

1.プーチンと今年の成果
12月19日、ロシアのプーチン大統領は、年末恒例の記者会見と、各地の住民などからの質問にオンラインで答えるイベントを行いました。
「ウラジーミル・プーチンと今年の成果」と題されたこのイベントは、主要な国営テレビ各局が生中継され、実に4時間半にわたって行われました。
併合したウクライナの一部を含むロシア連邦の地図が描かれた大きな青いスクリーンの前に登場したプーチン大統領は、失脚したシリアの指導者や、攻撃性を増したロシアの核ドクトリンといった話題のほか、バターの価格など国内問題についても言及。実に多岐に渡る議論を行っています。
このイベントを報じたマスコミ各社の見出しだけ拾うと次の通りです。
NHK:プーチン大統領 ウクライナ軍事侵攻「目標に近づいている」各メディアがプーチン大統領の語る何に注目しているか端的に分かります。それでも、主な興味はやはりウクライナ戦争に向かっています。
テレ朝:プーチン大統領が会見 ウクライナ侵攻の正当性を主張
日テレ:プーチン大統領、ロシア経済「安定的に発展」…“規模は日本追い抜いた”主張も
ロイター:プーチン氏「トランプ氏と協議し妥協の用意」、ウクライナ紛争終結巡り
BBC:プーチン氏、もっと早くにウクライナに侵攻すべきだったと 生中継の長時間記者会見で
AFP:プーチン氏、アサド政権崩壊はロシアの「敗北」ではない
2.彼とは4年以上話していない
ウクライナ戦争については、トランプ次期大統領の復活によって停戦に向かうと見る向きが強いのですけれども、これに関連して、NBCニュースがプーチン大統領に質問しています。
そのやり取りを抜粋すると次の通りです。
キール・シモンズ:大統領閣下、キール・シモンズ、NBCニュースです。プーチン大統領は、いつでも話し合う用意があるとし、「政治は妥協の芸術」だと述べています。そして、「交渉と妥協の両方の用意がある」とまで踏み込んでいます。これは裏を返せば、相手にも交渉と妥協の両方を求めるということでもあるでしょう。
よろしければ、英語で2つ質問させてください。申し訳ありません、ペスコフさん。
一つ目はトランプ次期大統領についてです。
大統領閣下、あなたは特別軍事作戦の目的を達成できませんでした。今週ここモスクワで暗殺された将軍を含め、多数のロシア人が死亡しました。そして、あなたが支援したシリア指導者は打倒されました。
大統領、トランプ次期大統領と対峙するとき、あなたは弱いリーダーとなるでしょう。どのように妥協するつもりですか?何を提案するつもりですか?
大統領、私の2番目の質問はこれです。シリアで行方不明になっているアメリカ人ジャーナリスト、オースティン・タイスの母親が大統領に手紙を書いて、大統領はシリア政府やアサド前大統領と深いつながりがあるから、彼を探すのに協力してほしいと頼んできました。
このアメリカ人ジャーナリストを含む行方不明者を捜すために、シリアで何が起こったのかに関する情報をアサド大統領に求める用意はありますか?
ウラジーミル・プーチン:ジャーナリストについての質問をもう一度お願いします。ジャーナリストはどこに姿を消したのですか?いつ、そこで何が起こったのですか?
