

1.日米首脳会談
2月7日、石破総理はアメリカのトランプ大統領と首脳会談を行いました。
会談の模様については色んなところで報じられていますけれども、公開された冒頭部分での両首脳の発言は次の通りです。
石破総理:
・日本と米国は今、非常に緊密な関係にあるが、それは全て第1次トランプ政権で大統領と今は亡き安倍元首相の二人によって礎が築かれた
・今後も大統領と私、米国と日本が力を合わせ、さらに世界が平和に、人々が夢と希望を持って生きていくことができるように努めたい
・お互いの利益になることが重要だ。アメリカの発展、そして日本の発展のために有益な制度となることを期待している。具体的なことは、これからだ
・トヨタ自動車の豊田章男会長はトランプ大統領が再び就任することを心待ちにしていた。トヨタ自動車は、アメリカで工場を拡張・新設する計画を近々、実行する。4月から本格的に稼働する
・まだ発表していないが、いすゞ自動車が近々アメリカに工場を建設し、多くの雇用をつくることを決定した
・日本のアメリカに対する投資は、この5年間、連続して世界一であり、これから先、もっと伸ばしていきたい
トランプ大統領:石破総理から水を向けたにせよ、トランプ大統領は、「シンゾウはあなたに多大な敬意を抱いていた」、「あなたも彼の親しい友人であったことを知っている」、「石破総理は非常に尊敬されている人物」「石破総理大臣は日本国民からとても好かれている」との賛辞の言葉が出ました。
・シンゾウは私のすばらしい友人だった。彼の身に起こったことは恐ろしく、これほどまでに悲しい気持ちになったことはなかった
・シンゾウはあなたに多大な敬意を抱いていた。あなたも彼の親しい友人であったことを知っている。
・あなたと会えて大変光栄だ。彼は非常に尊敬されている人物で、すばらしい仕事をしている。石破総理大臣は日本国民からとても好かれている。彼を大統領執務室に迎えることができて本当に光栄だ
・アメリカは日本に対しておよそ1000億ドルの赤字を抱えている。日本がとても優れた交渉者であり、驚くことではない。しかし、私たちはそれを縮小し、対等な関係にまで持っていきたい。簡単にできると思う。それが私のやりたいことだ。他の国々も、赤字についてはアメリカと対等な関係にしていきたい
・私は来週、他国と互恵的な貿易を行うことについて発表する予定だ。望んでいるのは、これ以上でも以下でもない。来週、貿易だけではなく、ほかにもいろいろなことを発表するつもりだ
ネットでは、「なんという皮肉」とか「トランプ大統領も京言葉を使うんだ」といったコメントが並んでいますけれども、安倍元総理と石破総理が"親しい友人"であったはずがないことを考えれば、トランプ側は、日本の事情は全部調査済で詳しく知っていることが窺えます。
トランプ大統領の安倍元総理についての発言について、経済評論家の渡邉哲也氏は「これで、安倍総理のレガシーを継ぐ保守派と安倍派はトランプ(米国)が護ると言った様なものです。安倍のレガシーの敵は米国の敵、わかっているんたろうな、下手打てば潰すぞという恫喝」とツイートしていますけれども、少なくとも外交においては、日本に安倍路線の継続を求めている可能性は非常に高いと思います。
これで、安倍総理のレガシーを継ぐ保守派と安倍派はトランプ(米国)が護ると言った様なものです。安倍のレガシーの敵は米国の敵、わかっているんたろうな、下手打てば潰すぞという恫喝 https://t.co/efi4a9oVao
— 渡邉哲也 (@daitojimari) February 7, 2025
2.共同記者会見
会談後、両首脳は共同記者会見を行いました。共同記者会見が行える程度には、日米関係が壊れていないことに筆者は少し安堵しましたけれども、会見での両首脳の主な発言は次の通りです。
トランプ大統領:
・石破総理大臣とごいっしょできて大変光栄だ。少し前に一緒に写真を撮りとてもすてきだったので、ここで見せようと思った。これがその写真だ。私も彼のようにハンサムでありたいが、そうではない
