

1.自公維の教育無償化実務者協議スタート
12月19日、教育の無償化に向けた自民党、公明党、日本維新の会の実務者による初会合が開かれました。国会内で開かれた初会合には、自民党の小野寺政務調査会長、公明党の岡本政務調査会長、日本維新の会の青柳政務調査会長のほか、3党の教育政策を担当する実務者が参加。2025年2月中旬までを目安に一定の結論を出すとしています。
専門チームは維新の会の呼びかけで設置されたもので、先の衆議院選挙で少数与党となった自民・公明両党としては、政策実現のため多くの野党と協力を進めていきたい考えと見られています。
翌20日、自公両党は令和7年度予算編成大綱案を公表しているのですけれども、この中の「4.誰もが安心して暮らせる社会を実現する/<実効的な少子化対策・こども政策の展開>」の中で、「教育無償化を求める声があることも念頭に、授業料等減免及び給付型奨学金について、多子世帯の学生等に対する授業料等減免を拡大する」との文言が入りました。
予算編成大綱案は、すでに決定している予算編成の基本方針に基づき、政務調査会の各部会が来年度予算に盛り込むべき内容について取りまとめたものですから、何某かはやるということでしょう。
勿論、「教育無償化」という枕詞がついている以上、日本維新の会の要請を意識したことはいうまでもありません。なぜなら、維新が令和6年度補正予算案に賛成する条件として、維新と自公の間で教育無償化などに関する実務者協議を行うことで合意したからです。実際、与党は維新側から聞き取った要請を反映させて原案を作成し、2025年大阪・関西万博に向けた「公共・日本版ライドシェア」なども盛り込まれています。
これについて、維新幹部は与党原案に要望を反映させた成果だとしていますけれども、その一方で、維新の党内からは、「空手形」だという批判の声も上がっているようです。
というのも、「教育無償化を求める声があることも念頭に……」という表現が、どのようにも解釈できる「霞が関文学」になっているからだということのようです。
ある省庁担当者は「本気でやる場合は『目指す』などと書く。『念頭に』という表現は気にしてますよ、ぐらいの意味合いだ」と解説。維新の古参メンバーは「この程度の表現で約束されたと思い込んでいるのなら完全にアウトだ」と新執行部の対応を非難。一方、前原誠司共同代表は周囲に「まずは与党案に書き込んでもらうことが大事。中身は実務協議の中で詰めていく」と語っています。
霞が関文学的表現だと「念頭に」は「本気ではない」そうです。その意味では、「178万円を目指す」とした103万円の壁引き上げの自公国3党合意文書は、それなりに「本気」だということになります。
2.天秤にかけられるつもりはない
その国民民主ですけれども、玉木代表は18日、Xで「財務省の戦略」として次のようにツイートしました。
自民党、公明党は、国民民主党に提示した「123万円案」をそのまま盛り込んで、今週20日(金)にも税制改正大綱を取りまとめるとのこと。3党の幹事長間で合意したにもかかわらず見切り発射とは驚きました。なんと、2025年度予算案への賛成を条件とした「密約」があるのではないかと指摘したのですね。
もともと、財務省の戦略は、
・維新の新体制が発足次第、関係部局が接触
・当初予算の修正等で盛り込める政策を探る
・国民民主、維新、立民で予算に対する影響が最も「安上がり」の政党と握る
ということだったようなので、最近の維新幹部の発言を聞いていると、維新と握る算段がついたということなのでしょうか。
いずれにせよ、私たち国民民主党は、選挙で約束した「手取りを増やす」政策にこだわり「178万円を目指して」引き続き頑張ります。
応援よろしくお願いします。
これに対し、同じく18日、維新の吉村洋文代表は、「玉木さん、我々は何も握っていません。103万円の壁突破には賛成の立場です。憶測は控えて頂いた方がよいかと。
地獄の底まで、本気で腹括ってやる、一緒に178万円目指してやろう、というなら、協議しましょう。但し、パフォーマンスはなしです。僕らも実現したい公約がありますので。」とリツイートしています。「我々は何も握っていません」とか「パフォーマンスは」とか「僕らも」とか所々「太字」になっている辺り、「密約説」を強く否定したい気持ちを感じます。
自民党、公明党は、国民民主党に提示した「123万円案」をそのまま盛り込んで、今週20日(金)にも税制改正大綱を取りまとめるとのこと。3党の幹事長間で合意したにもかかわらず見切り発射とは驚きました。
— 玉木雄一郎(国民民主党) (@tamakiyuichiro) December 18, 2024
