日米同盟最適化と安倍に倣う世界

今日はこの話題です。
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1.日米外相会談


1月21日、アメリカ訪問中の岩屋外相は、マルコ・ルビオ国務長官と約30分間の初会談を行いました。

外務省のサイトによると、その概要は次の通りです。
冒頭、岩屋大臣から、ルビオ国務長官の就任への祝意を述べ、両外相は、今後も日米同盟を新たな高みに引き上げるとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日米で協力していくことで一致しました。
両外相は、日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化に向けた協力を進めていくことで一致しました。
両外相は、経済分野についても意見交換を行い、日本企業による対米投資及び経済安全保障を含む日米経済関係の重要性を確認しました。
両外相は、日米豪印、日米韓、日米比といった同志国連携を更に強化していくことの重要性で一致しました。
両外相は、核・ミサイル問題を含む北朝鮮情勢や中国をめぐる諸課題について意見交換を行いました。
両外相は、かつてなく強固になった日米関係を維持・強化すべく、引き続き日米で緊密に連携していくことで一致しました。
一致したのは同盟関係の強化だけで、経済関係は「重要だね」、北朝鮮・中国に関しては「意見交換」となってますから、どこで見解が一致し、どこで衝突したのか分かりやすい記述だと思います。

それでも、石破総理とトランプ大統領との早期会談を行う方針を確認したとのことですから、その方向での調整を継続するということでしょう。報道では、2月前半にも訪米する方向で調整を進めるとなっているようです。

過去を振り返ると、日本の総理はアメリカで新政権が発足して間を置かず訪米しています。2017年のトランプ氏の1期目は就任直後の2月に安倍晋三総理、21年のバイデン氏は新型コロナウイルス禍にもかかわらず、4月に菅総理がワシントンを訪れています。

トランプ氏が20年の大統領選で敗れた後も日本政府は在米大使館、外務省、国家安全保障局が持つ複数のルートを使ってトランプ陣営と人脈を維持。トランプ氏の興味の方向や考え方の変化を調べ、首相官邸に情報を集めて対策を練ったそうです。

水面下でトランプ陣営に、引き続き日米同盟とインド太平洋を重視すべきだとすり込んでいたことが効いて、それが岩屋氏の訪米につながったとされています。

インド太平洋を抑えようとするのなら、日本の協力は欠かせませんからね。実際日米外相会談でも冒頭で「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日米で協力していくことで一致、となっています。

トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」を掲げ、最終的には首脳間でのやりとりが結果を左右するとされるのですけれども、その一方、外務省幹部によると、外交や安保では側近の意見を聞く傾向にあると伝えられています。

日本政府内は石破総理も含め「トランプ氏が決定権を持つ大統領就任後でないと意味がない」との意見が大半だったそうで、それが大統領就任前の会談を見送った理由の一つだとも言われています。


2.日米同盟最適化


1月22日、石破総理は、日米外相会談で早期の首脳会談開催を確認したことを受け、トランプ大統領との対面会談に向けた包括的な対米投資計画を作成し、トランプ氏に提示する案を検討するとしています。トランプ大統領が中国やカナダなどへの関税強化を打ち出す中、日本の対米投資計画の具体策を先立って説明し、日米連携の重要性を伝える思惑があるとみられています。

日米首脳会談で提示する対米投資分野として、共同での研究開発や人工知能(AI)、ナノテクノロジーを対象とする見通しとされていますけれども、これは、21日のBS日テレ番組に出演した長島昭久首相補佐官が、重要な議題として「経済、安保」と言明し、これらの投資対象に触れた上で「パッケージをある程度つくり、日本が主体的に提案できるよう準備している」と述べ、トランプ大統領がエネルギー政策を巡り化石燃料の増産を表明したことを巡り「政策転換を前提に提案しなければならない」と強調しています。

