逮捕状が出されたネタニヤフと板挟みの西側諸国

今日はこの話題です。
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1.国際刑事裁判所がネタニヤフ首相などに逮捕状発行


11月21日、オランダのハーグにあるICC(国際刑事裁判所)は21日、イスラエルのネタニヤフ首相とギャラント前国防相、それに、イスラム組織ハマスの軍事部門、カッサム旅団のデイフ司令官の3人に逮捕状を出したことを明らかにしました。

イスラエルのネタニヤフ首相とギャラント前国防相については、手段として飢餓を利用し戦争犯罪などに関わった合理的な根拠があるとし、ハマスのデイフ司令官についてはイスラエル軍は死亡したと発表しているものの、ICCは死亡を判断できていないとしていて、イスラエルに対する襲撃で民間人を殺害し、人道に対する犯罪などに関わったとしました。

ICCがネタニヤフ首相とギャラント前国防相に対して示した容疑犯罪には次の通りです。
容疑犯罪

当裁判部は、関係期間中、イスラエルとパレスチナ間の国際武力紛争に関連する国際人道法が適用されたと信じるに足る十分な根拠があると認めた。これは、両国が1949年のジュネーブ条約の締約国であり、イスラエルがパレスチナの少なくとも一部を占領しているためである。当裁判部はまた、非国際武力紛争に関連する法がイスラエルとハマス間の戦闘に適用されると認定した。当裁判部は、ネタニヤフ氏とギャラント氏の疑惑の行為は、パレスチナの民間人、より具体的にはガザの民間人に対するイスラエル政府機関および軍隊の活動に関するものであると認定した。したがって、それは国際武力紛争の2当事者間の関係、ならびに占領国と占領地の住民との関係に関するものである。これらの理由により、戦争犯罪に関しては、当裁判部は国際武力紛争法に基づいて逮捕状を発行することが適切であると認定した。同法廷はまた、人道に対する罪の容疑がガザの民間人に対する広範かつ組織的な攻撃の一部であると認定した。

当裁判部は、両名が少なくとも2023年10月8日から2024年5月20日までの間に、ガザ地区の民間人から、食料、水、医薬品、医療用品、燃料、電気など、生存に不可欠な物を故意にかつ故意に奪ったと信じるに足る十分な根拠があると判断した。この判断は、ネタニヤフ氏とギャラント氏が国際人道法に違反して人道支援を妨害し、あらゆる手段を講じて救援を促進しなかったことに基づく。当裁判部は、両氏の行為が、人道支援組織がガザ地区の困窮する住民に食料やその他の必需品を提供する能力を阻害したと判断した。前述の制限は、電力供給の遮断や燃料供給の削減とともに、ガザ地区の水の供給や病院の医療提供能力にも深刻な影響を及ぼした。

法廷はまた、ガザへの人道支援の許可や増額の決定は条件付きであることが多いと指摘した。こうした決定は、国際人道法に基づくイスラエルの義務を果たすためでも、ガザの民間人が必要とする物資を十分に供給することを保証するためでもない。実際、こうした決定は国際社会の圧力や米国の要請に応じたものだった。いずれにせよ、人道支援の増額は住民が必需品にアクセスしやすくするのに十分ではなかった。

さらに、法廷は、人道支援活動へのアクセス制限について、明確な軍事上の必要性や国際人道法上のその他の正当性は認められないと信じるに足る十分な根拠があると判断した。ガザの人道状況について、国連安全保障理事会、国連事務総長、各国、政府および民間団体などから警告や訴えがあったにもかかわらず、最小限の人道支援しか認められなかった。この点について、法廷は、長期にわたる貧困と、必須物資と人道支援の停止を戦争の目的と結びつけたネタニヤフ首相の発言を考慮した。

