

1.税制大綱には123万円
自民・公明両党の税制調査会は、20日にもまとめる来年度の税制改正大綱で、「103万円の壁」の見直しについては、国民民主党に示した内容に沿い、所得税の控除額を20万円引き上げて123万円にすることを、明記する方向で調整することが明らかになりました。ただ、一応、178万円を目指すという文言も盛り込む方針としているようです。
所得税の控除額20万円の引き上げは、基礎控除と給与所得控除、それぞれ10万円ずつ行い、年末調整で対応する形で来年から実施したい考えで、また、住民税の控除額については、基礎控除は据え置き、給与所得控除を、現在より10万円引き上げる方向とのことです。
また、大学生などを扶養する世帯の税負担を軽減する「特定扶養控除」の年収要件は、国民民主党の要望を踏まえ、今の103万円から150万円に引き上げ、更に、昨年縮小する方向で話を進めていた高校生などを扶養する人の扶養控除は、公明党の意見も踏まえ、来年以降に結論を先送りすることになりました。
これについて、自民党の宮沢税制調査会長は、記者団に対し「公明党とあす最終的に協議し、あさって党の税制調査会の会合などで報告する。今の段階で私からは何も申し上げない」と述べ、国民民主党との協議については「私のレベルでは、再開云々という話は一切聞いてない。基本的に今後の取り扱いは、政務調査会長や幹事長の判断だろうと思っている。税制関連法案と予算案を来年の通常国会でどう成立させるかは、幹事長とよく相談しながら、基本的には幹事長の判断に従いながらやっていく」とコメントしました。
与党側は、国民民主党の対応をぎりぎりまで見極め、最終的な方針を決めるとのことです。
2.話にならないのは、こういう理由です
これに対し、国民民主党の浜口政調会長は、18日の記者会見で「国民の期待や民意に応える水準には到底至っていない。きょうに至っても与党側から私の方には何らアプローチはない……与党側から新しい提案がなければ、協議の再開は難しい。ボールは与党にあり、ちゃんとした姿勢や提案が示されれば、協議を再開する可能性はゼロではないが、それがなければ、先に進めることはできない」と述べました。
また、国民民主党の玉木代表は記者団に対し「今の国民生活や納税者の現状を考えたときに、所得税の控除額は、与党案の123万円というレベルではとても足りない。与党側に歩み寄りの余地があるのであれば、われわれはすべてを否定して交渉に応じないということではないが、現時点では何もない……それでも見切り発車するということであれば、それを前提とした来年度予算案には賛成できない。われわれとしては、選挙で約束した政策の実現に最後まで取り組む」と述べています。
また玉木代表は東京都内で講演し、「自民党と公明党が123万円という所得税の控除額を税制改正大綱に書いて決定することになると思う。『178万円を目指す』とした3党の幹事長間の合意が無視される形となるのは、残念というか、驚きだ……今年度の補正予算は成立したが、来年度予算案は簡単ではないと思う。少数与党なので協力しているが、その関係が崩れてしまうと単なる少数与党になるので、2月末から3月初めの来年度予算案が衆議院を通過する頃のやりとりは、大変なことになる」と見通しを述べています。
更に玉木代表は、18日、X(旧ツイッター)で、自民の宮沢氏の123万円案について、その効果について次のように述べています。
宮沢案(123万円)は、①基礎控除と②給与所得控除をそれぞれ10万円引き上げるとしていますが、このうち、②給与所得控除の引き上げについては、「最低保障額」のみを55万円→65万円に引き上げることにしています。確かに年間1万円〜2万円程度の減税では、ほとんど意味がありません。景気が良くなることも見込めないでしょう。
よって、収入が162万5,000円未満のサラリーマンしか今回の給与所得控除額引き上げの対象となりません。
サラリーマンは、①基礎控除10万円+②給与所得控除10万円=20万円分の控除額引き上げによる減税効果を受けられるとの印象が広がっていますが、実は、多くのサラリーマンに給与所得控除10万円アップの減税効果は及ばす、基礎控除額10万円のアップに止まるのが宮沢案の実態です。
年間1万円〜2万円の減税の方がほとんどでしょう。
「話にならない」と申し上げているのは、こういう理由です
昨日のエントリーで、この123万円は、もともと財務省が考えていた数字で、宮沢氏は財務省と打ち合わせの上で言ったことを紹介しましたけれども、裏で財務省が糸を引いているのだとすると、景気に影響がない程度の形だけの減税をしてみせて、「ほら減税しても景気には影響ないのだ。我々のマクロ経済モデルは正しいのだ」と言い張る伏線を張ったのではないかとさえ、穿ってしまいます。
宮沢案(123万円)は、①基礎控除と②給与所得控除をそれぞれ10万円引き上げるとしていますが、このうち、②給与所得控除の引き上げについては、「最低保障額」のみを55万円→65万円に引き上げることにしています。… pic.twitter.com/OjY2NI7bPM
