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1.政府効率化省は何ができるのか
11月12日、アメリカのトランプ大統領は、大手テスラのイーロン・マスクCEOとバイオテクノロジー企業の元幹部である実業家ビベック・ラマスワミ氏が、「政府効率化省(DOGE:Department of Government Efficiency)」を率いることになると発表しました。
これまで政府効率化省(DOGE)というのは存在していませんでした。DOGEという名称はマスク氏の発案によるもので、自身が支持する仮想通貨のドージコイン(Doge Coin)からとったものなのだそうです。
これについて15日、ブルームバーグ紙が「マスク氏発案の米「政府効率化省」は何ができるのか」という記事を掲載しています。
件の記事の概要は次の通りです。
・トランプ次期米大統領は連邦政府の官僚制度を解体し、少なくとも一つの省庁の廃止を望んでいる。この実現に向け新設する機関が「政府効率化省(DOGE)」だ。この記事で筆者が注目したのは、政府効率化省という名こそついているものの、実は2026年7月まで限定かつ政府外で運営される機関だということです。省ではなく、かつ期間限定。どういう経緯でそうなったのかは分かりませんけれども2年半くらいで、2兆ドルの歳出削減をするというのですから、相当ドラスティックな改革をするということが予想されます。
・その野望は大きく、2兆ドル(約313兆円)の歳出削減を見込む。よりスリムで効率的な政府という包括的な目標は、民主・共和を問わず歴代の多くの大統領を悩ませてきたが、マスク氏が主導する取り組みも、これまでの赤字削減に向けた努力を頓挫させたのと同じ政治的な反対に直面する可能性が高い。
・この効率化に向けた取り組みはマスク氏に加え、共和党の大統領候補指名をトランプ氏と争った起業家ビベック・ラマスワミ氏の2人が主導する。
・政府効率化省とは、これが「省」ではないということだ。なぜなら省は恒久的なものであり、議会によってのみ設立(または廃止)が可能だからだ。トランプ氏は、このグループは政府外で運営され、2026年7月までに解散すると述べている。
・どのように運営されるのかは不明だ。考えられる仕組みの一つは1972年の連邦諮問委員会法(FACA)によるもので、同法では大統領が官民の参加者で構成される委員会から意見を求めることが認められている。トランプ氏は大統領令によってこのような委員会を設置することが可能だ。その場合、同委員会は約1000ある連邦諮問委の一つになる可能性がある。昨年、連邦諮問委にかかった費用は総額3億9900万ドルだった。
・マスク氏とラマスワミ氏が連邦諮問委に参加すれば、いわゆる特別政府職員となる。このポジションは無給な上で連邦政府機関またはホワイトハウスで最長130日間働くことが認められる。マスク氏およびバイオテクノロジー企業の元幹部であるラマスワミ氏にとって考慮すべき重要事項の一つは、このようなポジションでは資産を公表したり処分したりする必要がないことだ。
・とは言うものの、マスク、ラマスワミ両氏は依然として連邦倫理法の対象で、個人的に影響が及ぶ議論や決定から身を引くことが求められる。マスク氏の米宇宙開発企業スペースXだけでも150億ドル余りの連邦政府との契約を抱えており、事態が複雑化する可能性がある。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)の調査によると、マスク氏の企業は少なくとも20の連邦規制当局の標的になっている。
・トランプ氏は、このグループが「政府外から助言と指針を提供し、ホワイトハウスおよび行政管理予算局(OMB)と連携して大規模な構造改革を主導し、これまでにない政府への起業家的アプローチを生み出す」と指摘。このイニシアチブを「現代の『マンハッタン計画』」と称した。
・マスク氏は2兆ドルの歳出削減を目標に掲げているが、それが年間の削減額なのか、10年間の予算枠での話なのかは不明。トランプ氏は発表の中で「われわれは、年間6兆5000億ドルの政府支出全体に存在する膨大な無駄と不正を排除する」と年間の数字を使用しており、削減額が前者であることを示唆している。
