逃げ場が無くなるフジテレビ

今日はこの話題です。
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1.フジテレビ港社長の悪手


フジテレビ問題がどんどん拡大しているようです。

昨日のエントリーでフジテレビのスポンサー離れが加速していることを紹介しましたけれども、その大きな切っ掛けは1月17日に港浩一社長が行った記者会見だと指摘されています。

あるスポーツ紙記者は次のようにコメントしています。
・中居さんの女性トラブルは、フジテレビの幹部社員が関わっていたと報じられています。また、港社長が女性アナウンサーに接待させる文化を定着させたとも言われており、こうした報道について説明するものでした。
・出席できたのは記者会の加盟社の1社2名と、NHKや民放各局だけ。複数の週刊誌やネットメディア、フリーの記者などが出席可能か問い合わせたものの、会場の都合などを理由に出席を拒否されました。また、生中継や動画の撮影は禁止で、静止画の撮影が許可されたのも冒頭のタイミングのみ。あまりにも閉鎖的な会見に批判が殺到しました。
・質疑応答では、30回以上“回答を控える”と発言していました。こうしたことから1月19日には“会見のやり直し”を求めるネットの署名運動が立ち上がる事態になっています。
こういった姿勢にネットでは大炎上。《まるで謝罪する気がないように見える》《全体的に真摯さが感じられないんだよな》と当たり前の批判がされています。

ある芸能ジャーナリストは「この会見が、女性の尊厳にかかわる大きな問題について説明するもので、通常の“定例会見”と同じ位置づけではないということを、フジテレビ側は認識していたのか定かではありません。いったい、どれだけの準備をしたのか……」と述べていますけれども、確かに真剣味が感じられません。


2.第二の書簡


そんな中、21日、フジテレビ大株主の外資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」が、14日に続いての第二弾の書簡をフジに送っています。

その書簡は次の通りです。
株式会社フジ・メディア・ホールディングス
取締役会 御中
2025 年 1 月 21 日

真の第三者委員会の設置と信頼回復に向けた再度のお願い

2025 年 1 月 17 日、貴社の子会社である株式会社フジテレビジョン(「フジテレビ」)の港浩一社長の記者会見は、バーチャルな車の衝突事故と言うべきものでした。今回のような危機をどのように処理すべきでないかを教えてくれました。フジ・メディア・ホールディングス・グループには深刻なコーポレート・ガバナンスの欠陥があります。今、皆様が引き起こした騒動は、明らかに収束しそうにありません。

私の書簡では、外部有識者のみで構成される第三者委員会の早急な設置を求めました。中居氏の明らかな行動によって引き起こされた騒動について事実関係を徹底的に解明し、このような事態が二度と起こらないよう、今後の改善策を策定するためのものでした。

視聴者とスポンサーの信頼を維持することは、公共性の高いビジネスの価値の中心であり、従って、この問題への対処が遅れたり、対処方法が曖昧になったりすれば、視聴率の低下やスポンサー離れを招き、株主価値を損なうことは避けられないと警告しました。それが現実となり、私たちも驚いています。現在までに、トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、三菱自動車、スズキ、ダイハツ、アサヒ、キリン、サントリー、サッポロ、日本生命、第一生命、明治安田生命、アフラック、ソニー損保、日本コカ・コーラ、日本マクドナルド、ヤクルト、日清食品、セブン&アイ、ローソン、イオン、花王、資生堂、楽天、NTT、KDDI など、日本を代表する大企業、一流企業 50 社以上が、貴チャンネルからスポンサーを撤退しました。

港社長の記者会見では、何故限られたメディアしか参加させなかったのか、何故大手テレビ局であるフジテレビはテレビ取材を許可しなかったのか、何故港社長は質問のほとんどに答えなかったのか、という疑問が残りました。最も重要なことは、港社長が「設置する第三者委員会は、日本弁護士連合会の企業不祥事等における第三者委員会ガイドライン(「日弁連ガイドライン」)に沿うものではないと考えている」と述べたことです。

なお、念のため、日弁連ガイドラインは第三者委員会に以下を求めています。

(1) 会社から独立したメンバーのみで構成されること
(2) 会社の全面的な協力を得て、徹底的な調査を行うこと
(3) たとえそれが現経営陣にとって不利となる場合であったとしても、調査中に判明した事実と評価を報告すること

フジテレビが日弁連ガイドラインに基づかない第三者委員会を発足させようとしたことは、意図的な真相隠蔽、経営陣のホワイトウォッシングを図った疑いが自動的に生じることを意味します。

