SNSは理屈の世界

今日はこの話題です。
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1.税は理屈の世界


12月20日、自民・公明両党は、令和7年度税制改正大綱を取りまとめ公表しました。

「103万円の壁」については、従来の48万円から2割程度引き上げ、最高58万円とし、給与所得控除の最低保障額も現行の55万円から、65万円に引き上げるとし、親等が特定扶養控除を受けられる大学生年代の子等の給与所得を103万円から150万円まで引き上げ、超えた場合でも段階的に控除が受けられる仕組みを創設するとしました。

そして、「103万円の壁」について、さらなる上積みを行う場合について「仮に今後、これを超える恒久的な見直しが行われる場合の財政影響分については、歳入・歳出両面の取り組みにより、必要な必要な安定財源を追加的に確保する」と明記としたことから、一応、今後に含みを持たせてはいます。

宮沢洋一党税制調査会長は、大綱決定後の会見で次のように述べています。
・基礎控除等の引き上げにあたってはやはり物価といったものを基準にしてまいりましたので、まあの基本的には物価の上昇率だと思っております
・ただ今回についで言えば、物価、10%CPIのものは20%上がってるし、一方で足元でCPI自体がかなり上がってきている。
・また今後もこれが続くだろうというようなことも考えて20%ということにさせていただきました

・私どもはこういう形で税法の提案をさせていただいておりますけれども、あの全くこれを変えないで成立するというわけでもおそらくないわけでありまして、色々交渉していかなければいけないんだろうというふに思っております
・そういう中で財源の問題というのは大変大事なことでありまして、大綱にも記していただきましたけれども、今回の基礎控除等の引き上げにつきましては、物価が上がってきている、経済も大きくなってきているという中での引き上げでありますから、ある意味ではその財源といったものを考えなくていいレベルの引き上げだろうという風に思っております。
・ただ、一方で来年度の予算これから作るわけでありますけれども、後ほどお話しする減収分というのは国債費の増額、赤字国債の増加というもので賄っていることは事実でありますので、今後色々あの協議が続くにしてもですね、財源問題というものは切り離せない、そういう問題だという風に認識しております
103万の壁の引き上げ幅を従来の48万円から2割程度の引き上げをした理由として、消費者物価指数(CPI)の上昇を元にしたとしています。

更に宮沢氏は会見で、「103万円の壁」を巡り、国民民主党がSNSで自らの主張を発信していることについても、次のように述べました。
・次にSNSの問題でありますけれども、あの玉木代表と榛葉さんの会見と大変人気があるようでありまして、私どももそういう動きにある程度対抗できるようなSNS上働きかけといったものをやはりこれからはしていかなければいけないんだろうなという風に思っております。
・ただあの税というものはやはり基本的に理屈の世界でありますからそのしっかりとした理屈を伴ったものでなければいけないということもまた事実だろうと思います
玉木氏や榛葉氏の記者会見のユーチューブは数十万回再生されており、SNSで高い人気を誇っているのですけれども、今回の103万円を123万円への引き上げについて、玉木氏は公式X(旧ツイッター)で「123万円では話になりません」「インフレに勝つために必要な手取りの増加を実現するためには、123万円の宮沢案では不十分」などと批判していました。

宮沢氏の発言は、それを牽制する意味も込めてのことかもしれませんけれども、ネットでは、「税は理屈の世界」発言を捉え、ガソリンの二重課税の理屈を説明しろ、などと散々ツッコミを受けています。





2.嘘だった減収額


今回の政府与党の税制大綱について、早速国民民主の玉木氏が次のようにツイートしています。
与党税制改正大綱に書き込まれた123万円の引き上げ幅が不十分であることは改めて申し上げたいが、与党の大綱には、その「財源」に関して、大変興味深い記述がある。

すなわち、103万円→123万円への控除額の引き上げについては、

「デフレからの脱却局面に鑑み…特段の財政確保措置を要しない」

と明記していることである。

与党はこれまで、控除額の引き上げには、「減収を補う財源が必要だ」と主張していたのに、自分たちが控除額を引き上げるときには「特段の財源確保措置を要しない」としているのである。

