カナダがアメリカの51番目の州になる日

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2024-12-05-152500.jpg


1.トランプ・トルドー会談


11月30日、アメリカのトランプ次期大統領はカナダのトルドー首相と「非常に生産的」な会談したとSNS「トゥルース・ソーシャル」で明らかにしました。

トランプ次期大統領は、「不法移民の結果として多くの命を奪ったフェンタニルと麻薬危機、米国の労働者を脅かさない公正な貿易取引、米国が抱える対カナダの巨額貿易赤字など、両国が協力して取り組む必要のある多くの重要なテーマについて話し合った……トルドーはアメリカの家庭に対するこのひどい荒廃を終わらせるためわれわれと協力することを約束した」と投稿。トルドー首相はⅩへの投稿で「トランプ大統領、昨晩は夕食をありがとう。また一緒に仕事ができることが楽しみだ」と述べました。

正式に大統領に就任するまで、他国の首脳とは合わないという「建前」だったのですけれども、建前は建前のようです。

けれども、会談が行われるまでの経緯とその内容は穏やかなものではなかったようです。

11月25日、トランプ次期大統領は「カナダやメキシコからの犯罪や薬物の流入が止まるまで両国からのすべての輸入製品に25%の関税を課す」とSNSに投稿したのですけれども、どうもこれをみてトルドー首相が血相変えて、トランプ氏の邸宅マール・ア・ラーゴをアポなし突撃したというのが真相のようです。

会談の模様については、アメリカのFOXニュースが記事にしていますけれども、引用すると次の通りです。
トランプ次期大統領は先週、カナダのジャスティン・トルドー首相に、貿易と移民問題への対処に失敗したことによる関税で北の隣国の経済が破綻させてしまうなら、51番目の州になるべきかもしれない、と示唆した、と情報筋がFox Newsに語った。

先週金曜日、トランプ大統領がカナダ製品に大幅な関税を課すと脅した後、トルドーは予告なしにマール・ア・ラーゴに飛んだ。具体的には、トランプ大統領はカナダとメキシコが不法移民や違法薬物の流入を抑制できていないとして、25%の関税を課すと脅している。

現在、トランプ大統領が 「非常に生産的 」と称した両氏の会談について、新たな詳細が明らかになりつつある。

カニのカクテルをつまみ、牡蠣をすする前から、関税、国境警備、貿易赤字といった問題が最優先事項となっていた。

議論を聞いていた同席者2人によると、トランプ大統領は、心温まる歓迎の姿勢を見せながらも、北の相手から何を求めているかということに関しては非常に率直だったという。

話し合いの内容を言い換えれば、トランプはトルドーに対し、カナダは70カ国以上からの不法移民を含む大量の麻薬と人の越境を許可することで、アメリカとの国境を破綻させてきたと語った。

情報筋によると、トランプ大統領は、1000億ドル以上と推定される米国の対カナダ貿易赤字の話になると、さらに激高したという。

次期大統領は首相に対し、もしカナダが国境問題と貿易赤字を解決できないのであれば、大統領に復帰した初日にすべてのカナダ製品に25%の関税を課すと述べた。

トルドー氏はトランプ氏に対し、カナダ経済を完全に破壊することになるので、関税を課すことはできないと言った。トランプはこう問い返した。「では、あなたの国はアメリカから1000億ドルむしり取らないと生き残れないのか?」

そしてトランプはトルドーに、カナダを51番目の州にすることを提案し、トルドー首相らは緊張した様子で笑ったと関係者はFox Newsに語った。

しかし、彼は続けてトルドー首相に、首相の方が良い肩書きだが、それでも第51州の知事を務めることはできるいと言った。

情報筋がFox Newsに語ったところによると、テーブルの誰かが相槌を打ち、カナダは非常にリベラルな州になるだろうとトランプに助言し、さらに笑いを誘った。トランプは、カナダが保守とリベラルの2つの州になる可能性を示唆した。

トランプはトルドーに、もし貿易で米国から金をむしり取らずに自分の要求リストを処理できないのなら、カナダは本当に1つか2つの州になって、トルドーは知事になればいいと言った。情報筋によれば、このやりとりは多くの笑いを誘ったが、トランプは1月20日までに変化を期待するというメッセージを伝えたという。