長島首相補佐官は、昨年11月20日から24日にかけて訪米し、カート・キャンベル国務副長官、アマンダ・ドーリー国防次官代行、ミラ・ラップ=フーパー国家安全保障会議(NSC)上級部長、リック・スコット上院議員(共和)、ウィリアム・ハガティ上院議員(共和、元駐日米大使)、マイケル・マコール下院外交委員長(共和)、ヤン・キム下院インド太平洋小委員長(共和)、ケネス・ワインスタイン「ハドソン研究所」所長らと会談、その他、「MAGA(Make America Great Again)」運動グループのメンバー、安全保障専門家ら11人と会談したのですけれども、その後昨年12月13日に、日米同盟について、時事通信のインタビューを受けています。

件のインタビューの内容は次の通りです。
―訪米の成果は?
訪米の最大の目的は、これまでの政策を継続させることだ。トランプ陣営の外交・安保チームの人たちに対し、安倍、菅、岸田、石破各政権でこれまで積み上げて来た政策の継続を求め、その目的はおおよそ果たすことができた。

トランプ次期大統領は二国間のディール(取り引き)を優先させるイメージがあるが、外交・安保担当者の間では、厳しさを増すインド・太平洋の安全保障環境に対し、日米を中心とした、「ミニラテラル」(少数の多国間協力の枠組み)、つまり日米韓、日米豪、日米比、日米豪印、こういった取り組みで、安全保障協力を重層的に積み上げて抑止力・対処力を強化してきた。こうしたアプローチにおおむね賛同を得られた。これらの中にはバイデン政権で積み上げたものもあるし、「トランプ・安倍」政権の時に始まったものもあり、政策的な方向性については一致できた。これが最大の成果だ。現政権の幹部にも、しっかり引き継いでもらうことを確認した。

―安全保障に関して、長島氏は日本が主体性を持つべきだとの考えを示してきたが、その思いは強まったか。
日本のメディアはトランプ氏にどう対応するかという論調が多い。ひどいのは、石破茂首相はトランプ氏から外されているとか、日本は重要視されていないと言う人もいる。それはトランプ氏に視点を置いたもので、受け身の姿勢だと思う。そうではなく、われわれがどうインド・太平洋地域の安全保障を考え、日本が何をするかを考え、米国にはこういう協力をしてほしいと言うべきだ。

私のコンセプトは「活米」。つまり米国の力を「活かす」ということ。「親米」「従米」「反米」など、いろいろ言葉はあるが、日本が主体的に米国をどう活用していくかが重要だ。

日米同盟の「強化」「深化」が必要とこれまで言ってきたが、私はこれから目指すべき日米同盟は「最適化」(Optimization)という言葉を使っている。双方が持てるアセットを出し合って協力し、同盟の力を強くしていこうということ。それは経済、経済安全保障、エネルギーなど総力を結集すべきだ。

―日本は安全保障で全て米国に頼るわけではないと。
バイデン政権の時はまだ許されたかもしれないが、トランプ政権でそういう姿勢は全く許されないと思う。トランプの基本的な姿勢は、「自分のことは自分でやれ」と、自助と役割の適正分担だから。「自助ができないのであれば助けてやるから金を出せ」と。こういう分かりやすいアプローチだ。

―日本の防衛費について、国内総生産(GDP)比2%以上、将来的には必要になるかもしれないという長島氏の発言が、国会でも議論になったが。
前提の話がない中で防衛費を無限に拡大するみたいに受け止められたようだが、2027年に防衛費のGDP比2%、5年間で43兆円という方針は基本的に変わらない。しかし、そこから先、日本の安全保障環境が悪くなった時に、「われわれの防衛費はGDP比2%だから、これ以上はできない」ということが、日本の安全保障政策として通用するのか、きちんと議論すべきだと言ったわけで、別に何もおかしいことはない。

あくまで客観的な安全保障環境がどうなるかを考えるべきで、日米同盟を最適化すると、結果的にトランプ氏が希望する方向と一致する可能性は当然ある。

―今後、米国から防衛費の負担増を求められるということか。
それは分からない。北大西洋条約機構(NATO)では2%が基準だったが、もう3%の議論が始まっている。台湾は現に2.45%を3%、4%、5%にしろ、という論者もいる。石破茂首相が国会で言っていることだが、防衛費はGDP比の議論ではなく、中身の話が重要だ。