もちろん、与党の主張する20万円の引き上げによる減収額は、国民民主党の主張する75万円引き上げ案より小さくなることは分かるが、では、どこまでの水準であれば、「特段の財源確保措置を要しない」のか、根拠も含めて示してもらいたい。

もし、20万円の控除引き上げに伴う減収に関して、「物価上昇による恒常的な税収増」を見込んでいるなら、それはいくらを想定しているのか。そもそも与党として、物価上昇による恒常的な税収増があり得ると考えているのか。ここはぜひ、今後の協議の中で説明してもらいたい点だ。

少なくとも、20万円程度の控除額の引き上げには「特段の財源確保措置を要しない」ことを政府・与党が認めた意義は大きい。

ちなみに、政府・与党はこれまで、控除額を1万円上げたら、国・地方合わせて1,050億円減収(国、500億円減収、地方、550億円減収)になると主張していたが、与党案の20万円の控除引き上げでは6,000億円〜7,000億円程度の減収になるとしており、1万円の引き上げによる減収額は300億円〜350億円となる。

これは当初示された1万円あたりの減収額(1,050億円)の3分の1であって、「7兆円〜8兆円の減収」は過度に不安を煽るものであったことは指摘しておきたい。

仮に、今回の与党案と同じ仕組みで178万円まで引き上げた時の減収額は、国・地方合わせて2.5兆円程度となる。

ちなみに、岸田内閣が本年6月に行った所得税・住民税の定額減税による減収額は3.2兆円であるが、この定額減税を行なってなお、2024年度は3.8兆円の税収の上振れと、過去最高の税収を記録したことを付記しておきたい。

いずれにせよ、私たち国民民主党としては、3党の幹事長間の合意に基づき、引き続き、「178万円を目指して」真摯に協議に向き合ってまいりたい。
玉木氏は、今回の123万円への引き上げについて「特段の財源確保措置を要しない」の根拠を問うと共に、これまで政府が主張していた178万に引き上げると「7兆円〜8兆円の減収」になるというのが「2.5兆円程度」ではないのかと指摘しています。

更に筆者が付け加えるならば、これまで財務省が税収は不安定だから財源にならないといっておきながら、今回の123万円への引き上げについては、「経済も大きくなってきている中では、財源を考えなくてよい」といっていて、思いっきり税収増を財源にしているようにしか見えません。

こういった指摘について是非とも「理屈」で説明いただきたいものです。




3.手取りが増えてしまう


SNSも関係しますけれども、マスコミの報道にも問題があると思います。いわゆる「切り取り」です。

12月22日、NHK討論番組「日曜討論」に出演した自民党の小野寺五典政調会長が、国民民主党の主張する所得税の非課税枠を「178万円」に引き上げる案について意見を述べる中で「手取りが増えてしまう」と発言したことが、SNS上で拡散され、批判を浴びています。

番組では国民民主党の「178万円」案に対し、自民党が「123万円」を提示していることから、司会に「どう一致点を見いだしていきますか」と聞かれた小野寺政調会長は、非課税枠「178万円」の場合、400~500万円の所得層は、手取りの増加が3、4万円程度になるとの試算を示した一方で、所得が2000万円以上の層では「30万円以上、実は手取りが増えてしまう」と言及したのですけれども、この「手取りが増えてしまう」が独り歩きして拡散していきました。

けれども、件の発言の全文は次の通りです。
今、国民民主党さんがおっしゃった就労抑制になっているものに関しては、今回、特定扶養控除を150万円まで上げる、ということを決めておりますので、そういう意味では、学生さんをはじめ、主婦の皆さんにも、しっかり働けていただけることが大事ですし、今後、106万、130万の壁、いわゆる社会保障の問題もありますから、これもしっかり議論していくことが大事だと思います。