・アメリカは日本の安全保障に全面的に関与する。われわれはアメリカの抑止力を拡大させていく
・平和と安全を維持するために石破総理大臣と緊密に連携し、インド太平洋地域に力による平和をもたらす
・日本はアメリカの軍事輸出品や装備品の購入が最も多い国の1つだ
・われわれは、中国の経済的な攻勢に対抗するため、さらに緊密に協力することで合意した
・われわれは北朝鮮とつながりを持つ。私はキム・ジョンウン(金正恩)総書記と とても仲がよかった。とてもいい関係で、彼と仲よくなれたことはみんなにとって大きな財産だと思う。日本もその考えを気に入っている
・私が1期目に始めた朝鮮半島の安全と安定に向けた取り組みに引き続き関与する
・2国間の重要な経済関係とその継続について長く、念入りに話をした。アメリカと日本は年間3000億ドル以上のモノやサービスの貿易を行っている。日本は8000億ドル近くの投資を行っており、投資は今後数か月間でほかのどの国よりも増加し、日本は競争力を得るだろう
・慢性的な貿易赤字はわが国の経済を弱体化させている。日本との貿易赤字は1000億ドルを超えているが、これを解消するつもりだ。率直に言えば原油とガスだけですぐに解消できると思っている。それを非常に迅速に実行するつもりだ
・日本がまもなく記録的な量のアメリカ産のLNG=液化天然ガスの輸入を新たに開始すると発表できることをうれしく思う……アラスカは日本から最も近い石油やガスの主な産地で、ほかの場所と比べると距離は半分以下だ。アラスカの石油とガスに関し、日米の間で何らかの共同事業を行うことについて話していて、非常に興奮している
・彼らはUSスチールを所有するのではなく、多額の投資をすることで合意した。これは非常にエキサイティングなことだ
・日本はすばらしい国だ。強く、誇り高い国だ。世界の歴史上、偉大な文明のひとつを有する国だ。80年近くにわたって日米両国は、他国ではほとんど見られないような、海を越えたすばらしい友情を享受してきた。歴史、商業、文化、そして大いなる尊敬の絆で結ばれている。きょうの会談を経て、私は日米両国とその他の国々との間の大切な同盟関係が将来にわたって長く繁栄し続けると確信している
・われわれはきょうAIや量子コンピューター、半導体やその他の重要な技術において最先端を走り続けるため、日米両国がさらに何ができるかを話し合った。
石破総理:トランプ大統領は会見冒頭の発言前に、石破総理と一緒の写真を渡していますけれども、そのあとに自らの写真集と思しきものも渡しています。その表紙は、トランプ大統領がペンシルヴェニアで暗殺されかかった時に、星条旗をバックに拳を振り上げ「fight‼ fight‼ fight‼」と叫んだあの有名な場面です。
・今まで何年も何年もほとんど毎日、テレビでみていたので間近に見ることの感動は格別なものがある。テレビでみると声高で、かなり個性強烈で、恐ろしい方だという印象がなかったわけではないが、実際にお目にかかると本当に誠実な、アメリカや世界に対する強い使命感を持たれた方だということをお世辞をまったく抜きに感じた
・トランプ大統領と胸襟を開いて、率直に意見を交わすことができ、内容も充実した非常に有意義な会談となった。新たな『船出』となった会談の成果として発表する共同声明は今後の日米協力のいわば『羅針盤』となる文書だ。この成果をもとにトランプ大統領とともに日米関係の新たな黄金時代を築いていきたい
・日本は経済面でもアメリカにとって最も緊密なパートナーだ。トランプ大統領の就任を受け日本企業の対米投資の機運はいっそう高まっている。きょう私から『対米投資額を、1兆ドルといういまだかつてない規模まで引き上げたい』とトランプ大統領に伝えた」と明らかにしました。
