

1.あらゆる選択肢が検討のもとにあります
1月30日、フジテレビと親会社のフジ・メディア・ホールディングスが、定例の取締役会を開催しました。清水賢治氏がフジテレビの社長に就任してから、取締役会が開かれるのは初めてのこと。この日の取締役会には、フジサンケイグループの代表を務め、長きにわたり影響力を持つ、日枝久相談役も出席したようです。
取締役会後、清水賢治社長は記者団の取材に応じ、次のように述べました。
─フジテレビ再生への決意は?清水社長は、経営刷新小委員会と問題の再発防止を検討する社内若手チーム、そしてフジテレビ再生のプロジェクトチームをそれぞれ立ち上げると明言しています。
今のフジテレビは、やはり皆さまからの信頼が落ちている状況だということは重々承知しております。そして、クライアントの皆さま方にも非常にご迷惑をおかけしていることは大変心苦しく思っております。これに対して今何ができるかといいますと、第三者委員会の調査結果というものは我々が期間とかそういうものは左右できませんので、3月末がめどというのは皆さまもご存じの通りですが、それまでの間、我々は何をしていくのか。今すぐできることは1つずつやっていかなければいけないと思っています。先ほど決まったことというのは、ぞれぞれの第一歩となる案だと思っております。先ほど申し上げた経営刷新小委員会というのは、社外取締役がメンバーです。要するに外部の方がメンバーで、これは取締役会の直下に設置されて様々なことについての提言をしていただくことになると思います。そして、これと同時に社内プロジェクトも、社外の方で構成される経営刷新小委員会と社内の次世代を担う若手のチームを編成して、こちらで再発防止、そしてフジテレビの再生のプロジェクトチームを作りました。
──日枝氏の出席や発言は?
今日は定例の取締役会ですから、出席されております。特に発言内容については、ここでは詳細は控えさせていただきます。
──発言はしたか
発言はございました。
──文春が訂正したことへの見解は?
各取締役からどのような意見が出たかというのは差し控えさせていただきますが、一様に非常に厳しい意見が多かったです。
──訴訟は考えるか
今あらゆる選択肢が検討のもとにあります。
2.社員の皆さんへ
報道によると、今回の取締役会で議論されたとみられる内容の一つに、第三者委員会の調査対象者の保護についてがあります。
第三者委員会に関して、「調査に協力した役職員に対し、決して不利益な取り扱いをしないこと」不利益な取り扱いをした場合、取締役会決議に違反する重大な不適切行為と認めること」「不利益な取り扱いを受けた役職員は、直ちに第三者委員会、または会社に被害を申告されたい」といった内容を決議したということです。
さらに、フジ・メディア・ホールディングスの2024年度の業績予想を下方修正。売上高に関しては、8.4%減の501億円減、純利益に関しては、66.2%減の192億円減、としました。
これは、多くの企業がコマーシャルを見合わせていることの影響を受けたもので、フジテレビの放送収入の合計は233億円減る見通しだとしていますけれども、清水社長はCM差し替えに関して、AC差し替えをしている分の料金を請求しない決議をしたことも明らかにしました。
ガタガタに揺れるフジテレビですけれども、1月30日、清水社長は全社員に「社員の皆さんへ」と題した、騒動を謝罪したメールを配信しています。
その概要は次の通りです。
・夢や希望を胸にフジテレビに入社し、これまで懸命に働いてきた皆さんが、不安や困惑を抱えていることは痛いほど理解しています。「何が起きているのか」「なぜこんなことになったのか」「これからどうなってしまうのか」…。皆さんと同じように、ご家族も心配されていることでしょうまぁ、フジテレビだけではないですけれども、大谷翔平選手の家を晒して炎上したりなど、数々のやらかしを考えると、今頃「人権の尊重」だとか「誠実な行動」だとかいわれても、世間は、はいそうですかとはなりません。
・フジテレビは、急激な業績の落ち込みにも耐えられる経営基盤を持っています
・第三者委員会の社内調査について、その結果を待たずに、改革を進めていく覚悟です
・皆さんに、2つのことを約束します。
・ひとつは《人権の尊重》。人権は、すべての人が幸せを追求するための基本的な権利です。これを侵害する行為は、決して許されません
・もうひとつは《透明性の確保》。誰もが躊躇なく意見を述べられる職場環境の透明性。そして、決定のプロセスを明確にした意思決定の透明性などを確保することで、風通しのいい職場環境を目指す
・私たちはお客さまに対して、常に誠実であり続けるべきです。それこそが、フジテレビの本質的な存在意義です
・誠実な行動を積み重ね、信頼を取り戻すことができた時、私たちは改めて、自分たちの仕事に誇りを持てるようになるはずです。そのためには、皆さんの力が必要です。よろしくお願いします。