もう一つ、これはおそらく、国民民主党さんとこれから詰めなきゃいけないと思いますが、例えば国民民主党さんが言うような178万円まで上げてしまうと、例えば…一番多い、所得をもらっている方の中で、例えば400万~500万円ぐらいの方ですと、3万、4万ぐらいの、おそらく手取りの増え、になりますが、逆に2000万円以上の方が、30万円以上、実は手取りが増えてしまう。本来、私どもがどこに手当をするかというと、今、大変なところの層に、手取りを増やしてあげたい。そして、この層の方であれば、おそらく入ったお金はすぐに使って、それがおそらく乗数効果ということで、景気対策につながると思うんですが、数千万円の所得がある方が、おそらく30万円ぐらい増えても(ここで司会の「発言をまとめてください」という注意が入る)それを使うということがあまりないと思うので、そこはどういう制度設計にするかが、大切なことだと思っています。
どうやら小野寺政調会長は、178万への引き上げでは、「(高所得者の)手取りが増えてしまう(が、低所得者層の手取りを増やしたい)」というニュアンスを、言いたかったようですけれども、否定的ニュアンスで拡散していったため、炎上したようです。

筆者は、それ以外に小野寺氏が「学生さんを始め、しっかり働けていただけることが大事」と発言しているところに注目しています。小野寺氏は以前、「なぜ学生が 103万円まで働くのか」と発言して炎上しましたからね。あるいはそれが、相当堪えたのかもしれません。さりげなく、発言の修正が入っています。


4.地価税で穴埋め


同じく、「切り取り」という意味では、国民民主の古川代表代行の「地価税」発言もあります。

前述の小野寺氏は同じく22日のNHK「日曜討論」で、国民民主党に対し、103万を178万に引き上げた場合に「7兆~8兆円という大きな予算の欠損が出るので何で穴埋めするのか提案してもらいたい」と求めました。

この7~8兆という額については、前述したとおり玉木氏が疑義を呈していますし、ネットでも「7兆~8兆円の欠損が出る明確な根拠はまだ財務省から示されてないが?」、「なんの財源が必要なのか教えてほしい」とツッコミが入っています。

まぁ、7~8兆円の妥当性はともかくとして、この要請に国民民主の古川代表代行は、22日のフジテレビの番組で、「東京の地価はバブル期を超えている。地価高騰を抑制する地価税というのがあるが凍結されている……3党の協議の中で“例えば、こんなのも考えたらどうですか”ということも内々に言った」と「103万円の壁」引き上げの財源の1つとして、地価税を挙げました。

地価税とは、一定の土地等を有する個人及び法人を納税義務者として課される国税、個別財産税の一つですけれども、これは元々、1980年代のバブル景気による土地投機取引による異常な地価高騰を抑制する目的で導入されました。

地価税では1000平方メートル以下の住宅地などは非課税とされ、さらに、億円単位の基礎控除が設けられたことから、結果として主な納税者は大企業となっていました。

そして、バブル崩壊以後、地価の急激な上昇はないとの見込みから、地価税は租税特別措置法71条により、1998年度より「当分の間」課税されないことになっています。

古川代表代行はこの地価税の復活を口にしたのですけれども、これにSNSが鋭く反応しました。

ネット上では「国民民主も減税のための増税を提唱していて草」「歳出減らせよ」「これが国民民主党の正体か」「何故財源、財源と言うのか?無駄な支出を減らせば財源なんていくらでもある」「各天下り団体を潰せば200万の壁さえぶっ潰せる」「減税で支持されてるのに増税言い出した」「減税の為に増税…」など反発の声が上がりました。

ただ、しばらく経つと、そのSNSには「古川さんが言っている地価税は外国資本に対して。日本人に対してではない。動画を見ればわかる。こんなんでオールドメディアのマスゴミに騙されるなよ?」などと、発言のニュアンスを指摘する投稿がちらほらでてきています。