もともと、財務省の戦略は、
・維新の新体制が発足次第、関係部局が接触…
玉木さん、我々は何も握っていません。103万円の壁突破には賛成の立場です。憶測は控えて頂いた方がよいかと。
— 吉村洋文(大阪府知事) (@hiroyoshimura) December 18, 2024
地獄の底まで、本気で腹括ってやる、一緒に178万円目指してやろう、というなら、協議しましょう。
但し、パフォーマンスはなしです。僕らも実現したい公約がありますので。 https://t.co/xcCCb9Y0HX
そして、19日、日本維新の会の前原共同代表は、定例会見で「我々は国民民主党の年収の壁引き上げについて大賛成。それを邪魔するつもりは毛頭ない。そういうご懸念があるのであれば、国民民主と協力して、両方とも実現するために共に取り組んでいきたい」と「年収103万円の壁」引き上げについて、国民民主党と共闘する可能性を口にしました。
前原氏は、自民が維新、国民民主をてんびんにかけているとの報道に触れ「天秤にかけるという表現があったが、天秤にかけられるつもりは全くない……今の現状で、野党も果たすべき役割がある。我々は教育の無償化、国民民主は年収の壁。国民のために実現させるということで、自公と話し合いされているし、我々も始める。あれかこれかの話ではない」と強調しました。
そして、「両方とも実現するために、国民民主と連携をするということは大事なこと。我々は教育無償化については3党協議で努力をしてまいりますが、教育無償化と年収の壁引き上げの共闘が必要な状況になれば、我々はその用意がある」と述べ、密約説についても「我々は予算の賛成を前提に、話をしているのではない。始めから『予算に賛成しませんよ、だけども政策協議に応じてください』と言っても、自公にとっても何のインセンティブにもならない。最終的に、総合的に判断するということ」と否定しました。
ただ、前原氏は2023年11月に国民民主を離党し、除名処分になった過去があります。これについて前原氏は「我々は国民全体に対して、責任を負うということで議席をいただき、活動している。議員の過去の経緯とか、そういったことを超越して、本当に国民が求めていくことについて協力をするということは当たり前。呼びかけをすれば、ご理解をいただけるのではないか」と述べたものの、国民民主との関係性づくりの難しさを問われると「やってみなわからんですよね。こればっかりは。少数与党は28年ぶり。新たな未開の土地を歩くような話……国民、国益のため、どう振る舞うのかということを執行部でしっかりと話をしたい」と語るに留めています。
3.壊し屋前原と橋下戦略
日本維新の会は、国民民主を離党した前原氏を受け入れたかと思ったら、あっという間に共同代表に据えました。また、政府の補正予算案の撤回と組み替え編成を求める動議を国会に提出していたのが、12日の衆院本会議ではあっさりと賛成に回るなど、そのフラつき振りが目立ちます。
これについて、週刊文春オンラインは14日に「「日本維新の会」の崩壊が加速…!吉村洋文が橋下徹のアイディアを実現するために行った「異常人事」の副作用」という記事を掲載しています。
件の記事の概要は次の通りです。
吉村洋文新代表と前原誠司共同代表の2連ポスターにするか、それとも吉村氏単体で行くか……。夏の参院選を睨んで、他党とのパイプを持つ前原氏を「壊し屋」と分かっても受け入れたというのですね。
「日本維新の会」総務会長に就任した阿部司氏は、新たに作る党のポスターの件で頭を抱えていた。
「せっかく再スタートを切るのに、旧民主党のイメージを引きずる前原さんが並んでいると違和感があるのでは、と悩んでいました」(維新中堅議員)
若手を次々と執行部に起用し、心機一転船出した維新。だが、前原氏の共同代表就任には党内でも疑問の声が止まない。
「前原さんは国民民主党の代表選で玉木雄一郎さんに敗れ、新党を結成。10月に維新に合流したばかりです。なぜ『外様』である前原さんが共同代表なのか」(維新若手議員)
この人事には吉村氏が掲げる「選挙戦略」が関係しているという。
「吉村氏は立憲民主党をはじめとする野党との選挙協力を明言。来夏の参院選1人区で、選挙本番前に野党だけで『予備選』をして候補を一本化する案を掲げています。実はこれは維新の創設者である橋下徹氏が主張している戦略そのまま。これを実現するには野党と相当な調整が必要ですから、野党とパイプを持つ前原さんに白羽の矢が立ったのです」(維新関係者)
さらに吉村氏には、別の思惑もあったという。