3.倒産は想定していない
また、清水社長はフジテレビの放送収入の合計は233億円減る見通しだとしていますけれども、広告収入全体では、2024年3月期対比15%減の1252億円あります。
実際、清水社長も社員向けのメールで「フジテレビは、急激な業績の落ち込みにも耐えられる経営基盤を持っている」と述べています。
ある信用調査会社の幹部は、「フジ・メディアHDに確認したところ資金は潤沢にあり、資金繰りに問題はないとの回答だった。倒産といった事態は想定していない」とコメントしていますけれども、たとえフジテレビ単体で厳しい状況だったとしても、しかしフジ・メディアHDは、フジテレビを中核とする「メディア・コンテンツ事業」のほかに、サンケイビルなどの不動産事業、ホテル事業、神戸須磨シーワールドなどの観光事業を展開しています。こうした「都市開発・観光事業」は絶好調なうえ、全社営業利益の過半を占めるとのことです。
要するに、フジテレビの事業が大きなダメージを受けても、放送外事業でカバーすることができる構造となっていて、すぐさまフジ・メディアHDの経営が危ぶまれるということはないと見られています。
とはいえ、フジテレビのスポンサー企業の多くは、「少なくても3月末に予定されている第三者委員会の調査結果を見てから判断する」としていますから、少なくとも、3月末までは今の「AC広告祭り」が続く公算が大です。
さらに、調査結果が曖昧だったり、フジテレビが明確な信用を取り戻す施策を打ち出すことができなかったりした場合には、さらに長期間CMがストップしてしまう事態も十分ありうることを考えると、来期2026年3月期決算が大幅な赤字に陥るのは目に見えています。
そんな中、追い打ちをかける事態が起こりました。
1月30日、林芳正官房長官は記者会見で、フジテレビ関係の広報啓発事業に関し、29日時点で実施中や予定の広告4件を全て取りやめたと明らかにしました。
4件の内訳は、内閣府の政府広報が2件、厚生労働省と国税庁が各1件。内閣府の政府広報の2件は、TVerで配信中の動画広告と、2024年度内に民放各局に出稿する予定のテレビCMだったそうです。
林官房長官はフジテレビが関わる各府省庁の広報啓発活動について「同社を巡る現下の状況等を踏まえて、当面、広告出稿は見合わせる」と述べ、フジテレビが作成する番組などとのタイアップや企画・制作への協力は、趣旨、目的、効果などを各府省で総合的に勘案し、内閣官房に相談の上、対応するとのことで、消防庁の1件が見直し、内閣府の1件と海上保安庁の2件が対応を検討中のようです。
また、報道番組への出演や報道対応は通常通りとしています。
とうとう政府もフジテレビから撤退です。既にCM撤退した民間企業も政府が戻ってこない間は、CM復帰の判断は中々しづらいだろうと思います。

4.日枝でてこい
1月31日、カンテレ「旬感LIVE とれたてっ!」に出演した社会学者の古市憲寿氏は、フジテレビの取締役会でフジサンケイグループ代表の日枝久取締役相談役の進退が議題にのぼらなかったという報道について、「フジテレビをめぐる問題の解決は遠のいたということ……普通に考えて87歳の方が巨大なグループの代表で、人事権を行使している状況は異常だと思う。田舎の零細企業じゃないんだから……そういう方の進退を含めて議論をしないということは、この問題を先延ばししてもいいと捉えられても仕方がない」とフジ不信はなおも続くことを指摘した。
古市氏は、日枝氏に関する経営陣の発言に関しても「みんな日枝さんのこと好きなんだなというのが凄く伝わってきました。もしぼくが辞める経営陣の一員だったら、日枝批判をしたほうが得じゃないかと思う。ここまで世間的に日枝さんという存在が批判されているのだから、ここで日枝批判をして自分だけはカッコよく去るとか、カッコよく次の人生に向かうほうが得だと思うんですけど……“日枝さん”という言葉を使っていたのが印象的だった。身内なんだけど親しみを持って日枝さんのことを発言した箇所がけっこうあったかと思うんです。ということはその存在が現状凄く大きいんだなと裏付けるような会見だったと思います……本当におじいちゃんならいいんですけど、人事権を持っているというのはいろんな人が証言していて事実だと思う。フジテレビのここ10年の不調も、問題の根幹にあるのかなと思うんです」とコメントしています。
今回の問題で、フジテレビの企業風土の問題を指摘されていることを考えると第三者委員会が出してくる報告書はそれほど芳しいものとは思えませんし、やはり最後には日枝氏自身は責任を取ることがない限り、フジテレビも信頼回復の糸口は掴むことされできないのではないかと思いますね。
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