したがって、法廷は、ネタニヤフ氏とギャラント氏が戦争手段としての飢餓という戦争犯罪について刑事責任を負うと信じるに足る十分な根拠があると判断した。

裁判部は、食糧、水、電気、燃料、および特定の医薬品の不足により、ガザの民間人の一部を破滅に導くような生活環境が作り出され、その結果、栄養失調や脱水症状により子供を含む民間人が死亡したと信じるに足る十分な根拠があると認定した。検察側が提出した2024年5月20日までの期間に関する資料に基づき、裁判部は、人道に対する罪である絶滅のすべての要素が満たされているとは判断できなかった。しかし、裁判部は、これらの犠牲者に関して人道に対する罪である殺人が行われたと信じる十分な根拠があると認定した。

さらに、2人は、ガザ地区への医療物資や医薬品、特に麻酔薬や麻酔器の流入を意図的に制限または阻止することで、治療を必要とする人々に非人道的な行為で多大な苦痛を与えた責任も負っている。医師らは、負傷者や子供を含む切断手術を麻酔なしで強制的に行わせられたほか、患者を鎮静化させるために不適切かつ危険な手段を使わざるを得ず、極度の苦痛と苦痛を与えた。これは、その他の非人道的行為による人道に対する罪に相当する。

また、裁判部は、上記の行為によりガザの民間人の大部分から生命や健康の権利を含む基本的権利が奪われ、政治的および/または国家的理由に基づいて当該住民が標的にされたと信じるに足る十分な根拠があると判断した。したがって、裁判部は迫害という人道に対する罪が犯されたと判断した。

最後に、法廷は、ネタニヤフ氏とギャラント氏が、ガザの民間人に対する攻撃を意図的に指揮した戦争犯罪について、文民上官として刑事責任を負うと信じるに足る十分な根拠があると評価した。この点で、法廷は、検察側が提出した資料では、民間人に対する攻撃として認められる事件は2件のみであると認定した。ネタニヤフ氏とギャラント氏は、犯罪の実行を防止または抑制する、あるいは管轄当局に問題を提起することを確実にする手段を有していたにもかかわらず、そうしなかったと信じるに足る十分な根拠がある。
現在ICC(国際刑事裁判所)には日本やパレスチナ暫定自治政府など124の国や地域が加盟し、所長は日本人の赤根智子氏がつとめています。加盟する国や地域は、ICCから逮捕状が出されている人物が域内にいた場合、身柄を拘束して裁判所に引き渡す義務を負っています。

ただ、ICCにはその義務の履行を強制する権限はなく、最終的には加盟各国の判断になることに加え、逮捕状が出された人物が実際に逮捕される可能性が低いのが実情で、更には、イスラエルやロシア、それにアメリカや中国などがICCに加盟してしていない国もあります。

実際、今年9月には、同じく逮捕状が出されているロシアのプーチン大統領がICC加盟国のモンゴルを訪問したのですけれども、モンゴル政府は逮捕しませんでした。モンゴルにとってロシアは重要な貿易相手国であることから、両国関係を重視したものとみられています。

それでも、逮捕状が出された人物は、ICC加盟国への渡航は難しくなることから、ネタニヤフ首相とガラント前国防相は今後、ICC加盟国への渡航を控えるようになるのではないかとみられています。


2.ナラティブが崩れたイスラエル


今回の逮捕状について、イスラエルでは、政治的立場を問わず、主立った立場の人が一様に激怒しています。

ICCの決定を受けて、イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領は、「正義と人類にとって暗い日」だとして、ICCは「民主主義と自由ではなく、テロと悪の側に立つことを選んだ」のだと非難。イスラエル首相府は、「反ユダヤ的な決定」だとして、「虚偽でばかげた容疑」をイスラエルは「全面的に拒絶する」と反発。ICCは「偏見にまみれた差別的な政治組織」だと批判しました。

また、イスラエル議会の外交・防衛委員会のユリ・エーデルシュタイン委員長は「イスラム主義者の利益に縛られた政治団体による、恥ずべき決定」だと述べ、イスラエルのギドン・サール外相は、ICCはその正当性を失ったと語っています。

これに対し、ハマスは、デイフ司令官への逮捕状が出されたことにはコメントせず、ICCの決定を歓迎しました。

ハマスは声明で、「シオニストの戦争犯罪人であるネタニヤフとガラントに裁きを受けさせるため、裁判所に協力し、ガザ地区の無防備な民間人のジェノサイドという犯罪を阻止するために直ちに取り組むよう、世界中のすべての国に求める」と発表。ガザの民間人も今回の発表を歓迎しているようです。

