フジテレビ会見と調査委員会と第三者委員会

今日はこの話題です。
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1.フジテレビの港浩一社長会見


1月17日、フジテレビの港浩一社長は、東京・台場の同局で会見を行い、タレントの中居正広の女性トラブル騒動に関して言及しました。

会見冒頭で、港社長は一連の騒動が起きていることに謝罪した上で、約9分に渡って事案について説明しました。その内容は既に報じられていますけれども、その全文は、次の通りです。

このたび、一連の報道により、視聴者のみなさまをはじめ、関係者のみなさまに多大なご迷惑、ご心配をおかけしておりますこと、および、現在まで弊社から説明できていなかったことについて、お詫び申し上げます。今日までにいただいたご意見、ご批判については真摯に受け止めております。ここまで報道で指摘されたことの事実関係や会社の対応が十分だったのか、などについて昨年来、外部の弁護士の助言を受けながら社内で確認を進めてきました。本日はそれを踏まえてのご説明をさせていただきます。

一方で第三者の視点を入れて、改めて調査を行う必要性を認識しましたので、今後、第三者の弁護士を中心とする“調査委員会”を立ち上げることとしました。こちらについては後ほどご説明させていただきます。

なお、本日はこれまでの私たちの認識についてご説明させていただきたいと考えておりますが、調査委員会の調査に委ねることとなり、社長の私自身も今後、調査を受ける立場となるため、この場での説明には限りがございます。その点どうか、ご理解たまわりたく、お願い申し上げます。

改めて申し上げておきたいことがございます。この件は当事者の女性が事案に関して直接的な発信はされておりません。当社も個人の特定につながるような発信は避けるべきと考えています。具体的かつ詳細な説明には限りがございます。

また、当事者間の示談の守秘義務があることから、私たちが把握した内容に限界もあることをご了承ください。プライバシーの保護や人権を尊重していきたいというのは事の発端から今現在に至るまで私どもの変わらぬ思いです。

まず、弊社は発端となった事案について、直後に認識しておりました。23年6月初旬となります。女性の様子の変化に気付いた社員が声をかけ話を聞いたところ、当事者2人の間の場で起きた極めてセンシティブな領域の問題でした。

女性の体調面の状況把握が第一と考え、医師の診断を受けて頂きました。医師は診断後、すぐ別の専門医に相談。以降、その専門医の指導に基づき対応していくこととなりました。

当時の判断として、事案を公にせず、他社に知られずに仕事に復帰したいという女性の意志を尊重し、心身の回復とプライバシーの保護を最優先に対応してまいりました。その点は、会社として、極めて秘匿性の高い事案として判断していました。

一方、中居氏について申し上げます。先程申し上げたように、まずは女性の心身のケアを最優先に努めておりました。それゆえ、会社として中居氏への正式な聞き取りを含めた調査に着手することは、より多くの人間がこの件を知る状況を生むため、女性のプライバシーが守られなかったり、女性の意志が十分尊重されないのではないかという点で大きな懸念がありました。
当時の対応が適切だったかにつきましては、今後、調べていただきたいと思います。一方、事案からしばらくして、中居氏から女性と問題が起きていると連絡がありました。詳しくは申し上げられませんが、中居氏の事案についての認識も確認しておりました。その後、両者で示談の動きが進んでいるとの情報も聞いておりました。

中居氏が出演している番組「だれかtoなかい」については、唐突に終了することで臆測が生じることを懸念して、慎重に終了のタイミングを計っておりました。プライバシーを守ること、体調面の配慮、中居氏側の認識、示談が進んでいたことなどから番組については難しい判断がございました。

なお、女性から相談を受け、日々向き合っていた社員を非難する一部報道がありましたが、私はそうは思っておりません。限られた社員が連携して日々対応しておりましたが、報告は私まで上がってきておりましたので、対応に関する判断は私の責任となります。私としては随時報告を受けながら、とにかく心身の安全を最優先する方針で対応してきたつもりでありました。

一方で、女性が私たちの思いとは別の受け止め方をされているという年末からの一部報道があり、今となっては対応が適切だったのかどうか、と思うところもあります。

ここまで申し上げてきたことは現時点で私が確認をしている概要となりますが、一連の対応についての事実関係については調査結果を待ちたいと思います。会社の責任を矮小化するつもりはなく、そのために第三者の弁護士を中心とする調査委員会に調査を行っていただきます。そこでは私の判断も含めて徹底的に調査していただきたいと思っています。いずれにしましても、出演者、取材先、取引先などの関係性についてはあらためて誠実に向き合い、社のコンプライアンスガイドラインの徹底に一層、努めてまいります。


2.調査委員会に委ねる


続いて、取材陣との質疑応答がありました。その内容は次の通りです。
――いくつか事実関係について確認させてください。港社長のご説明の中で、6月初旬に、被害を受けている女性の変化に気づいた社員が声をかけ、というお話がありました。被害者から会社に報告があったのではなく、被害者の変化に気づいた社員の方が問題視をしたということになるんでしょうか?

「先ほどご説明した以上の回答はございません、はい」

――女性への聞き取りも行った一方で、中居氏からも連絡があったと。事案についての認識を確認したというお話がありました。こちらの時期についてはいつ頃になるのでしょうか?

「これは調査委員会に委ねる案件になっていくと思いますので、ここでの回答は控えさせてください」

――6月初旬にトラブルがあった後という認識で間違いないでしょうか?