・なぜこれまでこのようなことが行われなかったのか。実施されたことはある。ただこのような形でなかっただけだ。ワシントンには、実施されなかった歳出削減計画が山積している。
・2010年のシンプソン・ボウルズ委員会は、社会保障における受給開始年齢の引き上げ、医療費の上限設定、税制優遇措置の廃止などを通じて、約10年間で4兆ドルの削減を提案したが、議会が行動を起こさなかった。その後、スーパー委員会と呼ばれる新たな議会委員会が11年にオバマ大統領(当時)と共和党の「グランドバーゲン(包括的な妥結)」を模索したが、失敗に終わった。
・共和党が予算の見直しを迫るために利用しようとした政府閉鎖や債務上限を巡る複数回にわたる対立は短期的な解決策に終わった。そしてトランプ氏自身も16年に「かなり早い時期に」財政均衡を実現すると確約したが、21年の退任時には米国の債務は過去最高水準に達していた。
・なぜそれほど難しいのか。深刻な財政赤字の削減には、第2次世界大戦直後以来見られなかったレベルの緊縮財政が必要であり、おそらく社会保障、メディケア(高齢者・障害者向け医療保険制度)、メディケイド(低所得者向け医療保険)、退役軍人への給付金といった人気プログラムの大幅な削減が含まれる可能性が高い。
・何が切り捨てられるのか。トランプ氏は教育省を廃止し、政策と資金調達の管理を州に戻すと約束した。大統領選直後にマスク氏と会談したアイサ下院議員(共和)によると、マスク氏はメディケアに関する不正の発見と撲滅、公有地の売却拡大に特に関心を示したという。
・無駄、不正、乱用について、トランプ氏は、この委員会は「膨大な無駄と不正」を対象にすると述べた。しかし「無駄、不正、乱用」の削減は保守派の政治家が長年唱えてきたスローガンであり、その実現に向けた取り組みは、これまで結果がまちまちだった。
・米政府監査院(GAO)の推定によると、不正によって連邦政府機関から失われた金額は毎年2330億-5210億ドルに上るという。最大の要因はトランプ氏が20年に署名して成立した新型コロナウイルス対策支出パッケージだ。AP通信が23年に実施した調査では、4兆2000億ドルのパンデミック救済金のうち10%が無駄に使用されていたことが分かっている。
・GAOは11年以降、連邦政府内で重複するプログラムの縮小や廃止、およびコスト削減に向けた2018件の勧告を含む14件の報告書を議会に提出。議会はこれらのうち約3分の2を採用し、約6675億ドルを削減した。
・連邦法では諮問委の会議は公開が義務付けられており、マスク氏自身も「最大限の透明性を確保するために、あらゆる行動をオンラインで公開する」と言明している。また、ゲームのような形で国民が情報を入手できる可能性も示唆している。
・トランプ氏はマスク氏起用の承認を議会に求める必要はないが、議会は憲法の下で予算編成権を握っており、いかなる歳出削減にも議会の承認が必要となる。
・しかし、トランプ氏は回避策があると考えている。1974年に制定された、現代の連邦予算審議プロセスの基礎をなす「議会予算・執行留保規制法」の重要な条項に異議を唱える方法だ。同法は議会が撤回を決定しない限り、大統領は割り当てられた予算を執行しなければならないと定めている。これに対し、トランプ氏は昨年「執行留保を復活させることでディープステート(闇の政府)を壊滅させ、問題を解決し、戦争を挑発する政治家を飢えさせる重要な手段を手に入れることができる」とし、「執行留保によってわれわれは容易に資金を断つことが可能だ」とコメントしている。
また、この手の歳出削減を実施しようとしたものの、実施されなかった案が山積みになっていること、「無駄、不正、乱用」というキーワードが出ていることを考えると、今回の政府効率化省の取り組みに対する反発は相当激しいものになるだろうと思われることです。
2.政府効率化省の課題
アメリカの政府効率化省について、11月22日、野村総研エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、政府効率化省(DOGE)の課題として、マスク氏の利益相反問題と、連邦予算の大幅削減がもたらす経済への悪影響の2つの問題をレポートしています。
