AfD推しのマスク

今日はこの話題です。
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1.ファイアウォールを破ったドイツ・キリスト教民主同盟


総選挙を2月23日に控えるドイツで、保守陣営が支持を集めています。

1月27日までに行われたフォルサの世論調査によると、保守陣営のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の支持率は1週間で3ポイント下がって28%。ショルツ首相が率いる中道左派のドイツ社会民主党(SPD)は2ポイント上がって17%、極右政党とされる「ドイツのための選択肢(AfD)」は21%でした。

これは、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)がアフガニスタンからの難民希望者が児童を狙った襲撃事件で逮捕されたことを受け、不法移民に国境を閉鎖すると表明し、連邦警察が拘束した人物が国内滞在の権利を持たない場合、逮捕状を請求できるようにする計画も明らかするなどしたことが影響したとみられています。

キリスト教民主同盟(CDU)は、連邦政府に国境および難民規則の厳格化を求める決議案を連邦政府に提出し、議会で可決したのですけれども、この決議案は「ドイツのための選択肢(AfD)」も支持しました。

ところが、ドイツ政界には、極右勢力とは協力しないという長年の「ファイアウォール(防火壁)」があるため、それが破られたとして、決議の際、議会は野次と非難の応酬に陥りました。

もっとも、この決議には法的拘束力はなく、ドイツ政府に実施を強制することはできません。

そこで、このキリスト教民主同盟(CDU)は1月31日に、移民の数と家族再会権を抑制する法案を提出しました。

けれども、こちらの法案は、オラフ・ショルツ首相率いる社会民主党(SPD)を含む複数の政党が反対し、350対338で否決されました。

こちらの法案についても、キリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首はAfDの支持を取り付けて可決を目指したのですけれども、こちらは失敗しました。

先述したように、メルツ党首の行動は、極右勢力とは協力しないという、いわゆる「ファイアウォール(防火壁)」を破るものとして広く非難されています。

社会民主党(SPD)のショルツ首相は、「許しがたい過ちだ……ドイツ連邦共和国が設立されてから75年以上、我々の議会におけるすべての民主主義者の間には常に明確なコンセンサスがあった。それは、極右と共に行動しないということだ」と批判し、キリスト教民主同盟(CDU)前党首で政界を引退しているメルケル前首相も、昨年11月にメルツ氏がSPDや緑の党と協力して法案を通すと約束したにもかかわらず、AfDと協力したことを指摘。この約束は「大きな国家的政治責任の表れ」だったと批判しています。

これに対し、メルツ党首は、「間違った人々が支持しているからといって、政策が間違っているわけではない……公共の安全と秩序が脅威にさらされていると確信するまでに、あと何人の子供がこのような暴力の犠牲にならなければならないのか?」と述べ、自分はAfDの支持を求めたことも望んだこともないと強調し「AfDの議員たちが歓声を上げる姿や、その喜ぶ顔を思い浮かべると、不快な気持ちになる」と反論しています。

冒頭で述べたように、キリスト教民主同盟(CDU)は現在、支持率調査で1位となっており、メルツ氏は次期首相と目されています。そして、2位はAfDです。

2月23日の総選挙で支持率通りの結果がでると、ドイツでも保守政権が出来ることになるのですけれども、メルツ氏は、AfDとのいかなる形の連立も否定しています。


2.ドイツのための選択肢


極右政党とされる「ドイツのための選択肢(AfD)」は、欧州債務危機時のメルケル政権によるギリシャ等への救済措置に不満を抱く経済学者らが中心となって結成された政党です。

当初はEUやユーロ圏からの離脱を強く主張していたのですけれども、シリアなどから多くの難民が押し寄せた2015年の欧州難民危機後、当時のメルケル政権の移民政策への批判や、移民・難民問題の焦点化、反イスラムを前面に出すことで支持を拡大してきました。

ただ、党幹部がナチスを擁護する発言をするなど、過激な言動が問題視されており、ドイツの情報機関である連邦憲法擁護庁は、過激な極右組織との疑いから同党を監視対象に指定しています。

「ドイツのための選択肢(AfD)」が掲げる政策は次の通りです。
最後に国境を守る:国境は完全に守られなければならない。不法入国や無記名で入国しようとする者は追い返さなければならない。世界への明確なメッセージ:これからは、誰が私たちのところへ来て、誰が来ないかを、もう一度私たちが決めるのだ。

難民希望者への現金給付はもういらない:難民希望者へのケアは、現金給付から現物給付に切り替えなければならない。非居住者への社会的給付は中止し、大規模な送還を組織しなければならない。

難民法を強化する:難民は一時的な滞在であり、逃亡の理由が当てはまらなくなった時点で終了する。難民の母国でのケアを優先する。多くの難民はそもそもドイツに来るべきでない。