これでは、第三者委員会と呼ばれるものの信頼性は最初から損なわれてしまいます。フジテレビへの信頼を回復するどころか、記者会見とそこで述べられた今後の方針案は正反対の効果をもたらし、すでに脆弱なフジテレビの評判をさらに悪化させてしまいました。

加えて、港社長は会見前に親会社と話したことを認めています。従って、このような曖昧模糊とした対応は、フジ・メディア・ホールディングス・グループの隠蔽体質を露呈しているとしか思えません。

株主として、私たちは今なお憤りを感じており、これ以上の株主価値の毀損を容認することはできません。フジ・メディア・ホールディングスとフジテレビに対し、以下のことを要求します:

1.港社長の記者会見を今週にも開き、今回はテレビカメラだけでなく、すべてのメディアが参加できることとすること

2.記者会見では、設置される第三者委員会について、(1)日弁連ガイドラインに沿った委員構成であること、(2)提案された委員全員の氏名、(3)実施される調査の範囲、(4)調査及び結論の公表スケジュール、の 4 点を確認すること

3.調査の範囲は中居氏の件に限らず、不正の証拠があれば他の件にも拡げること。フジテレビ社員の声がさらに上がり始めていることは承知しています。

4.具体的な調査日程はともかく、少なくとも 2025 年 6 月に開催されるフジ・メディア・ホールディングスの定時株主総会の 1 か月前までには、調査結果と最終報告書を公表する必要があります。

私たちは、フジ・メディア・ホールディングスとフジテレビが、このような誤ったスタートを切った後でもなお、この問題に真摯かつ前向きに取り組む姿勢を示すことで、信頼と信用を回復できることを期待しています。そのような結果が得られない場合、定時株主総会は必然的に取締役会の能力と誠実さについて、株主による投票を要請することとなります。株主は黙ってはいません。

最初の書簡に書きましたように、これは港社長の(コーポレート・ガバナンスに問題はないとの)意見に反して、貴社自身が作り出したコーポレート・ガバナンスの問題です。現代社会では通用しない慣行が浮き彫りになっています。この問題に対する責任は、貴社の取締役会にあります。
ようやく社外取締役から臨時取締役会の開催要請があり、1 月 23 日に開催される予定であると聞いています。そこでは、日弁連ガイドラインに従って適切に構成された第三者委員会の設置が要求されるものと思われます。私たちは、この要求に従うよう強く求めます。

注視しているのは私たちだけではありません。

Paul ffolkes Davis
Chairman
Rising Sun Management Ltd.
第二弾の書簡では「フジ・メディア・ホールディングス・グループには深刻なコーポレート・ガバナンスの欠陥がある」、「日弁連ガイドラインに基づかない第三者委員会を発足させようとしたことは、意図的な真相隠蔽、経営陣のホワイトウォッシングを図った疑いが生じる」「フジテレビへの信頼を回復するどころか、すでに脆弱なフジテレビの評判をさらに悪化させた」など手厳しく指弾する言葉が並びます。

ダルトン・インベストメンツは、全てのメディアが参加できる記者会見を再び開くこと、日弁連ガイドラインに沿った第三者委員会を設置すること、調査範囲を拡げること、5月までに調査結果を出すこと、などを求めていますけれども、至極真っ当な要求です。


3.関西テレビ大多社長の独白


1月22日、関西テレビの大多亮社長が記者会見を行い、一連の問題について関西テレビの視聴者や関係者に謝罪しました。

大多社長は、事案発覚当時、フジテレビの専務を務めていて、今回の事案についても把握し、対応に当たっていました。

会見で大多社長が述べた内容は次の通りです。
・この事案につきましては私がフジテレビに在籍していた当時、専務取締としておりましたが、その時の事案でございます。発生は1年半前の事案です。それからしますと、私がフジテレビにいた時に関わったのは1年です。
・この件に関しましては、関西テレビは一切関係しておりません。ですので、関西テレビの視聴者の皆様をはじめ、関係者の皆様、そして弊社と取り引きをしていただいている方々、関西テレビの社員・スタッフ、多くの皆様にご心配とご迷惑をおかけしたことは、本当に心からお詫びをしたいと思っています
・関西テレビとしては、フジテレビにきちんとしたこの件の調査を求めて参りたい
・さらに、今回報じられているような女性アナウンサーを伴った会食など、テレビ局員と芸能関係者の関係を巡る問題について、関西テレビとしても社内調査を行いたい
この関西テレビの会見は、フジテレビのそれとは異なり、新聞社やテレビ局、通信社など27社が参加。プライバシーに配慮した上で動画の撮影なども可能な形で実施されました。