件のレポートから該当部分を引用すると次の通りです。
DOGEが抱える大きな問題の一つは、マスク氏の利益相反問題だ。DOGEを通じて自身が担う企業に都合の良い政府組織の変更、行政執行、そして規制緩和が進められるのではないかという疑いの目を向けられることは必至だろう。その兆候は既に見られている。トランプ次期政権は、自動運転の規制緩和を検討していると報じられているが、それが実現すれば、マスク氏がCEOを務めるテスラには強い追い風となる。木内氏は、このレポートで、マスク氏はツイッター(現X)を買収後、ツイッターの事業を継続しながら最終的に従業員の約80%を削減する大リストラを行った実績があることと、マスク氏とラマスワミ氏が示した連邦職員の在宅勤務制度を廃止し、週5日の出勤を義務付ける案について、それに反発して自主退職が急増することを見越した一種のリストラ策であると指摘しています。
マスク氏が経営する企業では、米宇宙開発企業スペースXだけでも150億ドル余りの連邦政府との契約を抱えており、また、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)の調査によると、マスク氏の企業は少なくとも20の連邦規制当局の標的になっているという。
そして第2の問題は、連邦予算の大幅削減がもたらす経済への悪影響である。トランプ氏はDOGEの役割について、「われわれは、年間6兆5000億ドルの政府支出全体に存在する膨大な無駄と不正を排除する」と説明している。他方、マスク氏は、年間5,000億ドルの無駄な予算の削減を計画している。これが実現される場合、その規模は年間名目GDPの1.7%にも達する計算だ。米国経済を相当悪化させる可能性があるだろう。
トランプ氏は教育省を廃止し、政策と資金調達の管理を州に戻すと約束した。マスク氏はメディケアに関する不正の発見と撲滅、公有地の売却拡大に特に関心を持っているとされる。ラマスワミ氏は、「複数の特定の機関が完全に廃止されるとみている」と述べており、連邦政府の肥大化した分野で規模の縮小、大量の人員削減を行う考えを示している。その対象となる組織として同氏は、国防総省、教育省、そして医療を挙げた。
ただし、大幅な予算削減は、議会で容易に承認されない可能性がある。1974年に制定された「議会予算・執行留保規制法」は、議会が撤回を決定しない限り、大統領は割り当てられた予算を執行しなければならないと定めている。他方、大統領が執行を留保する規定もある。この規定を用いて、議会が可決した予算の執行を大統領が留保することで、大統領が議会の承認なしに大幅な歳出削減を行うことができる可能性がある。
これらを見ると、トランプ次期大統領が大々的に打ち出した政府効率化省の行く道は相当な茨の道であることが窺えます。
3.コロナ予備費の九割が使途不明
翻って日本はどうかというと、「無駄、不正、乱用」なのかどうかすら分からない予算がありました。「コロナ予備費」です。
2022年4月22日 、日経新聞は「コロナ予備費12兆円、使途9割追えず 透明性課題」という記事を掲載しています。
件の記事を引用すると次の通りです。この記事に対して、識者は次のようなコメントを寄せています。
政府が新型コロナウイルス対応へ用意した「コロナ予備費」と呼ばれる予算の使い方の不透明感がぬぐえない。国会に使い道を報告した12兆円余りを日本経済新聞が分析すると、最終的な用途を正確に特定できたのは6.5%の8千億円強にとどまった。9割以上は具体的にどう使われたか追いきれない。国会審議を経ず、巨費をずさんに扱う実態が見えてきた。
12兆円余りをおおまかに分類すると、医療・検疫体制確保向けの4兆円に次いで多いのが地方創生臨時交付金として地方に配られた3.8兆円だ。同交付金をめぐってはコロナ問題とこじつけて公用車や遊具を購入するなど、疑問視される事例もある。自治体が予備費を何に使ったかまで特定するのは難しい。
政府は4月下旬にまとめるガソリン高などの物価高対策に、2022年度予算のコロナ予備費(5兆円)の一部を充てる構えだ。仮にコロナ問題と関係の薄いテーマにコロナ予備費が使われれば、予備費の本来の趣旨に反する恐れが強い。