キール・シモンズ:今週、シリアで行方不明になっているアメリカ人ジャーナリストの母親からあなたに宛てた手紙があります。彼は12年間行方不明になっています。オースティン・タイスといいます。この手紙の中で彼女は、あなたが旧シリア政府、アサド大統領と非常に密接な関係にあると述べ、彼を見つけるためにあなたの協力を求めています。
シリアでの行方不明者と、この女性の息子であるオースティン・タイスについての情報をアサド大統領に求めますか?彼女は、息子について何か調べるのに役立つならモスクワに行く用意があると言っています。
ウラジーミル・プーチン:わかりました。どうぞお座りください。
正直に言うと、私はモスクワ到着後のバッシャール・アル・アサド大統領と会っていません。しかし、会うつもりですし、必ず話をするつもりです。
私たちは大人ですから、その人物が12年前にシリアで行方不明になったことを理解しています。12年です。12年前のシリアで何が起こっていたかはわかっています。シリアは両陣営の活発な軍事行動に巻き込まれていました。アサド大統領は、このアメリカ人、つまり私が知る限り戦闘地域で活動していたジャーナリストに何が起こったかご存じでしょうか。それでも、私は、この質問を必ず彼に尋ねることを約束します。ちょうど、今日シリアの現地で状況を管理している人々にこの質問を転送できるのと同じように。
あなたは、私たちが新しく選出されたトランプ大統領と会ったときに、私たちが何を提供できるか、あるいは私が何を提供できるかと尋ねました。
まず、彼が何も言っていないので、いつ会えるかわかりません。彼とは4年以上話していません。もちろん、いつでも話す用意はできていますし、彼が望むなら会う用意もあります。あなたは、私が弱った状態でこの会話をするだろうとおっしゃいました。
尊敬するシモンズ氏。なぜ「尊敬する」と言ったのか?それは、ロシアのメディアに対するあらゆる迫害にもかかわらず、私たちはあなたがロシアで仕事を続けることを許可しており、あなたは自由にそうすることができるからです。それで十分です。あなたと、米国であなたの給料を払っている人々は、ロシアが弱体化するのを本当に望んでいるのです。
私の意見は違います。ロシアは過去2、3年で著しく強くなったと私は信じています。なぜでしょうか。それは、ロシアが真の主権国家になりつつあり、ほとんど誰にも依存していないからです。経済に関しては、私たちはしっかりと自立することができます。経済成長率についてはすでにお話ししました。
我々は防衛力を強化しています。ロシア軍の戦闘態勢は現在、世界最高水準です。最高水準だと断言します。
同じことは我が国の防衛産業にも当てはまります。我が国は、陸軍と海軍が現在必要とし、将来必要とするあらゆるものの生産を増強しています。敵国とは異なり、我々は自信を持って迅速にこれを行っています。
ロシア連邦の防衛産業の生産増加が大きな要因となっている我が国の軍隊の成功については、すでにお話ししました。申し上げたとおり、我々は自信を持って、また極めて合理的にこれを行っています。
我々の部隊は前線に沿って前進していると言われています。その一つの説明は、私が言及した装備の存在です。はい、実際、NATO諸国はすべて我々と戦っています。
インフレについては話しました。では、向こうの状況はどうでしょうか。155mm砲弾を例に挙げましょう。2年前は2,000ユーロでしたが、今では4倍の8,000ユーロです。この傾向が続くと、ドナルド・トランプ次期大統領が常に主張していたNATO諸国の防衛費のGDPの2%では足りません。3%でも十分ではありません。ロシア軍の訓練と戦闘の水準、士気は世界のどの軍隊よりも高いのです。