いずれにしても、今回の逮捕状発行が、イスラエルの国際的地位にとって、またネタニヤフ氏とガラント氏にとって大打撃となることは間違いありません。

なぜなら、ガザでの軍事作戦は善と悪の勢力同士の戦いなのだと、一貫して主張してきたイスラエルにとって、そのナラティブ(物語)が崩されたからです。


3.逮捕状では不十分だ


今回の逮捕状発行で周辺国はどういう反応を示しているか。

11月25日、イランの最高指導者ハメネイ師は、首都テヘランでの演説で、「ネタニヤフには逮捕状では不十分だ。死刑判決が出されなければならない」と主張したと国営メディアが伝えています。

また、ハメネイ師は、志願制の民兵組織「バシジ」メンバーらとの会合で、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザやレバノンで続けている住宅への爆撃は「勝利ではなく戦争犯罪だ……敵が勝利を収めることはない」と糾弾しています。

一方、G7はというと、25日、G7の外相がイタリアのフィウッジでG7会合を開始。イタリヤのタヤーニ外相は、G7は団結する必要があるとし、「この件について協議した。最終コミュニケに盛り込めるか検討している。合意に向けて取り組んでいる」と述べました。

翌26日、G7外相は共同声明を発表していますけれども、声明から中東情勢に触れた部分を引用すると次の通りです。
II. 中東情勢

我々は、2023年10月7日にハマスやその他のテロ組織がイスラエルに対して実行したテロ攻撃を断固として非難することを改めて表明する。人質をとる行為を含むこれらの残虐行為は容認できない。我々は引き続き、すべての人質の即時解放と、ガザでハマスが拘束している遺体の返還を要求している。我々は、中東全域で暴力が激化し、地域の安定を脅かし、民間人の生活を破壊する事態を深く懸念している。この地域でのさらなる激化から利益を得る国はないため、この破壊的な連鎖を直ちに止めることが急務である。

我々は、国連安保理決議2735(2024)の完全履行と、5月にバイデン大統領が進めた包括的合意への確固たる決意を堅持する。この計画は、ガザでの即時停戦、人質全員の解放、ガザ全域への人道支援の大幅かつ継続的な増加、危機の永続的な終結につながり、イスラエルとパレスチナの主権国家が平和と相互安全のもとで共存する二国家解決への道を確保することになる。我々は、すべての当事者に停戦を受け入れるよう促し、影響力のある国々に米国、エジプト、カタールによる調停努力の強化に協力するよう呼びかける。

ブルーライン沿いおよびその先での戦闘による犠牲者の増加に、私たちは警戒している。民間人の死傷者数が非常に多いこと、病院や医療センターを含む重要な民間インフラが破壊されていることに、私たちは深く懸念している。レバノン国内の国内避難民の増加は憂慮すべきものだ。ブルーラインの両側にいる避難民は、安全かつ安心して自宅に帰還できなければならない。レバノンのレバノン人とシリア難民がシリアやイラクに大量に避難していることを、私たちは引き続き懸念している。私たちは、いかなる状況においても国際人道法の尊重を強く求める。

我々は、イスラエルとヒズボラ間の即時停戦と国連安保理決議1701(2006)の完全実施に向けた進行中の交渉を支持する。今こそ外交的解決をまとめる時であり、我々はその点で展開されている努力を歓迎する。我々は、レバノン軍と国連レバノン暫定軍(UNIFIL)が果たした役割を改めて強調する。それぞれの責任を果たすために、両軍の態勢は強化されるべきである。この点で、我々はUNIFILに対する最近の攻撃と攻撃に深い懸念を表明する。これにより、平和維持軍数名が負傷し、施設が損壊した。我々はUNIFIL要員の安全に対するいかなる脅威も非難し、すべての関係者に対し、彼らの安全を確保し、任務を遂行できるようにする義務を履行するよう求める。

