トランプのガザ占領発言

今日はこの話題です。
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1.米国はガザ地区を占領し責任を負う


2月4日、アメリカのトランプ大統領は、イスラエルのネタニヤフ首相との会談後、共同記者会見を行い、ガザ地区を占領するとの驚きの発表を行いました。

ロンドンに拠点を置くインライン・ニュース「ミドル・イースト・アイ」の記事から、会見でのトランプ発言の該当部分を引用すると次の通りです。
【前略】

私はまた、ガザ地区が何十年もの間死と破壊の象徴であり、その付近の人々、特にそこに住む人々にとって非常に悪い場所であり、率直に言って本当に非常に不運な場所であったと強く信じている。非常に不運だった。長い間、不運な場所だった。

ガザ地区に居続けることは決して良いことではないし、ガザ地区のために実際に立ち、戦い、そこで暮らし、そこで亡くなり、そこで惨めな生活を送った同じ人々による再建と占領のプロセスを経るべきではない。その代わりに、私たちは人道的な心を持つ他の関心のある国々に行くべきであり、そうすることを望んでいる国々はたくさんある。そして、それらの国々の多くは、最終的にガザ地区に住む100万人のパレスチナ人によって占領されるさまざまな領域を建設し、死と破壊、そして率直に言って不運を終わらせたいのだ。

これは、非常に裕福な近隣諸国が負担する。1、2、3、4、5、7、8、12 の国が対象だ。多数の国が対象になる場合もあれば、1つの大きな国が対象になる場合もある。しかし、人々は快適で平和に暮らすことができ、私たちは、本当に素晴らしいことを成し遂げる。

彼らは平和を手にするだろう。この素晴らしい人々の文明が耐えてきたように、銃撃され、殺され、破壊されることはない。パレスチナ人がガザに戻りたい唯一の理由は、他に選択肢がないからだ。ここは今、破壊現場だ。ここは単なる破壊現場だ。事実上、すべての建物が倒壊してる。

彼らは、非常に危険で不安定な、崩れ落ちたコンクリートの下で暮らしている。その代わりに、彼らは家と安全のある美しい地域全体を占領し、平和と調和の中で一生を過ごすことができ、戻って同じことを繰り返す必要はない。米国はガザ地区を占領し(The US will take over the Gaza Strip)、私たちもそれに対して責任を負う。

私たちは、この場所を所有し、その場所にある危険な不発弾やその他の兵器をすべて解体し、その場所を平らにし、破壊された建物を撤去し、平らにすることに責任を持つ。その地域の人々に無制限の数の雇用と住宅を提供する経済発展を創出する。本当の仕事をし、何か違うことをしてほしい。

決して後戻りはできない。後戻りすれば、何年も続いてきたのと同じ結果に終わるだろう。この停戦が、流血と殺戮に完全に終止符を打つ、より大規模で永続的な平和の始まりとなることを期待している。同じ目標を念頭に、私の政権は同盟への信頼を回復し、地域全体で米国の力を再構築するために迅速に行動しており、実際にそれを実現した。

【中略】

質問:トランプ大統領、ちょっとフォローアップしてください。

ドナルド・トランプ:どうぞ、言ってくれ。

質問:ガザの人々がガザを離れて他の国に行くというあなたの発言について、ちょっと補足します。まず、あなたは彼らがどこに行くべきだとおっしゃっているのですか?そして、2つ目は、ガザが再建された後に彼らは戻ってくるべきだとおっしゃっているのですか?そうでないなら、そこには誰が住むとお考えですか?

ドナルド・トランプ:私は、世界がそこに暮らす人々を思い描いている。そこは国際的で、信じられないほど素晴らしい場所になると思う。ガザ地区の潜在力は信じられないほど大きいと思う。そして、世界中から代表者が集まり、彼らは…

質問:…… パレスチナ人は?