だからこそ、ロシアは私たちが目指していた状態をほぼ実現したと私は信じています。ロシアは強くなり、真の主権国家となり、私たちは他人の意見に左右されることなく、自国の利益のみを考えて決定を下すようになります。
あなたはシリアについて言及しました。あなたと、私が言ったように、あなたの給料を払っている人たちは、シリアにおける現在の展開をロシアの敗北として提示したいのです。私はそうではないと断言します。その理由はここにあります。私たちは10年前にシリアにやって来たのは、例えばアフガニスタンのような他の国々で見られたようなテロリストの拠点がシリアに作られるのを防ぐためでした。私たちはその目標を概ね達成しました。
当時アサド政権や政府軍と戦っていたグループも内部で変化を遂げています。現在、多くの欧州諸国や米国が彼らとの関係を築こうとしているのは驚くことではありません。もし彼らがテロ組織だったら、このようなことをするでしょうか。これは彼らが変化したことを意味しますね。ですから、私たちの目標はある程度達成されたのです。
次に、我々はシリアに地上部隊を配備しなかった。単にそこにいなかったのだ。我々の存在は、空軍基地と海軍基地の2つの基地のみから成っていた。地上作戦はシリア軍によって行われ、周知のとおり、親イラン戦闘部隊が関与していた。我々はある時点で、その地域から特殊作戦部隊を撤退させた。我々はそこで戦闘に参加していなかった。
それで何が起こったのか?武装反政府グループがアレッポに進軍したとき、同市は約3万人の兵士によって守られていた。しかし、350人の戦闘員が市内に入ると、政府軍は親イラン部隊とともに抵抗することなく撤退し、撤退する際には陣地を破壊した。このパターンは、小競り合いが起こったわずかな例外を除き、シリア領土のほぼ全域で見られた。過去には、イランの友人たちが部隊をシリアへ移動させる支援を要請したが、今度は撤退支援を我々に求めている。我々は、フメイミム空軍基地からテヘランへのイラン戦闘員4,000人の移転を支援した。親イラン部隊の一部はレバノンへ、その他はイラクへ撤退したが、戦闘には参加しなかった。
シリア・アラブ共和国の現状は依然として厳しい状況にあります。私たちは心から平和と安定が回復されることを望みます。私たちは現地の情勢を掌握しているすべてのグループ、そしてすべての地域諸国と対話を続けています。それらの圧倒的多数がシリアにおける私たちの軍事基地の維持に関心を示しています。
分かりません。現在この国を支配している政治勢力、そして将来この国を統治することになる政治勢力との関係がどう発展していくかを考えなければなりません。我々の利益は一致していなければなりません。もし我々が残留するなら、ホスト国の利益のために行動しなければなりません。
それらの利益にはどのような意味があるのか?私たちは彼らのために何ができるのか?これらの問題は双方が慎重に検討する必要がある。私たちはすでに、基地の活用を含めた支援を提供する能力を持っている。私たちはこの提案をシリア国内および近隣諸国のパートナーにまで広げた。例えば、私たちはシリアへの人道支援物資の輸送にフメイミム空軍基地を活用することを提案したが、理解と協力の姿勢が示された。タルトゥース海軍基地についても同様である。
したがって、ロシアが弱体化したと描写したい人たちには…あなたはアメリカ人なので、かつて「私の死の報道は大いに誇張されている」と述べた有名な作家のことを思い出させたいと思います。
新しく選出された大統領ドナルド・トランプ氏と会談する機会があれば、話し合うべきことはたくさんあると確信しています。
【中略】
キール・シモンズ:私の質問は、ウクライナ問題で何らかの妥協をする用意があるかということです。キエフは妥協すべきであり、ウクライナも妥協すべきだとおっしゃっていますが、トランプ次期大統領が主導する可能性のある交渉で、あなたは何を提供する用意がありますか?
