トランプ・石破会談の舞台裏

今日はこの話題です。
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1.トランプ・石破会談


1月31日、アメリカのトランプ大統領は、日本の石破総理とワシントンで会談するとホワイトハウスで記者団に語りました。トランプ大統領は「日本に多大な敬意を抱いている。日本が好きだ。楽しみにしている」と述べたものの、議題については「分からない。彼から申し入れがあった」とのみ答えました。

両首脳の会談は初めてで、石破総理は今月6日~8日にかけて訪米し、2月7日の会談で調整しているとこのことです。

石破総理は会談を通じて「日米両方の国益を満たす新しい形の同盟」の構築を目指し、日米安保条約第5条の沖縄県・尖閣諸島への適用を確認。北朝鮮による日本人拉致問題への協力も求める構えでいます。

石破総理は、会談に備え、1日、総理大臣公邸で林官房長官や橘官房副長官、それに外務省幹部らと、およそ3時間、会談に向けた打ち合わせを行い、東アジアをはじめ、ウクライナや中東なども含め、地域情勢の現状を確認したということです。

また、トランプ大統領が鉄鋼や原油など自国の産業と密接に関わる分野で新たな関税措置を講じる考えを示していることも踏まえ、経済や通商政策の課題についても意見が交わされたものとみられていて、石破総理はアメリカに対する投資残高で日本が5年連続で首位となり、雇用の創出にも貢献していることをトランプ大統領に説明し、経済的な摩擦を回避して両国の国益に沿う協力関係を構築したい考えと見られているようです。


2.トランプからの会談の打診を蹴ったのは本当か


石破総理はトランプ大統領が就任する前に会談を持ちたい意向があり、昨年12月に安倍昭恵夫人のルートで、トランプ氏サイドから会談の打診がきたにも関わらず、石破総理側から、それを断ったと報じられていました。

これについて、産経新聞は2月2日付の記事「石破首相が「トランプ米大統領からの会談の打診を蹴った」は本当か」という記事を掲載しています。

その件の記事の内容は次の通りです。
【前略】

石破首相の訪米をめぐっては、昨年末、首相が「トランプ氏の大統領就任前の会談の打診を受けていた」のに、打診を「蹴った」「先送りした」などと伝える報道がある。これが首相批判につながっているのだが、批判のもとになっている情報は事実なのか。

日本政府が就任前のトランプ氏との会談を正式に模索した唯一のタイミングは、大統領就任前の昨年11月中旬だ。ペルーでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議とブラジルでの20カ国・地域(G20)首脳会議の後、米国に立ち寄ることができれば、という算段だった。会談設定の直前まで行ったが、大統領首席補佐官への就任が決まっていたスーザン・ワイルズ氏が、各国から会談要請が殺到していたこと、そして、民間人による米政府の外交政策への関与を禁じたローガン法を理由に会談を断ってきた。日本としては、トランプ氏の信用が厚く、トランプ氏の〝門番(ゲートキーパー)〟と米メディアに呼ばれるワイルズ氏との関係を重視し、断りを受け入れた。

一方、これを機にワシントンの日本大使館と国家安全保障問題担当大統領補佐官となるマイケル・ウォルツ氏の間で会談日程を調整することになった。また、石破首相も12月前半に「就任前は訪米しない」との方針を決め、米側にも伝えられた。準備した上で臨みたいとの思いがあったからだ。

ところが、同月中旬になると、首相の「1月訪米」の報道が出始めた。同じ頃、首相サイドにもこんな情報がもたらされた。

「2月に中国の習近平国家主席が訪米するから、就任後の会談なら、3月以降になる。首相は就任前に訪米を」

この情報と「1月訪米」が出回り始めたタイミングは、安倍晋三元首相の妻、昭恵さんがトランプ氏の妻、メラニアさんに「直接祝意を伝えたい」として訪米し、フロリダ州のトランプ氏の私邸でトランプ氏も交えて食事した後だ。昭恵さんは、同行した友人と一緒にもっぱらメラニアさんと食事をし旧交を温めた。同席したトランプ氏と主に会話したのは、昭恵さんの訪米をメラニア夫人側と調整した元国会議員だった。

この情報に、大統領就任前に訪米しないと決めていた首相自身や首相周辺も揺れた。昨年12月19日の読売新聞1面の記事も、「トランプ次期大統領が、石破首相との初会談について、来年1月中旬であれば応じられるとの意向を日本側に伝えたことがわかった。(略)日本政府は大統領就任後に正式な首脳会談を行うのが望ましいとの立場だが、トランプ氏側の意向を受けて1月訪米の可能性について検討に入った」と伝えていた。

実際は、「検討に入った」どころか、調整の中心を担う日本大使館さえも把握していない情報だったことから、まずは真偽の確認の必要があった。食事会の出席者らから話を聞くなどして調査を進める中、19日にはトランプ氏が昭恵さんとの食事会後、記者団に対して「(首相に)ぜひ会いたい」として、大統領就任前に実現するかどうか問われると、「彼ら(日本側)がそうしたいならそうするだろう」と答えたこともあり、情報は錯綜(さくそう)した。