ドナルド・トランプ:そして彼らはそこに住むだろう。パレスチナ人も。パレスチナ人もそこに住むだろうし、多くの人々がそこに住むだろう。しかし彼らは他の方法を試してきた。何十年も試してきた。それはうまくいかない。うまくいかなかった。決してうまくいかないのだ。そして歴史から学ばなければならない。歴史は、繰り返してはならないのだ。

私たちには、驚異的なことを成し遂げるチャンスがある。私は気取った言い方をしたいわけではない。賢い人間になりたいわけでもない。しかし、中東のリビエラは、とても素晴らしいものになるかもしれない。しかし、それよりも重要なのは、完全に破壊され、今そこに住んでいる人々が、地獄のような生活を送っているのに比べ、はるかに良い状況で平和に暮らせるようになることだ。そして、その人々は平和に暮らせるようになるだろう。私たちは、それが世界クラスのものになるようにする。

それは人々にとって素晴らしいことだろう。パレスチナ人、主にパレスチナ人のことを言っている。そして、彼らがノーと言っているにもかかわらず、ヨルダンの国王と大統領は、エジプトの将軍は心を開いて、このことを成し遂げるのに必要な土地を与えてくれるだろう、そして人々は調和と平和の中で暮らせるだろうという予感がする。

みなさん、本当にありがとう。ありがとう。本当にありがとう。ありがとう。
トランプ大統領は、ガザの人々がそこに留まるのはそれ以外選択肢がないからだと述べています。歴史的経緯や住民感情をまるで考慮しない発言にも聞こえますけれども、そうでなければ、ここまで大胆な提案はできないのかもしれません。

トランプ大統領が口にした「リビエラ」は、フランスのカンヌからイタリアのラスペツィアに至る地中海岸一帯を指し、世界的な観光・保養地として知られています。言葉通りに受け取るなら、ガザは将来世界的な「観光地、保養地」として再建されることになります。


2.反発する世界


トランプ大統領は、アメリカが自身の提案をどのように実行するかについての詳細は述べなかったですけれども、翌5日、ホワイトハウスの報道官キャロライン・リービット氏は会見で「大統領はガザに地上軍を派遣するとは約束していない」とし、アメリカはガザの再建に資金を出さないが、同地域の同盟国と協力して同地域を再建すると述べました。

当然ながら、この発言は世界中に大きな波紋を巻き起こしました。

世界各地からの主な反応は次の通りです。
ハマス幹部/サミ・アブ・ズフリ氏:ガザを支配したいというトランプ氏の発言は馬鹿げていて不条理であり、この種の考えは地域を激化させる可能性がある……我々は、この計画は地域に混乱と緊張を生み出すものだと考えている。なぜなら、ガザの人々はそのような計画を通さないだろうからだ。

ハマス幹部/イザト・エル・レシク氏:これらの発言はパレスチナと地域に関する混乱と深い無知を反映している。ガザは共有地ではないし、売買できる財産でもない。アメリカのイスラエルに対する偏見、パレスチナの人々に対する偏見、そして彼らの正当な権利に対する偏見は続いている

パレスチナ解放機構/フセイン・アル・シェイク事務総長:パレスチナ指導部は、国際的正当性と国際法に従った二国家解決が安全、安定、平和を保証するものであるという確固たる立場を表明する

パレスチナ自治政府/マフムード・アッバス大統領:何十年も闘い、多大な犠牲を払って獲得してきた我々の人々の権利のいかなる侵害も許さない……こうした呼びかけは国際法の重大な違反だ……二国家解決に基づき、1967年の国境にエルサレムを首都とするパレスチナ国家を樹立しない限り、この地域の平和と安定は達成されないだろう

パレスチナのイスラム聖戦:トランプ氏の立場と計画は、アラブ諸国と地域の国家安全保障、特にエジプトとヨルダンを脅かす危険なエスカレーションであり、米政権はパレスチナの人々とその権利と対立させたいと考えている。

パレスチナの国連特使/リヤド・マンスール氏:パレスチナの人々を『良い場所』に送りたい人たちには、現在のイスラエルにある本来の故郷に帰らせてほしい……パレスチナの人々はガザの再建を望んでいる。ここが我々の居場所だからだ

イスラエル/元国家安全保障大臣イタマール・ベン・グヴィル氏:ガザの人々に飛び地からの移住を「奨励」することが、ガザ戦争終結時の唯一の正しい戦略だった。

サウジアラビア外務省:サウジアラビアはまた、イスラエルの入植政策、パレスチナ領土の併合、あるいはパレスチナ人をその土地から追放する試みを通じてであろうと、パレスチナ人の正当な権利に対するいかなる侵害も明確に拒否すると以前に発表したことを改めて表明する