市民権の譲渡をやめる:ターボ帰化はやめるべきだ。ドイツのパスポートを自動的に取得する権利はない。オランダとハンガリーの例にならって、EUの難民制度からの脱退を宣言しなければならない。

労働は再び価値のあるものになるはずだ。国民手当ではない:市民の所得を活性化するベーシックインカムに変え、市民と合法的に居住するEU市民に制限しなければならない。働ける何十万人もの受給者が労働市場に戻れるようにする。

グリーン禁止の代わりに万人のための復興:私たちは技術的な開放を望んでいる。内燃機関や石油・ガス暖房システムの禁止を解除しなければならないが、残念ながらCDUはこれを行う立場にない。

市民と企業のための減税:所得税、消費税、法人税を国際競争力のある水準まで引き下げたい。非課税枠を14,000ユーロに増やし、CO2課税を廃止し、エネルギー税を大幅に引き下げたい。連帯課徴金は完全に廃止し、抜本的な税制改革と簡素化に着手すべきである。

無意味な官僚主義に終止符を:無意味なEUの規則や禁止事項は廃止すべきである。「Supply Chain Duty of Care Act」という官僚主義の怪物は廃止されなければならない。

エネルギーは再び安くならなければならない:「気候保護」のための補助金や支援プログラム、EEG賦課金は、代替なしに廃止されなければならない。私たちは、高価な「エネルギー転換」の終焉とEUの「気候政策」からの脱却を宣言する。安価で信頼できるエネルギーのために、ドイツは原子力発電に回帰し、石炭火力発電所を維持しなければならない。

言論の自由を守る:私たちは、ドイツとEUにおける表現の自由を制限しようとする政治家や当局のあらゆる試みと闘っています。GEZ料金は廃止すべきである。
政策を見る限りでは、普通というか真っ当なことを言っているように見えます。強いていえば、トランプ大統領のアメリカ・ファーストならぬドイツ・ファーストを謳っているように見えます。


3.AfD支持者は隠れトランプに似ている


極右政党とされる「ドイツのための選択肢(AfD)」ですけれども、実際のドイツではどういう扱いなのか。これについては、ドイツ在住で参政党党員とみられる方が、参政党のサイトに「躍進と受難〜AfD(ドイツのための選択肢)というタブー」という記事を寄稿しています。

件の記事の一部を引用すると次の通りです。
2024年欧州議会選挙でドイツ第二党に躍進した新興政党AfD(ドイツのための選択肢)。その歴史と成り立ちについては前回、拙稿にて紹介した(1)。続く地方選挙でも連勝に連勝を重ねている。刮目すべきは9月1日のテューリンゲン州議会選挙で、AfDはなんと32.8%の得票率で第一党に駆け上がった。ザクセン州、最近のブランデンブルク州でもそれぞれ30%前後の得票率でSPD(社会民主党)とCDU(キリスト教民主同盟)に僅差で2位につけた。しかも最近(9月)の全国世論調査によれば全国第二位の人気政党となっている(2)。しかしAfDはその影響力の拡大に伴い、これまでドイツ国内で強い反発と激しい批判に遭ってきた。この傾向は現在も変わらぬどころか激しさを増す一方だ。メディアや主要政党の煽り方は常軌を逸したレベルに達している。おそらくはそれゆえに一般市民の反応はAfDに理解あるとは言い難い。

これは矛盾した現象である。有権者の三割前後が投票する政党なのになぜなのだろう?理論的には10人の有権者が集まればその中の少なくとも2名以上は確率的にAfDの投票者がいるはずであるが、ドイツ在住の筆者がドイツの人と社会問題について語るとき、自ら「AfDを応援している」「AfDに票を入れた」と名乗る人に遭うことはまず無い。CDUやSPDについて論ずることは容認される議論好きの民族であるが、ことAfDについては批判や嫌悪以外の反応を許されない「空気」がドイツの社会には確かに有る。「そんなことを職場で言おうものなら翌日会社に私の椅子は無い!」と囁いたドイツ人すらいる。AfDは現在なお、ドイツ社会のタブーである。

【中略】

AfDは「愛国主義」や「ナショナル保守主義」を掲げ、伝統的な家族や国家の価値を重視する一方で、EUの中央集権化やグローバル化に反対する姿勢を強調している。

AfDは社会に受け入れられていないのではない。有権者の投票行動を見ればそれは明らかだ。ドイツでAfDが攻撃される時、常に話題にのぼるキーワードは「ネオナチ」「ナチス」である。それではAfDが右翼として反社会的行動に出ているかといえば上記のごとく、ナチスを擁護するというよりは「非難しすぎに対する反省」の弁に留まっているに過ぎない。だがこれだけでもドイツでは誹謗中傷の対象となりうる。哀れな有権者はこの境界線で右往左往させられているのだ。AfDという勢力が現代の世にナチスを復活させるかの如く伝える報道こそがグローバリズムによる大衆煽動とは言えないのか?内心そのように感じるからこそ、口では保守思想を過激な右翼と罵りながら投票所ではこっそりAfDに票を投ずるドイツ人が増えている、これが現実だ。