3時間近くに及んだ会話は他にも様々なトピックについて続き、最後にはカナダの招待客は夕食会を「とてもフレンドリーで、とてもポジティブなものだった」と称したが、51番目の州になることについては触れられなかった。

Fox News Digitalは、この発言についてトランプ陣営とトルドー陣営の双方に問い合わせたが、どちらもすぐに返答はなかった。
トルドー首相は25%関税を止めてくれと説得にいったものの、来年1月20日までに国境問題と貿易赤字を解決しろ、と宿題を言いつけられて帰される羽目になりました。

しかも、できなかったらアメリカの51番目の州になればいいという「脅し」つきで、です。


2.カナダがアメリカの51番目の州になる日


この会談について、インドのニュースサイト「ファーストポスト」は12月4日付の記事「カナダが米国の51番目の州に?なぜ一部の人にとって本当に心配なことなのか」という論評記事で次のように述べています。
【前略】

トルドー氏の元最高顧問で親しい友人でもあるジェラルド・バッツ氏は、トランプ氏は以前にも同じようなことをしたことがあると語った。

「トランプ氏は最初の任期中、トルドー氏に『51番目の州』という言い回しをよく使っていた」とバッツ氏はリンクトインの投稿で述べた。「誰かがあなたをパニックにさせようとしているときは、パニックにさせないでください。#プロのヒント」

しかし、誰もがこれを笑い事だと思っているわけではない。

ポリティコによると、カナダの国家主義者たちは、自国が51番目の州になることに対して長い間警告してきた。

この問題は、1988年の選挙で主流となった大陸自由貿易をめぐる緊迫した全国的討論の中で浮上した。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、当時、米国とカナダ間の自由貿易協定はロナルド・レーガン大統領によって交渉され、署名されていた。

当時、カナダ政府はこの協定に賛成していたが、自由党と新民主党は、この協定によってカナダが「51番目の州」になると主張した。

ジョン・ターナーとブライアン・マルロニーの間で行われた選挙は保守党の圧勝となり、カナダの政治は永遠に変わってしまった。

この協定は1989年1月1日に発効し、歴史家ノーマン・ヒルマーの言葉によれば、「カナダが北米の国として避けられない運命にあることを最終的に認めた」ことを意味するものだった。

最近では、カナダと米国の自由貿易協定がメキシコまで拡大され、カナダは望んでいたものを手に入れた。

トルドー政権は、トランプ大統領の最初の任期中にカナダ、米国、メキシコ間の自由貿易協定が再交渉された際、「チーム・カナダ」アプローチをうまく採用した。

しかし、トルドー氏の少数派政権は現在、政治的にかなり弱い立場にあり、1年以内に選挙に直面することになる。

カナダの野党党首ポワリエブル氏は、関税は米国人に損害を与えるだろうと述べた。

「次期大統領はアメリカを豊かにするという公約で選出された。今回の関税はアメリカを貧しくするだろう」とポワリエブル氏はトルドー氏との会談後に語った。

ポワリエブル氏は、米国は最良の友人であり最も近い同盟国と自由貿易をさらに進めるのが賢明だと述べた。

トルドー首相はフロリダ州のマール・アー・ラゴ・クラブでの夕食会の後、トランプ大統領が米国の主要貿易相手国からのすべての製品に対する関税の脅しを撤回するという確証を得られないまま帰国した。

トランプ大統領は会談を「生産的」と評したが、米国への麻薬や移民の流入をめぐってカナダがメキシコと不当に一緒くたにしているとカナダが主張する約束からは後退しないと示唆した。

カナダの米国大使、キルステン・ヒルマン氏は日曜、「カナダの国境はメキシコの国境とは大きく異なるというメッセージは、本当に理解された」と述べた。トルドー氏とトランプ大統領の隣のテーブルに座っていたヒルマン氏は、麻薬や移民に関してはカナダが問題なのではないと語った。

月曜日、メキシコ大統領はこれらのコメントを否定した。

「メキシコは、特に貿易相手国から尊敬されなければならない」とクラウディア・シャインバウム大統領は述べた。カナダもフェンタニルの消費に関する独自の問題を抱えており、「メキシコのような文化的豊かさをカナダにも持っていたらと思うしかない」と同大統領は述べた。