「それはそうなります」

――港社長のお言葉の中で、年末以降の報道に関し、女性が私たちの思いから別の受け止められ方をされたというお話がありました。この別の受け止められ方っていうのは具体的に何を指していらっしゃるんでしょうか?

「私どもは女性の、意向、人権、身体の安全等を最優先に進めてきました。一部報道を読むだけですので、これに関しても、調査委員会の方でやっていくことになりますので、これ以上の回答は差し控えさせていただきます」

――石原常務から、会社の方で発表した当該社員に一切関係ないというコメントに対する見解が先ほどありました。この当該社員、管理社員と言われる方ですけれども、ヒアリングっていうのはいつ頃行ったのでしょうか?

「はい、これもですね、調査委員会で、具体的に調べられる案件なので控えたいと思いますが、そこはしっかりと調査をしたい」

――事件が起きてすぐという認識で間違い無いでしょうか?

「それは、調査委員会で、その経緯を全部明らかにして、報告していきたい」

――調査委員会、第三者の弁護士は、年末から調査に入れている方を中心とした第三者の委員会という認識で間違ってないでしょうか?

「弁護士につきましては、まだここでは公表できないんですけれども、新たなフェーズに入ったと、我々思っておりますので、それについては独立性、専門性が高い方を今回新たにお願いをして、それについては、決まってからお伝えしたいと思います」

――年末から調査に入ってた弁護士とまた別の方になるんですか?別の弁護士になるんですか?

「はい。それにつきましても、決まった段階でお伝えしたい」

――第三者による調査委員会の設置というのはいつ頃をメドにしていますか。

「なるべく早く作りたい。速やかに」

――立ち上がってからじゃないと答えづらい部分もあると思うんですけれども、いつ頃までにその調査結果を出したいというお考えか。

「我々の意向は当然早い方がいいんですけれども、調査委員会に指示する立場に無いので、お願いする立場なのでですね、それについては、調査委員会が立ち上がって、調査委員会の委員長が恐らく判断していただくことになると思います」

――調査委員会の委員長というのは、弁護士さんになるのか。

「はい。今のところ、そのように」

――調査委員会の立ち上げの時期ってメドについて。

「可及的速やかにと思ってます」

――調査対象に、社長も含まれるという話、飲み会に関与したとされる社員などが上がってましたけれども、対象者っていうのはどれぐらいの規模で、どういった部署の方々になるんでしょうか?

「我々が調査委員会の方に事実を提示しまして、調査委員会の方で、あ、この人必要だなっていうのが判断していただくのが適切かと思っております。現時点で我々が判断すべきではないと思います」

――今回依頼することとしては、中居さんと関係する食事会に端を発するトラブルの問題と、それとは別にそのフジテレビの社員の方が関与して、例えばアナウンサーを、席に招いてといったような、別種のケースなども出てきてると思うんですけれども、調査対象は、中居さんと関係に絞られたものなのか、少し広く調査されるのか。

「恐らくですね、調査の対象を我々が決めるというのは適切ではないと思いますので。調査委員会の方に事実を出して、調査委員会の方で、ここ、あそこというのを決めていただいた方が」

――調査対象も含めて調査委員会が決めるのか。

「はい。いろいろな事実を我々は調査委員会の方に出して、向こうの方で判断していただく」

――フジテレビさんから調査委員会に対して、何について調査してほしいというふうにお願いすることになるんでしょうか。

「今、発生しております事案について、真実が何か。また、それに伴う対応が適切だったかどうか。具体的には言えないんですけれども、大きなものを提示して、調査委員会の方で、ここだって決めていただきたい。なので我々が今ですね、調査はここですというと、調査を縛ることになるので適切ではないということでございます」

――いわゆる第三者委員会と考えるとはちょっと違うのか。

「そうですね。第三者の弁護士を中心とした調査委員会。当然、第三者性は非常に高いですし、独立性、専門性が高い方々になっていただきます。後日、人事を正式にお伝えします」

――トラブルというか問題の相手が中居さんであるということも、局としては把握されてたということなんでしょうか?

「その点は調査に関わることになりますので、この場ではちょっと回答は控えさせていただきます」

――中居さんがトラブルがあるというふうに、中居さんから話を聞いたということだと思うんですが、その時期はいつ頃なんでしょうか?

「その点についても、同様になると思います。ここでの回答は控えさせていただきます」

――しばらくして中居氏から女性と問題が起きていると聞いたという時点で、中居さんから、申し出があったという認識なのかということと、その上で中居さんの申し出を受けて局として聞き取りをしたんでしょうか?

「中居さんとは話はもちろん、ヒアリングはしておりますが、これ以上のことは、調査委員会に委ねるとことかと思いますので、これ以上の回答は控えさせていただきます」

――番組についてうかがいたい。「だれかtoなかい」の番組の終了については慎重に検討していたとおっしゃってたと思いますが、この事案、まず確認されたのが23年の6月。改編のタイミングっていうのは何回か来ているかと思うのですが、なぜそこで終了とならなかったのか。

「先ほどご説明したことの繰り返しになりますので、それ以上の回答は控えさせていただきます」

――出演に関して。中居さんが、今回起こしたトラブルというのは、中居さんご自身は、発表文の中でトラブルと表現されてるんですけれども、フジテレビとしては、これのトラブルというのはどういう種類のトラブル、問題だと認識されているか。

「先ほどご説明した通り、当事者2人の間で起きた極めてセンシティブな領域の問題であると認識しております」

――性的なトラブルだという認識は?