我々は、10月22日にペスカーラで開催されたG7開発大臣会合の枠組みで地域諸国や国際機関とともに開催された人道会議、および10月24日にパリで開催されたレバノン国民と主権を支援する国際会議において、地域における緊急の人道ニーズを評価し、対処し、民間人の苦しみを軽減するための調整を加速するための議論が行われたことを歓迎する。

我々はまた、援助物資の供給を促進するためにイタリアが国連食糧農業機関、世界食糧計画、国際赤十字・赤新月社と共同で立ち上げた「ガザへの食糧」イニシアティブの実施の進展を歓迎する。

ガザでの死者数は悲劇的で、増え続けている。ガザの状況は前例のないレベルの食糧不安をもたらし、特に北部の住民の多くに影響を与えている。すべての通過地点で人道支援のアクセスを確保することは優先事項であり、ガザ内で最も弱い立場にある人々に実際に援助が届けられるよう安全を確保することも優先事項だ。すべての当事者は、必要な衝突回避措置を実施することにより、援助の提供を促進し、人道支援従事者を保護しなければならない。最も必要としている人々への援助と必須サービスの提供が中断されないことが重要だ。私たちは、UNRWA がその任務を効果的に遂行することへの支持を表明し、この国連機関が果たす重要な役割を強調する。私たちは、イスラエル政府に対し、国際義務を遵守し、ガザ、ヨルダン川西岸、東エルサレムの民間人に切実に必要な基本的サービスの提供だけでなく、あらゆる形態の完全で迅速、安全で妨害のない人道支援を促進する責任を果たすよう強く求める。

我々は、ヨルダン川西岸の治安情勢の悪化に懸念を表明する。すべての当事者は、イスラエルの入植地拡大、入植地前哨地の合法化、ヨルダン川西岸の併合など、二国家解決の見通しを損なう可能性のある一方的な行動や分裂的な発言を控えなければならない。我々は、パレスチナ人に対する過激派入植者による暴力の増加を強く非難する。これはヨルダン川西岸の治安と安定を損ない、永続的な平和の見通しを脅かすものである。ヨルダン川西岸の経済的安定の維持は、地域の安全保障にとって極めて重要である。我々は、イスラエル当局に対し、差し押さえられた通関収入のすべてを解放し、ヨルダン川西岸の経済状況を悪化させる措置を撤回し、パレスチナ金融機関とのコルレス銀行関係を拡大するよう求める。

イスラエルは、自衛権を行使するにあたり、国際人道法を含むあらゆる状況において国際法上の義務を完全に遵守しなければならない。我々は国際人道法へのコミットメントを改めて表明し、それぞれの義務を遵守する。我々は、テロ集団ハマスとイスラエル国の間に同等性はあり得ないことを強調する。

我々は、中東和平プロセスにおける新たな取り組みを通じて、国際法と関連する国連決議に従い、イスラエルとパレスチナという二つの民主国家が安全で承認された国境内で平和に共存するという二国家解決のビジョンに対する揺るぎないコミットメントを再確認する。この点で、我々は、パレスチナ自治政府の下でガザ地区とヨルダン川西岸地区を統一することの重要性を強調する。

我々は、民間社会による平和構築の取り組みを支援し、それが交渉による永続的なイスラエル・パレスチナ和平の基盤を築くためのより大きな戦略の一部となるよう努めるという決意を改めて表明する。

我々は、地域の安定に深刻な脅威を与えているイランのイスラエルに対するミサイル攻撃を改めて強く非難する。また、ハマス、ヒズボラ、フーシ派を含むイランの関連武装集団、およびイラクとシリアの武装民兵による不安定化を誘発する継続的な行動を非難する。