「吉村さんは馬場さんら旧執行部と距離があります。そこで馬場さんが維新に引き入れた前原さんを共同代表にすることで、党内融和を図ったのです。馬場さんにとっても、院政を敷いたように見せられるので顔が立つ」(前出・維新中堅議員)
しかし、先輩2人のあいだで奔走する吉村氏の姿には、党内からも冷ややかな声が漏れる。
「吉村さんは前原さんをうまく使おうとしているようですが、前原さんは我を通す人。だからこそ旧民主党を解体に導き、『壊し屋』と呼ばれている。一歩間違えば、維新も崩壊するでしょう」(前出とは別の維新中堅議員)
「劇薬」の効果はどちらに出るのか。
まぁ、維新は維新で戦略を持って動いているのかもしれませんけれども、その視界に国民が入っているのかどうかは気になるところです。
4.国民民主と減税協議を始めた青山繁晴
一方、与党はというと、ようやくなのかどうなのか「石破降ろし」の風が吹き始めました。
自民党執行部が10月の衆院選で派閥の政治資金問題に関与した議員を非公認とする対応に対し、党内保守派を中心に不満の声が噴出しています。
元経済産業相の西村康稔氏は、20日発売の月刊誌「Hanada」のインタビューで執行部の対応を批判。「一度区切りを付けたにもかかわらず、世論の風向きを見て追加処分を科すようでは、この問題は永遠に終わらない」と指摘。落選した議員たちの「恨み節は非常に強い」と述べ、「志を同じくする仲間と政策を練り上げ、力強いメッセージを発信していきたい」と将来的な総理就任への意欲を表明しています。
また、21日、自民党の高市早苗元政調会長も党執行部が派閥裏金問題を理由に一部候補を非公認としたことを「とんでもなくひどい話だ……自ら不記載の問題を選挙の主要争点にしてしまった」と、選挙戦略に疑問を呈し、石破総理の所信表明演説について「新たに何をなさりたいのかが見えてこなかった……防災庁の創設構想だけは分かったが、それだけでは足りない」と批判しています。
これについて、ジャーナリストの門田隆将氏は「石破降ろしの号砲は鳴った」とツイート。ネットでは石破降ろしに期待する声もある一方で、高市氏について「保守層のガス抜き要員だ」との批判の声も出ています。
Hanadaで高市早苗氏が不記載議員の一部を先の衆院選で非公認とした事に「とんでもなくひどい話だ。最もやってはならない事。自ら不記載の問題を選挙の主要争点にしてしまった。所信表明演説も新たに何をなさりたいのか見えてこなかった」と痛烈批判。石破降ろしの号砲は鳴ったhttps://t.co/D605LNKP2E
— 門田隆将 (@KadotaRyusho) December 21, 2024
今回の103万円の壁引き上げを巡る、宮沢税調会長を始めとする自民党議員の発言は、国民を馬鹿にし、苦しめるものだ、と大変なバッシングを受けていることを考えると、自民党保守派が多少の石破批判をしたところで、ただのガス抜きだと見てしまう気持ちも分からなくもありません。
あまりにも嘘をつき過ぎたせいなのか、世論は政治家の言葉を信じなくなってきているのではないかと思います。
そんな中、自民党の青山繫晴参院議員は21日、自身のブログで、国民民主党と減税の協議をしていることを明かしています。
該当部分だけ引用すると次の通りです。
▼12月19日木曜、秘かに国民民主党の重要人物と会い、国民の過大な負担を実際に軽くする減税について、自由民主党内部のわたしたちといかに連携して実現するかという協議をおこないました。自民内部と連携して、減税を実現するということですから、具体的な方策について話したと思われますし、新しい合意がなされたと述べています。
長時間をかけて、深い意義のある会談結果となりました。
しかし相手が誰であるか、どんな会談結果であるか、お話しできません。
それをやれば交渉が破綻します。
交渉事は常にそうです。
交渉が破綻するのを避けるため、詳しい内容は明かしていません。
【中略】
この頃は「国民民主党の減税案を実現するために、おまえは何もしていないに違いない。何かやれ」という趣旨の書き込みが日々、やってきます。
その『何か』のひとつが、たとえば、上述の協議です。おたがいのちいさな努力と共感の積み重ねがあって、実現した協議です。
この協議によって生まれた新しい合意は、深い影響をもたらすでしょう。
しかし一切、漏らしませぬ。褒めてもらうためにやってるのじゃない。
実際にどうなるか分かりませんけれども、これが形となって、本当に国民のための減税となるならば、「ガス抜き」ではなかった証左の一つともなり得ます。今後の推移を見守っていきたいと思います。
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