更に、国民民主の玉木氏も、翌23日、地価税に関する報道についてと題して、次の様にツイートしています。

国民民主党の「手取りを増やす」政策の基本スタンスは「減税」です。

古川代表代行のテレビでの地価税についての発言は、土地を購入する外国人や外国法人など、課税すべきところには適切に課税した方が良いという文脈の中で例示したもので、党として決めたものではありません。

国民民主党は、インフレなどによる税金の取り過ぎを納税者に適切にお返しし、国民の生活を支えることを最優先に考えています。

古川代表代行本人からも同趣旨の内容が、午後の会見で述べられています。

「今の国民民主党はちょっとした発言でも切り取られて報道されてしまいます。マスメディアはなんでも火をつければ勝ちだと思ってるので、お気をつけ下さい。」「朝日新聞の引用で出てくるレジュメが悪意に満ちている。これじゃ古川さんの話を悪意をもって切り取ったとしか思えない」「ということは外国資本に対してですね!公式見解がでてよかったです」など、その趣旨を理解する旨のツイートも出てきています。

総じて、こちらは鎮火方向に向かっていると思われ、玉木氏の素早い「火消し」が功を奏した形です。

よく指摘されることですけれども、ネットは、たとえ、一時的にミスリードが起こっても、やがて他の人の指摘や修正が入って、正しい方向に収斂していく傾向にあります。

ネットは、双方向かつ多数のユーザーに開かれたインフラですけれども、なぜそうなるのかというと、ネットは、少数の人を長期間騙したり、多数の人を一時的に騙すことができても、多数の人を長期間騙すことは困難であるという民主主義のベースに近いものが、そのシステムの中に含んでいるからです。





5.SNSは理屈の世界


国民民主の玉木氏は、自民党の小野寺五典政調会長がテレビ番組で「国民民主党は国民の方を向いていると言うが、7兆円減税して喜ぶのは納税している国民(4割)だけ。自民党は非課税の国民(6割)を見てる」と発言したことについても、すかさず、反論ツイートしています。

件のツイートの内容は次の通りです。

自民党の小野寺政調会長の「税金を払っているのは4割で、自民党は税金を払っていない6割の国民のことを考える政党」というテレビでの発言が気になって調べてみました。

令和3年(2021年)の給与所得者4,692万人、申告所得者633万人の合計5,325万人が所得税を納めている人として、令和3年の日本の人口が1億2,551万人。よって、比率を計算すると、所得税を納めている割合は42.4%となります。所得税に関して言うと、納税者4割、非納税者6割というのは、そんなに外れた数字ではないかもしれません。(異論・反論あればお願いします。)

他方、住民税については、非課税世帯の割合は、地域によって異なりますが、全国的に見ると、非課税世帯は全世帯の約2割程度と言われており、所得税よりは納税されている人の比率は高いと考えられます。

ただ、税金を払っていない(払えない)国民のことを考えるべきという小野寺さんの主張はその通りなのですが、だからといって、税負担をお願いしている国民の負担が高いままでいいのかということにはならないと思います。

住民税非課税世帯への給付などは、特段の財源の手当てなくさっさと行ってきたのに、控除額を引き上げて納税者の負担を減らそうとすると反対する。こんな政治が続いてきたからこそ、国民民主党は、働いて税金を納めている納税者の立場に立った政策・政治をブレずに進めます。

応援よろしくお願いします。
これには賛否様々なリツイートがついていますけれども、やがてこれも時間と共に落ち着くところに収まってくるのではないかと思います。

このように議論の末、最後には筋道立てて結論が出るという意味は、SNSとて「理屈の世界」であり、税調だか何だか分からない閉じた「インナー」の議論で決まるよりも、広くオープンの場で結論がでるSNSのほうがより健全だといえます。

自民党の宮沢税制調査会長は、玉木氏や榛葉幹事長に対抗してSNSでの発信をしていかなければ云々と述べていますけれども、是非やっていただき、世の中の洗礼というか、「国民の声」を直に聞いていだきたいと思いますね。



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