我々は、さらなる緊張の高まりを回避するために引き続き努力する。この地域での紛争の拡大は誰の利益にもならない。我々はすべての当事者に自制するよう求める。

我々は、イランが決して核兵器を開発または取得してはならないという決意を改めて表明する。我々は、イランの核エスカレーションに対処するため、引き続き協力し、また他の国際パートナーとも協力していく。外交的解決が依然としてこの問題を解決する最善の方法である。イランは、民間人として信頼できる正当性のない核活動を中止・撤回し、国際原子力機関(IAEA)と遅滞なく協力し、法的拘束力のある保障措置協定および国連安保理決議2231(2015)に基づく約束を完全に履行しなければならない。我々は、特に女性、女児、少数派グループに対するイランの人権侵害に対する深い懸念を改めて表明する。我々は、イラン指導部に対し、二重国籍者や外国人を含むすべての不当かつ恣意的な拘留を終わらせるよう求め、イラン国民に対する容認できない嫌がらせを非難する。我々は、イランに対し、人権理事会の特別手続きの権限保持者の入国を認めるよう求める。

我々はイランの兵器のロシアへの移転を強く非難する。我々はすでに新たな重要な措置で対応している。イランは直ちにロシアのウクライナ侵略戦争へのあらゆる支援を中止し、弾道ミサイル、無人機、関連技術の移転を中止しなければならない。

紅海とアデン湾を通過する商船に対するフーシ派の攻撃は停止されなければならない。これらの攻撃は国際法の甚だしい違反である。これらの攻撃により罪のない船員が死亡し、乗組員の生命と安全が引き続き危険にさらされ、その地域と沿岸国の生態系が深刻で重大な環境リスクにさらされている。我々はフーシ派に対し、ギャラクシー・リーダー号とその乗組員を即時解放するよう求める。我々は、EUの海上作戦ASPIDESとそのパートナーが、MTデルタ・スニオン号の環境災害の防止に介入したことを満足のいく形で留意する。我々は、国連安保理決議2722(2024)に沿って、また国際法に従い、各国が自国の船舶を防衛する権利を再確認する。我々は、ASPIDESと米国主導のプロスペリティ・ガーディアン作戦による重要な海上航路の保護努力を称賛する。

我々は、フーシ派がイエメンで国連、NGO、市民社会、外交官を不当に拘束していることを強く非難し、即時釈放を要求する。我々は、フーシ派に対し、国際人道法を尊重し、人道支援活動従事者の安全を確保するよう求める。

我々は、紅海危機がイエメンの和平プロセスにも及ぼしている影響について深い懸念を表明する。我々は、2023年12月に国連の仲介により達成された合意に沿って、すべての当事者、特にフーシ派に対し、責任ある建設的な方法で交渉を再開するよう求める。
逮捕状についてのストレートな言及はありません。強いて言えば「イスラエルは、自衛権を行使するにあたり、国際人道法を含むあらゆる状況において国際法上の義務を完全に遵守しなければならない。我々は国際人道法へのコミットメントを改めて表明し、それぞれの義務を遵守する。我々は、テロ集団ハマスとイスラエル国の間に同等性はあり得ないことを強調する」という文面で、イスラエルに対し、「国際法上の義務を守ってない」と暗に批判している程度です。


4.板挟みの西側諸国


それでも、ICCの決定は加盟国にとっては重いようです。

イギリス政府報道官は記者から「ネタニヤフ首相がイギリスに入国したら拘留されるか」と質問され、「仮定」でのコメントを拒否した上で「政府はこの法律に基づく義務、そして法的義務を履行するだろう」と答えています。

報道官が「この法律」といったのは、どうやら、2001年にトニー・ブレアの労働党政権が可決した裁判所の遵守を強制するICC法のことを指しているようです。

これは、ICCが逮捕状を発行した場合、指定された大臣は「その要請を適切な司法官に伝達する」ものとし、その司法官は、逮捕状がICCによって発行されたものであると判断した場合、「イギリスでの執行のために逮捕状を承認する」ものと規定しています。

首相報道官は、政府はこの法律に定められた手続きを順守しており、「国内法、さらには国際法に定められた法的​​義務を常に遵守する」と述べています。

もっとも報道官は、どの国務長官がこの手続きに関与するのか明らかにできず、政府がこの事件に関して、イギリスのトップ弁護士であるハーマー法務長官に法的助言を求めているかどうかについての質問にも答えませんでした。