「それについては、調査委員会の領域にも入っていくと思いますので、ここでは回答を控えます」

――フジテレビでは、HDでグループ人権方針を策定されいてるかと思います。あの、今回の中居さんのトラブルは、人権方針に反するものであると認識されてるんでしょうか?

「認識も含めて、この件については調査委員会でしっかり調査を進めていく事案だと思います。ですので、回答は控えさせていただきます」

――最終的に調査委員会の方で結論が出るのは理解しているが、23年の6月に問題を把握してから、番組を放送し続けるにあたっては、人権方針に照らし合わせて番組が適切かという事、出演者の採用も適切かどうかは局の中で判断してないとおかしな事案だと思うが、これまで人権方針に照らしてどう考えてこられたのでしょうか?

「最優先したのは女性の人権、心身の安全を最優先して対応をしてきました。もちろん、フジ・メディアで定めているガイドラインはありますが、女性の人権を最優先して、対応してきたということです。その対応が正しかったのかということも含めて調査委員会で、調査していただきます」

――仮に人権方針に反するような行いがあった場合でも、示談が成立していれば、タレントの起用は可能だとお考えですか?

「これについても、調査委員会で進めていく事案だと思いますので、ここでは回答控えさせていただきます」

――「だれかtoなかい」は、当面の間休止と発表されていますが、番組の終了などについての考えは。

「番組の改編については、まだ発表しておりませんので、この場では、お答えすることはできないです」

――トラブルを局として把握されてから、スポンサーには報告をされてたのか。どの時点で、こういったトラブルを抱えてるタレントが出演しているということを伝えられたのでしょうか?

「最優先を女性の人権保護というふうなことで進めてきましたので。それに尽きます」

――スポンサーの皆さんも一連の報道を通して、トラブルについて知ったということか?

「ええ、その通りでございます。年末に出てから、年が明けて、速やかに我々営業は動き始めております。最初の頃は情報も少なかったので、起きていることをご説明して。もちろんCMに出ているタレントさんでございますので、それ以外のお得意さまも、うちが取り沙汰されてることに、やっぱり問い合わせもいろいろきましたので、今、営業で誠心誠意、ご説明している最中でございます」

――12月27日の時点でフジテレビさんのホームページで、今回の件について、社員の関与はないというコメントを出されました。12月の時点で否定されたその根拠を教えていただけますか?

「当該社員の聞き取りのほかですね、通信履歴、あまり全部お話ししますと調査委員会の調査に支障が出るのでは申し上げられないんですが、そうしたものをもろもろ調べました。その結果、あのホームページに掲載したもの、記事自体が事実でないことを否定するということで、弊社の見解をお伝えしたということになります」

――その後出されたコメントでは、昨年来調査を続けていますという、現在進行形で回答いただいておりますが、12月の時点で否定された調査は終了してないにも関わらずコメントを出された理由っていうのは伺えますか?

「その部分について調査は継続中というよりも、いろいろなものを調査を継続中ということでございます。その問題についてはかなり核心のところまでは調査しておりますが、詳細は調査委員会に全部我々は資料を出して、そのホームページの記載自体も正しかったかどうかというのを判断していただきたいと思っております」

――核心部分まで調査した結果、12月の時点でコメントを出されたということか。

「申し訳ございません。核心部分かどうかというのは、主観が入ってしまいますので、我々は、すべて調査委員会の方に出して判断していただきたいと思っています」

――週刊誌報道で、関与がされた社員さんについて、御社の幹部と書かれてますけれども、幹部という認識で合ってますでしょうか?

「幹部というのも、特定につながることになりますので、ちょっと回答はできないということで、ご了解ください。

――関与された社員の立場は?

「申し訳ない。あの、すべて、その件に関してはお答えができないので申し訳ないです」

――会見自体というのは、中居さんに端を発することに関するお話なんですかね?また、その後にこのアナウンサーの方から、それ以外にも似たような事案があったというお話もあるんですけれども、そこも含めてのお話ということなんでしょうか?

「冒頭申し上げた通りです」

――フジテレビのアナウンサーという方が証言した話も後からまた出てきたと思うんですけれども、そこまで含めた話なのか。

「今回は、中居さんの事案についての会見ということです」

――第三者の弁護士による委員会の調査は一連の報道に拡大する可能性はあるのか。

「その後の話も中居さん絡みの問題に入っているという意味では、一連の報道ということになる」

――現段階で、フジテレビとしては、関与は無かったっていうことは、被害女性が言っていることと全くぶつかる形になる。

「すべて調査委員会に委ねられる事案だと思います」

――ただ、ホームページで発表した以上は、ある程度もうそういうスタンスなのかなというふうになると思うが。

「年末にホームページに出した声明というのは、あくまでも最初に報道があった、トラブルがあった食事会をうちの関係者が仕切って、しかも途中でドタキャンしたというふうなものがあったので、そのような事実はないということをお伝えしたということです。繰り返しになりますけども、そのことを含めて、会社の対応に問題があったかどうかということは、調査委員会が検証していく事案になるんだと思います。今、申し上げた通りのことで、ホームページには出しました」

――調査は港社長も対象となると言うことは、どういう理由か。社長として社会に対して混乱を呼んだという立場なのか。

「会社の対応が、という意味で私社長ですから、調査対象になるかと。そういうふうに理解ください」

――被害女性に対して、なぜ番組をやり続けているかとかですね。そういう説明というのはされていたのか。

「先ほど申し上げた通り、これ以上のことは、ここでは控えたいと思いますし、先ほどの私が申し上げたことでご理解をいただければと思います」

――被害女性に対してはどういう対応をされてきたんでしょうか?