両国の国境における移民の流れと麻薬の押収量は大きく異なる。昨年度、米国税関職員がカナダ国境で押収したフェンタニルは43ポンドだったが、メキシコ国境では2万1100ポンドだった。

米国に流入するフェンタニルのほとんどは、アジアから密輸された原料化学物質を使ってメキシコの麻薬カルテルによって製造されており、米国では年間約7万人がフェンタニルの過剰摂取で死亡している。

移民に関しては、米国国境警備隊は、2023年10月から2024年9月の間にメキシコとの南西部国境で153万件の移民との遭遇があったと報告した。

これに対し、同じ期間にカナダ国境で発生した遭遇件数は 23,721 件である。
「国境問題でメキシコと一緒にしないでくれ」というカナダ政府の悲鳴が聞こえてくるようです。


3.タリフ・マン=トランプ


トランプ次期大統領の「関税の脅し」はこれだけに止まりません。

11月30日、トランプ次期大統領は、SNS「トゥルース・ソーシャル」に、「BRICS諸国がドルから離れようとしているのを黙って見ている時代は終わった……これらの国々には、新しいBRICS通貨を創設せず、また強力な米ドルに代わる他の通貨を支持しないという約束を求める。そうでなければ100%の関税に直面し、素晴らしいアメリカ経済での売り上げに別れを告げることになるだろう……他のカモを見つけるといい」と投稿しました。

もっとも、一部のトランプ支持者は、この発表が交渉戦術であり、約束というよりも初期の提案に過ぎないとの見方を示しています。これについて問われた共和党のテッド・クルーズ上院議員は12月1日のCBSニュースの番組「フェイス・ザ・ネイション」で、「メキシコやカナダに対する関税の脅しでは、すぐに動きにつながっている」と述べています。トランプ流の「ディール」だというのですね。

これについて、アメリカ現代政治外交が専門の上智大学の前嶋和弘教授は「トランプ氏はタリフ・マン(関税男)と自称し、関税で外交を動かそうとしている。とはいえ、よく考えると麻薬と移民と通貨には関係ない話だ。だから、この数字は『えいや!』と勢いで決めたものであり、不都合なことを脅しながらやめさせていく“目標”みたいなものでは」と分析し、「アメリカの貿易赤字国は中国、メキシコ、インド、日本と続くため、日本も次に来る。ただ、今のところ、日本とアメリカの関係に悪い点はない。おそらく貿易で『日本にもっと買わせる段階』になったら『(日本からの輸入品の)関税を上げる』と宣言して、日本にいろいろと押し付けてくるだろう。とはいえ、貿易とは異なる安全保障のところで『もっとアメリカの武器を買え』と圧力をかけてくる可能性もある……トランプ氏の頭にあるのは『応援してくれる人、支持してくれる人が何を望んでいるか』であり、USスチールの件も同じだ。世界はトランプ支持層に振り回される」と日本もターゲットになると述べています。

また、野村総研エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は11月27日のレポート「ビジネスマン感覚に基づくトランプ経済政策の怖さ」で次のように述べています。
【前略】

現時点でトランプ氏の意図は明確ではないが、日本も含め多くの国にとって衝撃的であるのは、敵対関係にある中国だけでなく、自由貿易協定を締結しているカナダとメキシコに対して、突然、25%の一律関税を課す考えを打ち出したことだろう。これは、米国と友好関係にある国も、突然、追加関税の対象になりうることを意味し、追加関税実施に向けたトランプ氏の本気度を見せつけられた形でもある。

今回追加関税の対象となったのは、米国の輸入額で上位3位の国である。個別の問題への対応というよりも、輸入を抑え、米国の貿易赤字を減らすことに、トランプ氏の最大の狙いがある可能性も考えられるところだ。この場合、米国の輸入先で第4位のドイツ、第5位の日本、第6位の韓国、あるいは地域で見れば第1の輸入先となる欧州連合(EU)も、次の追加関税の対象となる可能性が十分にあり、それぞれ戦々恐々としているだろう。