・トランプ大統領からも言及があったように、買収ではなく投資だ。日本の技術も加えて良い製品を作り出し、それが日本とアメリカ、そして世界に貢献できる製品が生み出されていることに日本も投資を行う。どちらかが利益を得るというような一方的な関係にならないことを大統領との間で強く認識を共有した。大きな成果だと考えている
・関税は互いの利益となるような形で設定されるべきものだ。日本はかつてない規模の投資をアメリカに行い、多くの雇用を創出するということで、1兆ドルを視野にさらに拡大させていく。それはアメリカの利益であると同時に、日本の利益でもなければならない。投資とはそういうものだ
・LNGのみならずバイオエタノールやアンモニアという資源が安定的にリーズナブルな価格で提供されることは日本にとって大きな国益だ。アメリカの対日貿易赤字を減らすことにもつながるものでLNGの採掘が成功裏につながることを期待している
・相互に利益のある形でアメリカから日本へのLNG=液化天然ガスの輸出増加も含め、両国間でエネルギー安全保障の強化に向けて、協力していくことを確認した」と述べました。
・為替については1期目のトランプ政権の時と同様に、日米の財務大臣の間で緊密な議論を継続させていくことになった
・拉致被害者もそうだが、ましてや家族はもっと高齢化しており、時間的にあまり余裕はない。拉致問題は日本の問題であることをよく認識しながらトランプ大統領のさらなる力、行動に期待するところは大きい
・日本とアメリカが力を合わせて、世界の平和のため地域の安定のため、お互いが責任を果たしていくことで一致した。防衛費の増額はアメリカに言われて日本がやることではない。日本が日本のためにみずからの責任で決断すべきものだが同盟国のアメリカとの意思疎通は当然必要だ
・北朝鮮については、世界にとって深刻な脅威となっている核・ミサイル開発への対処の必要性や、完全な非核化に向けて、日米が連携して取り組んでいくことを確認した
・拉致被害者と、その家族が高齢となる中で私の強い切迫感と決意を直接伝え、問題の即時解決に向けたトランプ大統領の力強い支持を改めていただいた
・日米豪印のクアッドや日本とアメリカに韓国やフィリピンを加えた3か国での協力など地域の重層的な同志国ネットワークの協力をいっそう積み上げていくことでも一致した
・力や威圧による一方的な現状変更を許さず、東シナ海や南シナ海でのそうしたいかなる試みにも反対するという決意を確認した。同時に台湾海峡の平和と安定の重要性も改めて確認した
・日米安全保障条約の第5条が沖縄県の尖閣諸島に適用されることを改めて確認した
・私からは同盟国として責任をアメリカと共有し役割を果たす用意があると伝えた。また日本の防衛力の抜本的強化に向けた取り組みへの決意を改めて表明し、日本の防衛に対するアメリカの揺るぎない関与を確認した
・日米両国の国益を相乗的に高め、インド太平洋地域に平和と繁栄をもたらすためになすべきことは『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けた『力強く揺るぎない日米同盟』のさらなる強化だと確信している。トランプ大統領との間で日米同盟の抑止力と対処力をともに高め、地域の課題に緊密に連携して向き合っていくことを確認した。
確か、トランプ大統領は、安倍昭恵夫人と会ったときにも自分の写真集を渡していましたから、それを改めて、公の共同記者会見で渡したということは、やはり安倍路線を継承しろとのメッセージではないかと思えてなりません。
3.成果はあったのか
果たして、今回の会談で成果はあったのか。
これについて、アメリカの外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員の高橋浩祐氏は次のように述べています。
