

1.ウクライナには安全保障が必要です
ウクライナ戦線に派遣されている北朝鮮兵士が多数死傷しているようです。
1月6日、ウクライナのゼレンスキー大統領はアメリカのコンピュータ科学者であり、ポッドキャスターであるレックス・フリードマン氏の番組に出演し、ウクライナ戦争について3時間以上にも及ぶ単独インタビューを受けました。
この中でゼレンスキー大統領は停戦の見通しについて次のようにはっきりと述べました。
・まず、1月25日、トランプ氏と話し合います。戦争を止め、プーチンを止める方法については、私たちは彼と意見が一致しています。ゼレンスキー大統領は、トランプ大統領の仲介による停戦を歓迎する一方、ウクライナに対する安全保障が確実に保証されることが条件だと強調した上で、トランプ後もそれが保障されなければならないと述べています。
・私たちにとって、ヨーロッパが発言権を持つことは非常に重要です。これが第二のことです。
・トランプと私は合意に達するでしょう。そして、もし彼がヨーロッパと共に強力な安全保障を提供できれば、私たちはロシアと話し合うことができます。
・ウクライナには安全保障が必要です。何よりもまず、私たちは危険にさらされています。
・かつて「ウクライナには安全保障の保証がありました。ブダペスト覚書、核兵器はウクライナが持っていた安全保障の保証でした。
・今日、私たちが戦争状態にあるのは、あなた方が核保有国の手を解き放ったからです。核保有国は私たちとウクライナに対して戦い、やりたい放題しています。
・今停戦について語っていますが、ただの停戦です。プーチン大統領に花を贈って、「この数年間、本当にありがとう。あれは私の人生の素晴らしい部分でした」と言ってみてはいかがでしょうか。
・ブダペスト覚書、核兵器、これが私たちが持っていたものです。ウクライナはそれを防衛のために使用しました。
・ブダペスト覚書には、ウクライナに対する安全保障の保証が最初に3つ含まれていました。ウクライナにとって最も重要な安全保障の保証国は、ウクライナの3つの戦略的友好国とパートナーです。これには合意がありました。米国、ロシア、英国、フランス、中国が参加しました。
・英語では「保証」という言葉がありました。 ロシア語では、「保証」とは何でしょう?
・つまり、核兵器を放棄するということです。米国とロシアからウクライナに核兵器を放棄するよう圧力がかかっていたのです。この2つの大国は圧力をかけていました。この2つの国はウクライナが核兵器を持たないように交渉しました。ウクライナは同意しました。これらは最大の国です。これは安全保障すら提供しない核保有5カ国です。
・彼らは誰もこの国、この人々、この安全保障などについて気にも留めなかった。ブダペストに関する質問は簡単です。これを信頼できるでしょうか? いいえ。この 5 か国のうちどの国が交渉のテーブルに着いたとしても、それはただの紙切れです。
・これは列車です。これはウクライナが長年乗ってきた、安全が保証された紙くずの列車です。この列車の 2 両目はミンスク合意です。
・ブカレスト、共和党のブッシュ大統領は、ウクライナはNATOに加盟すべきだと言っています。これは共和党の声です。ウクライナはNATOに加盟すべきです。誰もが米国に目を向けています。全員が賛成です。
・誰が反対しているのでしょうか?メルケルです。彼女は反対し、ウクライナにNATO加盟の招待を与えないよう全員に強制しました。なぜならそれは一歩前進になるからです。
・次に、ミンスクですが、私たちは成功しませんでした。ミンスク合意後、私が言ったように、何百もの会議が開催されました。私は2019年以来何百もの会議を開催してきました。停戦については考えられませんでした。停戦は私たちの提案であり、誰かの提案ではありません。
・ウクライナでは社会が分裂していました。誰もが望んでいたわけではなく、半分は望んでいませんでした。私はウクライナの大統領です。国民の70%から適切な措置を取るよう信任を受け、それを実行しました。
・ こうした会談は真剣で準備の整ったものでなければなりません。平和を望む人々のために準備しなければなりません。ウクライナは平和を望んでおり、米国は平和を望んでいます。私たちはトランプ氏と会談しなければなりません。それが何よりもまず第一です。さらに、彼は電話で、私たちが会うのを待っている、公式訪問があると言っていました。そして私の訪問は彼にとって最初の訪問、あるいは最初の訪問の一つになるでしょう。
・私たちには彼のビジョンが必要です。彼はこれらすべての詳細を検討する必要がありますが、彼のビジョンをお願いします。なぜなら、プーチンは彼を恐れているので、彼はプーチンを止めることができるからです。
・ですが、トランプは民主主義国の大統領であり、終身在任ではありません。彼はプーチンではありません。彼は25年間在任しません。