通常、世界各国からの逮捕状や引き渡し要請は、対応する前に内務省の特別チームに送られ、基本的なチェックを受けなければならないことになっているようですけれども、このICC法では、容疑者の逮捕と「引き渡し」を進めるかどうかの最終決定権は裁判所にあるとされています。

ICCが逮捕状を発行した人物は逮捕・引き渡しをすると、一般論では答えておいて、「ネタニヤフ」についてはと聞かれると「仮定の質問には答えない」と含みを持たせる。どこかの国の国会答弁で何度も聞いたような答えですけれども、実際にネタニヤフがイギリスに来たら逮捕するのかというと、なんとも分かりません。

22日、ミドル・イースト・アイ紙は「いくつかの西側諸国は、国際法を遵守するかイスラエルを支持するかで板挟みになっている」とする記事を掲載していますけれども、各国で苦労している様子が描かれています。

これについては、無論、日本でも国会で質問・追及があると思いますけれども、果たして「覇気がない」石破総理がまともな答弁をするのかどうか。お得意の石破「ねばねば」構文からいけば、ICCの加盟国であるならば、逮捕・引き渡しをせねばならない、となる筈ですけれども、どういう答弁をするのでしょうか。



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この記事へのコメント

  • かも

    戦争において、常に、敵は極悪非道な存在です。
    其れは、正邪の問題ではなくて、敵味方の問題だからです。
    戦争において、どちらが正しいかという議論は常に成立しません。
    鬼畜米英であり、めがねをかけた黄色い悪魔であったのです。
    ネタニヤフに逮捕状を出してもプーチンに逮捕状を出しても、其れが正しいという結論にはなりません。
    戦争の片一方の主張を重ねて主張しているだけのことだからです。
    残念ながら、国家間においては、力だけが正義です。
    極東裁判で、日本の戦争犯罪は裁かれましたが、一夜に10万人の無抵抗な市民を焼夷弾で焼き殺した戦争犯罪が罪に問われることは無かったのです。
    現在の日本でも、プーチンが極悪非道な戦争犯罪人だから、絶対許すな。ロシアを勝たせるなと、「正義」が語られ断固ウクライナを支援すると強調されています。
    其れでは戦争を止めることは出来ません。単にロシア憎しと語っているに過ぎないからです。
    日本とロシアに間には、憎悪を増幅する交戦関係は何もないのです。
    ロシア憎しを語らず、仲介して戦争を止める力が日本にはあるのです。
    武力によっては戦争を止めることが出来ないことが自明の理であるからです。
    平和憲法を持って、戦争を止める論理を今こそ、日本が語るべき時なのです。
    此の儘エスカレーションすれば、やがて、NATOに戦火は拡大するでしょう。
    米欧が、戦火を止める手段を全く持たないからです。
    2024年12月01日 09:08
  • 日比野

    かも様 初めまして。

    「国家間においては、力だけが正義」というのはその通りだと思います。

    ただ、それだと、平和憲法を掲げる日本は、正義を持っていないことになります。

    もちろん、正義を持たないということは、どちらにも与しないでいられることを意味するとは思いますけれども、それで「戦争を止められるのか」という問題は別という気がします。

    なぜなら、戦争を止める決定権は当事国にしかないからです。

    つまり、当事国をして戦争を止めようというインセンティブが働かねばならず、それも両国に与えられなければならないということです。

    トランプは1日でウクライナ戦争を止めると宣言していますけれども、アメリカは「戦争を止めないなら、ウクライナ支援を止める」という逆インセンティブがあり、ロシアに対しては、ただちに攻撃を止め、停戦しないと「米軍を大量派遣する」という逆インセンティブを持っていますからね。

    現実問題として、アメリカ以外にロシアとウクライナに同等以上のインセンティブを与えられる国はないと思います。

    日本が与えられるインセンティブがあるとすれば、経済制裁参加と復興支援、つまり経済的なことくらいですけれども、それで両国が戦争を止める動機になるかというと、少し難しいのではないかと思います。