大多社長の発言の後、記者からフジテレビ専務時代の対応などについて質問が相次ぎました。

そのやり取りは次の通りです。
記者  :大多社長自身が相談を受けていた、事態を把握していたと報道されていましたが?
大多社長:当然私は把握しておりました。この事案が起きてからほどなくして私の耳に報告が上がっております。非常に重い案件だなと思いましたし、ある種の衝撃を私は受けました。この女性のケア、プライバシー、人権を心身のケアというのをしっかりとやらなければいけないと強く思った。

その女性が非常に、当たり前なんですけども、大事にはしたくない、言葉はわかりませんけども、公にならない方がいいし、そういった中で、誰にも知られたくないということだと思うんですけども、そういう中で、私まで上がってきたということなんです。

すごい限られた状況の中で私はその情報を得たということになります。大変重い案件になりますので、これは社長には上げなければならない」

私の判断で港社長に上げた。その日のうちに上げた記憶があります。

記者  ;トラブル把握後も中居氏を起用継続した理由は?
大多社長:私の中では、とにかく彼女がわからないように、公にならないようにということを常に最優先に考えていましたので、中居氏を守ろうとか、そういう意識はなかったです。それよりも『彼女を守る最善の手は何なんだ』ということを考えていました。

記者  :中居氏に言いたいことは?
大多社長:この事案だけを見れば、示談をされていますし、守秘義務もあるので、そこに私がどうこう言うことはないですが、先ほど番組を漫然と続けていこうなどと思ったことは一度もなかった

記者  :それはある種の「怒り」がご自身の中にあった?
大多社長:そう取っていただいて結構です。

記者  :大多さんの口から女性に伝えたいことは?
大多社長:まず思うのは、体調は少しでも良くなられているならば、それがまず一番いいなということと、やっぱり思うのは、もう少し寄り添うのであればどういう形があったのか、この件や、彼女のことを思うと、足りていたのか。足りていなかったのかということを、すごく感じるということですので、僕はそう思います

記者  :女性アナウンサーを含め女性社員を接待役として同席させることは放送業界では常態化しているのか?
大多社長:女性アナウンサー、女性社員との会食や、それが社内同士・社外の会社・プロダクション・それからタレントさんとの会食ですよね。これはあります。私はそれ自体が悪いと思ったことはないです。私自身もそういう会に出たこともありますし。ただ、今回報道されているような、性の上納とか、献上とかとは、それとは全く性質が違うと思っているんですね。私の中では、(性の上納は)全くなかったと思っていますので、すべて女性アナウンサーとの会食ということがイコール『よくない』とか、性の上納につながるとは思っていませんでした。
この会見について、有識者は次のように述べています。
ジャーナリスト・鈴木哲夫氏:守る守らないを主体的に決めるのは、局側ではなくて、彼女自身がどうして欲しいと言ったのかですよね。そこが『公にしないでほしい』と言われたのであれば、それをやったということでしょうから、だから彼女の意思を最優先にしたのかという、そこはもう一言欲しかった。

それと、今回の一連の問題で感じているのは、企業の危機管理なんですよ。きょうカンテレの大多社長が会見したけれども、この前、なぜフジテレビがこういうスタイルでやらなかったのかっていうそこの問題ですよね。

この問題が週刊誌で報道されたときに、最初のフジテレビのコメントが『我が社は関係していない』とあった。僕はその瞬間に『大丈夫か?』と思った。

あの時に言うべきは、『きちんと調査したい』というのが、危機管理上のコメントなんですよ。だって、『ない』って言い切ったら、必ずそうじゃないものが、負のスパイラルで出てくる。この辺りの危機管理の甘さっていうのはすごく感じたんですよね。

それともう一つ、フジテレビが会見したのは、1月17日だったんですよ。この日は、阪神淡路大震災の30年の日だった。

報道機関として、この30年の節目にやっぱりあの地震をもう一回みんなで考えてという役目をメディアが果たさなきゃいけない日に会見しますかね。僕はあの辺の感覚が『えっ』と思いましたよ。しかもその日の夜のフジテレビの全国ニュース、トップはこの問題でした。阪神淡路大震災から30年がトップであるべきでしょ。みんなで考えようと。