トランプ大統領が”I love Japan”と言い、石破首相を笑顔で出迎えて和やかな雰囲気で始まった今回の日米首脳会談。「ドナルド」「シゲル」とファーストネームで呼び合う場面はなかったが、石破首相周辺が首脳会談後にNHKの取材に対し「予想以上の成果ではないか。ケミストリー(相性)が合うのかもしれない」と述べるなど、まずまずの信頼関係を築けたようだ。高橋氏はまずまずの信頼関係を築けたのではないかと述べていますけれども、会談前の見方はネガティブのものが比較的多くみられました。
トランプ氏への「お土産」として、石破首相は日本の対米投資を1兆ドル(150兆円)まで引き上げると表明した。米国産液化天然ガス(LNG)の購入も発表した。
その見返りとして、トランプ氏は日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画を巡り、「買収ではなく投資とすべきだ」「彼ら(日鉄)はUSスチールに多額の投資を行うことで合意した」と述べた。これまでは計画に一貫して反対の姿勢を示していただけに日本側に配慮した形だ。また、「米国の抑止力・能力を使い同盟国を100%守る」と強調した。
今後の課題として、トランプ大統領は対日貿易の赤字解消に意欲を見せ、改善がない場合は日本に関税を課す意向を示した。貿易赤字削減に向けた日本の努力を一層アピールする必要がある。
ニューヨーク・タイムズ紙は、「現状維持を求める日本。だが、それは高望みかもしれない」と題した記事のなかで、「予測不可能なトランプのいるホワイトハウスでは、ただのシンプルな挨拶でさえも危険な賭けになるかもしれない……気まぐれなトランプに現状維持を求めることは、無理な注文だ」とし、就任後間もないトランプはいま、「支持者に成果を見せようと躍起になっている」と伝えています。
また、在日米国商工会議所の元会頭、グレン・フクシマ氏は、「トランプと過ごす時間が長ければ長いほど、トランプが新たな要求を突きつける可能性は高まる」と石破総理が負うリスクを指摘。
更に、イギリスのガーディアン紙は、「タバコを吸い、プラモデル愛好家である石破にとって、ゴルフ外交が一役買うことはなさそうだ」と報じ、「石破がトランプとの関係をどう扱うかは、厳しい精査の目にさらされ、日本国内での地位において大きなリスクを伴うものでしょう。もし、過剰に石破がご機嫌とりをすれば、国会で議員たちから厳しい追及を受けることになります……安心できる保障を持ち帰ることができなかったり、友好関係を築くことができなかったりすれば、自民党内のライバルが圧力を強めるでしょう」と、アメリカのリスクコンサルティング会社ジャパン・フォーサイトの創業者で代表のトバイアス・ハリス氏のコメントを掲載しています。
そして、アメリカ戦略国際問題研究所(CSIS)地政学・外交政策副部長ニコラス・セーチェーニ氏は、時事通信のインタビューで次のように答えています。
―初会談の注目点は。トランプ大統領が「予測不能」なことは色んな識者が指摘することですけれども、トランプ大統領が石破総理の「強さ」を見極めようとするだろう、という指摘は重要なポイントではないかと思います。それは、石破総理が「ディール」をするに足る人物かどうか判断する材料にもなるからです。
信頼を築くことが焦点であり、大局を話すべきだ。個別の課題を掘り下げたら、たちまち会談が「交渉」に変わってしまう。(石破氏としては)まず中国、北朝鮮を含む厳しい地域情勢や、対米投資による日本の貢献を思い出させることだ。会談でトランプ氏がアジアを気に掛け、日本がその中心にいることを発信できれば、戦略的に意義深いものになる。
―石破氏が防衛費増額を要求されたり、関税の脅しを受けたりする可能性は。
トランプ氏は石破氏の「強さ」を見極めようとするだろう。反応を見るために、そうした問題で圧力をかけたり、日本を批判したりするかもしれない。石破氏は、日本の国益のために防衛力強化に取り組んでいることを堂々と説明すべきだ。防衛費について「米国産兵器を買い増したいのに、国防総省の調達プロセスが遅過ぎる」と切り返せば、石破氏は好印象を残せるだろう。
―対中政策では、どのようなやりとりが予想されるか。