ヨルダン王室:アブドラ2世国王陛下は入植地拡大を阻止する必要性を強調し、土地の併合やパレスチナ人の追放を企てるいかなる試みも拒否すると表明した

イラン/高官:イランはいかなるパレスチナ人の追放にも同意せず、様々な経路を通じてその旨を伝えてきた

アメリカ民主党/クリス・マーフィー上院議員:彼は完全に正気を失っている……米国によるガザ侵攻は、米軍兵士数千人の虐殺と中東での数十年にわたる戦争につながるだろう。まるでひどくてひどい冗談だ

アメリカ民主党/クリス・ヴァン・ホーレン上院議員:必要なら200万人のパレスチナ人をガザから追い出し、力ずくで『所有権』を奪取するというトランプ氏の提案は、単に別の名前の民族浄化だ」と民主党のヴァン・ホーレン氏は述べた。「この宣言は、イランやその他の敵対国に弾薬を与え、この地域におけるアラブ諸国のパートナーを弱体化させるだろう……何十年にもわたる二国家共存の解決策に対するアメリカの超党派の支持に反するものだ…議会はこの危険で無謀な計画に立ち向かわなければならない。

アメリカ民主党/ラシダ・トレイブ下院議員:パレスチナ人はどこにも行かない……この大統領がこのような狂信的な戯言を吐くことができるのは、議会で大量虐殺と民族浄化に資金提供することに超党派の支持があるからだ。二国家解決を主張する私の同僚たちが声を上げるべき時だ。

アメリカ・イスラム教擁護団体CAIR:ガザは米国のものではなくパレスチナ人のものであり、トランプ大統領のパレスチナ人をその土地から追放するという呼びかけは絶対に受け入れられない……パレスチナ人が何らかの形でガザから強制的に追放された場合、この人道に対する罪は広範囲にわたる紛争を引き起こし、国際法の棺に最後の釘を打ち込み、我が国の残された国際的なイメージと地位を破壊することになるだろう

ロシア/セルゲイ・ラブロフ外相:イスラエルは占領下のヨルダン川西岸地区を完全支配する計画を立てており、ガザ地区からパレスチナ人を追放しようとしている……集団懲罰政策の実施はロシアが拒否する手段だ。

ロシア/ミトリー・ペスコフ報道官:ロシアは中東の解決は二国家解決に基づいてのみ可能であると考えています……これは国連安全保障理事会の関連決議に明記されている命題であり、この問題に関与する圧倒的多数の国々が共有している命題です。私たちはこの命題に基づいて行動し、これを支持し、これが唯一の可能な選択肢であると確信しています」

中国外務省:ガザ地区住民の強制移住に反対し、すべての当事者が停戦と紛争後の統治を、パレスチナ問題を二国家解決に基づく政治的解決に戻す機会と捉えることを望んでいる

トルコ/ハカン・フィダン外相:トランプ大統領の発言は受け入れられない。パレスチナ人を考慮に入れないことはさらなる紛争につながる……パレスチナ人殺害が止まり、状況が変われば、トルコはイスラエルに対して取ってきた措置(貿易の遮断、大使の召還)を見直すだろう。

ドイツ/アンナレーナ・ベアボック外相:ガザ地区はパレスチナ人のものであり、彼らの追放は受け入れられず、国際法に違反する……それはまた、新たな苦しみと新たな憎悪につながるだろう…パレスチナ人の頭上で解決策があってはならない。

フランス/クリストフ・ルモワーヌ外務省報道官
フランスは、ガザ地区のパレスチナ住民のいかなる強制移住にも改めて反対する。これは国際法の重大な違反であり、パレスチナ人の正当な願望に対する攻撃であるだけでなく、二国家解決への大きな障害であり、緊密なパートナーであるエジプトとヨルダン、そして地域全体にとって大きな不安定要因となる……ガザの将来は将来のパレスチナ国家の枠組みの中に置かれるべきであり、第三国によって支配されるべきではない。

スペイン/ホセ・マヌエル・アルバレス外相:私はこれについて非常に明確にしておきたい。ガザはガザ地区パレスチナ人の土地であり、彼らはガザ地区に留まらなければならない……ガザはスペインが支持する将来のパレスチナ国家の一部であり、イスラエル国家の繁栄と安全を保証しながら共存しなければならない。

アイルランド/サイモン・ハリス外相:ここで進むべき方向は非常に明確だ。二国家解決が必要であり、パレスチナ人とイスラエル人はともに隣り合って安全に暮らす権利があり、そこに焦点を置かなければならない……ガザの住民をどこか他の場所に避難させるという考えは、国連安全保障理事会の決議と明らかに矛盾するだろう