— 玉木雄一郎(国民民主党) (@tamakiyuichiro) December 18, 2024
3.早い時期に新たな提案をしなければならない
そんな中、公明党の西田幹事長は、自公国の3党税制協議が決裂したことを受け、「やはりこれは誠実に協議を前に進めていく必要があるというふうに思います。次にまた、できるだけ早い時期に新たな提案をしなければならないんだろうというふうには思っております……国民側が123万円では話にならないということであれば、話になるような提案をしないと前に進まない」と与党側が歩み寄るべきとの認識を示しました。
なぜ、突然、公明が国民民主の肩を持つ発言をしたのか。
その理由として、考えられることがあるとすれば、おそらく維新の擦り寄りです。
維新は、与党と教育無償化についての協議を始め、「教育無償化」など維新が求める条件が整ったら、2025年度予算案に賛成することを示唆する発言をしています。
公明と維新は、先の衆院選で関西で全面対決した犬猿の仲です。
その維新が与党に擦り寄り、連立に割って入ってくるなど、公明にとっては我慢ならないのではないかと思います。
まぁ、いきなり維新が連立に入るとは思いませんけれども、政権与党に対する維新の発言力が増せば、相対的に公明の影響力は落ちますからね。故に、公明は、維新とは距離を置いて、国民民主を与党に引き付けておきたい。だから維新を牽制する意味も含め、あのような発言をしたのではないか。
発言した西田氏は幹事長の役職にあり、3党合意の当事者です。その西田幹事長からの、国民民主に歩み寄るべきだ発言は、まだ合意を破り捨てた訳ではないというメッセージだと受け取れます。
あるいは、103万円の壁問題での国民の関心の高まりと怒りを見て取った公明が、参院選を睨んで、危機回避の動きに出たのかもしれません。
4.あなたが減税に反対する理由はコレですよね?
一方、すっかり「国民の敵」の二つ名をつけられた感のある自民党の宮沢氏ですけれども、NHK党の濱田参院議員は、「あなたが減税に反対する理由は「コレ」ですよね?」という動画を挙げています。
件の動画で、自民党の宮沢氏について述べているのですけれども、該当部分の要旨は次の通りです。
宮澤洋一とは?濱田参院議員は、宮沢氏が減税に反対する理由について、自分の利権に関係ないから反対できるのだ、と指摘しています。
・Xのトレンドで、国民の敵そして宮沢洋一といったですねまワードが並ぶようになりました
・トレンドは全分野に渡るんで、国民の敵が1番上に来てて、次、参議院選挙、石破首相、経団連納税しろで、宮沢洋一と出てきます
・宮沢洋一さんは参議院の広島選挙区で選出されている方になります
・宮沢さん自身は非常に選挙区での選挙はもう安定しておられる
・党内での発言力というか、そういう権力はそれなりにあるのかなとは思います
・今回宮沢さんがですね表に出ると言いますか名前が出てくること自体が非常に興味深い
・基本的に控除の額は上がることはあっても下がることはね基本ない。基本的にはもう恒久減税と言っていい
・本来だと国会において税制などは決めるべきなんですよ
・長年、自民党が政権与党で、税制調査会がそれだけ権力持つという現実があるのかなと思います
国民の敵
・103万円の壁見直し123円の引き上げを提案。
・178万に届かないということで、すごい怒りのポストをされておられます
・宮沢さんが皆さんの知るところになったっていうのはねま非常に意義深い
・自民党であれば野党の政策を引き受けるという意味でまあ200万ぐらいやっとけば却って支持率上がったと思うんですけど
・宮沢洋一さんのXのアカウントが参議院選挙後ポストしていない
・増税反対と主張されていたのは選挙の時だけのアピールではないことを証明していただきたい
・自分の関連団体においては増税反対されるんですけれど、今回の103万円の壁については減税になるので、ご自身の利権には直接結びつくつきにくいので、それで反対をされるのかなと思います
・123万ってのは国民民主党のもうちょっと頑張れよと思いますし、しっかりして欲しいなとは思います
・結局、補正予算は通ってしまったので・・・参議院はまだ通っていないのでそこで国民民主党がどうするのかっていうところは注目です
ただ、これは、裏を返せば利権に絡んでくると反対できなくなるともいえる訳です。
先日、亀田製菓のジュネジャ・レカ・ラジュ会長が、日本経済の成長には移民受け入れが必要であるとの発言がSNSで広まり、多くの人々が反発し、不買運動を呼びかける声が上がっています。
一部では宮沢洋一氏を落選させようなどというSNSでの投稿もありますけれども、宮沢氏は参院議員で改選は2028年と先の話です。であればと、宮沢氏の支持母体に対する不買運動ならぬ不支持運動が起こらないとも限りません。
ここで石破総理がスパッと宮沢洋一氏を更迭し、首を刎ねて見せれば、少しは国民の溜飲も下がるのではないかと思いますけれども、今の石破総理にそれを期待するのはちょっと難しいかもしれませんね。
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