・彼は任期中は大統領を務めます。教えてください。例えば、彼は4年間大統領を務め、5年目にはプーチンが戦争を仕掛けてきました。トランプは、自分の任期中に戦争がなかったこと、そしてウクライナが彼の後に破壊されたことで気分が良くなるでしょうか?なぜ破壊されたのでしょうか?プーチンは誰であれ、殺人者であれ、誰であれ、愚か者ではありません。彼は備えているでしょう。彼は我々の過ちを知っています。
・彼は、侵攻が始まった後、我々が彼の軍隊をどうやって打ち負かしたかを理解しています。彼は、これはソ連の戦争ではなく、我々には起こらないことを理解していました。彼は準備するでしょう。彼はすべてを武器生産に投入するでしょう。彼はたくさんの武器を持ち、非常に大きな軍隊を持つでしょう。そして、そのような屈辱の後、戦争のない4年間で、彼は我々を終わらせなかったと思いますか。
これまで安全保障の合意が何度も反故にされたことで相当警戒感を持っているようです。
2.ロシアが北朝鮮の兵士を招待するのを止めたいのです
ゼレンスキー大統領は、トランプ政権が終わった後もウクライナには安全保障が提供されなければならないと述べています。
それは、なぜか。プーチン大統領が戻ってきてウクライナを再侵略するだろうと見ているからです。
ゼレンスキー大統領は次のように続けます。
ゼレンスキー大統領:彼は戻ってきてウクライナとだけ戦うでしょう。彼は周囲のすべてを破壊するでしょう。そして、例えばトランプ大統領がNATOから脱退するリスクがあると言うなら、それは米国の決定です。私が言いたいのは、もしそうなればプーチンはヨーロッパを破壊するだろうということです。ヨーロッパの軍隊の規模を計算してみてください。ただ、理由があってそう言っているだけです。計算してみてください。では、なぜヒトラーはヨーロッパ全土をほぼ征服したのでしょうか。数えてみてください。彼の何百万もの軍隊を思い出してください。ヨーロッパに何があるか計算してください。最大の軍隊はどれですか。私たちは最大の軍隊を持っています。ウクライナ軍はヨーロッパで最大です。私たちの次の2位は私たちの4分の1の規模です。ゼレンスキー大統領は、北朝鮮はウクライナに12000人の兵士を投入し、3800人が死亡または負傷したが、もっと兵を連れてくることができる。独裁国家だからだ。しかし西側はそうではない。無尽蔵に兵をつぎ込むことはできない。だからといって、これを放置すれば北朝鮮はウクライナ戦争のノウハウを持つことになり、それが太平洋地域のリスクの拡大に繋がると述べています。
レックス・フリードマン:フランスですか?
ゼレンスキー大統領:はい、20万人です。フランスには約20万人いると思います。私たちは98万人います。
レックス・フリードマン:これがヨーロッパ諸国の強力な連合です。
ゼレンスキー大統領:それだけでは十分ではありません。
レックス・フリードマン:そうですね、それだけでは十分ではありません。でもあなたは賢い人です。アイデアはたくさんあります。南インド、中東、サウジアラビアとのグローバルなパートナーシップ、政治的パートナーシップ。それらはすべてあなたを守ります。
ゼレンスキー大統領:まず、一つの例を見てみましょう。北朝鮮です。この例を見てください。12,000人が到着しました。今日、3,800人が死亡または負傷しました。彼らはさらに多くを連れてくることができます。30,000人から40,000人、あるいは500人かもしれません。彼らは多くの人々を連れてくることができます。なぜでしょうか?彼らには秩序、独裁政治、そしてすべてがあるからです。ヨーロッパは人々を団結させることができるでしょうか?いいえ。ヨーロッパは200万から300万人からなる軍隊を編成できるでしょうか?いいえ、ヨーロッパはそんなことはしたくないでしょう。そして何のために?私たちはあなた方との世界戦争を望んでいません。そのような目的はありません。全員を集めるような目的はありません。
我々はいかなる戦争も望んでいません。ロシアが北朝鮮の兵士を招待するのを止めたいのです。招待されたのです。彼らの顔は焼かれています。彼ら自身も顔を焼かれています。逃げることができなかった人々は負傷したり、殺されたりしています。ビデオがあります。私が話していることはすべて、彼らが認識できないように証拠があります。違いますか?それはどういう意味ですか?それはヨーロッパを共有する価値観から来ています。ヨーロッパは重要です。つまり、彼らは数えられないということです。そうです。彼らは人数を数えていません。それが答えです。
【中略】
たとえ米国がNATO離脱を考えているとしても、この戦争は米国に影響を及ぼします。北朝鮮がその最初の兆候だからです。北朝鮮の技術、北朝鮮の知識は、彼らがこの戦争から得ているものです。これには、新しい技術の習得、大型ドローン、ミサイル、その仕組み、今日の技術戦争、サイバー戦争などが含まれます。朝鮮はこれらすべての技術を本国に持ち帰り、その地域で拡大します。そしてこれは太平洋地域にとってリスクとなります。何よりもまず安全保障です。日本と韓国はこれらのリスクに100%直面することになり、台湾もそれらに直面しなければならないことは明らかです。