イギリス/キール・スターマー首相:彼らは帰国を許されなければならず、再建を許されなければならない。そして我々は二国家解決への道程において彼らと共に再建にあたるべきだ。

イギリス/デービッド・ラミー外相:我々は常に、二つの国家が必要だという信念を明確にしてきた。パレスチナ人がガザとヨルダン川西岸の故郷で暮らし、繁栄する姿を見なければならない

ブラジル/ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領:パレスチナ人はどこに住むのか?これはどんな人間にとっても理解できないことだ……ガザの面倒を見る必要があるのはパレスチナ人だ。

オーストラリア/アンソニー・アルバネーゼ首相:政府はイスラエル人とパレスチナ人が平和かつ安全に暮らせる二国家解決を引き続き支持する……我々は停戦を支持し、人質の解放を支持し、ガザへの援助の流入を支持してきた……米国大統領の発言について逐一解説するつもりはない。

国連特別報告者/フランチェスカ・アルバネーゼ氏:彼の提案は…ナンセンスだ……地域の危機をさらに悪化させるだろう。これは国際犯罪である強制移住を煽動するものだ。国際社会は193カ国で構成されており、今こそ米国が求めているもの、つまり孤立を与える時だ。

アムネスティ・インターナショナル米国事務局長/ポール・オブライエン氏:ガザ地区からパレスチナ人全員を排除することは彼らを民族として滅ぼすことに等しい……ガザは彼らの故郷だ。ガザの死と破壊は、イスラエル政府が、多くの場合は米国の爆弾を使って、民間人を何千人も殺害した結果だ。
ほぼ全部の国や地域が反対しています。


3.トランプは本気だったのか?


このトランプ発言について、2月5日、イギリスのガーディアン紙は「トランプ氏のガザ計画は世界を驚かせた。彼は本気だったのか?今のところ、それは問題ではない」という記事を掲載しています。

件の記事の概要は次の通りです。
・彼の発言は厚かましく、威張っていて、びっくり仰天させ、大胆で、多くの人にとってただただ言語道断だった。「Stupéfaction mondiale(世界茫然自失)」というのが、水曜日の朝のフランスの新聞リベラシオンの反応だった。冷静なニューヨーク・タイムズは「あり得ない」で済ませた。米国の上院議員は、ドナルド・トランプがガザについて言ったことは「別名民族浄化」に等しいという、今後数時間から数日の間に中東全域とその周辺で確実に非難されるであろう発言をした。

・トランプ大統領は火曜日、ホワイトハウスでイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談した後、米国がガザ地区を掌握し、220万人のパレスチナ住民をエジプトやヨルダンなどの場所に永久に移住させるべきだと宣言した。米国は「この地域を所有し、責任を負う」とトランプ氏は述べた。「米国が引き継ぎ、開発する」と同氏は付け加えた。「この地域の人々」には「無制限の数の雇用と住宅」が提供されるが、それがどのような人々なのかは明らかにされていない。ガザは「中東のリビエラ」に変貌するだろう。

・これは、2023年10月のハマスによるイスラエルへの恐ろしい攻撃以来、大虐殺と破壊に見舞われ、16か月に及ぶイスラエルのガザ攻撃を引き起こしたこの地域にとって、少なくとも潜在的には、もう一つの破壊的な動きだった。当然のことながら、解決策を模索する主要プレーヤーの1人が即座にこれに対抗した。数時間後、サウジアラビアはパレスチナ人の追放計画を拒否し、パレスチナ国家の樹立なしにはイスラエルとの外交関係は樹立しないと改めて主張した。これはこれまでトランプ大統領の極めて重要な中東政策目標の1つだった。

・現在ハマスとイスラエルの間で進行中の不安定な停戦プロセスがどうなるかは予測が難しい。米国、イスラエル、ハマス、エジプト、カタールが参加する停戦合意の第2段階の交渉が来週始まる。彼らの表明した目的は、さらなる人質と囚人の交換、現在の期間限定停戦の無期限延長、そしてガザの統治者に関する合意である。