「これも、調査委員会でしっかりやっていくことだと思いますので、その場では控えたいと思います」

――フジテレビの社員の方が、女性とタレントの方を2人きりにして、性的接触をさせるということが常態化している、というような証言も、週刊誌報道の中では、記載されていたが。

「私はそういうことはなかったというふうに信じたいと思いますが、それも含めて調査委員会の調査に委ねたいと思います」

――一連の報道の中では、港社長の名前も出ておりまして、食事会の中で、女性の社員の方を同席していたというような記載もありました。こういったことはあったのでしょうか?

「通常番組制作や営業活動に伴って、出演者やプロダクションなど取引先と、懇親の場を持つことはもちろんあります。これ以上のことは、私も、調査対象ですので、答えは控えさせていただきます」

――懇親の場を持つことはあるが、週刊誌報道にあるような性的接触があるとかそういったことは?

「全くないと、私は思って信じております」

――調査委員会を設けるということですが、日弁連の定義に基づく調査委員会という認識であっていますでしょうか?

「現時点では日弁連のガイドラインに基づく第三者委員会ではないと思いますが、これから弁護士さんにお願いして、調査委員会を立ち上げますので、その時に正式にこういう形でというふうなことになると思います。その時にすべて発表させていただきます。なぜこういう形にしたのか。なぜ第三者委員会ではないのか、ということも含めて、それをお話しできると思います」

――この時点で、第三者委員会を設置しないっていうことは、何か隠してるんじゃないかっていうような疑念も払拭できないと思います。この時点の対応がこの株主価値を毀損する可能性もあるんじゃないかと思うのですが。

「第三者委員会に近い独立性、専門性が高い人たちを選びます。実態的には客観性も担保されていますし、透明性も担保されている。そういうような委員会になるということは間違いありません。その上で調査委員会の方々と相談した上で、第三者委員会にしますか?もしくは調査委員会にしますか?っていうことを決めることになると思いますので。発足時にすべてをご説明したい、そのように考えております」

――調査委員会のメンバーっていうのは、外部弁護士が選出するのか。御社の役員の方が選出するのか。

「基本的には、我々が選出する、その手続きも含めて、発表時にお伝えします。事実の解明、これを第一に考えて今回は調査委員会を立ち上げる」

――2023年6月の当該トラブルに関してです。幹部社員がその会を設定してドタキャンしたその事案はないというご説明いただきました。設定した事案がないのか、ドタキャンした事案がないのか、もしくは設定してドタキャンした両方その事案がないのか。

「会をうちの社員が、企画したこともなければ、当然ドタキャンすることもない。全く関係がないということです」

――そもそもその当該社員が会を開いた事実は無いという。その認識は現時点でも変わらないということですよね。

「そうです。はい」

――グループの連絡先を交換してというパターンも社会的によくあるんじゃないかと思いますが、つまり、社員の社用パソコンとか携帯だけじゃなくて、そういうところも調査された上で、声明を出されたということでよろしいでしょうか?

「詳しいことはこれも調査委員会に最後委ねますけれども、我々としては、できる限りのものを見て判断してるということでございます」

――外部弁護士を入れた調査は、いつから始められてるんでしょうか?

「1年ほどよりも前からは始めていますが、具体的な時期については、調査委員会の方に全部報告した上で、お示ししたい。内容にも関わることなので、そういう風にしたいと思います」

――報道の前から調査はされていたが、公表はされていなかったということですね。

「はい」

――中居さんから、問題があったと最初に話を聞かれたのは、中居さんと女性が示談をして、守秘義務を結ぶ前に、問題の内容についても聴き取りを行っているということでしょうか?

「先ほどご説明した以上のことは控えさせてください」

――中居さんについて、どのような項目について局として確認をされたのか。

「これも調査委員会で、調査していただくということになりますので、ここでは控えさせてください」

――週刊文春の報道で、性接待について詳しく書かれてましたけれども、その件に関して、局として聞き取りはこの数日とか行っているのか。

「それについても調査委員会で、しっかりやっていくことになりますので、回答を控えさせてください」

――事実関係は、今後調査委員会を通じて出されると思うんですけれども、先ほど港社長は「私はそういうことはなかったと信じたい」とおっしゃいました。実際には港社長の名前も報じられている。局として、慣習として性接待があったんじゃないかという報道が出ていることに関し、どう受け止めているか。

「そういうことはないと、私は信じています。繰り返しになりますが、そういうことも含めて調査委員会で、調査していただきます」

――女性から相談を受けた後の対応、調査を十分にしてきたのか、情報の公表が適切だったのかなど論点はいろいろあると思うが、港社長は現時点で、ご自身の責任についてどのように考えられてるのか。今後、ご自身の処遇なども含めて、どのように考えていらっしゃるんでしょうか?

「先ほどご説明した以上のことは、控えさせてください」

――被害を訴えてる女性、中居さんとトラブルになった相手女性とは、今回の会見をするに当たって、コミュニケーションを取られているのか、公表の範囲について確認など取られているのか。

「全て、先ほど申し上げた以上のことは、ございません」

――調査の独立性を担保した日弁連のガイドラインに基づく第三者委員会もこの時点で設置しないっていうところに素朴な疑問を抱くんですけど、それはなぜなんでしょうか?

