

1.こんにちは、さようなら
12月6日、石破総理はBSフジ番組で、アメリカのトランプ次期大統領との面会時期に関して「大統領になっていろいろな発言をされ、人事をやられた後の方が、私はやりやすい……大統領就任後の方が、向こうも責任ある立場として発言しやすいだろう」と述べました。
また、石破総理は北朝鮮の相次ぐミサイル発射やロシアによるウクライナ侵攻、バイデン米大統領のUSスチール買収禁止命令といった諸課題について「日本として何を言うべきかは、本当にきちんと戦略を練ってやっていかないといけない……『こんにちは、さようなら』では話にならない」との認識を示した。
一見、それっぽく聞こえなくもありませんけれども、あれほど就任前に会いたいと言って動いていたのは何だったのか。また、11月7日のトランプ次期大統領のとのたった5分の電話会談は「こんにちは、さようなら」ではなかったのか、と突っ込みたくなります。
それに、昨年12月に安倍昭恵夫人がトランプ次期大統領と面会した後、石破総理との会談の機運が高まって、1月中旬にアメリカで行えないかトランプ氏側から打診があるところまで漕ぎつけていたのに、です。
就任前面会を見送った理由については分かりませんけれども、識者の中には、安倍元総理への対抗心から昭恵夫人の手を借りたくないという心理が働いたのではないかという人もいます。ただ、一国の総理とあろうものがそんなケツの穴の小さいことで国家運営できるのか、かえって不安になります。そうでないことを祈りたいです。
2.日米関係は周回遅れになった
そのトランプ次期大統領は、就任前でも積極的に他国首脳と面談しています。
1月4日、トランプ次期大統領の私邸マール・ア・ラーゴを訪問したイタリアのメローニ首相と会談し、「私は素晴らしい女性、イタリアの首相と一緒にいる。彼女は本当に欧州を席巻している」と讃えました。
会談には、トランプ氏が国務長官に指名したマルコ・ルビオ上院議員と国家安全保障担当補佐官に指名されたマイク・ウォルツ下院議員が同席。メローニ首相はX(旧ツイッター)にトランプ氏の隣に立つ自身の写真を投稿。トランプ氏に歓迎への謝意を示しました。
会談で話し合われた内容について詳細は明らかにされていないものの、先月イラン首都テヘランでイランの法律に違反したとして拘束されたと伝えられているイタリア人ジャーナリスト、セシリア・サラ氏が議題に挙がった可能性があるとも伝えられています。
安倍・トランプ時代は、北朝鮮拉致問題でも強い連携の元、奪還に向けて日米両国が動いていたことを考えると隔世の感すら漂います。
日米関係筋は「石破首相は出だしでトランプ氏側に忌避されたのが痛い。日本政府は面談が実現しなかった理由を『トランプ氏側の事情』と説明したが、実際はトランプ氏と接点がなかったことや、安倍氏の『政敵』だったことが響いた。リカバリーも稚拙で、日米関係は周回遅れになった」と述べているようですけれども、安倍昭恵夫人のサポートを受けても「稚拙なリカバリー」しかできないのだとしたら、外交で期待できる部分などあるのかと心配になります。
3.悪夢の石破政権
石破政権の体質について、上武大学の田中秀臣教授は、夕刊フジZakZakに1月7日付で「悪夢の石破政権、立憲民主党との緊縮連合で延命なら危機的事態に…」という記事を寄稿しています。
件の記事の内容は次の通りです。
新年に免じて、私個人の一年の願いを書くことを許されたい。今年の最優先の願いはなにか。それは石破茂政権が一刻も早く瓦解(がかい)することである。これは国民の生活と生命を守るために肝心だと考えている。田中教授は石破政権の体質を立憲民主党と似ているとし、その延命は「国内の最大の危機的出来事」とまで断じています。
理由の一つは、国民民主党が主張する「年収の壁」引き上げ議論でみえてきた「財務省依存体質」である。日本の長期停滞や経済政策の混乱のもとをたどれば、財務省官僚とそれと結託している自民党議員たちのムラ社会的意識に行きつく。「ザイム真理教」というのはよくできたあだ名で、まさに財務省に巣くう連中にとっては、世の中の動きよりも自分たちの価値観だけが至上の真理となる。その姿は、宮沢洋一自民党税調会長の減税への否定的姿勢に典型的である。「増税こそムラの勝利、減税は敗北」とする異様な教義が、ようやく世間の注目を集めてきたのはいいことだ。
経済政策と同様に、石破政権の中国びいきには、危機感を抱く必要がある。岩屋毅外相が訪中し、そこで中国人向けのビザの発給条件を緩和する提案を行った。日本国内では中国人観光客による靖国神社などへの政治的な意図を持った損失行為、NHKでの中国人通訳の政治的で常軌を逸した発言など、それらが中国共産党の歴史教育や政治のあり方によってもたらされたことは周知の事実だ。また、日中外相会談が終わるタイミングで発覚した、日本の排他的経済水域(EEZ)で中国が新たに設置したブイの問題を含め、中国側からの具体的な対処はまったくない。だが、石破政権はビザの緩和や日中の経済交流拡大に積極的だ。
米中貿易戦争からコロナ禍、ウクライナ戦争を経て、日本は中国の抱えるリスクからできるだけ距離をとるべきだとの教訓を得たはずなのに、石破政権のやることはむしろ「媚中」ともいえる姿勢である。
他方で、同盟国の米国、特にトランプ次期政権との距離感は埋まらないままだろう。まるでひと昔前の「悪夢の民主党政権」を再現しているかのようである。