通常、政府は年金の支給など特定の政策を目的にした歳出を細かく積み上げて予算案をつくり、国会審議を経て出費できるようになる。その例外が予備費だ。金額だけあらかじめ計上しておき、使い道は政府の閣議だけで決められる。
政府は最近は年5000億円程度の予備費を準備し、災害など不測の事態に備えることが多い。だが、コロナが広がった20年春以降の20年度補正予算で9.65兆円という異例の規模の予備費をコロナ向けと銘打って創設。21年度と22年度の当初予算と合わせ3年で総額20兆円弱に達した。
そのうち12兆3077億円は実際に執行し、国会に使い道を報告した。日本経済新聞は国会提出資料や省庁への取材で何に使われたか詳細に解明しようと試みた。各省庁や自治体が予備費を具体的に何に使ったか、最後まで確認できるものは3つの政策項目、計8013億円だけだった。
予備費の最終的な使い道がつかみにくいのは、予備費を割り振られた省庁が当初予算や補正予算などすでにあるお金と予備費を混ぜて管理するケースが多いからだ。会計検査院でさえコロナ関連をうたう巨額の予算がどう使われたかの全体図はつかめていない。
例えば、厚生労働省がワクチン接種の体制づくりへ自治体に配る補助金だ。ほかの経費と分別管理しておらず、予備費がどの自治体に行ったかまでは分からない。ワクチン購入費のように「企業との秘密保持契約の関係で公表できない」(厚労省)項目もある。
予備費3119億円を振り向けた観光需要喚起策「Go To トラベル」は感染拡大でストップした。追加投入した予備費を上回る額が使われず、約8300億円が滞留しているとみられる。
コロナ禍のような危機に際し、柔軟で機動的に使える予備費にも意義はある。ただ、国内総生産(GDP)の数%に相当する巨大な予算を国会審議を経ずに執行できる仕組みは透明性に懸念が残る。乱暴な使い方をけん制する意味でも、外部から適切にチェックできる体制が本来必要だ。
一橋大の佐藤主光教授は「今の仕組みでは事業ごとの費用対効果だけでなく、コロナ予算の正確な規模すら検証できない」と指摘。歳出膨張への危機感が広がっても抑制する道具が欠けているとして「お金に色をつけて追跡するには、公会計のあり方自体を見直す必要がある」と話す。
野崎浩成/東洋大学 国際学部教授まったくもって御尤もなコメントです。財務省は、減税しようとする度に、財源ガーと叫びますけれども、このような使途不明金を明確にしてから言え、と言いたくなります。
こうした負担を背負う次世代を思えば、憤りしかありません。社会保障費などの非裁量的支出増加が余儀なくされる中で、テーマ的裁量的予算は各省庁の権益争奪の対象となる構図は避けられません。会計検査院や今回の日経の切込みなどに依存したガバナンスモデルには限界があります。
予算執行状況についての妥当性を、透明度の高いディスクロージャーを求めたうえで、(後年度の概算要求上の制約や、問題ある執行を実施した責任者の処遇など)必罰のルール付けを行うことで、相応の抑制効果が期待できると思います。
ロッシェル・カップ/ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング 社長
危機の際に政府が予算を緊急に動かす必要があるのは否定できません。それができなければ、急に発生する問題に対処するのは難しくなります。でありながら、政府は納税者に対する責任として、どのように予算を使っているのかを明確にする義務があります。それができていないのは非常に残念です。英語のslush fund(裏金)という言葉が頭に浮かびます。
鈴木亘/学習院大学経済学部 教授
予備費の使途が追えていないのはゆゆしき問題だが、6月の決算報告までにはもう少し時間がある。ここは決算に関わる参議院事務局(国)、総務省(地方)、会計検査院、内閣官房行革本部などに最後まで頑張ってもらうしかない。ただ、コロナ対策予算は、病床確保の補助金や雇用調整助成金など、使途は分かっていても、それが果たして適切に支出されたかどうかが分からないものも多い。例えば、病床確保については幽霊病床の存在が指摘されてきたが、厚労省は未だにきちんとした調査を行っていない。また、雇用調整助成金もゾンビ企業などに無駄に使われていないか調査すべきである。国会でコロナ関係予算を網羅的に評価する機会が必要ではないか。