・トランプ氏の発言は、第2段階の交渉の最後の部分を宙に浮かせている。また、残りのプロセスも混乱させている。しかし、利害関係は非常に大きい。合意に達しなければ、イスラエルとハマスの戦争は数週間以内に再開される可能性がある。これは、トランプ氏の自由奔放な行動の恩恵を誰もが受けているネタニヤフ首相がおそらく望む結果だ。そうすれば、彼の分裂した政権がまとまるからだ。イスラエルの最右派政党は、一部はガザをいずれにせよイスラエルの一部とみなしており、トランプ氏の発言を自分たちに有利な転換点と見なし、ヨルダン川西岸にも影響を与えるだろう。パレスチナ人は これを裏切りと見なすだろう。

・トランプ氏の発言は米国と世界を驚かせた。しかし、まったく唐突なことではなかった。ホワイトハウスに戻る前にも、トランプ氏は時折同様の発言をしていた。1月の就任直後、トランプ氏はガザは「大規模な破壊現場」だと述べた。「海に面した素晴らしい場所で、天候も最高。すべてが順調だ。何か素晴らしいことが実現できそうな気がする」

・当時、それは米国大統領トランプの声というよりは、米国不動産王トランプの声のように思われた。火曜日の彼のコメントも同じだった。しかし、トランプは常に個人的なことと政治的なことを曖昧にする。彼がある程度は真剣ではないと考えるのは間違いだろう。つい先週、トランプは中東特使で、自身も億万長者の不動産開発業者であるスティーブ・ウィトコフを、戦争開始以来米国当局者として初めてガザ訪問に派遣したばかりだ。

・トランプ大統領が中東問題に加え、複数の問題で衝撃と畏怖の念を抱かせるような発表を次々と行っているが、そのブラフと注意散漫の重要性を過小評価すべきではない。とはいえ、2017年に大統領に就任し、8年後に再び就任し、その2度とも米国第一主義を誓った大統領にとって、火曜日の発言は、もし本格的な政策となったら計り知れない影響を伴う、見事な方向転換だ。

・2003年のイラク侵攻以来、米国の外交政策は、特に中東での介入、関与、占領をためらってきた。その間、米軍はリビアからシリア、そしてアフガニスタンに至るまでの紛争で、しばしば目立たず、あるいは単に空から、時折重要な役割を演じてきた。しかし、トランプ大統領のデフォルトの国際的姿勢は常に、米軍を戦火から遠ざけ、一方で他の国々、例えばウクライナにおけるヨーロッパに対し、自らの関与を強化するよう要求することだった。

・しかし、火曜日、トランプ氏は、ガザ占領の構想を遂行するために米軍を派遣するという考えに前向きな姿勢を示した。おそらく、米軍はパレスチナ人を強制的に排除する試みも指揮するだろう。国際法に恥じることなく反抗し、必然的に数万人の軍人が関与するこのような作戦に、米軍が衝突や死傷者を出さず、イラクの例を見れば、地元住民に対する人権侵害の非難も起こさないとは、 到底考えられない。言い換えれば、まさにトランプ氏が常に反対している海外での関与の類いである。

・しかし、トランプの2期目はすでに様変わりしている。非常に顕著なことに、そしてガザ発言がその最新の例だが、彼は帝国主義の言葉を話し始めた。彼はグリーンランドを占領し、パナマ運河を奪還し、カナダを併合し、メキシコ湾を改名し、そして今度はガザを占領すると脅している。おそらく彼は来週、パレスチナ人をニューファンドランドに移住させると決断するだろう。

・重要な問題は、これらが真剣に意図されているかどうかだ。「これは軽々しく下された決定ではない」とトランプ氏は火曜日に述べた。しかし、実際の政策としては詳細が欠如し、本質的に理解不能であるため、おそらく大統領自身でさえ、ガザに米兵が1人でも派遣されるのか、あるいはガザの海岸開発に1ドルでも投資されるのか、確実には言えないだろう。

・さらに、トランプ大統領の二期目が示しているように、真剣さはさまざまな形で現れる可能性がある。トランプ氏は本当はガザを占領する気などないのかもしれないが、占領するかもしれないと発言したという事実自体が、中東や米国国内政治における他の現実を一変させる事実である。

・再就任宣誓から3週間も経たないうちに、トランプ氏は混乱が続いた最初の任期中よりもはるかに優れた政治家であることを証明しつつある。大統領令のパフォーマンス的な独裁政治は、米国を本当に変えつつあるのかもしれないし、変えつつあると国民に思わせるだけのことかもしれない。その違いは、私たちが思っているほど重要ではないのかもしれない。