ここで、戦後ドイツという国の抱えた根深い病巣に言及せぬわけにはいかない。ドイツでは「愛国」「伝統」または「ドイツ」「ドイツ的なるもの」という表現がタブーと目されることしばしばだ。一国民が故郷を愛し、家族を想い護らんとする。人としてごくごく自然な「愛情」や「誇り」がドイツの社会においては一種の罪悪感と結びついている。これこそがドイツという国の最も奥底に眠る国民病なのである。

行き過ぎた気候変動対策やポリテイカル・コレクトネス、大量移民による弊害としての犯罪を含む様々の受難に遭って、国民はようやく家族という単位や国や国語の意味について考えを巡らせるようになった。しかし、当たり前とも言える人間の基本的な価値観の重要性を語ろうとするとそこには「先の大戦の反省」というお題目のもとに「国家」を語ることをタブーとする空気が立ちはだかって国民は立ちすくんでしまう。AfDという存在、その躍進と受難の数々はまさしく、逡巡に逡巡を重ねながら己れの本質に向き合う現代ドイツ国民の姿を映し出しているのだと、そのように思えてならない。

今後、AfDがどのようにしてドイツ社会の中でその存在感を示し続けるのか、また反対勢力とどのように向き合っていくのかが注目される。
表立ってAfD支持だと言えば村八分にされてしまうが、本心では支持している。まるで、2016年くらいの隠れトランプ支持者を彷彿とさせます。


4.AfD推しのマスク


今や、トランプ大統領は、アメリカ・ファーストを掲げ、反グローバリズムの姿勢を明確にしていますけれども、トランプ政権の重要人物でもある、実業家のイーロン・マスク氏は、がっつりAfDへの支持を表明しています。

1月9日、マスク氏はAfDのアリス・ワイデル共同党首とのライブチャットをXで開催しました。

74分にわたる英語での対談では、エネルギー政策、ドイツの官僚制度、ヒトラー、火星、そして人生の意味について幅広く議論され、マスク氏はドイツ国民に対し、次期選挙でAfDを支持するよう明確に呼びかけました。

対談で、ワイデル氏は、AfDは「保守的」な「リバタリアン(自由至上主義者)」だと主張。主流メディアによって過激派として「否定的に描かれている」と述べました。

そして、ヒトラーについても彼は保守的ではなかったし、リバタリアンでもなかった。彼は共産主義者で、社会主義者だった」とし、「反ユダヤ主義の社会主義者」とも表現しています。

極右とされているAfDとしては、ヒトラーを共産主義者とすることで、自分達とは違うのだと、同一視されるのを避けようとする意図もあったのかもしれません。

前述したようにAfDの掲げる政策自体は「保守的」な「リバタリアン(自由至上主義者)」なものに見えます。ただ、当時ヒトラーが率いた初期ナチスは反ユダヤ主義・反共産主義・植民地の再分割を掲げて国民の支持を得ています。

ドイツ文学者でエッセイストの池内紀氏は、2015年に行われた三菱UFJリサーチ&コンサルティングのオープンカレッジで「ナチズムを日本語に一番正確に訳すとすれば、 「投票型独裁制」となります。……ヒトラーは、初期は非常に有能で、ひらめきがあって、雄弁で、清潔で、政治化に求められる積極的な言葉は10くらい重ねての構わないような政治家であったわけです。あれだけ悪名とどろいたヒトラーですけれども、初期の5年間くらいは、国民の声をひとりで代弁することができたのです。」と指摘しています。

そうした経験を持つドイツであればこそ、表立ってAfDの支持表明をすることがタブーになっているということは理解できます。

AfDは、2月23日の総選挙に向けた支持率調査で2位に着けているものの、他の政党が協力しないため、政権を取ることはできないとみられています。

それにもかかわらず、マスク氏はヴァイデル氏を「ドイツを率いる候補者」として称賛し、2月1日には「ドイツで行われるこの選挙は極めて重要です。ヨーロッパ全体の運命、ひょっとすると世界の運命を決めることになるかもしれません。友人や家族と話し、AfDへの投票を検討するよう説得することが非常に重要です。」とツイートしています。

AfDが、ドイツ・ファーストなのか、それとも第二のナチズムなのか。ドイツ国民の選択に注目したいと思います。






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