「目的っていうのは、真実解明、スピード感を持った真実解明というのを、考えています。それに一番ふさわしい体制というのは何なのかっていうのを、調査委員会のメンバーの方々といろいろ話をして、じゃあということで立ち上げたいと思っております。先に決めるんじゃなくて、まず目的があって、それに向けて何なのかっていう形で決めたいというふうに思っております」

――調査委員会はフジテレビの内部に置くのか。

「内部に置くというイメージはないです。発足時に説明いたしますが、基本的には真実の解明ができる一番いい態勢を作るというのが目的ですので。フジテレビの中に置くというイメージはありませんが、正式には公表時にこういう形ですというものを出したい。独立性と専門性、透明性が高いものにしていきたいと思います」

――港社長の方から、番組の打ち上げや懇親会のようなものがあるというお話があったが、番組に関係ないアナウンサーを呼んで、そういう形の懇親会などを行うことはあるのか。

「番組の打ち上げでも、レギュラー、準レギュラーでやっているアナウンサーもいますし。いつやるよといっても、基本、自由参加ですから。来たい人は来て、時間が来たら帰る。個人的な見解になりますが、変わっていないと思う」

――上司に言われたから行かないといけないということは。

「そういう社風ではないと思う。自由に来たい人は来るし、用事がある人は来ないし、参加したくない人はしないというようにやってきただろうと思います」

――被害女性と中居さんのトラブルについて、2人の間で何らかの会食がもたれたことは事実か。

「(フジテレビは)まったく関与していないという話で、ウチが答える立場ではない」

――まったく関与していないという立場か。

「はい」

――調査委員会はすでに外部の弁護士が入っていて、報告書を受け取って第三者委員会が引き継ぐ形になるのか。

「フェーズが変わったというか、事実関係を調査するときに外部の弁護士の方にご助力をいただきながら続けてきました。今後、当社の対応など、色々な問題が問われる状況になっていますので、会社自体が問われる立場になったので、基本的には、独立性、専門性の高い弁護士さんで調査委員会を作ってやってもらうというふうに考え、そちらを立ち上げることにしたということでございます」

――日弁連の第三者委員会のガイドラインは公表されていて、それにのっとってやれば信頼性が担保されるのでは。何か引っかかっている部分はあるのか。

「基本的にはガイドラインの指針に沿ったものは作ろうと思っています」

――委員会の人数は。

「少なくとも3人以上。発足時に正式にお伝えしたい」

――中居さんからの報告を受けていたという話があったが、フジテレビとして中居さんに聴き取りはしたのか。

「中居さんへのヒアリングという形では行っています。それ以上は委員会の調査にゆだねたいと思います」

――中居さんのヒアリングをした上で、番組は継続してきたのか。

「それについても、さきほど申し上げたもの以上は発言は控えます」

――スポンサーの方々からの意見はどういったものが寄せられているか。

「もちろん、スポンサー様からは厳しいご意見を頂戴しております。実際、フジテレビが発表している以外の週刊誌からの情報から、渉外、営業チームに問い合わせはございます。ただ、今ある情報で、フジテレビが申し上げた情報を営業にあげて、お得意様に誠心誠意、お答えしている最中でございます」

――急な会見、このタイミングにした理由は。

「申し上げた繰り返しになりますが、視聴者のみなさま、関係者のみなさまにご心配、ご迷惑をおかけしていました。そして、弊社から説明できていなかったことについて、この日にお集まりいただいてやろうと決めました」

――いろいろなタイミングがあったと思うが。

「昨年より弁護士も加わった調査を進め、問い合わせの広報対応もしてきましたが、視聴者のみなさまをはじめ、関係各所に多大なご迷惑をおかけしていること、また、調査委員会の設置が決まったことから、社長会見を前倒しして行うということにしました。さまざまな株主さまからもご意見をいただいておりますが、総合的に判断してきょうみなさまに報告させていただいたということです」

「さきほどの訂正をします。中居さんにヒアリングというワードを使いましたけども、話を聞いたということです。ニュアンスが違うように感じましたので、訂正します。調査というスタンスではなく、話を聞いたということです」

――弁護士を同席して、会社判断をするためにヒアリングをしたということではないということか。

「詳細については控えますが、ヒアリングと一般に言われているイメージではございませんので、おわびして訂正させてください」

――ヒアリングにしなかったとすれば、その理由は。

「女性の人権を第一に、女性の心身や意向を最優先に対応してきたということ。これ以上は申し上げませんが、女性の人権を最優先に対応してきたということ」

――中居さんにヒアリングすることで、女性に圧力がかかるということを懸念したのか。

「これ以上は控えますが、いずれにせよ、調査の中で適切だったのかやってもらいます」

――「だれかtoなかい」について、番組終了となった場合、中居さんの一件が問題になっているという認識でいいのか。

「これの経緯等についても、調査委員会でしっかり調査していただくことかと思いますので、発言は控えさせてください」

――中居さんが現在、活動休止状態になっていることを社長はどう考えているか。今後、フジテレビとしての起用することはあるのか。

「先ほど説明した以上のことは差し控えさせていただきたい。今のご質問にはお答えする立場にないと思います。先ほど、申し上げた以上のことはないです」

――港社長として、被害者女性に対して何か今、コメントはありますのでしょうか。

「先ほど申し上げたことに尽きることはないんですけども、何か一言ということであれば、ご活躍を祈りますという言葉です」

――認識が違ったというような言い方をされていましたが、そこについては?

「調査委員会で、調査を進めていくことだと思いますので、これ以上のコメントは控えたいと思います」

――実際の会合について、フジテレビは関係ないということ。

「どこであったかはわからない、知らないということです」

――会合について、一切関係ないというお立場ですが、なぜ被害にあった女性は、なぜ相談をすることになったのでしょうか?

