎氏を招き、麻生氏が高市氏を連れて紹介するようなことになったらどうなるか。日本国内はもとより、世界も日本の次期総理として高市氏を認識することになるでしょう。
これが一番簡単な仕掛けのようにも見えてきます。
その高市氏は、執行部に対し非難轟轟だった7日の自民党両院議員懇談会には「何故か」出席していません。
高市氏は「苦労して予約できた人間ドックの日と重なった」とツイートしていますけれども、筆者はこれは麻生氏の手引きでわざと欠席したのではないかと訝っています。
というのも、両院議員懇談会に出席すれば、自身の立場を明確にしなければならなくなるからです。
今の高市氏の影響力を考えれば、もし石破執行部を批判すれば、自民を割って出るのか、すわ高市新党か、余計な詮索を生まないとは限りませんし、さりとて石破執行部を庇ってしまうと、国民の期待を裏切ることになってしまいます。
つまり、どっちにも味方しないことでフリーの立場を確保したのではないか、ということです。
高市氏は9日、特別国会での首相指名選挙について「自民が分裂していたら立憲民主党を中心とする内閣ができるだけだ」とツイートして、党の結束を呼びかけていますけれども、裏を返せば、自民党が割れるかもしれない危機にあると見ることだってできます。
高市氏、あるいはそのバックにいると思われる麻生氏は、党の情勢を睨みながら、高市カードを大切に温存しているのではないかと思いますね。
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