―日米地位協定の見直しについては、将来的に提起できるか。石破首相の政権基盤が強くないと難しいとも指摘されるが。
もちろん地位協定見直しは一朝一夕にできるものではない。なぜかと言うと、日本側が改革しないといけないことが多いからだ。地位協定のメカニズムは「相互防衛」が前提にある。日米関係は相互防衛ではない。日本が攻撃された時は米国が一緒になって戦うけど、米国が攻撃された時は、日本は条約上の義務を負わない。トランプ氏がよく言っている不公平な関係だ。この不公平な関係については、安全保障条約第5条で、日本が攻撃されたら米国が守るが、それだけだと不公平だから第6条で、極東の平和と安全のために日本は基地と施設を提供する義務を負っている。この二つがセットになって今のいびつな地位協定がある。地位協定を改定するためには少なくとも相互防衛にしないといけない。それを阻んでいるのは憲法9条2項で、(9条改正は)そこまでやる意思と政治的余力と、政権が安定していないとできないし、野党側にそれを理解する勢力がいなかったらこれは無理だ。

石破首相はそのことを全部分かっていて、自分たちは対等な日米関係、健全な日米関係にもっていきたいという思いがある。

安倍晋三元首相が支持率を10%減らして、法制局長官を代えてやっても、限定的な集団的自衛権行使しかできなかった。日本が憲法改正をできるなら、私は地位協定の改定も当然できると思う。しかし、今はそれが見通せない状況だということ。現状はまず、目の前にある安全保障上の課題を解決し、その後、政治的に余裕があるなら地位協定見直しに取り組むべきで、中長期的な課題としては旗を降ろす必要はないと思う。

―米国から、石破首相が自民党総裁選で提唱した「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の話は出なかったのか。
アジア版NATOの話はほとんど出なかった。これも首相自身が「一朝一夕にはできない」と言ったことだ。相互防衛ができないのに、多国間の取り決めができるはずはない。インドも東南アジア諸国連合(ASEAN)も組み込んだ集団的防衛協定みたいなことは簡単にはできない。

しかし、客観情勢が厳しい状況になった時に改めて考えるのではなくて、今からそういうことは視野に入れておくということ。この話は自民党の小野寺五典政調会長を中心として党に議論を預けた。当面の政策目標ではないと私は理解している。

―日米首脳会談の時期は早くていつ頃と見ているか。トランプ氏が大統領就任前にも石破首相に会う可能性に言及したが。
両者の良きタイミングを図るということ。慌てて会う必要はないが、あまり遅過ぎてもいけない。数与党なので予算成立と国会対策は非常に大事であり、国会審議の状況を見ながらの日程調整になる。

首脳同士のケミストリー(相性)が合うことは大事だけど、肝心なことは、トランプ政権のインド・太平洋戦略をにらみながら、日本側が自分たちの戦略をきちんと固め、安全保障だけでなく、経済、エネルギー、経済安全保障も含め一つのパッケージとして示すぐらいの準備をしなければいけない。会うだけで終わりじゃしょうがない。

トランプ氏がびっくりし、圧倒されるぐらいのものをつくっていく必要がある。今、政府の各省でそれを整理し、検討しているところだ。個人的には、日米同盟を最適化する大きな戦略を練る必要があると思っている。
日本政府がトランプ大統領就任前に会談することを見送ったのは、「トランプ氏が決定権を持つ大統領就任後でないと意味がない」という意見があったからだという見方を先述しましたけれども、このロジックでいえば、トランプ大統領からみても、石破総理に決定権があるのか、なければ意味がないとも思われるということでもあります。

ただでさえ少数与党でしかも党内基盤も弱い石破総理の立場を考えれば、だからこそ、事前に政府で案を練ってトランプ大統領にもっていくということなんでしょうけれども、いざ会談となって、例えばトランプ大統領に、「もっと投資しろ、倍額だせ」なんて、ソフトバングの孫社長にいったように、吹っ掛けられたりでもしたら、そのとき石破総理は上手く対処できるのか。