「(被害)女性の気持ちは、こちらからちょっと答える立場にはないということですね…」

――被害女性は、会合が業務の範囲、もしくは業務の延長という捉え方をしていたから相談をしたのではないのか。

「調査委員会で調査をしていくことになると思うんですけども、女性が何か思うことがあるのであれば、真摯に受け止めたいと思います。繰り返しになりますけども、私どもは、女性の意向を最優先に対応を進めてきていましたので、もしも、女性が今思うことがあるのであれば、それも含めて調査委員会で調査していただきたいと思っています」

――番組終わった後の打ち上げについて。恒常的に行われてきたことで、今回のトラブルに発展しかねないと考えることはあるか。

「さまざまな会社には部署がありますから、そこで懇親会みたいなものは、みなさまの会社もそうだと思いますけども、そういうことの中で何か問題があったのかどうかということも含めて調査をしていただきたいと思っています」

――今回の一連の出来事で、ガバナンスに欠陥があったというふうにお考えでしょうか?

「欠陥があったというふうには、私個人としては、現在の認識は持っていませんが、これについても調査委員会で調査をしっかりしていただきたいですし、先ほどもアップデートしていかなければいけない、ガバナンスをしっかり守っていくというのは会社の方針としても、私社長としても、社員に声掛けしていますので、正しい形、いい形で進んでいきたいと思っています」

――局員の関与を否定されている会合について。会合当日については局員の関与がないということかもしれないですけれども、女性と中居さんを引き合わせた、知り合わせた前段のところで、何か、接待、性接待を促すような関与などがなかったのかどうか。会合以外のところ、前段について関与については聴き取りを行った結果はあるんでしょうか?

「会については関与はなかったというふうに聞いてます。それ以外に関して、どういういきさつであったかというのはちょっと我々もまだ分かりませんので、この辺も調査が必要があれば、調査してというふうに思っております」

「全部が一連の流れになってますので、調査委員会に調査をお願いする立場にあるので、個々にそういうことは避けさせていただければというふうに思っております」

――年末に否定している文書を出しているということであれば、全体についての事実関係を確認されてるところがあると思ったが。

「我々としては、しっかりしたものというのは持っています。ただ、それについて、ここで、お伝えすることは控えさせてください」

――中居さん、女性双方に話を聴いていると思うが、食い違いはあったのか。

「先ほどご説明した以上のことは、控えさせてください」

――中居さんが関わってない飲み会なども紹介されてましたけども、出席されていたというようなその辺りの聞き取りはすでに済まれてるんでしょうか?

「詳細を把握できてない部分もあります。今後の調査委員会の調査に委ねたいと思っています」

――聴き取りをしたが内容を言えないのか。

「それも含めて、今、お答えは控えます」

――事実認定ができてない以上は、幹部の方の処分はまだできないということでしょうか?

「おっしゃる通りだと思いますし、あの、全て調査委員会で調査してのことだと思います」

――中居さんの今後の再起用について。フジテレビとしてどのような状況が整えば起用できるのか。今後の起用について中居さんに求めることなど、どのように現状お考えでしょうか?

「一連の報道を受けて、『だれかtoなかい』のキャスティング面や営業面への影響が出ておりました。加えて視聴者の声など含めて総合的に判断して1月12日からの放送を休止としています。放送を楽しみにされていた視聴者の皆様には大変申し訳ございません。番組起用、4月の改編なども含めては、お答えをかねてからしておりませんので、ご了承ください」

――起用に関して現状のままで、中居さんが起用できるタレントだとお考えなのか、対応が必要だとお考えなのか。

「先ほどご説明した以上のことは控えさせていただきます」

――調査委員会について、どういう構成になっているとか、その概要については公表されたり会見の場で、公の場で説明されるのか。

「発足時に公表したいというふうに思っています。また、報告書が上がってきた時にも公表したいというふうに考えております」

――調査終了後は会見を開かれる予定はあるのか。

「調査委員会がまだ立ち上がってないので、あれなんですが、調査委員会と相談の上、その公表方法については、決めていくことになると思います」

――文芸春秋の一連の報道で、現行のアナウンサーの方も少しこう似たような嫌な思いをしたというような記事が出ていました。その件についての事実関係であったり、どのように受け止めているのか。

「詳細をちょっと把握してないので、その件も調査委員会で一緒に調査していくことだと思います。今回の件に関してSNS等で弊社社員及び関係者に関する憶測による記事投稿が見られます。虚偽中傷や名誉毀損に繋がる内容は看過できかねますので、厳にお控えいただくようお願いをいたします。以上です」
長い質疑応答であったにも関わらず、港社長は「調査委員会に委ねる」「女性のプライバシーの保護を優先した」といった発言を繰り返し、トラブルの内容や女性が社員かどうかなどについて回答を避けています。これでは会見を開いた意味があるのかと思ってしまいます。


3.業界として情けない


元々、この会見自体、非常に閉鎖的なものでした。

定例会見は当初2月下旬に予定していたのを、前日の16日に翌17日に急遽開催することを発表。参加媒体はラジオ・テレビ記者会加盟社とNHK、在京キー局の記者に限定され、19社33人にとどまり、更に生配信などは行われませんでした。