だが、最終的に「就任前の会談の打診を受けていたとの事実はない」との確認が取れ、「ニセ情報」と判断された。一連の混乱が収束したのは12月30日だった。そもそも打診されていないので、石破首相がトランプ氏からの会談の申し入れを「蹴った」ことも「先送りした」こともないのだ。

【中略】

石破政権の外交姿勢がはっきりしないことも批判の原因になっている。

日本外交は、安倍政権から続く「自由で開かれたインド太平洋」「法の支配」を掲げ、日米同盟に軸足を置きながらアジア重視の外交を展開してきた。石破首相も継承していると言うもののそう受け止め難い。その最大の問題は、石破氏が首相になったいまでも評論家的にその時々で個人の考えを発信することにある。政府方針とブレが出るのだ。

直近の例で言えば、「サンデー毎日」(2025年2月9日号)。首相はジャーナリスト、田原総一朗氏から、トランプ氏の米国とどう付き合うのかを聞かれてこう答えた。

「米国第一だの、MAGA(米国を再び偉大に)のために世界があるわけではない。米国の言うことを何でも聞きますからどうぞお目こぼしを、などというつもりは全くない」

同盟国は対等であるべきだが、ケンカを売るかのような表現は適切だろうか。この後に「お互い主権国家。考え方が異なる敵対国家でもない。この地域の平和と安定のために日米が共にできることは何か。それをきちんと提示することではないか」と当然のことを述べている。後半だけで十分だし、または順番を変えるだけで印象が変わるのに、そうしない点で石破氏が歴代政権の外交路線への抵抗を見せている感じがする。

【以下略】
記事では、もともと就任前の会談の話なんてなかったとした上で、石破政権の対中姿勢を含め、外交への不安を挙げ、安倍路線への反発がその底にあるのではないかと指摘しています。


3.親中勢力とトルドー事件


一方、就任前会談の話はあったが、石破総理が断ったという見方もあります。自民党の青山繁晴参院議員です。

青山議員は2月1日配信のネット番組「月刊Hanada」で次のように述べています。
・例えばトランプと安倍さんのおかげで就任式前に会えることになった時に、当然すぐに水面化交渉始まりました。
・実務者同士でそん時に米国はこういう時、割とはっきり言うのでその石破総理の親中姿勢を聞きますよ、と。これ問いますよと。
・外務省はこれ総理に上げるじゃないか。総理はいやこれ嫌だ。そんな話したくない。それでペンディングになった。私はいろんなことを含めてそう考えている。
・従って日本の中の親中勢力の問題企業もそうだし、経済会もそう。
・それで政界は自由民主党筆頭に親中派が多いと意見もそうですけど、そういうことに触られたくないんです。
・日本はやっぱり戦争で悪いことしたんだから、中国や韓国に色々言われても仕方がないっていう、そうはおっしゃらなくてもそういう教育の申し子みたいなところあるから
・もう1つね石破さんが1月20日の就任式の前に、せっかく昭恵さんがやって努力なさったのに会わなかった理由の一つがやっぱトルドー事件があったと思うんですよ
・トルドーさん喜んで来ましたよね。マー・ア・ラーゴにね。そしたらお前51番目の州になれって言われて。
・こないだカナダ行った時にそカナダの民衆とそれから政府の人、それから軍関係の人に聞きましたよ。やっぱみんなが情けないって言って。
・カナダ人って我と大人しいけど、なんであの時にやり返さないんだ。そしてあっという間に辞任ですよ。
・これも推測ですけど外務省のブリーフィングが年中行われるから、だんだんトランプ政権の真ん中部分も出てくるんじゃないか。
・伸ばせば伸ばすほどその淡い期待もあると思いますよ。中国とそれこそ、ディールする部分が出てくるんじゃないか、と。
・この先少なくとも4年あるわけですから、待ってても開けないですよ。向こうは4年任期あるわけですから、
・こっちはもう下手すと3月に大きな山、来ますからね。
石破総理はトランプ政権から親中姿勢を咎められるのが嫌で、会談をキャンセル。会談を伸ばせば、アメリカの対中姿勢にも変化があるのではないかという期待と関税問題があったのではないかというのですね。

実際トランプ大統領は、4日からカナダ・メキシコに25%、中国に10%の追加関税を課しました。石破総理との会談前に先制パンチを放ったわけです。

そもそも2月7日という会談日時も石破政権の対中姿勢を問う踏み絵になっています。

日中外交筋によると王毅外相は1月14日に自民の森山、公明党の西田実仁両幹事長と正式な会談をした後、森山氏ら少人数の議員と話した際、黒竜江省ハルビンで2月7~14日に開催する冬季アジア大会の式典出席に合わせ石破総理が訪中できないか提起していたそうです。

トランプ政権は、その日に日米会談をぶつけてきた。石破総理に、アメリカと中国とどちらを取るのだ、と踏み絵を迫ったとみてよいのではないかと思います。

青山議員によると、石破総理は対中姿勢をトランプ大統領に詰められるのが嫌で、早期会談を見送ったことになっていますけれども、ではなぜ踏み絵を踏んででも会うことにしたのか。