11月21日、自民党は政治改革本部の総会を党本部で開き、派閥裏金事件を受けた政治資金規正法再改正に向け、基本的考え方をとりまとめ、党から党幹部らに支出される使途不明の「政策活動費」は廃止する一方で、外交関係など相手に配慮が必要な支出は非公開にできる仕組みを新たにつくるとしていますけれども、使途不明の「政策活動費」を廃止するのであれば、その前に使途不明の「予算」こそ廃止にすべきだと思います。どうにもピントがズレているように見えて仕方ありません。
4.ディープステートとは既得権益者
アメリカの「政府効率化省」の創設に関連して、嘉悦大の高橋洋一教授は、日本で同じく省庁の効率化の必要があるとする論説を20日付の夕刊フジのコラムに寄稿しています。
件の記事は次の通りです。
ドナルド・トランプ次期米大統領は、実業家のイーロン・マスク氏を「政府効率化省」のトップに起用すると発表した。マスク氏は連邦予算から2兆ドル(約310兆円)を削減できると話しているようだが、可能なのか。大幅な歳出削減を実施した場合、経済や社会にどのような影響があるのか。とうとう「ディープステート」という単語が表の記事に出てきました。これまでディープステートという言葉は俗にいう陰謀論とセットで語られることが多く、ネットでこそ口に上るものの、表のマスコミでは殆ど見かけることはありませんでした。それが表に出てくるようになったのは、高橋教授が述べているように、トランプ次期大統領が大統領選で「ディープステートを解体する」と公約に掲げたことが理由の一つなのかもしれません。
大統領選でトランプ氏は「ディープステート(闇の政府)を解体する」と公約に掲げた。かつてのトランプ氏の側近は、トランプ氏が問題視する中核は、国防総省、中央情報局(CIA)、司法省や連邦捜査局(FBI)などだとしている。
トランプ氏は、自身がやりたいことに反対し、いらだたせる政府機関があることを認識している。民間会社であれば、トップの下したことに反対するというのはまれなので、前回の大統領時代にはかなり面食らったことだろう。
マスク氏も同じような問題意識を持つといわれている。株取引や自動運転の技術などで、司法省、道路交通安全局、環境保護庁、連邦取引委員会などから調査されており、役所組織をよく思っていない。
トランプ氏やマスク氏は民間人だったので、役所組織への不信感があり、それが「ディープステート」との見方につながっているので、これを単純に陰謀論とするのは適当ではない。
筆者はかつてこの問題を議論した際、ある米国人から「日本には財務省という立派なディープステートがあるではないか」と言われたことがある。確かに、『安倍晋三回顧録』では、財務省が倒閣をもくろむ様子が描かれている。財務省出身の筆者としても安倍元首相がどのようなことをされたのか知っているので、その思いは理解できる。もしトランプ氏が回顧録を英訳で読めば、『日本にも財務省というディープステートがある』と言うかもしれない。
実際にトランプ政権が始動した際には、露骨に「ディープステート解体」とは言いにくいので、「行政改革」という形を取るだろう。これが、マスク氏が率いる「政府効率化省」の創設だ。民主主義への脅威ではなく、官僚機構への脅威であるとしている。
表向きは「歳出削減」というが、実際は組織改編や人員カットである。マスク氏は旧ツイッターを買収したときに、従業員の8割ほどをクビにした。それでも問題なくサービスを続けられたので、米国政府での行革も大量の人員リストラが予想される。その過程で、政権に忠誠を誓う職員に限定するのだろう。
これは伝統的な保守が志向する「小さな政府」路線でもある。この場合、減税が先行し、その後歳出カット、実際には人員削減になるだろう。
こうした措置は経済・社会に大きな影響があるといわれるが、意外と大したことはない。日本でも、小泉純一郎政権下で「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」が施行され、政策金融改革、特殊法人改革や数十兆円の「埋蔵金発掘」が行われたが、多くの人は、それらがあったことすら知らなかったのではないか。
ただ、ディープステート=闇の政府と言っても中々ピンとこないのですけれども、認知科学者の苫米地英人氏は11月9日に次のようにツイートしています。