記者会では、週刊誌やインターネット媒体も含めたオープンな会見を要望していたが、受け入れられず、会見の最後でフジテレビに抗議したようです。

フジ広報は参加を限定した会見となったことについて「会見の方策を考えた結果、総合的に判断し記者会主催の定例の社長会見ということでやらせていただいた」と理由を説明していますけれども、メディア研究をしている同志社女子大学の影山貴彦教授は「フジテレビがこれまで沈黙していた責任は重いが、今回の対応は問題を大きくしたくない、できるだけ小さくまとめたいとの思いを感じた。視聴者は『保身に走った』と見るのでは。報道機関としての使命も果たせておらず、上層部の態度に違和感を抱く社員も多いのではないか」と批判しています。

更に、元NHKアナウンサーでジャーナリストの堀潤氏は17日放送のTOKYO MX「堀潤 Live Junction」に出演。番組冒頭、堀氏は「本当に業界として情けないですよね。これはフジテレビの問題だけではなくて、スポンサーやタレント、放送局といろんな中で内々で囲ってきた。その成れの果てが加盟社しか呼ばないっていうのもそうですよ……僕はね、記者クラブの加盟社で、中に入った人たちにもボイコットして欲しかった。“そんなんだったら我々も聞きませんよ”って……僕らはフジテレビの外で待ってましたけれども、むなしかったですよね。公共の電波を扱ってビジネスをしている人たちが、パブリックに開けない。しかも、株主だって見ているのに上場企業として説明もしない。どういうことなんだと」と批判しています。

また、元TBS記者でジャーナリストの武田一顕氏は17日放送MBSテレビ「よんチャンTV」で、「こうなったら記者会見じゃないですよね……今までフジテレビは例えば企業とか政治家がこうやって出てこなかったり、『生放送はダメだ』って言ったら批判してきたわけでしょ。それをフジテレビ自身がメディアであるにもかかわらずやって、開始から1時間40分たっても、内容を話してはいけないとか、解禁があるとか、そんなの記者会見じゃない……本当にオールドメディアで、こういうことをやってるから、フジテレビとかどんどん信頼をなくしていくわけですよね」と厳しく批判しました。その通りです。

番組では、MCから「こういうルールでやると、批判されることは誰でも分かるじゃないですか。なぜこういうことに?」と質問された武田氏は「それはなかなか分からない。元々2月に予定されていたフジテレビの会見そのものがそういうルールだったから、それを今回不祥事が報道されたので前倒しで急遽やることになったから、元々のルールを適用した。あと場所が狭いとかいろいろなことを言ってるけども、いずれにしてもこれで批判を浴びることは確実ですから、なので会見としては大失敗ですよ」とバッサリ。

そして、18日放送の日本テレビ系「ウェークアップ」では、大阪地検検事出身の亀井正貴弁護士がコメンテーターで出演。港社長の会見のあり方や対応について見解を求められると「今問題になっているのは、中居さんと被害女性の間の問題ではなく、それはもちろん前提ですが、あまりさわれないセンシティブな問題……フジテレビの企業統治や安全配慮のあり方というところが、問題になっていると思う」と指摘しました。

亀井弁護士は「事実を確実に明らかににした上で公表するというのが大事。そこで一番大事なのは、調査のあり方として、外部の弁護士とはいいますけどやはり大事なのは、日弁連のガイドラインを受けた上での『第三者委員会』……第三者委員会というのが何が違うかというと、完全に独立性が担保されるので、調査内容についても会社は全面的に協力する。たとえば今回やっていくとすれば、広範囲にアンケートを募り、かつ、社長や幹部職員を含めた上でのLINEやメールなどデジタル関係も明らかにしながら、事実関係を全部明らかにし、公表するときも会社の意思は一切拒否し、内容的にも全部、その第三者委員会がやっていく……検察官や裁判官の経歴がある人や、こういうセンシティブな問題に精通した人を入れた上で、かなり本気になってやらないと。フジテレビが違うというなら、それを明らかにする意味でも、そして社会に公表する意味でも、本気になってやる必要がある」と、フジが発表した「第三者の弁護士を中心とする調査委員会」ではなく、「日弁連のガイドラインに基づく第三者委員会」の設置が求められると強調しています。

亀井弁護士は、フジ側の「調査委員会」が、日弁連のガイドラインに沿った「第三者委員会」と「結果的には、もしかしたら同じようなことをするかもしれない」としながらも「信頼性がまったく違う。独立性がどこまで担保できている組織、制度なのかという信頼性が違うので、そこはやはり、日弁連のガイドラインを受けた上でやる必要があると思います」と、フジの調査委員会なるものの信頼性に疑義を呈しています。


4.第三者委員会ガイドライン


フジの港社長は「第三者調査会」とし、「委員会」とは言わなかった時点で、筆者は怪しいと感じてしまうのですけれども、亀井弁護士が挙げた日弁連のガイドラインは、日弁連のサイトで公開されています。

このガイドライン文書には策定にあたっての説明文が添付されているのですけれども、そこから一部引用します。
企業や官公庁、地方自治体、独立行政法人あるいは大学、病院等の法人組織(以下、「企業等」という)において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(以下、「不祥事」という)が発生した場合、当該企業等の経営者ないし代表者(以下、「経営者等」という)は、担当役員や従業員等に対し内々の調査を命ずるのが、かつては一般的だった。しかし、こうした経営者等自身による、経営者等のための内部調査では、調査の客観性への疑念を払拭できないため、不祥事によって失墜してしまった社会的信頼を回復することは到底できない。そのため、最近では、外部者を交えた委員会を設けて調査を依頼するケースが増え始めている。