これがなければ不可能です。これはすでに起こっています。これはすでに起こっています。したがって、トランプ大統領にはプーチン大統領を阻止し、ウクライナに強力な安全保障を与える全権があると思います。
まぁ、言っていることは分からなくはありませんけれども、議論の終着点は、アメリカを始め西側諸国はウクライナの安全保障をいつまでも与えるべきだ。プーチンは信用できない、に行きついているようにみえます。
3.むしろ足手まといになっている
ゼレンスキー大統領は北朝鮮兵について、脅威というよりはむしろ、いくらでも投入できる独裁国家の人柱的な意味で発言しているように見えますけれども、北朝鮮兵が多数死傷していることは確かなようです。
昨年12月19日、韓国の国家情報院は、韓国国会情報委員会が開催した非公開の懇談会で、ロシアに派遣された北朝鮮兵のうち、少なくとも100人以上が死亡したと把握していると明かしています。
国情院は、「クルスク地域に配置された推定1万1000人以上の北朝鮮兵の一部が、12月に入って実際の戦闘に投入され始め、その過程で少なくとも100人以上が死亡し、負傷者は1000人に達すると見られる……少なくとも4つのウクライナ情報機関および友好国の情報を最大限に集め、総合的かつ冷静に判断した結果の数値だ」と説明しています。
また、交戦回数が少ないにもかかわらず、多くの犠牲者が発生した背景については、「開けた地形という慣れない戦場環境で北朝鮮兵が前線突撃隊として消耗されており、ドローン攻撃に対する対応能力が不足しているため……ロシア軍内でも『北朝鮮兵がドローンに無知で、むしろ足手まといになっている』という不満が出ている状況」とも述べています。
そして更に、ロシアに派遣された「『暴風軍団』内部で追加兵力の徴集説が流れており、金正恩が訓練視察を準備している状況も確認された。北朝鮮兵の追加派兵の可能性を注視している……北朝鮮の従来型兵器の近代化など、ロシア側の見返りが提供されると予想される」とし、追加派兵の規模について「現段階では具体的に述べることはできない……派兵余力は十分にある。暴風軍団は10個旅団・約4万6000人規模であり、(すでに派兵された)1万1000人を考慮しても、追加派兵が可能な状態だ」と説明したようです。
ゼレンスキー大統領は先述のポッドキャスト番組で北朝鮮兵について新たに30,000人から40,000人の多くの人々を連れてくることができると述べているところをみると、北朝鮮の派遣可能兵力についてある程度の情報を持っているものと思われます。
それにしても、開けた土地で前線突撃するなど、ドローンの良い的にしかなりません。
ホワイトハウス国家安全保障会議報道官のジョン・カービー氏は、北朝鮮は 「高度に洗脳されており、攻撃が無駄であることが明らかな場合でも攻撃を強行している」と述べています。
また、カービー氏は、複数の北朝鮮兵が、ウクライナ軍の捕虜となることを拒み、投降せず自殺したとの報告があるとし、捕虜になった場合、北朝鮮当局が家族に報復するのを恐れたためだと指摘しています。
更に、ゼレンスキー大統領は12月27日のビデオ演説で、「ロシアと北朝鮮の双方が、北朝鮮兵の生存を確保することに関心がない」と指摘。北朝鮮兵がウクライナ軍の捕虜にならないよう、極端な措置が取られているとして、「自軍によって処刑される例もある」と述べています。
その一方で、ウクライナメディアによると、先月27日に北朝鮮軍の高位将校がクルスク戦闘に投入された北朝鮮軍人の大規模な死傷を調査するため、クルスク州のロシア軍基地を訪問したと報じています。
流石の北朝鮮とて、あまりの兵の損耗率にその理由を探らずにはいられなかったのでしょう。北朝鮮兵とて畑から採れるわけではありませんからね。
総兵力134万とも言われる北朝鮮軍ですけれども、大多数は戦闘能力を持たない兵士で、建設現場や農作業に動員されているのが実情だと言われています。韓国の国防白書は、北朝鮮が20万人の特殊部隊を保有と報告していることから、実際の戦闘兵力とそれくらいではないかと思われます。
実際にウクライナに派遣された北朝鮮兵士が、果たしてウクライナ戦争を生き延び、対ドローン戦などノウハウを持って帰れるくらいの高い能力を持った兵士達なのかどうか分かりませんけれども、北朝鮮が見返りとしてロシアから何を得てくるのか。食料やエネルギー以外の軍事技術、たとえば、極超音速ミサイル技術などを入手するのかどうか。
日本としては、そちらをより警戒すべきではないかと思いますね。
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