ディープステートは、日本語では、「既得権益者」と訳せば、"陰謀論"と言われない。NHKさんとかにアドバイス。一応言っておくと、"陰謀論"は"論"だけど、"陰謀"はある。選挙で国民から選ばれてない既得権益者や、その代理人が、政治権力を持ったり、国民資産を使えるのは、国民の目や耳の届かない密室で決められる何らかの既得権益が守られているから。
選挙で選ばれていない"権力"だから、政権が変わっても"既得権益者"の権力は続く。
だから"陰謀"はある。
トランプ氏は、米国で、この"既得権益"を解体すると言って来たのであり、民主主義国として当然のことを言って来ただけ。そして、暗殺未遂。無関係でないと、今回の大統領選挙で多くの米有権者は認識したと感じる。
因みに、私も"既得権益"の被害経験は間違いなく複数回ある。最近もあった。もちろん、対策もして来ているから、こうしているのは、言うまでもない。
苫米地氏は、ディープステート=既得権益者と定義すればどうかと述べています。なるほど、これならすんなりと世間に浸透し、理解されるような気もします。
ディープステートは、日本語では、「既得権益者」と訳せば、"陰謀論"と言われない。NHKさんとかにアドバイス。一応言っておくと、"陰謀論"は"論"だけど、"陰謀"はある。選挙で国民から選ばれてない既得権益者や、その代理人が、政治権力を持ったり、国民資産を使えるのは、国民の目や耳の届かない密室… https://t.co/WduA7UjCYa
— 苫米地英人 (@DrTomabechi) November 9, 2024
5.一般会計の四倍もある特別会計
既得権益者といえば、日本にもそこら中にゴロゴロいるのではないかという印象がありますけれども、最近、ネットで「国民の敵」と見られだした存在があります。前述の高橋教授が日本版ディープステートだと知り合いのアメリカ人に指摘されたという「財務省」です。
先日政府与党と国民民主党との間で「103万円の壁」を見直すことで合意したと報じられていますけれども、この議論が外に出てきたおかげで、財務省の存在が広く国民に認知されたことは否定できません。
実際、税制と予算を担う財務省の公式Xが大変なことになっています。
10月の総選挙前までは財務省の投稿につくコメントは20件程度だったのが、選挙が終わってから爆増。どの投稿にも数百から数千のリプライがついています。もちろん、その多くが批判的なコメントです。
例えば、「『日本は借金だらけで財政破綻する。増税やむなし』と国民を脅して金を巻き上げ続けて来ましたね。財務省が創設されてから一度も好景気になっていないのをご存知ですか?」とか「減税を呑んだと見せて、厚労省、総務省等、他省庁と連携してステルス増税、中抜きもやめて下さいね。👀国民は見てますよ」などなどです。
財務省はFNNの取材に対し、「Xへのコメントや電話などによる様々なご意見が増えていることは承知しております。今後も財務省に対する理解や認識を深めていただけるような情報発信に努めてまいります」とコメントしていますけれども、今の態度のまま情報発信に努めたところで火に油だと思います。
コロナ予備費12兆円の9割が使途不明だと先述しましたけれども、ネットでは、特別会計に対する疑問を投げかける投稿もちらほら目にします。
令和6年度の特別会計予算はなんと436兆円。令和6年度一般会計の112兆円の4倍あります。一般会計より特別扱いの会計が4倍もあるということに違和感を感じるのが普通だと思います。ここで何をやっているのか。それこそ、アメリカの政府効率化省ではないですけれども、「無駄、不正、乱用」がないかチェックして効率化を進めていくべきではないかと思いますね。
特別会計って、
— ゆりかりん (@yurikalin) November 8, 2024
領収証のいらない官僚と巨大権力者共の
ポケットマネーです。
利権という強欲の果ての枠組みを通して、
遊んでて大金が転がり込む仕組み。 https://t.co/N59gdOXM8C pic.twitter.com/x3Pfp8jPWC
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