この種の委員会には、大きく分けて2つのタイプがある。ひとつは、企業等が弁護士に対し内部調査への参加を依頼することによって、調査の精度や信憑性を高めようとするものである(以下、「内部調査委員会」という)。確かに、適法・不適法の判断能力や事実関係の調査能力に長けた弁護士が参加することは、内部調査の信頼性を飛躍的に向上させることになり、企業等の信頼回復につながる。その意味で、こうした活動に従事する弁護士の社会的使命は、何ら否定されるべきものではない。

しかし、企業等の活動の適正化に対する社会的要請が高まるにつれて、この種の調査では、株主、投資家、消費者、取引先、従業員、債権者、地域住民などといったすべてのステーク・ホルダーや、これらを代弁するメディア等に対する説明責任を果たすことは困難となりつつある。また、そうしたステーク・ホルダーに代わって企業等を監督・監視する立場にある行政官庁や自主規制機関もまた、独立性の高いより説得力のある調査を求め始めている。そこで、注目されるようになったのが、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会(以下、「第三者委員会」という)である。すなわち、経営者等自身のためではなく、すべてのステーク・ホルダーのために調査を実施し、それを対外公表することで、最終的には企業等の信頼と持続可能性を回復することを目的とするのが、この第三者委員会の使命である。

【中略】

第三者委員会が設置される場合、弁護士がその主要なメンバーとなるのが通例である。しかし、第三者委員会の仕事は、真の依頼者が名目上の依頼者の背後にあるステーク・ホルダーであることや、標準的な監査手法であるリスク・アプローチに基づいて不祥事の背後にあるリスクを分析する必要があることなどから、従来の弁護士業務と異質な面も多く、担当する弁護士が不慣れなことと相まって、調査の手法がまちまちになっているのが現状である。そのため、企業等の側から、言われ無き反発を受けたり、逆に、信憑性の高い報告書を期待していた外部のステーク・ホルダーや監督官庁などから、失望と叱責を受ける場合も見受けられるようになっている。

そこで、日本弁護士連合会では、今後、第三者委員会の活動がより一層社会の期待に応え得るものとなるように、自主的なガイドラインとして、「第三者委員会ガイドライン」を策定することにした。依頼企業等からの独立性を貫き断固たる姿勢をもって厳正な調査を実施するための「盾」として、本ガイドラインが活用されることが望まれる。
第三者委員会による企業の不祥事調査についても、その内容や信頼性にバラつきがあるので、調査方法含めてガイドラインを設けたというのですね。確かにこれを読むとフジテレビが設けるとした、第三者「調査会」なるものがどこまで、日弁連のガイドラインに沿ったものになるのか不安が残ります。

今回の中居問題の拡散はフジテレビ社員による「局内クーデター」だったと東スポが報じています。

件の記事では、「バラエティー番組担当の局員たちの認識は、港社長の会見での答弁と真逆です。歴代の幹部によって女性アナが接待に駆り出されることが常態化していたと思っています。そういった局員たちは義憤にかられ、中居さんの今回の女性トラブルにA氏が関与した可能性があると周囲に伝え、それが加速度的に拡散していったんです。その局員の中には、A氏と一緒に番組を手がけてきた部下も含まれる。大物タレントの番組を制作してきた優秀な人。上司の情報を拡散させたことから、〝局内クーデター〟と言われました」というフジ局員の話を紹介しています。

前述した日弁連のガイドラインでは、調査手法について次のようにガイドしています。

第6.その他
1.調査の手法など
第三者委員会は、次に例示する各種の手法等を用いて、事実をより正確、多角的にとらえるための努力を尽くさなければならない。
(例示)
①関係者に対するヒアリング
委員及び調査担当弁護士は、関係者に対するヒアリングが基本的かつ必要不可欠な調査手法であることを認識し、十分なヒアリングを実施すべきである。
②書証の検証
関係する文書を検証することは必要不可欠な調査手法であり、あるべき文書が存在するか否か、存在しない場合はその理由について検証する必要がある。なお、検証すべき書類は電子データで保存された文書も対象となる。その際には下記⑦(デジタル調査)に留意する必要がある。
③証拠保全
第三者委員会は、調査開始に当たって、調査対象となる証拠を保全し、証拠の散逸、隠滅を防ぐ手立てを講じるべきである。企業等は、証拠の破棄、隠匿等に対する懲戒処分等を明示すべきである。
④統制環境等の調査
統制環境、コンプライアンスに対する意識、ガバナンスの状況などを知るためには社員を対象としたアンケート調査が有益なことが多いので、第三者委員会はこの有用性を認識する必要がある。
⑤自主申告者に対する処置
企業等は、第三者委員会に対する事案に関する従業員等の自主的な申告を促進する対応をとることが望ましい。
⑥第三者委員会専用のホットライン
第三者委員会は、必要に応じて、第三者委員会へのホットラインを設置することが望ましい。
⑦デジタル調査
第三者委員会は、デジタル調査の必要性を認識し、必要に応じてデジタル調査の専門家に調査への参加を求めるべきである。
例示であるものの、いの一番に「関係者に対するヒアリング」がきています。

もし、今回の中居問題の拡散が「局内クーデター」だったとするならば、局内関係者へのヒアリングは非常に重要な証拠となります。となると、第三者「調査会」のメンバーは厳選されねばならず、まかり間違っても、隠蔽するようなことはあってはならないことです。

それを考えるとフジがやるべきは、お手盛りではないかと疑われる「第三者”調査会”」ではなく、日弁連のガイドラインに沿った「第三者委員会」を設けて調査すべきだと思いますね。




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