3.安倍に倣え


1月25日、日テレは「政権中枢「123万円より上げてもいい」発足4か月ですでに「石破さんで参院選は戦えない」との声も…」という日本テレビ政治部の竹内デスクと菅原解説委員の解説記事を掲載しています。

その中で、トランプ大統領との会談について取り上げた部分を引用すると次の通りです。
【菅原】
もう一つ、外交ですが、ちょうどその2月、まさに予算委員会の審議が忙しい時に、トランプ大統領との会談を調整するという話もあります。
【竹内】
今、日程が徐々に詰まりつつあると思いますが、予算が内政の大きなポイントだとすると、外交のポイントは日米関係ですよね。ですから、トランプ大統領との間で、しっかり信頼関係を築けるかどうかというのは、大きなポイントになると思います。
【菅原】
ただ、今回の世論調査では厳しい結果でしたよね。
【竹内】
石破首相はトランプ大統領と信頼関係を築けると思いますかと聞いたところ、「思わない」が、66%でした。ただ、永田町には逆の見方もあって、「期待値が高くないので、もし、トランプ大統領との関係で成果が出れば、それは逆に評価される可能性があるんじゃないか」と。
【菅原】
なるほど。それが緩いと言われるのか…。ハードルを下げている発言なのかもしれないですけれど…。
【竹内】
そうですね。内政最大の課題と言っていい予算案の審議と、外交の最大の課題である日米関係。2つの大きな課題に取り組むことになる2月は、まさに“石破政権の将来を左右する月”になると思います。
最初から期待していない分、何か少しでも成果があれば、評価されるんじゃないか、となんとも情けない状況ですけれども、世論の大半は、石破総理ではトランプ大統領と信頼関係を築けないと思っているのが現状です。

では、本当に石破総理がトランプ大統領と信頼関係を築けることは出来ないのか。

1月22日、ドイツ公共放送ARDの番組に第1次トランプ政権で国家安全保障問題担当の大統領補佐官を務めたジョン・ボルトン氏が出演しました。

ボルトン氏は番組で、ドイツの首相がトランプ大統領と良好な関係を築くには「日本の安倍晋三元首相のやり方に倣うことだ」と述べ、安倍元総理について「トランプ氏に最も影響力のある外国人政治家だった……安倍氏は何か問題が起きた時だけでなく、常にトランプ氏と会話していた。電話をかけ、会いに行き、とにかく会話を求めた。そうしてトランプ氏の信頼を得た」と指摘。北朝鮮の核兵器開発問題でも「安倍氏がトランプ氏に影響力を発揮した。米国の安全保障にとっても良いことだった」と述べました。

安倍元総理については、トランプ大統領との「ゴルフ外交」が時に話題になることがありますけれども、ボルトン氏は「おかしなことにゴルフはいつもトランプ氏が勝った」と述べています。あるいは安倍元総理は「接待ゴルフ」をしていたのかもしれません。


4.トランプから何度も誘いを受けた高市早苗


高市前経済安保担当大臣は、1月23日に収録されたTBSのCS番組「国会トークフロントライン」に出演し、トランプ大統領就任前にトランプ大統領周辺から面会の誘いを受けていたことを明かしました。

高市氏は「トランプさんに近い方から、会えるんで来ないかってお誘いは去年から何度かいただいてたんですが、やはり一国の総理大臣が先に会うべきだと思ったので、ご遠慮いたしました」とさらりと話していますけれども、「何度も誘いを受けた」とは、それだけトランプ陣営が会いたいと思っているということです。

あるいは昨年4月にトランプ大統領と会談した麻生自民党最高顧問から高市の名が挙がったのかもしれませんけれども、トランプ政権から注目されていることは間違いありません。

前述したボルトン氏ではありませんけれども、トランプには安倍流がよいというのは、もはや世界の定説になっているのかもしれません。

けれども、反安倍筆頭と目されてきた石破総理が「安倍に倣え」といわれてもおそらく無理だと思います。やはりあまり期待しない方がいいのかもしれませね。







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