実のところ、石破政権の政治的体質は、「悪夢の民主党政権」を緊縮政策面で継承する野田佳彦代表の立憲民主党と似ている。石破政権が、私の願いよりも延命する可能性があるとしたら、立憲民主党との「緊縮連合」か、日本維新の会も利用した方策かもしれない。それが国内の最大の危機的出来事になろう。
日銀の金融政策は、経済が安定化する前に、利上げスタンスを強める可能性がある。今年が日本社会、経済の危機に陥らないためには、可能性はほぼないが、石破首相が国内外の政策を大胆に転換するか、あるいは世論の力で政権瓦解に追い込むしかないだろう。そのために今年一年も私なりに尽力したい。
4.議論は物事を決めるためにある
一方、今後の石破政権の政権運営を占う上で、石破総理の答弁から3つの特徴があるという、興味深い分析記事もあります。
1月5日、日テレニュースが配信した「総理番記者が「石破構文」を徹底分析…国会答弁約22万語から見えた「3つの特徴」 今年の政権運営のポイントとは?」という記事です。
件の記事では、予算委員会での総理答弁「約22万語」を分析し、一番多かった語句や象徴的なやりとりを抽出しています。
まず、石破総理の答弁で実際に使った言葉を多い順に並べてみると次の通り。
【石破首相の使った言葉ランキング】記事では、答弁分析から「『私(首相)ども』と『野党議員』が『議論』する」という特徴があり、政府関係者の「首相は議論が好きなんだよね」というコメントや、「周囲が用意した原稿以上に丁寧に自分なりに表現している」という評価を紹介。事前に用意した原稿を読む場面が多い本会議より、答弁の負担は大きいとされる一問一答の予算委員会の方が石破総理は活き活きしていると記しています。
1位:議論
2位:私ども
3位:指摘
4位:委員
5位:国民
一方、この答弁分析からは「政策の打ち出し」の語句はほとんど浮かび上がらなかったと指摘。その理由として、ある首相周辺の「少数与党だから、相手の意見を受け止めるだけで、自分の意見を発言するまでに至らない場面が多かった」という指摘や、「予算成立に向けた対立点を作らないことが大切。事故を起こさない。なるべく穏便にやっていくことが大事」とする別の政府関係者のコメントを紹介しています。
最後に石破総理の答弁の特徴として、いわゆる「石破構文」を挙げています。「石破構文」とは、「丁寧に話すけど、質問に正面から答えない」と野党が揶揄する答弁スタイルのこと。ある立憲幹部は「石破首相の答弁は丁寧だけど、中身がない。それが石破構文だ」別の野党幹部は「姿勢は謙虚でも、質問に正面から答える姿勢は全くない」と批判しています。
この石破総理のスタイルについて、東京大学先端科学技術研究センター教授の牧原出氏は次のように述べています。
石破政権になってから、どうでもよい写真の切り取りで政権をディスる記事などが目につくが、あまりにも本質からかけ離れている。やはり石破首相は「言葉の政治家」である。その内実は、首相であればこそ批判もされるだろうが、丁寧に吟味されるべきである。「議論」がもっとも多いというのは、「決める」ことを重視した安倍政権とは確かに異なる。少数与党であるため、「議論」しなければ「決める」こともできないからである。ではその「議論」の質はどうか?これは野党にとっても質問の内容が問われている。国会らしい国会になってきたことは歓迎すべきである。また、ジャーナリストの田中良紹氏は次のように評しています。
かつての日本政治はメディアに「与野党激突」と報道させながら、実は与党と野党は水面下で手を結び、米国を騙して経済的豊かさを実現しようとする政治だった。それが吉田茂の敷いた「軽武装、経済重視路線」である。政権交代をしないことが日本に高度経済成長を実現させた。与野党の論戦など意味はなく、自民党の派閥間の競争が政治の真実だった。しかし日本が世界一の債権国になったことで米国の逆襲が始まり、日本も政権交代する政治を目指さなければならなくなる。だが民主党政権の誕生で野党に政権を担える実力のないことが明らかになり、その反動で「一強他弱」の安倍政権が誕生した。これに対する揺り戻しが旧安倍派の裏金事件に端を発する少数与党の誕生だ。与党は野党の協力を得ないと何もできない。その未知の領域を石破総理は手探りで進んでいる。与野党の議論を国民に見せ、国民の納得を得る着地点を探るのが石破総理の仕事になる。識者は、国会で「議論」が行われるようになったと評価しています。
じゃあ今までは何だったのかと思わなくもありませんけれども、議論を尽くした後は、物事を決めなければなりません。
ただ、気になるのは、本当に決めなければならないことを優先して議論して決めようとしているのか、という疑問です。選択的夫婦別姓やら、紙の保健証がどうたらとか、国民の多くが決めてほしいとおもっているとは思えません。
議論は為にするのではなく、物事を決めるために行うものですし、その議論も本当に必要なものから行うべきだと思います。その為には、国家の世界観とそれを実現するための政策を打ち出さなければなりません。
少数与党であればこそ、野党含めた日本の多くの国民が受け入れられる大きな国家像と方針を打ち出せなければならないと思いますね。
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