1月21日、岩屋外相は、アメリカのルビオ国務長官と会談を行いましたけれども、日経新聞のインタビューで、マルコ・ルビオ国務長官の印象について「中国を名指しして対抗の枠組みをつくる説明の仕方でなかったのが非常に印象に残った。中国に対してハードライナー(強硬派)というイメージがあったが、会うとバランスの取れた方だった」と語っています。

もしかしたら、外務省とアメリカ国務省との間で、中国との関係について詰めることが無いよう事前調整がされたがゆえに会談すると決めたのかもしれません。

ただ、筆者は、そうだったとしてもあまり効果はないと見ています。

昨年11月14日のエントリー「ここから石破が挽回する方法」で、船橋洋一氏の『宿命の子 安倍晋三政権クロニクル』の紹介をしていますけれども、その中に次の一節があります。
・「トランプと話すときは、君らがつくる紙は使えない。トランプは下から上がってる紙、全然読んでないんだよ。紙と紙ですり合わせた地合いで話しても意味がないから」安倍は官邸スタッフにはそう言った。
いくら官僚が水面下で交渉し、下準備しても無駄だというのですね。つまり本番の日米首脳会談では、トランプ大統領がいきなり対中関係で石破総理をガン詰めするかもしれないということです。

もちろん外務省もそんなことは分かっているのでしょうけれども、「安倍総理のときはこうでしたよ」とレクチャーすると不機嫌になるという石破総理では、どうなることやらと不安になります。




4.おもちゃを買うわけではない


石破総理は、トランプ大統領との会談について、1月31日のCS放送「国会トーク フロントライン」のインタビューで次のように述べています。

ーーアメリカではトランプ新大統領が就任しました。まもなく石破総理も直接会うということですが、トランプ氏といえば「関税」。会ったときにいわゆる関税を迫られる心配は。

石破総理:
バンバン大統領令を出して「世界で一番美しい言葉は関税だ」と…なかなか珍しいことを言われる方だなと思ったりもするんだけども。でも日本に対しての言及はほとんどないですよね。カナダ、メキシコあるいはEU、中国。実際にこの10年間アメリカに一番投資をしたのは日本ですよね。そして、ものすごく雇用も作り出してるわけですよ。自動車を中心としてね。それは他の国とは日本は違うんだと。やっぱりそこはビジネスマン出身であるだけによくわかっているんだと思いますね。「アメリカを世界一の製造業の国として復活させる」って言ってるわけですからね。

これから先日本はどうするのか。投資もします、雇用も作りますと。しかし、じゃあ「日本として何を得るんだ」、そして「日本とアメリカとして、これから先の世界をともに協力しながらどうやっていくんだ」というね。関税は勘弁してくださいとかそういう話ではなくて、ともに世界をどうしていくのかという前向きな話をしていきたいですね。

ーー自動車については、関税をかけられる前に「向こうの工場で作る」提案をしていくと。

石破総理:
まあ今までもやってきましたからね。これから先もそうであるわけで。それはもう「メイドインUSAの車」なわけですよ。材料なんかもアメリカで調達する割合が非常に多いわけですよね。自動車ってのは裾野が広い産業だから、アメリカの雇用を作り出すことにもなるし。それは日本車っていうよりもアメリカの車として多くのアメリカ人が認識してますし、これはトランプ大統領もそうなんだと思いますよ。

ーー2017年の安倍総理とトランプ氏の会談では、共同会見で「私が大事だと思うのは安倍総理がアメリカから大量の兵器を購入することだ」なんて言われ、今の日本の「GDP2%」に繋がったともみられてるわけですけど…。今回も終わった後に防衛費の負担が増えるなんてことは。

石破総理:
それは日本が判断することであって、アメリカに決めてもらう話ではありませんよね。必要であればGDPの2%でも足りないってことはあるでしょう。そうでなければ2%で十分だってこともあるでしょう。何にしても、かつてはF35という高額な戦闘機を100機買いましたということであるわけだが、おもちゃを買うわけじゃないんで。日本の周りの安全保障の環境に照らして、防衛装備品だとすれば、一体今、日本が必要としているものは何だと。そしてアメリカの兵器を買った場合に、陸海空、どのようなメリットがあるかってことをきちんと吟味しておかないとね。単に買いさえすればそれでいいってもんじゃないし、それによって日米同盟がより強くなるということがきちんと確認でき、日本の納税者が納得するということでなければ、それはいかんのじゃないですか。
ともに世界をどうしていくのかという話の中には、必然的に中国をどうするのかという話が出るのは避けられないように思います。無論、防衛費増額の話もあるでしょう。

もし防衛費増額の話題になったら、石破総理は、おもちゃと買っても意味がないとばかり、その中身の是非をネバネバネバネバいうのではないかと思えてなりません。

筆者にはどうしても、石破総理とトランプ大統領とで話がかみ合うイメージが湧きませんけれども、こればかりは蓋を開けてもみないと分からないとしかいえないですね。



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