第1期目と同様に、トランプ氏は自らのビジネスマン感覚に基づいて経済政策を考えている点に大きなリスクがある。一国の貿易赤字は企業が赤字に陥っているのと同様に「負け」であり、貿易赤字を減らす分だけ、米国のGDPが増える、と考えているはずだ。

しかし実際には、海外から輸入する部品・材料などが追加関税で価格が上昇すれば、それを使って生産をする米国企業には大きな打撃となる。それを米国企業が国内で生産する部品・材料などにシフトすることは簡単ではない。米国企業や米国で生産する日本企業なども、こうしたサプライチェーンの問題から生産活動に大きな支障が生じてしまう。輸入品価格の上昇分を負担するのが、最終的には米国民であることから、国内需要も大きな打撃を受ける。米国の貿易赤字を減らし、米国のGDPを高めることを狙う「米国一人勝ち」のトランプ氏の試みは、実際には、米国経済を著しく傷つけることにもなってしまうだろう。

大統領選挙前には経済学者がトランプ氏の経済政策のリスクに警鐘を鳴らした(コラム「ノーベル賞受賞の経済学者16人がトランプ再選に警鐘」、2024年7月3日)が、トランプ氏は主要閣僚をイエスマンで固めてしまった。ビジネス感覚に基づくトランプ流の誤った経済政策を正してくれる人はもはやいないだろう。これは、世界経済にとって非常に怖いことだ。
木内氏は、ビジネスマン感覚に基づいて国家経済政策を考えるのはリスクであり、それをやればアメリカ経済自身を傷つけることになると警鐘を鳴らしています。


4.どうやって関税を上げるのか


では、トランプ次期大統領は脅しではなく本当に関税を引き上げるのか。どうやって。

これについて、上智大学法学部教授の川瀬剛志氏は、政策シンクタンク「経済産業研究所/RIETI」の11月28日のコラムで次のように述べています。
【前略】

従って、ここでは、やるかやらないか、ではなく、やるとしてどうやってやるか、に焦点を当てて、この問題を検討したい。

米国において国際通商に対する規制権限は、憲法上本来議会の権限に属する(合衆国憲法1条8項新規ウィンドウが開きます)。また、関税率の決定も議会の権限に属する(同10項新規ウィンドウが開きます)。よって、本来大統領は議会の承認なくして関税の賦課および税率の増減を行うことはできない。

しかし、この原則を例外なく完徹すると、さまざまな不測の事態で機動的に関税を政策手段として国益を実現することが妨げられる。よって、個別立法の授権によって、大統領・行政府が一定の要件の下で関税率を議会の承認なしに決定・修正する権限を有する。

【中略】

以上の議論は以下のように簡単に整理できる。
2024-12-05-152501.jpg

ここでは極めて単純にこれらの条文の適用可能性を論じたが、現時点ではトランプ政権が具体的にどの条文をいかなる論理で援用するのか、それが法令の要件に適合しているかは計り知れない。もっとも、仮に発動要件の充足が疑わしい場合でも、トランプは忠誠を誓わない公務員の解雇も示唆しており、官僚組織が法令違反を盾に大統領に抵抗することは期待できないだろう。

上記の法令の中には、大統領の関税引き上げに際して、議会との関係で協議・報告義務を課しているものがあり、特に122条は措置の延長に議会の承認を要する。しかし、伝統的な共和党主流派は押しやられ、もはやトランプ党と化した共和党は、「赤い波(Red Wave)」を巻き起こし、同時に行われた議会選挙でもはや上下両院を占め、ホワイトハウスと併せて「トリプルレッド(Triple Red)」を達成した。これでは大統領の裁量行使に対して本来議会が果たすべきコントロールはおよそ期待できないだろう。

また、大統領の関税引き上げの合法性について裁判所で争うことができるが、特に232条措置について裁判所は大統領の裁量行使の妥当性に踏み込んだ審査を行うことに慎重な姿勢を示している。特に連邦最高裁は、第1次トランプ政権が次々に保守派判事を指名し、今や彼らが多数を占めている。半世紀以上も女性の堕胎の権利の憲法上の根拠だったあのロー対ウェイド連邦最高裁判決を覆すまでに保守化している最高裁が、トランプ関税に異を唱えることは期待できないだろう。