ウラジーミル・プーチン:非常に重要な質問のこの部分を聞き逃してしまったことをお詫びします。
政治は妥協の芸術です。私たちは常に、交渉と妥協の両方の用意があると述べてきました。問題は、相手側が文字通りにも比喩的にも交渉を拒否したことです。それとは逆に、私たちは常に話し合いの用意があり、話し合いは常に妥協点を見つけることにつながります。
2022年後半にイスタンブールで合意に達しました。何度目かの繰り返しになりますが、ウクライナ側がその文書に署名したため、内容に概ね同意したことになります。突然、彼らは離脱を望みました。理由は明らかです。なぜなら、象徴的な髪型をしたあなたの同盟者であるジョンソン氏が、彼らにウクライナ人を最後の一人になるまで戦うよう命じたからです。彼らはまさにそれをやっています。まもなく、戦いを望むウクライナ人はいなくなるでしょう。まもなく、戦いを望む人は誰もいなくなると私は信じています。
したがって、我々は準備ができていますが、その国が交渉と妥協の両方の準備ができている必要があります。
更にプーチン大統領は、トランプ氏と「4年以上話していない」と述べていますけれども、トランプ氏が大統領選勝利後11月7日、両者は電話会談をしています。トランプ氏はプーチン大統領に対しウクライナ侵攻を激化させないよう忠告し、ヨーロッパには多くのアメリカ軍が駐留していると念押しし、ヨーロッパの平和について話し合い、「ウクライナ戦争の早期解決」について、協議を続けていく意向を示したとのことです。
どうやら、プーチン大統領にとって、電話会議なんぞは、話したうちには入らないようです。
3.取引をしなくてはならない
一方、トランプ次期大統領は、プーチン次期大統領とどのような「ディール」をするのか。
これについて、12月16日のマール・ア・ラーゴでの記者会見でトランプ氏は少し言及しています。
そのやり取りは次の通りです。
発言者14:いいところにたどり着きましたか…ウクライナの話に戻りますが、大統領、この戦争を終わらせるためにゼレンスキー氏は何を放棄する覚悟をすべきでしょうか?トランプ次期大統領は「ディール」するとは言ったものの、どのような取引になるのかについては言及を避けました。プーチン大統領のイベントは、このトランプ氏のこの記者会見の後ですからね。端的にいえば「取引をしよう」との声かけに「話し合う用意はある。ただし互いに妥協は必要になるぞ」と答えたことになりますから、既に「ディール」は始まっているのかもしれません。
ドナルド・トランプ:彼は取引をする準備を整えるべきだ。それだけだ。
発言者14:何かお考えはありますか?
ドナルド・トランプ:取引をしなくてはならない。いや、取引をしなくてはならない。あまりに多くの人が殺されている。これは戦争だ、あまりに多くの人が殺されている…取引をしなくてはならない、そしてプーチンも取引をしなくてはならない。
発言者14:どのような取引を提案しますか?
ドナルド・トランプ:プーチンは取引をしなくてはならないが、もし私が大統領だったら、プーチンは決して参加しなかっただろう。もし私が大統領だったら、インフレは起こらず、石油価格はもっと低かっただろう。ロシアの陰謀が事態を難しくしたにもかかわらず、私はプーチンと良好な関係を築いていた。もしあの選挙が行われ、名誉ある選挙であったなら、今話題になっているような問題は何もなかっただろう。プーチンは決して参加しなかっただろう。
発言者15 :あなたはその取引が成立するとおっしゃいましたが、就任前に、その取引を成立させることができるとまだお考えですか?
ドナルド・トランプ:やってみる。
果たしてどういう取引が成立するのか分かりませんけれども、これ以上被害が出ない形で終わらせていただきたいと思いますね。
この記事へのコメント
金 国鎮
彼はよく知っているというのはよく勉強している。
こういう指導者はどこにもいない。
プーチンとトランプが政治合意に達することは政治情勢の根本を変えて、世界情勢を変える。
世界の経済情勢を変えて各国のインフレも抑えるだろう。
日本人はトランプを恐れているというニュースが出てきた。
日本の大手メディアに洗脳されているという証拠だね。
日本ではロシアと北朝鮮の安全保障の関係を不安視している人も又多い。
日本の大手メディア関係者は戦前と同じく全員同じ。
ロシアが北朝鮮の政治に介入してくれば北の住民の生活に必ず跳ね返っていく。
もし北の人民軍にロシアの存在が入ってくれば北の人民軍の中から金正恩体制からの
離脱が始まるだろう。特にルーブルの流入は大きい。
日本ではプーチンがロシア国民のために戦っている事を無視する人が多い。
彼はロシア国民に信仰の自由を認めている、しかし無制限の政治行動は許してはいない。
ロシア国民の年金にも注意を払っている。
これを北の住民は何も知らない。
プーチンは韓国は北進しないと言った、これは言い換えると北が南進しない、させないとも
言っている。韓国のユンソクヒョルの正体が世界に明らかになった。
プーチンと直接対話できないという事がこういうことを引き起こしていると韓国人は何時
考えるのだろうか?