    今後ともよろしくお願いいたします。
    2024年12月01日 15:19
  • かも

    日比野庵様
    初めましてですね。早速の鄭重なるレス有り難う御座いました。
    勝手な思い込みと笑いでしょうが、私の思いを少し書かせてください。
    長い論争をしようとは思いませんので、至らぬ処は読み捨てにてお願いします。
    戦争は常に力のあるものが勝つ。しからば、平和憲法で非武装で立ち受かったところで何の力にもならないとのご指摘、その通りです。
    が、所詮、武力で決することが出来ない紛争の解決ならば、武力は非力です。
    国家間の紛争解決の解決の手段として武力を持ってしないという平和憲法の趣旨は、当に、其の解決出来ないことを解決する手段は、平和憲法であるしかないと考えるのが、日本国憲法を起草したアメリカの若い法律家の狙いであったと考えます。
    日本国憲法が平和憲法と宣言する理由は、当に、武力による紛争解決を放棄し、交戦権を禁止し、軍隊を持たないと宣言することで、武力で解決出来ない紛争を、武力ではなくて、仲介出来る理念を言葉で語ることで解決することを目指すものであったと考えます。
    つまり、非武装、交戦権の禁止条項は武装解除条項でもなく観念論的平和国家を標榜するものでも無く戦争を仲介して戦争を止める力を与えようとしたものだと考えてはどうでしょうか。
    其の平和憲法を持って仲介する具体的事件が、ウ露紛争だと考えます。
    その上で、戦争を止めるインセンティブは、日本にこそあると考えるのです。
    この紛争は、プーチンの見込み違いと、ゼレンスキーという未熟な政治家と、其の未熟を利用して煽り立ててウクライナを利用して、ロシアを衰退させようとするNATOの腹黒い戦略と、バイデンの、戦争に介入しないと早々に断言してしまった浅慮にあると考えます。
    決して勝てない戦争を、他国の援助で戦うなど真面な政治家なら、考えようともしないでしょう。
    其れをさせたのは、ジャベリンと偵察衛星の詳細な戦況情報です。
    戦車の大軍を派遣して、一夜で制圧出来ると考えたのは、プラハの春を知っているプーチンの戦略の失敗です。
    プーチンも其の失敗に気付いているはずです。
    NATOが次々と武器援助をする。
    然りとて、公然とNATOを攻撃するほどに紛争を拡大する利益がない。
    名誉ある出口を求めて、様子を見ているのです。
    マクロンが、ウクライナに派兵と言い始めています。其れを理由に、フランスに報復することが出来れば、プーチンの出口が見えてきます。
    ミサイルで、フランスの原発を攻撃して、次は何処だと恫喝するでしょう。そんな戦争は、プーチンにとってもやりたくないことです。
    それでも其れを止められないのはプーチンのメンツです。
    ロシアにもプーチンにも敗戦はないのです。
    敗戦をロシアの軍部もオリガーチも絶対に認めないからです。
    其れが日本が、この戦争を止めるインセンティブになります。
    トランプと、NATOを説得して、ウクライナを沈黙させて、戦争を止めるのです。
    ウクライナにとっては、これ以上の国土の損耗の停止です。
    ロシアにとっても莫大な戦費とロシア兵の人命の損耗からの解放です。
    このことをトランプがしては問題解決委なりません。
    トランプの勝利にしかならないからです。
    今世界で、この仲介が出来るのは、日本だけです。NATOでもないBRICSでもない。アメリカの同盟国と言っても、軍隊を持たない同盟国です。武力に煩わされることない仲介に専念すれば良いのです。
    日本だから出来るのです。
    この仲介を破れば、ロシアにとって次はない。
    其れがロシアの制約になります。
    ロシアの経済制裁も解除しても良いのです。ロシアの見かけ上の収益が大きければプーチンも安心して乗れるのです。戦争犯罪も問わないとして、戦争を停止するのです。
    敗戦国ではないのだから、ロシアもプーチンも戦争責任も賠償責任を問われることはないのです。
    東部4州も帰属はロシアに与えて固定するしかないのです。ウクライナが勝てないからです。

    2024年12月02日 00:40