・立法や法的手続きよりもソーシャルメディアが支配的な政治文化では、ガザのようなあり得ないケースであっても、印象を与えることは、実際にはキール・スターマー政権のような政府が好むような慎重な政策立案よりも強力で、より即座に効果を発揮する。トランプ氏は、彼に投票した何百万人もの人々に物質的な成果をあまりもたらさないかもしれないが、そうしていると彼らを説得する彼の能力は、将来の政治に不安な光を当てている。
ガーディアン紙もトランプ発言に困惑している様子が窺えます。本気なのか、と疑っている感じです。


4.ガザの再建は5年では不可能だ


2月4日、アメリカの中東担当特使スティーブ・ウィトコフ氏は、ニュースマックスTVの『ザ・レコード・ウィズ・グレタ・ヴァン・サステレン』に出演し、このトランプ発言に関してインタビューを受けています。

その概要は次の通りです。
・現在のガザ地区には、統治すべきものがあまりないが、パレスチナの過激派組織ハマスが再建中の同地区を支配することはないだろう。
・ガザ地区は荒廃した。予想していたよりもずっとひどい。まるでハリウッド映画のセットから出てきたようなものだ。
・信じられないだろう……残っている建物はほとんどない。残っているものもすべて横に傾いている。あちこちで大規模な取り壊しが行われている
・ガザに撃ち込まれた不発弾のうち少なくとも3万発は危険であるという情報を私は今知っている、皆さんに提供できる。
・水道も電気もガスもない。おそらくすべての公共設備が壊れているのだろう。今は大変な状況だ。
・ハマス、イスラエル、バイデン政権が署名した議定書合意の第3フェーズでは、5年かけてガザを再建するとしているが、それは不可能だ。絶対に実現できない。
・不発弾の除去だけでも、おそらく2年ほどかかると見積もっている。つまり、現在ガザ地区には地雷原があるようなものだ。
・その後、破壊されたものすべてを撤去する作業があり、おそらくさらに3年はかかる。その後は、基本的にX線検査をして、地下を調べ、下にある石がどうなっているかを把握しなければならない。
・地下はまるでスイスチーズのようだ。縦横に走るトンネルがあり、それが地下の基礎を劣化させ、おそらく電気やガス、水道といったすべての公共設備の配線が通っている場所も劣化させている。
・だから、不動産の観点から言えば、マスタープランを考える前に、地下に何があるのか​​理解しなければならない。
・私の意見では、それを実現するには何年もかかるだろう。
・ガザ地区の本格的な建設は10年から12年くらいはかかるだろう。つまり、ある種の非常に信頼性の高いマスタープランに従ってガザの最後の仕上げを行うには、15年から20年かかることになる。
・だから、近い将来ガザに対して何かできるという考えは、あり得ない。そして、ガザには危険な状況がたくさんあるのに、大量の人々をガザに戻すのは無責任だと思う。
そして、司会者のグレタ・ヴァン・サステレン氏が「そしてもう一つの問題があります…誰がガザを統治するのか?それがもう一つの問題です。イスラエルは間違いなく、ハマスにガザの再建と統治を許すつもりはありません。ですから、いつかはその議論をしなければなりません」と問うと、ウィトコフ氏は次のように答えました。
・そうだね、あなたの意見に賛成だ。グレタ、今、あそこで統治すべきことはあまりない。それが私の主張だ。
・私が言及した議定書合意は、5年間の復興事業を想定していた。それはまったくばかげている。それは、希望的観測とでも言うべきだろう。
・さて、それに加えて、大統領はこう言っている。統治する者はテロ組織の一員であってはならない。ハマスはそうだ。
・だから、私たちはトランプ大統領の指示に従う。彼は大統領であり、私たちの上司だ。そして、ハマスを含む統治評議会は設けない。
ウィトコフ氏はもはや今のガザでは統治すべきものはないと述べています。これでガザの人々を強制移住できたとしたら、統治など必要なくなり、管理だけすればよいことになります。

ウィトコフ氏によればガザの再建には15年から20年かかることになりますけれども、とりあえずその間は、ガザでは戦乱は起きないかもしれません。その意味では一歩進んだともいえますけれども、ガザから移住させられた人々は大人しく「別のこと」をやっていてくれるのか。

余りに課題が多すぎて、先行きが見えません。

世界中が反対していることを考えても、とても一筋縄ではいかない提案だと思いますね。



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