その辺も含めて危機管理というものに対しての一連の問題があるなっていうのは、ずっと感じていますね。

関西テレビ・加藤さゆり報道デスク;ジャニーズの性加害に関わる問題などが発覚して以降ですね、私たちテレビ業界に突きつけられている課題、つまり人権意識がどうあるのか、どう変わってきたのかっていうところが、今回改めて突きつけられたのではないかと思っています。フジテレビだけの問題ではなくて、私たちテレビ業界全体に向けられている課題として、しっかり向き合っていかないといけないと思います。

関西テレビ・吉原功兼キャスター:この問題は示談などの守秘義務もあり、プライバシーの保護の問題もあるということで、大変難しい秘匿性の高い事案であったと思いますけれども、当事者の女性に対してフジテレビが本当に向き合っていたのか。そして事案が発覚した後の対応、女性の方はもちろん視聴者の方々に対しても、真摯な対応と言えたのかどうか。しっかりと調査をして、そして速やかに公表して欲しいと思います。

そして厳しい目を向けられているのは、系列局である私たちも同じです。信用、そして信頼というのが軸の報道機関である私達。ですから、私たちにとっても信頼に足るテレビ局なのかというのが問われていると思います。関西テレビは職員と、そして芸能関係者の間で何かトラブルが起こっていなかったかどうか調査するとしていますが、私たちがしっかりと調査をしていくということが今私たちにできる唯一の道だと考えています。
関西テレビの会見は、通常、関西放送記者会に所属する新聞社に向けてのものですけれども、この日は参加を希望する加盟社以外のテレビ局、ネットメディア、週刊誌、フリー記者など基本的には「他メディアを断らない」という方針で受け入れ、加盟社以外もオブザーバーとしてではなく質問も許されました。テレビ局の生中継での放送はNGとなったものの、情報解禁時間の設定もありませんでした。

通例では、冒頭に幹事社が決められた質問を投げかけ社長が応答。その後、自由な質疑応答という流れなのですけれども、この日は社長が冒頭で視聴率の報告などを行いスタート。登壇したのも大多社長1人でした。

大多社長はフジテレビの執行役員や常務を歴任しフジテレビを知り尽くす人物として発言が注目されています。その人物が約3時間にもおよぶ会見を一人でやり切ったのは、それなりに評価してしかるべきかと思います。少なくともフジテレビの港社長と比べると月とスッポンくらい違います。




4.逃げ場が無くなるフジテレビ


フジテレビ問題は、他方にも炎上しつつあります。

21日、立憲民主の有田芳生議員が自身のSNSで「フジテレビと中居問題」と題し、「僕が知っている女性タレントも中居被害を受けていた……TBSが調査に出たが、これは全局の問題であり、中居問題で終わらないだろう。度し難い」とツイートしました。

あるスポーツ紙記者によると、「立憲民主党の有田議員は、統一教会やオウム真理教の問題を追及してきたジャーナリストでもありますが、どうやら、有田氏の知り合いの女性タレントが以前に、中居さんから被害に遭ったようなのです。その告発をした投稿がX上で炎上していまして……」と述べていますけれども、23日現在、件の有田議員のツイートには2000件近くのリツイートがついていて、その多くが《被害を知っていて何もしなかったということですか?》、《どういうこと? フジ問題が表面化しなかったら黙ってたってこと?》、《もっとはよ言えよって感想しかない。なんでワイドショーにレギュラーで出てたころに言わなかったの?》、《国会議員として問題な気がする》、《知り合いの性被害を見て見ぬふりするって……『黙さず、闘う。』っていうのはなんだったの?》など批判の嵐です。

また、ネットでは、常日頃、「性の商品化」だなんだと批判の声を上げるフェミニスト界隈もフジテレビ問題にはだんまりなのは何故だ、という声も上がっています。

普段の言動との整合性が問われています。

前述の有田議員は全局の問題だと述べていますけれども、他局も戦々恐々のようです。

1月20日、TBSは、TBSグループ人権方針にのっとり実態を把握するための社内調査に着手していると発表しました。問題が把握された場合には「適切に対処してまいります」としていますけれども、前述の関西テレビといい相当な危機感が感じられます。

渦中の中居正広氏は、23日、ファンクラブのサイトを通じて芸能活動の引退を表明する文書を公表しているようですし、同じく23日、フジテレビの親会社「フジ・メディア・ホールディングス」の金光修社長が記者団に対し、一連の問題の事実関係や自社とフジテレビの対応について調査するため、日弁連ガイドラインに沿った形で第三者委員会を設置すると公表しています。

中居氏引退に日弁連ガイドラインに沿った第三者委員会の設置。フジテレビも段々と逃げ場が無くなってきました。





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