トランプ氏の本能は競争であり、経済安全保障の強化や(軍事転用可能な)機微技術の保護を進めるだろう。ただ、彼は予測不能だ。「トランプ・ショック」に備える必要はある。石破政権は中国人向けビザ(査証)緩和などで日本の保守派に批判されているが、中国に強い姿勢を示した上で対話を模索するならトランプ氏は理解するし、中国も敬意を払うだろう。
―トランプ氏が外国首脳と会うのは2人目だ。
アジアに対する大統領の見解を形作るためにも、同盟国(首脳)が中国などの専制国家より先に会談するという点でも、早期の会談実現は重要な意味がある。
弱い指導者相手にどんなに「ディール」をやったとしても、それが反故にされてしまったら、折角頑張った「ディール」も意味がなくなってしまいますからね。
その意味では、USスチール買収問題を「投資」という形で纏めてきた石破総理に対して一定の評価をした可能性はあると思います。
4.トランプの本音
もう一つ、筆者が注目したのは、公開された日米首脳会談冒頭でトランプ大統領が見せた仕草です。
勿論、いつもと全然違った仕草を見せた訳ではないのですけれども、ちょっとした違いとして、トランプ大統領が座った時に良く見せる、指で逆三角形を作るポーズだとか、自分の側に引き寄せて長く握手するだとかが、あまり見られなかったことです。
2017年の古い記事ですけれども、CNNが「ボディランゲージから読み解く、トランプ米大統領の思考」という興味深い記事を掲載しています。
件の記事を引用すると次の通りです。
米国のトランプ大統領の初の外遊が終わった。首脳外交の間に見せた握手や表情からは、大統領の人格の一端が垣間見える。この記事によれば、トランプ大統領の引き寄せる握手や指の「三角形」は、自分の方が立場は上だという心理の現れだというのですね。
時として物議をかもすこともあるトランプ大統領の言動だが、大統領が見せたゼスチャーを手がかりに、その真の意図を専門家に読み解いてもらった。
□前に出ようとする戦い
トランプ大統領はイタリアの北大西洋条約機構(NATO)本部で開かれた首脳会議で、モンテネグロのマルコビッチ首相を押しのけた。
ボディーランゲージに詳しいジュディ・ジェームズ氏によると、他人を押しのけて最前列に出ようとする行動は、トランプ氏が苦労して地位や権力を手にした人物であることをうかがわせるという。
「いつも注目されて育った子どもが、わざわざその立場を強調したり、人を押しのけてまでそうする必要性を感じたりすることは滅多にない」とジェームズ氏は解説する。「世界で最も高い地位に上り詰めてもまだ、トランプ氏はあらゆる場面で自分が一番であることを確認する必要性を感じずにはいられないようだ」
マルコビッチ首相を押しのけたトランプ大統領は、自分のジャケットを整え、マルコビッチ首相と目を合わせようとはしなかった。人は普通、他人を押しのければ謝ったり、言葉には出さなくても言い訳めいた行動をしたりする。
しかしトランプ大統領の場合、「押しのけた後のボディーランゲージから判断すると、一番高い地位にいるのが自分の権利だと信じている様子がうかがえる」とジェームズ氏は言う。
□握手して引き寄せる動作
人と握手しながら相手を強く引き寄せる動作は、昨年の大統領選挙の当日にペンス副大統領と握手した時や、連邦最高裁判事のゴーサッチ氏任命を発表した時に見せていた。
こうした動作は攻撃的で、見る者に不快感を与えると専門家は言う。しかしこれは単純に、自分が一番上であることを誇示する動作にすぎない。
□長い握手
ブリュッセルで握手を交わしたトランプ大統領とフランスのマクロン大統領は、互いの手をなかなか離さなかった。
「マクロン大統領がこのゲームを仕掛けた」とボディーランゲージ専門家のルイーズ・マーラー氏は見る。「トランプ大統領は勝とうとしたが、この時は勝つことができなかった」
これに対して別の専門家のスティーブ・バン・アペレン氏は、「マクロン大統領が権力を誇示して、トランプ氏に対し主導権を握っていることを示そうとした権力争いの握手だったが、私の意見では、トランプ氏が勝った」と解釈する。
□指の「三角形」
政治家や俳優などの有名人にはそれぞれ、自らが頼りにする「休息姿勢」がある。トランプ氏の場合、指を使って三角形を作る仕草がそれに当たる。専門家によると、これは権力や自信、正確な思考を伝える仕草だという。
トランプ氏は座っている時には手でこの形をつくり、立っている時は「勝利のO」と呼ばれる同様の姿勢を取る。
□真剣な表情
トランプ大統領がよく見せるのは、あごを突き出し口元を引き締めて目を見開く表情だ。カメラに向かってポーズを取る時にもこの表情を見せることがある。
これについてジェームズ氏は、「上に立つ男らしく見えると考えて意図的にやっている仕草だと思う」と分析する。
ジェームズ氏によれば、この表情は、群れの中で一番高い位置にある動物がよく見せる。特に、群れの中でも地位の低い動物と離れ、「自分の地位の高さに由来する多めの餌」をむさぼっている動物にありがちな表情だという。
今回の首脳会談では、トランプ大統領は、石破総理の発言中、握った手をもう片方の手で包むようにしたり、何度か逆三角形をつくろうとしては躊躇うかのように外したりしていました。
また、石破総理との握手でも、自分に引き寄せるのではなく、自分から石破総理の側に寄っています。まぁ、単に距離が遠かっただけかもしれませんが。
つまり、トランプ大統領は石破総理に対して、自分が上だというボディランゲージは取り切れなかった、あるいは意識して取らなかった可能性が考えられます。
実際、その後の共同記者会見で、石破総理は「防衛費増額はアメリカに言われてやるものではない」「関税、貿易、投資は互いの利益になるものでなければならない」と発言し「これらの認識を共有したことが最大の成果ではないかと考えている」と公の場で述べています。
これは、上下関係があればとても言える言葉ではありません。
ということは、今回の会談で、トランプ大統領も石破総理も「日米は対等な関係だ」という意識を持っていた、あるいは、持ったのではないかと筆者は思います。
であるからこそ、トランプ大統領は指で逆三角形を作ろうとして躊躇ったり、握手で引き寄せる動作もなく、自分で距離を詰めたのではないか。
これが本当ならば、石破総理は確かに「成果」を挙げたといえるかもしれません。
ただしそれは「安倍外交」を継承した上で、対等な関係であるならば、約束を守らねばならないという大前提があります。
果たして、「公約は守らない」と国会で語った石破総理にそんなことができるのか。
トランプ大統領は共同記者会見後、プイと演壇から降りて、そのまま退場しました。石破総理と握手を交わすでもなく、ハグするのでもなく、です。
もしこれが、石破総理ではなく安倍元総理だったら、握手なりハグなりしただろうし、なんとなれば、安倍元総理に道を譲るなり、一緒に退場するなりしたのではないかと思います。
つまり、トランプ大統領は本心では石破総理を信頼している訳ではない。いったことをやるのか、やれるのか、それこそ「様子を見よう」というスタンスではないかと思います。
一兆ドルなんて巨額の投資を本当にできるのかと石破総理の手腕をみようとしているのではないかと思います。
会談や会見で満面の笑みを見せて浮かれていたかに見える石破総理は、果たして、トランプ大統領の細かいメッセージを受け取れたのか。
その意味では、成果があった一方で、非常に怖い日米首脳会談だったのではないかと思いますね。
大成功と報じるメディアは何をどう見てんだ( ´_ゝ`)
— 愛鷹 (@minobouz) February 8, 2025
目が腐ってんのか頭が腐ってんのか業界が腐ってんのか🙄 https://t.co/Z5OXf5AFeQ
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