もっとも、トリプルレッドなら、トランプにとって議会も思うがままだろう。そうなれば、もはや大統領権限にこだわることなく、立法によってさまざまな関税引き上げが可能になる。例えば、議会はWTO加入に際して中国に最恵国待遇(MFN、米国では恒久的正常通商関係(PNTR)と称する)を付与したが、新たな法律でこれを撤回し、対中関税率を設定してもよい(ロシアからはウクライナ侵攻を理由にすでにPNTRを剝奪した)。あるいは、トランプは相手国の関税率に合わせて国別に関税率を設定する「トランプ互恵通商法(the Trump Reciprocal Trade Act)」の構想を示しているが、こういった法案も成立の余地はある。もっとシンプルに、米国関税率表上のPNTR税率を単に一律に10%引き上げることでもよい。
このように法的根拠となる条文が5つほどあり、もしトランプ次期大統領がこれらをもとに関税引き上げに動いたら、官僚も議会も裁判所もそれを止めることは難しいだろうと指摘しています。

更に川瀬教順は、”タリフ・マン”トランプの攻勢への日本が行うべき対応について次のように述べています。
やがて米国の関税に直面するとして、日本はどうするのだろうか。第1次トランプ政権下では、鉄鋼・アルミ232条関税の発動に際して、日本はEU、中国、インドのように対抗措置を発動するでもなく、WTO提訴さえしなかった。

こうして恭順の意を示したところで、韓国やオーストラリアのように適用除外は得られなかった。さらに、米国の発意で北米自由貿易協定(NAFTA)を改定したUSMCAの締結によってカナダ・メキシコは232条関税から除外されたが、日米物品・デジタル協定締結後も日本製品には引き続き232条関税が適用された。

バイデン政権下の2022年2月になって、ようやく二国間合意によって関税割当による輸入枠が設定された。当時は自動車について232 条調査が進行しており、その影響に対する懸念もあったことは理解できるも、WTO提訴すらしない対応は、対米従属も度を越して、対米「隷属」と言わざるを得ない。

この他にも第2次トランプ政権は、繁栄のためのインド太平洋経済枠組み(IPEF)から脱退し、同盟国に対中デカップリングの圧力を強めるなど、これまで以上に一国主義(unilateralism)を強めることは必至だ。

日本はもはや通商政策については米国と利害が一致しないことを明確に認識し、232条措置の際のような対応を改めなければ、日本の経済安全保障はおぼつかない。この4年間は、ミドルパワーの一翼としてEUや英国、カナダ、オーストラリアと連携の上で(その意味で英国と経済版2プラス2の設立に合意したことは明るい話題だ)、時に米国の保護主義と対峙することを恐れず、さらにはルールに基づく自由貿易体制の擁護者として独自の通商戦略を展開することが、これまで以上に求められる。

11月25日、トランプは、不法移民およびフェンタニル(鎮痛剤の一種、麻薬として濫用)の越境流入を抑止しない限り、就任初日にカナダ・メキシコからの全輸入に25%の関税を課すと宣言した。根拠法令は明らかにされていないが、大統領が即効性をもって包括的に関税を引き上げるとすれば、IEEPAに依拠するものと考えられる。その可能性は第1次政権でも検討されており、また、最近の米国議会調査局のニュースレターもIEEPAに言及している。

11月26日、新USTR代表に米大手法律事務所King and Spaldingのパートナー弁護士であるグリア(Jamieson L. Greer)が指名された(ライトハイザーはなぜか経済閣僚には指名されなかった)。本稿の予測同様、グリアは全輸入一律関税最低10%は122条で対応できると主張している。

【以下略】
要するに、言うべきことは言って交渉すべきだ、ということですけれども、果たして石破総理にそんなことができるのか。本人は常日頃から「言うべきは言う」と口にしていますけれども、そもそも会うことさえできなければ、交渉もヘチマもありません。

トランプ次期大統領のトルドー首相への「51番目の州知事になれ」という冗談のような脅しの「ディール」を使ってくる相手です。その裏には、「約束事は必ず実行する」という強力なリーダーシップを求めていることは明白です。

それを考えると、政権基盤がゆるゆるでいつ崩れてもおかしくない石破総理には、荷が重すぎる仕事かもしれませんね。



  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント